応用情報技術者試験 合格教科書|2026年度(令和8年度)対応
第 17 章|科目 A 例年 3〜4 問(直近 10 年平均 3.2 問)/科目 B 選択問題(システム監査) 科目 B: システム監査

システム監査と内部統制

監査の流れ(計画→予備調査→本調査→報告→フォローアップ)と内部統制・IT ガバナンスを、監査人の目線で図解する

この章で学ぶこと

科目 A では直近 10 年(19 回)で 60 問、1 回平均 3.2 問が出ています。問番号もほぼ固定で、3 問の回は問 58〜60、4 問の回は問 57〜60 です。計算問題は 10 年間で 0 問、直近 6 回の 19 問のうち 12 問が過去論点の再出題という、マネジメント系で最も費用対効果の高い分野です。3 問確保が目標です。科目 B の「システム監査」を選ぶ人は本章の語彙がそのまま問題文を読む前提になります(解き方は第 25 章)。

1. システム監査とは何か ― 目的・種類・三つの視点

システム監査の目的は、情報システムに係るリスク(情報システムリスク)に適切に対応しているかどうかを、高い倫理観をもった独立かつ客観的な立場のシステム監査人が検証・評価し、保証や助言を行うことです。それを通じて経営活動・業務活動の効果的かつ効率的な遂行とその変革を支援し、組織体の目標達成に寄与するとともに、利害関係者に対する説明責任を果たします。

ここで押さえるべきは「監査人は検証・評価して伝える人であって、直す人ではない」という一点です。この分野の科目 A の問題は、ほとんどがこの役割分担のどこかを崩した誤答肢でできています。監査人が改善計画を作る、改善作業を代行する、被監査部門に命令する。いずれも独立性を失う行為なので、選択肢に現れたらその時点で誤りと判断できます。

監査の種類 ― 誰が何を対象に行うか

監査は「対象」「根拠」「実施主体」の 3 つの軸で名前が付きます。対象で切れば会計監査・業務監査・システム監査・情報セキュリティ監査、根拠で切れば法定監査と任意監査、実施主体で切れば内部監査と外部監査です。同じ監査が複数の名前を同時に持つ点に注意してください。上場企業の財務諸表監査は「会計監査」であり「法定監査」であり「外部監査」です。

分類軸種類内容
対象会計監査財務諸表が適正に作成されているかを検証する
対象業務監査業務が規程・方針に沿って有効・効率的に行われているかを検証する
対象システム監査情報システムに係るリスクへの対応状況を検証・評価する
対象情報セキュリティ監査情報セキュリティに係るコントロールを対象とする。判断尺度は情報セキュリティ管理基準
根拠法定監査法令で義務づけられた監査(金融商品取引法監査・会社法監査など)
根拠任意監査組織体が自らの判断で行う監査。システム監査は通常こちら
主体内部監査組織内部の内部監査部門が実施する。基準は内部監査基準・IPPF(専門職的実施の国際フレームワーク)
主体外部監査組織外部の第三者が実施する。監査法人への委託はシステム監査委託契約書で範囲を定める
方法立入監査現場に立ち入って実地で確かめる形態

もう一つの重要な軸が、監査の結論の出し方です。保証を目的としたシステム監査は「コントロールは有効である」という意見(保証)を表明し、助言を目的としたシステム監査は改善のための助言を提供します。どちらを目的とするかは監査計画で先に決めます。同じ監査手続を実施しても、報告書に書く結論の形が変わります。

監査対象は三つの視点で捉える

システム監査の対象は、個々のコントロールだけではありません。シラバス Ver.7.2 では「情報システムのコントロールとマネジメントだけでなく、ガバナンスにまで及ぶ」と明記されています。この三層が図 17-1 の構造です。直近 2 年で連続出題された新傾向なので、階層の順番と各層の点検対象を言えるようにしてください。

ガバナンス(取締役会・経営陣) IT の利活用のあるべき姿を示し、監督する マネジメント(管理者層) 計画・実行・評価・改善のプロセスを回す コントロール(現場の統制手段) 承認・照合・アクセス制御・ログなど個々の統制 指示 指示 報告 報告
図 17-1 監査対象の三つの視点。上の層は下の層に方針と指示を与え、下の層は上の層に報告します。監査人はこの往復が実際に機能しているかを点検します。「異常アクセスの検出時に適時に対処・報告しているか」はコントロールの視点、「IT 戦略と方針を定めて監督しているか」はガバナンスの視点です。

監査対象となるプロセスも広く、情報システムの企画・開発(アジャイル開発を含む)・運用・保守・廃棄の全ライフサイクル、さらに外部サービスの調達・利活用のプロセスに及びます。どこまでを見るかは内部監査規程や監査計画、外部委託の場合は契約書で明確に定めます。「監査人が思いついた範囲を自由に見る」わけではありません。

出題実績 監査対象の三つの視点は直近 10 年で 2 回(令和 6 年春 問 59「ガバナンス」、令和 7 年秋 問 60「コントロールの視点の項目」)。10 年間で初めて 2 年連続で出た新傾向です。一方でクラウド導入の監査は 2 回、ユーザ受入テストの監査は 2 回、可用性の監査項目は 2 回と、対象業務ごとのチェックポイントも安定して出ます。

2. 監査人の独立性と二つの基準

システム監査の世界には、名前の似た基準が 2 つあります。役割がまったく違うのに毎回入れ替えて出題されるので、ここを最初に切り分けます。どちらも経済産業省が策定し、2023 年に改訂されています。

基準何を定めるか使う場面
システム監査基準システム監査人の行為規範。監査人の倫理、独立性と客観性の保持、正当な注意と秘密の保持、専門的能力の保持と向上、監査の実施と報告の手順監査人が「どう振る舞うか」の拠りどころ
システム管理基準情報システムのあるべきコントロールを示す判断尺度。監査人が「良い/悪い」を判定する客観的な参照基準監査対象が「どうあるべきか」の物差し
覚え方 「監査基準は監査人を縛る、管理基準は管理される側(システム)を測る」。主語が監査人なら監査基準、主語がシステムや管理者なら管理基準です。「監査上の判断尺度」という語が出たら管理基準の側だと即断できます。

独立性 ― 外観上と精神上の 2 種類

監査人の独立性は 2 つに分けて問われます。外観上の独立性は組織上・身分上の独立で、被監査部門の指揮命令下に置かれないことです。精神上の独立性は態度の独立で、公正かつ客観的に判断することです。システム監査基準では、独立性を「監査対象から不当な影響や圧力を受けていない状態」として説明します。

実務上これは組織図の話になります。内部監査部門は被監査部門と横並びに置き、経営者や取締役会に直属させます。情報システム部門の中に監査担当を置くと、自分の部門を監査することになり外観上の独立性が失われます。図 17-2 の位置関係が、選択肢の正誤判断に直結します。

経営者・取締役会 監査の依頼者・報告先 監査の指示と報告 内部監査部門 経営者に直属 業務部門 (被監査部門) システム部門 (被監査部門) 監査 外観上の独立性 ― 組織上・身分上、被監査部門から独立している 精神上の独立性 ― 公正かつ客観的な態度で監査判断を行う
図 17-2 監査人の組織上の位置。内部監査部門が被監査部門の下に置かれると、外観上の独立性が失われます。監査規程を承認するのは監査部門ではなく経営者である点も出題実績があります。

監査人が守るべきこと ― 倫理と体制整備

独立性のほかに、監査人には次の義務があります。いずれも選択肢の文言として出るので、語のまま覚えてください。

要件内容
誠実性職業倫理に基づき誠実に職務を遂行する
専門的能力の保持と向上監査に必要な知識・技能を継続的に維持し高める
正当な注意と秘密の保持職業的専門家として当然払うべき注意を払い、知り得た情報を正当な理由なく漏らさない
独立性と客観性の保持外観上・精神上の独立を保ち、事実に基づいて判断する
権限と責任の明確化監査人の権限(資料の入手・関係者への質問など)と責任を監査規程で定める
ニーズの把握と品質の確保監査に対するニーズを満たす体制を整備・運用し、一定の監査品質を確保する

3. 監査の流れ ― 計画・予備調査・本調査・報告・フォローアップ

システム監査は、監査計画の策定 → 監査の実施(予備調査・本調査・評価と結論の形成)→ 監査報告 → フォローアップという流れで進みます。図 17-3 の 5 段階が本章の背骨です。各段階の成果物まで一緒に覚えると、「この作業はどの段階か」を問う問題が一瞬で解けます。

①〜⑤はすべて監査人が主体。改善の実施だけが被監査部門の仕事 ①監査計画 リスクを評価し計画 監査計画書 ②予備調査 概要と体制を把握 予備調査の記録 ③本調査 証拠を入手し検証 監査証拠・監査調書 ④監査報告 結論と改善提案 監査報告書 ⑤フォローアップ 改善状況を確認 フォロー報告書 ⑤の結果は次年度の監査計画に反映する
図 17-3 監査の 5 段階と成果物。青字が各段階で残る記録です。⑤の結果が①へ戻るので、監査は 1 回で終わる作業ではなく毎年回り続けるサイクルになります。

① 監査計画 ― リスクの大きいところから見る

監査計画は 3 階層で作ります。数年先を見た中長期計画、その年に何を監査するかを決める年度計画、個々の監査テーマごとに監査目的・対象範囲・方法・実施時期・実施体制・スケジュールまで具体化した個別監査計画です。

どのテーマを選ぶかはリスクアプローチで決めます。すべてを均等に見るのではなく、情報システムリスクの大きい領域に監査資源を重点配分する考え方です。監査計画は状況変化に応じて見直すことがあり、たとえば外部委託先で問題が起きれば委託先を監査範囲に追加します。

② 予備調査と ③ 本調査 ― 「把握」と「検証」で切る

予備調査と本調査の区別は、この分野で最も安定して出る論点です。境目は一言で切れます。予備調査は「把握」、本調査は「検証」です。

観点② 予備調査③ 本調査
目的監査対象の実態を把握する監査要点について検証し証拠を得る
見るもの事務手続・マニュアル・規程・組織図・システム構成図実際の記録・ログ・伝票・画面・現場の作業
分かること業務内容、職務分掌、実施体制、リスクの所在コントロールが設計どおり運用されているか
代表的な作業アンケートでリスク認識を収集する、関係者に業務の流れを聞くサンプルを抽出して承認印を確かめる、ログと作業記録を突き合わせる
次に決めること本調査の範囲と監査手続(何を確かめるか)監査の結論(評価)
ここがひっかけ 「予備調査で監査証拠を入手し、コントロールの有効性を検証する」は誤りです。証拠の入手・検証は本調査の仕事です。逆に「本調査で業務内容や職務分掌を把握する」も誤りで、それは予備調査で済ませておく前提です。誤答肢はこの 2 つを入れ替えて作られます。

評価と結論の形成、そして ④ 報告へ

本調査で得た監査証拠を、監査要点ごとに評価して監査の結論を形成します。判断尺度はシステム管理基準などの客観的な基準です。結論が固まったら監査報告書を作成し、監査の依頼者(通常は経営者)に報告します。報告先は被監査部門ではなく依頼者である点に注意してください。

出題実績 予備調査は直近 10 年で 3 回(平成 28 年春 問 59、令和 5 年春 問 58、令和 6 年秋 問 59)。令和 5 年春の正解肢「事務手続やマニュアルから業務内容・分掌・体制を把握する」が翌年の令和 6 年秋にそのまま再出題されました。一方、監査計画の策定そのものは 10 年間で 0 問です。深追いは不要です。

4. 監査技法と CAAT ― 何をどう確かめるか

まず言葉の整理です。監査手続とは、十分かつ適切な監査証拠を入手するために実施する手順のことです。監査技法は、その手順で使う個々のやり方(質問する、閲覧する、突き合わせる)を指します。「監査手続とは何か」を問う問題は直近 10 年で 4 回出ており、正解肢はいつも「十分かつ適切な監査証拠を入手するための手順」です。誤答肢には監査計画・監査報告書・監査技法の定義が差し込まれます。

技法やること得られる証拠
チェックリスト法あらかじめ用意した質問項目に沿って回答を得る回答済みチェックリスト
ドキュメントレビュー法文書及び記録を収集して閲覧する規程・設計書・運用記録の写し
インタビュー法関係者に直接口頭で問い合わせ、回答を入手する(質問書・調査票の併用も含む)面談記録
ウォークスルー法データの生成から入力・処理・出力・活用までの流れと、その過程のコントロールを、書面上または実際に追跡する追跡記録、各段階の証跡
突合・照合法2 つ以上の記録・証憑を突き合わせ、一致するかを確かめる照合結果、照合印
現地調査法現場に赴き、実物や作業状況を自ら観察する視察記録、写真
統計的サンプリング母集団から統計的に標本を抽出して検証し、全体を推定する。逸脱の割合が許容逸脱率を超えるかで判定する標本の検証結果
覚え方 技法の判別は動詞 1 語で決まります。聞くならインタビュー法、読むならドキュメントレビュー法、見に行くなら現地調査法、突き合わせるなら突合・照合法、たどるならウォークスルー法。この 5 語だけで、名称と説明を双方向に結べます。

ウォークスルー法 ― 1 件を通しでたどる

ウォークスルー法は直近 10 年で 4 回出題された最頻の技法です。名称から説明を選ぶ形と、説明から名称を選ぶ形の両方で出ます。他技法と違うのは、1 つの取引を最初から最後まで通して追いかける点です。個々の記録を点で見るのではなく、線でつなぎます。図 17-4 が受注業務での例です。

監査人はこの受注 1 件を、発生から活用まで通しで追跡する ①受注伝票の発生 ②システムに入力 ③在庫引当の処理 ④出荷指示に活用 承認印の有無 入力権限の限定 残高チェック 出力の授受管理 受注伝票の原本 権限設定の一覧 処理結果のログ 帳票授受管理表 文書のとおりに実務が動いているかを、書面上または実際にたどって確かめる
図 17-4 ウォークスルー法。箱の下 1 段目が各段階のコントロール、2 段目がその存在を裏付ける証跡です。どこか 1 段階でコントロールが抜けていれば、そこが指摘事項の候補になります。

CAAT ― コンピュータで監査する

CAAT(Computer Assisted Audit Techniques:コンピュータ支援監査技法)は、監査ソフトウェアなどを使って監査を実施する技法群です。人手のサンプリングでは数十件しか見られないところを、全件検査できるのが強みです。

技法内容
監査ソフトウェア監査人が用意したツールで対象データを抽出・集計・分析する
データサンプリング/データ分析大量データから条件に合う件数を数え、異常値や重複を洗い出す
テストデータ法あらかじめ結果が分かっているテストデータを本番プログラムに投入し、出力が期待どおりかを確かめる
監査モジュール法監査用のモジュールを本番プログラムに組み込んでおき、稼働中の処理から継続的に証拠を採取する
ペネトレーションテスト法実際に侵入を試み、セキュリティのコントロールが有効かを確かめる

判定の型: 監査手続の書き方

監査手続は「①何を(資料の固有名) + ②どうやって(技法) + ③何を確かめるか」の 3 点セットで書きます。1 つ欠けると科目 B では減点されます。

  1. 監査要点を確認する(例: 受注入力が漏れなく行われていること=網羅性)
  2. その要点を裏付けられる資料を、本文の表記どおりの固有名で選ぶ(例: プルーフリスト、受注伝票)
  3. 技法を当てる(2 つの記録を比べるなら突合・照合法)
  4. 確認内容を動詞で締める(一致していること、照合印が押されていること)

答え: 「プルーフリストと受注伝票を照合し(①②)、全件に照合印が押されていることを確かめる(③)」。「アクセス権を確認する」のように資料名も確認内容もない書き方は、具体性不足で点になりません。

出題実績 技法では ウォークスルー法 4 回、インタビュー法 2 回が正解肢になっています。チェックリスト法・ドキュメントレビュー法・突合・照合法・現地調査法は 10 年間、誤答肢としてしか登場していません。CAAT はペネトレーションテスト法が 1 回(平成 30 年秋)のみです。ウォークスルー法とインタビュー法を対で覚え、残りは表 1 行で足ります。

5. 監査証拠・監査調書・監査報告書

監査の結論には根拠が要ります。その根拠が監査証拠で、証拠と結論のつながりを記録したものが監査調書、調書をもとに依頼者へ伝えるのが監査報告書です。3 つは下から上へ積み上がる関係にあり、下がなければ上は成り立ちません(図 17-5)。

監査報告書 監査の結論・指摘事項・改善提案 経営者へ報告 結論を裏付ける 監査調書 結論に至った過程が分かるよう文書化して保管する 根拠として整理する 監査証拠 十分性(量)と適切性(質)を満たす情報 アクセスログ・トランザクションログ・承認記録・進捗管理資料
図 17-5 証拠・調書・報告書の裏付け関係。下の段が薄いまま上の段だけ立派に書くことはできません。監査調書は被監査部門に提出する文書ではなく、監査人が結論の根拠として作成・保管する記録です。

監査証拠 ― 十分性と適切性

監査証拠には 2 つの要件があります。十分性は量の話で、結論を支えるのに足りる件数・範囲があることです。適切性は質の話で、監査要点に適合し、証明力があることです。1 件だけ見て「全社的に問題なし」と結論づければ十分性を欠き、監査要点と関係のない資料を並べれば適切性を欠きます。

証拠になるのは、インシデント報告書、進捗管理資料、運用・保守の記録、アクセスログ、トランザクションログなどです。これらが後から追跡できる形で残っている状態を監査証跡といい、監査証跡を残すように情報システムが構築・整備されていることを可監査性と呼びます。ただし、監査対応のためだけのドキュメント作成を開発現場に強いることは望ましくないとされています。

ここがひっかけ 「アジャイル開発では、体裁の整った管理用ドキュメントだけが監査証拠になる」は誤りです。この記述は令和 2 年 10 月と令和 4 年春の 2 回、「適切でないもの」の正解として出ています。アジャイル開発では、タスクボード・レビューの記録・自動テストの結果・リポジトリのコミット履歴なども監査証拠として扱えます。形式ではなく、結論を裏付けられるかどうかで判断します。

監査調書 ― 過程が分かるように残す

監査調書は、調査・収集・検証・評価した情報を、監査の結論に至った過程が分かるように整理して文書化したものです。監査報告書を書くときの基礎資料になり、後から結論の妥当性を検証できるよう保管します。直近 10 年で 3 回出題され、誤答肢は「被監査部門へ提出する」「監査報告書と同じもの」「報告書を出したら保管しなくてよい」の 3 パターンに固定されています。

監査報告書 ― 何を書くか

監査報告書には、監査の対象・目的・範囲、実施した監査手続、監査の結論、指摘事項と改善提案を記載し、監査の依頼者および適切な関係者に報告します。保証を目的とした監査なら意見(保証)を、助言を目的とした監査なら改善のための助言を結論として示します。

記載項目書く内容注意点
監査の対象・目的・範囲どのシステム・業務を、何のためにどこまで見たか範囲外のことは結論に書けない
実施した監査手続どの資料をどの技法で確かめたか結論と手続が対応していること
監査の結論保証意見または助言監査の目的に応じた形式で書く
指摘事項発見した事実と、それがもたらすリスク事実と評価を分けて書く
改善提案(改善勧告)あるべき状態と、そこへ向かう方向性実施方法の詳細設計までは踏み込まない

6. 報告とフォローアップ ― 役割分担が全問の軸

フォローアップとは、監査報告書に記載した改善提案、または監査対象先が作成した改善計画について、所要の措置が適切かつ適時に実施されているかどうかを確かめる活動です。ここは科目 A でこの中分類の最頻論点で、フォローアップ 6 回、指摘事項への対応 2 回、改善勧告の記載 1 回を合わせて直近 10 年で 9 問が出ています。

そして 9 問すべての軸が同じです。改善計画を作るのも実施するのも被監査部門、監査人は確認して助言する。この一線だけで正誤が決まります(図 17-6)。

システム監査人 被監査部門 ① 指摘事項と改善提案を報告 改善の実施は求めるが、自ら行わない 報告 ② 改善計画の作成と改善の実施 計画を作るのも実施するのも被監査部門 改善の報告 ③ 改善状況のモニタリング 遅れていれば原因と対策を確認し助言する
図 17-6 フォローアップの役割分担。左列が監査人、右列が被監査部門の仕事です。左列に「改善を実施する」「改善計画を作る」が入った選択肢は、この図の右列を侵しているので誤りです。

改善が遅れているときに監査人が取る行動

もう一つの出題パターンが「改善が計画より遅れているとき、監査人はどうするか」です。ここでも監査人は指揮命令をしません。原因を確かめ、状況を把握し、方策を助言するのが答えになります。

状況監査人が取る行動(適切)選択肢に現れる誤り
改善が進んでいる改善状況を確認し、フォローアップ報告書にまとめる改善完了まで監査報告書の発行を保留する
改善が計画より遅れている遅れの原因を確かめるため、対策内容と実施状況を確認する。遅れを取り戻す方策を責任者に助言する監査人が改善作業を代行する/責任者に改善を命令する
改善計画そのものが不十分計画の妥当性について助言する監査人が改善計画を作り直して渡す
改善が完了した改善結果が有効に機能しているかを、改めて監査手続で確かめる被監査部門の完了報告を受け取っただけで終える

判定の型: 指摘事項の書き方

指摘事項は「①事実 → ②原因 → ③リスク → ④改善提案」の順に組み立てます。事実と評価を混ぜないことが要点です。

  1. 事実: 観察した事実だけを書く(例: 退職者 3 名の利用者 ID が削除されずに有効なまま残っていた)
  2. 原因: なぜ起きたかを構造で書く(例: 退職時の ID 削除依頼が人事部門から情報システム部門へ通知される手順が定められていない)
  3. リスク: 放置した場合に何が起きるかを書く(例: 退職者による不正なデータ参照・更新が行われる可能性がある)
  4. 改善提案: あるべき状態を示す(例: 退職手続に ID 削除の通知を組み込み、四半期ごとに ID 棚卸を実施すること)

④で「どの製品を導入し、どの画面をこう直す」まで書くのは行き過ぎです。実施方法の選択は被監査部門の裁量に残します。逆に①だけを書いて②③を欠くと、被監査部門が改善計画を立てられません。

出題実績 「改善提案に対する監査人のフォローアップとして適切なもの」は、平成 28 年秋 問 59・令和 3 年春 問 60・令和 6 年秋 問 60・令和 7 年秋 問 59 と 4 回にわたり、ほぼ同じ設問で再出題されています。正解はいずれも「被監査部門の改善状況を確認・モニタリングする」です。指摘事項への対応の 2 問(平成 31 年春 問 59・令和 3 年秋 問 60)はどちらも「適切でないもの」を選ぶ否定形で、正解は「監査人が被監査部門の改善計画を作成する」でした。

7. 内部統制 ― 4 つの目的・6 つの基本的要素・IT 統制

内部統制とは、健全かつ効率的な組織運営のための体制を、企業などが自ら構築し運用する仕組みです。監査が「外から点検する」仕組みなのに対し、内部統制は「中に組み込む」仕組みです。実現には業務プロセスの明確化、職務分掌、実施ルールの設定、チェック体制の確立が必要になります。

内部統制が達成すべき目的は 4 つ、それを支える基本的要素は 6 つです(図 17-7)。要素は 6 つとも名称のまま出題されるので、順序と役割を図の位置で覚えてください。

達成すべき 4 つの目的 業務の有効性・効率性/財務報告の信頼性/法令等の遵守/資産の保全 6 要素が目的の達成を支える リスクの 評価と対応 統制活動 (承認・照合) 情報と伝達 (報告・共有) モニタリング (日常・独立) 統制環境(土台) 誠実性と倫理観、組織構造、権限と責任、人事の方針 IT への対応 6 つ目の要素 他の 5 要素に 組み込まれる
図 17-7 内部統制の 4 つの目的と 6 つの基本的要素。統制環境が土台、IT への対応が横串、残る 4 要素が「リスクを評価して手を打ち、結果を伝えて監視する」という順で回ります。
覚え方 6 要素は「土台 1・横串 1・回るもの 4」で数えます。土台が統制環境、横串が IT への対応、回るのがリスクの評価と対応 → 統制活動 → 情報と伝達 → モニタリングです。COSO のフレームワークは要素 5・目的 3 で、日本の基準はIT への対応と資産の保全を足して 6 要素・4 目的にしたもの、と押さえておけば両者の違いも答えられます。

統制活動には、承認、照合、記録、そして職務分掌(相互牽制)が含まれます。モニタリングは、業務に組み込まれた日常的モニタリングと、業務から離れた立場で行う独立的評価に分かれます。内部監査部門による監査は後者です。業務担当者自身が自部門の統制の有効性を評価する手法をCSA(Control Self Assessment:統制自己評価)といいます。

なお、内部統制には限界があります。判断の誤りや不注意、複数人による共謀、当初想定していなかった環境変化や非定型的な取引、費用と便益の比較衡量、そして経営者が不当な目的で内部統制を無効化する場合です。「内部統制を整備すれば不正は起こらない」と書かれた選択肢は誤りです。

職務分掌 ― 1 人に閉じさせない

職務分掌は、1 つの取引を 1 人で完結させないことで相互牽制を働かせる仕組みです。科目 B のシステム監査問では、この分離が崩れている箇所がほぼ毎回リスクの急所になります。

役割やること兼務した場合のリスク
起票取引の発生を伝票・申請書に記録する承認と兼務すると、架空取引を自分だけで正式データにできる
承認内容の妥当性を確認して許可する起票・入力と兼務すると牽制が働かない
入力システムにデータを登録する承認と兼務すると、承認されていないデータが正式データになる
実行出荷・支払などの実務を行う承認と兼務すると、資産の不正流出を止められない
記録・照合結果を記録し、他の記録と突き合わせる実行と兼務すると、差異を自分で隠せる

IT 全般統制と IT 業務処理統制

6 要素の「IT への対応」は、さらに IT 環境への対応・IT の利用・IT に係る全般統制・IT に係る業務処理統制に分かれます。試験でよく問われるのは後ろの 2 つで、区分を入れ替えた誤答肢が定番です(図 17-8)。

IT 業務処理統制(業務プロセスごとに作り込む統制) 販売プロセス 入力データの正当性チェック エラーデータの修正・再処理 購買プロセス 承認限度額の自動チェック マスタデータの維持管理 在庫プロセス 入出庫記録の自動連番付与 画面ごとの操作権限の限定 全般統制が業務処理統制を支える IT 全般統制(すべての業務処理統制の前提となる基盤) システムの開発・保守/運用・管理/アクセス管理/外部委託の契約管理
図 17-8 2 種類の IT 統制。全般統制は全業務に共通する土台(開発・保守、運用・管理、アクセス管理、外部委託の契約管理)、業務処理統制は個々の業務プロセスに作り込まれた統制です。土台が崩れていれば、上の業務処理統制がいくら精密でも信頼できません。
区分具体例誤答肢での混同
IT に係る全般統制本番移行手続の承認、プログラム変更管理、利用者 ID の付与・削除の管理、バックアップの運用、外部委託先との契約内容の見直し「入力データの正当性チェック」を全般統制と言い換える
IT に係る業務処理統制入力データの正当性・完全性・正確性のチェック、エラーデータの修正と再処理、マスタデータの維持管理、画面や機能単位の操作権限の限定「アクセス管理」「変更管理」を業務処理統制と言い換える
制度の背景 金融商品取引法の内部統制報告制度では、上場企業の経営者が財務報告に係る内部統制の有効性を自ら評価して内部統制報告書を作成し、公認会計士等の監査を受けます。評価は全社に共通する全社的な内部統制と、業務プロセスに係る内部統制の 2 段階で行います。IT 統制の評価にあたって参照されるのが、経済産業省のシステム管理基準追補版(財務報告に係る IT 統制ガイダンス)です。

入力統制 ― 網羅性を確かめる型

業務処理統制の中で最も出題が多いのが入力統制、それも網羅性(漏れなく・重複なく処理されたか)の確認手続です。代表例が図 17-9 のプルーフリスト照合です。

網羅性(漏れなく処理されたか)を確かめる代表的なコントロール ①受注伝票 現場が起票した原本 ②システム入力 入力漏れ・二重入力 ③プルーフリスト 入力結果の一覧表 ④照合と照合印 担当者が押印する プルーフリストと受注伝票を 1 件ずつ突き合わせる 監査人が確かめるのは、照合が行われた証跡(照合印)である 連番の自動付与も、抜けや重複を見つけるための網羅性のコントロール
図 17-9 プルーフリスト照合。監査人が確かめるのは伝票の中身ではなく、照合が実施された証跡です。同じ網羅性の統制として、入出庫記録への自動連番付与も出題実績があります。
監査要点確かめること代表的な監査手続
網羅性(完全性)漏れなく、重複なく処理されたかプルーフリストと伝票の照合印を確かめる。連番の欠番・重複を確かめる
正確性金額・数量が正しく記録されたか合計金額を再計算し、システムの集計値と突き合わせる
正当性権限のある者が承認した取引か承認記録の有無と承認者の権限を確かめる
機密性権限のない者が参照できないかアクセス権設定一覧と職務分掌を突き合わせる
可用性必要なときに使えるかサーバの二重化、バックアップと復旧手順、訓練の記録を確かめる
ここがひっかけ 監査要点が違えば正解の手続も変わります。「入力漏れがないこと」を確かめる問題で「承認を確かめる」「アクセス権を確かめる」を選ぶのが典型的な誤答です。承認は正当性、アクセス権は機密性の手続です。マスタファイル管理の監査で可用性を問われたら答えは「サーバ二重化による耐障害性の向上」で、これは 10 年で 2 回出ています。

8. IT ガバナンスと 3 つのディフェンスライン

IT ガバナンスとは、組織体のガバナンスの構成要素で、取締役会等がステークホルダのニーズに基づき、組織体の価値および組織体への信頼を向上させるために、組織体における IT の利活用のあるべき姿を示す IT 戦略と方針の策定、およびその実現のための活動です。主語が取締役会等である点が要点で、「情報システム部門が行う IT の運用管理」と書かれていたらそれは IT マネジメントであってガバナンスではありません。

システム監査・情報セキュリティ監査・ソフトウェア資産管理は、いずれも IT ガバナンスを実現するための取組です。つまりシステム監査は IT ガバナンスの手段であり、章の冒頭で見た「監査の目的は IT ガバナンスの実現に寄与すること」という言い方はここにつながります。

枠組み・用語内容
JIS Q 38500(ISO/IEC 38500)組織の IT ガバナンスの規格。EDM モデル(Evaluate 評価・Direct 指示・Monitor モニタ)で経営陣の行動を定義する。原則は JIS Q 38500:2026(ISO/IEC 38500:2024 を採用)で 11 項目(目的・価値の生成・戦略・オーバーサイト・アカウンタビリティ・ステークホルダー対応・リーダーシップ・データ及び意思決定・リスクガバナンス・社会的責任・長期的な持続可能性及びパフォーマンス)に改められた。責任・戦略・取得・パフォーマンス・適合・人間行動の 6 原則は旧 JIS Q 38500:2015
COBITISACA が策定した IT のガバナンスとマネジメントのフレームワーク。ガバナンス目標(EDM)とマネジメント目標を分けて体系化している
PRM-ITProcess Reference Model for IT。IT のプロセスを参照モデルとして体系化したもの
成熟度モデルプロセスの成熟度を段階で評価し、改善の目標水準を示すモデル
CIO / CISOChief Information Officer(最高情報責任者)/Chief Information Security Officer(最高情報セキュリティ責任者)。IT 戦略と情報セキュリティの経営責任者
データガバナンスデータの品質・整合性・利用ルールを組織横断で統制する取組
コーポレートガバナンス企業統治。IT ガバナンスはその構成要素。詳細は第 21 章

3 つのディフェンスライン ― 監査人が立つ場所

リスク管理の責任を 3 層に分ける考え方が3 つのディフェンスライン(3 ラインモデル)です。システム監査人がどこに立つのかが、独立性の議論と直結します(図 17-10)。

経営者・取締役会(ガバナンス機関) 報告 第 1 線 業務部門 日常業務の中で リスクを保有し 統制を実行する 監視 第 2 線 管理部門 リスク管理・法務 コンプライアンス 枠組みを示し監視 検証 第 3 線 内部監査 独立した立場で 1 線・2 線を検証 経営者へ保証を提供 第 3 線は第 1 線・第 2 線から独立し、経営者・取締役会に直接報告する システム監査人は第 3 線に位置づけられる
図 17-10 3 つのディフェンスライン。第 1 線がリスクを持ち、第 2 線が枠組みを与えて監視し、第 3 線が両者から独立して検証します。第 2 線は業務ラインに助言する立場なので独立的評価とは呼べません。独立的評価は第 3 線の役割です。

この 3 層は内部統制の 6 要素と対応します。第 1 線と第 2 線の活動が日常的モニタリング、第 3 線の監査が独立的評価にあたります。令和 5 年春の科目 A では「内部監査人の役割はモニタリングである」という趣旨が出題されました。

法令遵守状況の評価・改善

情報システムの構築・運用は、関連する法令を遵守して行う必要があります。適切なタイミングと方法で法令・基準・社内外の行動規範の遵守状況を継続的に評価し、改善していきます。内部統制を整備することは、法令遵守の体制を確立するうえで有効な手段です。この観点を対象とする監査をコンプライアンス監査といい、行動指針・職務分掌・倫理・透明性が着眼点になります。

監査の種類目的参照する基準
情報セキュリティ監査情報セキュリティに係るコントロールの適切性を検証・評価する情報セキュリティ監査基準、情報セキュリティ管理基準、クラウド情報セキュリティ管理基準
個人情報保護監査個人情報の保護と情報漏えいリスクへの対応状況を検証する個人情報保護法、JIS Q 15001、プライバシーマーク制度の要求事項
コンプライアンス監査法令・規範の遵守状況を検証する関連法令、行動指針
マネジメントシステム監査品質・環境・サービス・情報セキュリティ・事業継続の各マネジメントシステムを対象とするJIS Q 19011(マネジメントシステム監査のための指針)、JIS Q 27001 と ISMS 適合性評価制度

システム監査で参照する法令は広範です。刑法(電磁的記録不正作出及び供用、電子計算機損壊等業務妨害、電子計算機使用詐欺)、不正アクセス行為の禁止等に関する法律、電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)、電子署名及び認証業務に関する法律、個人情報保護法とマイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)および特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン、著作権法・特許法・不正競争防止法と営業秘密管理指針、労働基準法・労働者派遣法・男女雇用機会均等法、そして法定監査の根拠となる金融商品取引法・会社法です。監査人はこれらに照らして権利侵害行為や労働環境の問題点を指摘します。各法令の内容は第 22 章で扱い、この中分類では 10 年間で 1 問も出ていません。

9. 科目 B「システム監査」への橋渡し

科目 B の「システム監査」は、問 1(情報セキュリティ)が必須、問 2〜11 から 4 問を選ぶ選択問題の 1 つで、各問 20 点です。直近 19 回はすべて問 11 に置かれてきました。この分野の最大の特徴は、技術知識をほとんど要求しないことと、計算問題が 19 回で 0 本であることです。業務プロセスと承認フローを日本語で追えれば解けます。

設問の形は 19 回ともほぼ同一です。本文を読み、〔監査部長の指示〕と〔監査手続案の表〕に置かれた空欄を埋めます。解答欄は 1 問あたり平均 7.7 個で、その 63% は 10 字以内、77% は 15 字以内です。40 字を超える記述は 1 本もありません。

本文のブロック読み取るもの空欄との関係
会社とシステムの概要組織名・部署名・システム名解答に使う固有名の供給源
業務プロセス誰が起票し、誰が入力し、誰が承認するか職務分離の設問はここから作られる
発生した事案・トラブル・不満「〜することになっている」と「〜していなかった」の対比急所。ほぼ必ず空欄の答えになる
監査要点案の表網羅性・正当性・準拠性などの要点監査手続の空欄と 1 対 1 で対応する
監査部長の指示追加で確かめるべき点空欄の大半がここに集中する

頻出論点と、書き方で落とすポイント

19 問の主要論点を数えると、突合・照合による監査手続が 11 問、利用者 ID とアクセス権限の管理が 9 問、インタフェース処理・データ連携の正確性が 8 問、監査証拠となる資料の特定が 7 問です。上位 4 つはどれも本章の語彙で書けます。

失点パターン何が足りないか直し方
主体が書けていない「誰が」が抜けた手続・リスク記述「入力した者が自ら承認できないこと」のように主語を必ず書く
具体性が足りない「アクセス権を確認する」だけ資料の固有名と確認内容を足す
資料名とデータ名の取り違え「受注データ」と書いてしまう閲覧できる資料・帳票・管理表の名前を書く
本文の語を言い換えてしまう「保留ファイル」を「一時保存領域」と書き換える本文の表記をそのまま使うのが最大の得点源
時期・期限の指定漏れ「確認する」だけで時点がない「本番移行前までに」など時点を添える
類似概念の混同評価項目と目標レベル、自動化統制と手作業統制本章の監査要点の表で語を切り分けておく
2026年度の注意 2026 年度の試験は CBT 方式で、画面上の問題文に書き込むことはできません(筆記用具は配布されません)。本文 3〜4 ページと表 2〜3 個を読むこの分野では、試験画面のメモ機能に「部署名・資料名・空欄の記号と字数」を書き写す運用を、演習のうちから決めておいてください。時間配分は 1 問 25〜30 分が目安です。

本文の読み方と空欄の埋め方は第 25 章で、オリジナルの演習問題を使って手順として練習します。本章では「監査要点 → 監査手続 → 監査証拠」の 3 点セットと、突合・職務分離・ID 管理の語彙を確実にしておいてください。

ひっかけポイント

ここがひっかけ 1 ― 監査人に改善させる 「監査人が改善計画を作成する」「監査人が改善作業を実施する」「監査人が被監査部門に改善を命令する」。この 3 つはすべて誤りです。独立性を失うからで、フォローアップの問題と指摘事項の問題の両方で誤答肢として使われます。監査人ができるのは確認・評価・助言までです。逆に「被監査部門が改善計画を作成し、経営者の承認を得る」は正しい記述です。
ここがひっかけ 2 ― アジャイル開発の監査証拠 「アジャイル開発では、体裁の整った管理用ドキュメントだけが監査証拠になる」は誤りです。「適切でないものはどれか」の形で 2 回出ています。監査証拠は形式ではなく、結論を裏付けられるかで判断します。加えて、監査対応のためだけのドキュメント作成を開発現場に求めることは望ましくないとされている点も、そのまま選択肢になります。
ここがひっかけ 3 ― 2 つの基準の取り違え システム監査基準は監査人の行為規範、システム管理基準は監査上の判断尺度です。「監査人の倫理を定めた基準」と問われたら監査基準、「あるべきコントロールを示し良否を判定する物差し」と問われたら管理基準です。「システム監査基準は情報システムのあるべき姿を示す」という肢は、2 つを入れ替えた誤りです。
ここがひっかけ 4 ― 予備調査と本調査 把握が予備調査、検証が本調査です。「予備調査でサンプルを抽出して承認印を確かめる」「予備調査で監査の結論を形成する」はいずれも本調査以降の作業を前倒しした誤りです。逆に「本調査で職務分掌を把握する」も、予備調査で済ませておくべき作業なので誤りになります。
ここがひっかけ 5 ― 監査要点のすり替えと否定形 「入力漏れがないこと(網羅性)」を問う設問に、承認(正当性)やアクセス制御(機密性)の手続を混ぜるのが定番です。マスタファイル管理では、サーバ二重化は可用性、暗号化は機密性、チェックディジットは完全性です。さらにこの中分類は「適切でないものはどれか」の否定形が多く、指摘事項への対応と監査証拠の 4 問はすべて否定形でした。設問末尾の 2 文字を必ず読んでください。

理解度チェック(科目 A 形式)

Q1. システム監査人が行うフォローアップとして適切なものはどれか。
  1. 監査人が改善計画を作成し、被監査部門に実施を指示する。
  2. 改善が完了するまで、監査報告書の発行を保留する。
  3. 被監査部門が実施した改善の状況を確認し、必要に応じて助言する。
  4. 被監査部門に代わって、監査人が改善作業を実施する。

正解: ウ フォローアップは、改善提案や改善計画について所要の措置が適切かつ適時に実施されているかを確認する活動です。ア は改善計画の作成が被監査部門の役割なので誤り、イ は報告とフォローアップの順序が逆で誤り、エ は監査人が実務を代行して独立性を失うので誤りです。

Q2. データの生成から入力・処理・出力・活用までの流れと、その過程のコントロールを、書面上または実際に追跡する監査技法はどれか。
  1. ウォークスルー法
  2. インタビュー法
  3. チェックリスト法
  4. 突合・照合法

正解: ア 1 件の取引を最初から最後まで通してたどるのがウォークスルー法です。イ は関係者に直接口頭で問い合わせる技法、ウ はあらかじめ用意した質問項目に沿って回答を得る技法、エ は 2 つ以上の記録を突き合わせて一致を確かめる技法です。

Q3. システム監査における監査手続の説明として適切なものはどれか。
  1. 監査の対象・目的・実施時期・実施体制などをあらかじめ定めたものである。
  2. 監査の結論と指摘事項を依頼者に伝えるために作成する文書である。
  3. システム監査人が守るべき行為規範を定めた基準である。
  4. 十分かつ適切な監査証拠を入手するために実施する手順である。

正解: エ 監査手続は証拠を入手するための手順です。ア は個別監査計画の説明、イ は監査報告書の説明、ウ はシステム監査基準の説明で、いずれも別の用語に置き換えた誤りです。

Q4. 監査調書の説明として適切なものはどれか。
  1. 監査の結論を被監査部門に通知する文書であり、通知後は保管しない。
  2. 調査・収集・検証した情報を、結論に至った過程が分かるように整理した記録である。
  3. 被監査部門が改善計画を記載し、監査人に提出する文書である。
  4. 監査報告書そのものであり、両者を区別する必要はない。

正解: イ 監査調書は結論を裏付ける基礎資料として作成・保管します。ア は保管しない点と通知文書とする点が誤り、ウ は作成主体が逆で誤り、エ は調書が報告書の基礎資料であって同一ではないので誤りです。

Q5. システム監査の予備調査で行う作業として適切なものはどれか。
  1. 事務手続やマニュアルを閲覧し、業務内容・職務分掌・実施体制を把握する。
  2. サンプルを抽出し、承認印が押されているかを 1 件ずつ確かめる。
  3. 入手した監査証拠を評価し、監査の結論を形成する。
  4. 改善提案の実施状況を被監査部門に確認する。

正解: ア 予備調査の目的は対象の実態を把握することです。イ は監査証拠を得る本調査の作業、ウ は本調査の後の評価・結論の形成、エ はフォローアップの作業で、いずれも段階が違います。

Q6. 受注伝票の入力漏れや二重入力がないことを確かめる監査手続として、最も適切なものはどれか。
  1. 受注データの合計金額を再計算し、システムの集計値と一致することを確かめる。
  2. 受注入力画面にアクセスできる利用者 ID が限定されていることを確かめる。
  3. プルーフリストと受注伝票が 1 件ずつ照合され、照合印が押されていることを確かめる。
  4. 受注データの登録が営業部長によって承認されていることを確かめる。

正解: ウ 漏れと重複の検出は網羅性の統制で、原始証憑と入力結果一覧の全件照合が代表的な手続です。ア は正確性、イ は機密性、エ は正当性を確かめる手続であり、監査要点が違います。

Q7. IT に係る業務処理統制に該当するものはどれか。
  1. 開発したプログラムを本番環境へ移行する手続の承認
  2. 情報システム部門の要員に対するアクセス権の付与・削除の管理
  3. システム運用を委託している外部業者との契約内容の定期的な見直し
  4. 受注入力画面における入力データの正当性チェック機能

正解: エ 業務処理統制は個々の業務プロセスに作り込まれた統制で、入力データのチェック機能はその代表例です。ア は開発・保守の管理、イ はアクセス管理、ウ は外部委託の契約管理で、いずれも IT 全般統制に分類されます。

Q8. 監査対象業務の関係者に直接口頭で問い合わせ、回答を入手する監査技法はどれか。
  1. ウォークスルー法
  2. インタビュー法
  3. 現地調査法
  4. ドキュメントレビュー法

正解: イ 「直接口頭で問い合わせる」がインタビュー法の定義です。ア はデータの流れを追跡する技法、ウ は現場に赴いて自ら観察する技法、エ は文書及び記録を収集して閲覧する技法です。

Q9. システム監査で発見された指摘事項への対応のうち、適切でないものはどれか。
  1. システム監査人が、被監査部門の改善計画を作成する。
  2. 被監査部門が改善計画を作成し、経営者の承認を得る。
  3. システム監査人が、改善計画の妥当性について助言する。
  4. システム監査人が、改善計画の実施状況をフォローアップする。

正解: ア 改善計画の作成は被監査部門の責任であり、監査人が代わって作成すると独立性を失います。イ・ウ・エ はいずれも正しい役割分担で、監査人は助言と確認までにとどまります。

Q10. 監査証拠の入手と評価に関する記述のうち、適切でないものはどれか。
  1. 監査の結論を裏付けるには、十分かつ適切な監査証拠を入手する必要がある。
  2. 監査証拠を円滑に入手できるように、情報システムが構築・整備されていることが望ましい。
  3. アジャイル開発では、体裁の整った管理用ドキュメントだけが監査証拠になる。
  4. 監査対応のためだけのドキュメント作成を開発現場に求めることは、避けることが望ましい。

正解: ウ 監査証拠は形式ではなく、結論を裏付けられるかで判断します。アジャイル開発ではタスクボードやレビューの記録、自動テストの結果なども証拠になります。ア は十分性と適切性の要件、イ は可監査性、エ は現場への過度な負荷を避ける配慮で、いずれも正しい記述です。

Q11. 業務システムをクラウドサービスへ移行する計画を監査する際、情報が消失することを予防する観点のチェックポイントとして最も適切なものはどれか。
  1. 現行システムと比べて運用コストが削減できること
  2. クラウド事業者の信頼性とサービス継続性が評価されていること
  3. 利用者が求める機能をすべて標準機能で実現できること
  4. 移行後の応答時間が現行システムと同等以上であること

正解: イ データが預け先ごと失われる事態を防ぐには、事業者そのものの信頼性とサービスが続くかどうかを見る必要があります。ア はコスト、ウ は機能適合性、エ は性能の観点であり、情報消失の予防とは直結しません。

Q12. システム開発を外部に委託した場合の、ユーザ受入テストの監査で確かめるべき事項として最も適切なものはどれか。
  1. 受託者がモジュール単位の単体テストを実施していること
  2. 受託者がテストデータを作成し、合否を判定していること
  3. 委託者がプログラムの内部構造に基づいてテストケースを設計していること
  4. 委託者が利用者の立場で、業務要件が反映されているかをテストしていること

正解: エ ユーザ受入テストは委託者(利用部門)が要件定義に基づいて実施し、業務要件が満たされているかを判断する工程です。ア は開発工程の内部テスト、イ は合否判定の主体が受託者になっている点が誤り、ウ は内部構造に着目するホワイトボックスの観点で、受入テストの目的と合いません。

Q13. システム監査基準における「独立性」の説明として適切なものはどれか。
  1. 監査対象のあるべき姿を示し、良否を判定するための判断尺度を提供することである。
  2. 監査で知り得た情報を、正当な理由なく他に漏らさないことである。
  3. 監査人が監査対象から、不当な影響や圧力を受けていない状態にあることである。
  4. 監査に必要な知識と技能を継続的に維持し、高めることである。

正解: ウ 独立性は外観上・精神上の 2 面があり、いずれも不当な影響を受けない状態を指します。ア はシステム管理基準の役割、イ は秘密の保持、エ は専門的能力の保持と向上であり、別の要件との取り違えです。

Q14. システム監査では監査対象を三つの視点で捉える。コントロール、マネジメントと並ぶ三つ目の視点はどれか。
  1. ガバナンス
  2. コンプライアンス
  3. アカウンタビリティ
  4. オペレーション

正解: ア 監査の対象は個々のコントロールとマネジメントにとどまらず、取締役会等が IT のあるべき姿を示すガバナンスにまで及びます。イ は法令遵守という監査の観点の 1 つ、ウ は説明責任で監査の目的側の概念、エ は日常業務の運用を指す語であり、三つの視点の名称ではありません。

まとめ

この章の要点を、出題頻度の高い順に 1 枚の表にまとめます。ここだけで科目 A の 3 問はほぼ拾えます。

論点覚える一文誤答肢の作られ方
フォローアップ改善計画の作成も実施も被監査部門。監査人は状況を確認し助言する監査人が計画を作る・実施する・命令する
ウォークスルー法データの生成から活用までとコントロールを、書面上または実際に追跡する他技法(インタビュー・閲覧・現地調査)の説明に差し替え
監査手続十分かつ適切な監査証拠を入手するための手順監査計画・監査報告書・監査技法の定義に差し替え
監査調書結論に至った過程が分かるよう整理した記録。作成・保管する被監査部門へ提出・報告書と同一・保管不要
予備調査/本調査予備調査は把握、本調査は検証2 つを入れ替える
入力の網羅性プルーフリストと伝票の照合印、自動連番の付与承認(正当性)やアクセス制御(機密性)にすり替え
IT 統制IT への対応は IT 全般統制と IT 業務処理統制から成るアクセス管理・変更管理を業務処理統制と言う
監査証拠十分性(量)と適切性(質)。アジャイルでも文書だけが証拠ではない「管理用ドキュメントだけが証拠」の否定形
2 つの基準システム監査基準=行為規範、システム管理基準=判断尺度2 つを入れ替える
三つの視点ガバナンス・マネジメント・コントロールコンプライアンス等を混ぜる
内部統制目的 4・要素 6。統制環境が土台、IT への対応が横串COSO の 5 要素・3 目的と混同させる
3 ライン第 3 線=内部監査。1 線・2 線から独立し経営者へ保証を提供する第 2 線の監視を独立的評価と呼ぶ

マネジメント系はここまでです。次の第 18 章からはストラテジ系に入り、システム戦略とシステム企画を扱います。本章の IT ガバナンスと経営陣の責任という視点が、そのまま情報戦略の出発点になります。