応用情報技術者試験 合格教科書|2026年度(令和8年度)対応
第 16 章|科目 A 例年 2〜3 問(直近 10 年 19 回で 53 問、1 回平均 2.8 問)/科目 B 選択問題(サービスマネジメント。19 回すべて問 10 で出題) 科目 B: サービスマネジメント

サービスマネジメント

SLA・インシデント/問題/変更管理・可用性・キャパシティ・BCP・ファシリティを、運用の 1 日の流れで理解する

この章で学ぶこと

科目 A では例年 2〜3 問。直近 10 年(19 回)で 53 問、1 回平均 2.8 問で、最多 3 問・最少 2 問と振れ幅が 1 問しかない安定した枠です。出題の定位置は問 55〜57 付近です。53 問のうち約 6 割が 7 つの小分類(運用オペレーション・問題管理・システム運用管理・ITIL・SLA・サービスレベル管理・サービス継続管理)に集まるので、そこを押さえれば 2 問確保、3 問全取りも狙えます。科目 B の「サービスマネジメント」は直近 19 回すべて問 10 で出題されており、選択する人には本章の語彙がそのまま前提知識になります(解き方は第 25 章)。

1. サービスマネジメントの全体像 ― SMS の PDCA と改善

サービスマネジメントの目的は、サービスを通じて顧客に価値を届けることです。IPA 応用情報技術者試験 シラバス Ver.7.2 は、サービスマネジメントを「価値を提供するため、サービスの計画立案、設計、移行、提供及び改善のための組織の活動及び資源を、指揮し、管理する、一連の能力及びプロセス」と定義しています。ここに並ぶ計画立案・設計・移行・提供・改善の 5 語がサービスライフサイクルの段階で、本章の節の並びもおおむねこの順序です。

登場人物を先に固定しておきます。サービスを提供する側がサービス提供者、対価を払って受け取る側が顧客、実際に画面を触る人が利用者、提供者へ部品や役務を納める側が供給者です。顧客と利用者が別組織になること(情報システム部門が顧客、現場社員が利用者)は普通にあり、科目 B ではこの区別が設問の前提になります。サービスを構成する部品(ハードウェア・ソフトウェア・要員・文書など)はサービスコンポーネント、要求事項に対する充足度がサービス品質です。

JIS Q 20000 と SMS の PDCA

SMS(サービスマネジメントシステム、Service Management System)は、サービスマネジメントを回すための仕組み一式(方針・目的・計画・プロセス・資源・文書化した情報)を指します。その要求事項を規定した規格が JIS Q 20000-1 で、ISO/IEC 20000 シリーズに対応する規格群です。-1 が要求事項(認証の基準)、-2 が適用の手引という役割分担です。認証を受けるのは組織であって、製品や個人ではありません。

SMS は PDCA(Plan-Do-Check-Act)で回します。科目 A はこの 4 段階のうちどの段階の説明かを選ばせます。特に Do は「サービスの設計、移行、提供及び改善のために SMS を導入し、運用する」で、直近 10 年では 2 回、正解肢の文言までほぼ同一で出題されています(いずれも設問が JIS Q 20000-1:2012 と版を明示しています。現行の JIS Q 20000-1:2020 はマネジメントシステム規格共通の上位構造を採用し、PDCA の図と記述そのものを削除しているので、実務では箇条 4〜10 で読み替えます)。図 16-1 で、この章の各節が PDCA のどこに載るのかを確認してください。

継続的改善のループ Plan 計画 SMS 計画・資源 サービスの計画 SLA の合意 Do 運用 設計・移行・提供 インシデント/問題 変更・リリース Check 評価 監視・測定・分析 サービスの報告 内部監査 Act 改善 不適合と是正処置 継続的改善 CSF・KPI・KGI
図 16-1 SMS の PDCA。Plan で「何を約束するか」を決め、Do で回し、Check で約束との差を測り、Act で差の原因を取り除いて Plan に戻します。本章 2〜3 節が Plan、4〜8 節が Do、9 節を含む監視と報告が Check にあたります。
段階JIS Q 20000-1 での要旨この章の該当節
PlanSMS を確立し、SMS 計画・サービスの要求事項・サービスレベル目標を定める2 節(SLA)・6 節(需要と容量の計画)
Doサービスの設計、移行、提供及び改善のために SMS を導入し、運用する4・5・7・8 節(各プロセスの運用)
Check方針・目的・計画・要求事項に照らして SMS とサービスを監視・測定・分析・評価し、報告する3 節(可用性の監視)・内部監査
ActSMS とサービスのパフォーマンスを継続的に改善するための処置をとる本節の「改善」
覚え方 4 段階の動詞を 1 語で握ります。Plan =「決める」、Do =「導入し運用する」、Check =「測る」、Act =「直す」。選択肢に「導入」「運用」が出てきたら Do、「監視」「測定」「レビュー」なら Check、「是正」「改善」なら Act です。

パフォーマンス評価 ― Check で何をするか

Check は 2 つの活動に分かれます。監視・測定・分析及び評価は、サービスマネジメントの目的に照らして SMS のパフォーマンスと有効性を評価し、サービスの要求事項に照らしてサービスの有効性を評価する活動です。サービスの報告は、報告の要求事項と目的を決め、SMS とサービスのパフォーマンス・有効性に関する報告を作る活動で、単発の数値ではなく傾向情報を含めることが求められます。これらに加えて内部監査とマネジメントレビュー(トップマネジメントによる見直し)が Check に置かれます。監査の詳細は第 17 章の担当です。

改善 ― 直近 3 年の最重要ポイント

JIS Q 20000-1 の「改善」の章は、直近 3 年で 3 回連続して出題されています(継続的改善の定義・改善処置の考え方・改善の機会に適用する評価基準)。狙われるのは似た 4 語の弁別です。表のとおり、境目は「症状だけを消したか/原因を取り除いたか/まだ起きていないことに備えたか」です。

用語いつ・何をする再発防止の効果
修正不適合が起きた結果に対処する(起きた事象そのものを直す)なし(原因は残る)
是正処置起きた不適合の原因を除去し、再発しないようにするあり(同じ原因による再発を防ぐ)
予防処置まだ起きていない潜在的な不適合の原因を除去する(この用語は旧 JIS Q 20000-1:2012 のもの。現行の 2020 年版では用語・要求事項とも削除され、箇条 4.1 と 6.1.1 の「リスク及び機会への取組み」に統合されましたが、シラバス Ver.7.2 は用語例として残しています)発生そのものを防ぐ
継続的改善適切性・妥当性・有効性を高めるために繰り返し行う活動不適合の有無に関係なく回す

継続的改善では、改善の機会に適用する評価基準を決めます。この基準には SMS の目的との整合性を含めることが求められており、R6 秋にこの点が問われました。改善案を「工数が小さいから」だけで選ぶのではなく、SMS の目的に沿うかどうかで優先順位を付けるという趣旨です。改善を測る道具として、CSF(Critical Success Factors、重要成功要因)=目的を達成するために欠かせない条件、KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)=CSF の達成度を測る先行指標(結果を示すアウトプット KPI は遅行指標に当たり、KPI すべてが先行指標とは限りません)、KGI(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)=最終的な目標値そのもの、という 3 段の関係を押さえます。プロセスの成熟度を段階で測るのがプロセス能力水準(プロセス成熟度水準)とプロセスアセスメント、あるべき姿と現状の差を洗い出すのがギャップ分析です。

ITIL ― フレームワークとしての語彙

ITIL(Information Technology Infrastructure Library)は、サービスマネジメントの実践知をまとめた事実上の標準です。規格である JIS Q 20000-1 が「何を満たすべきか」を書くのに対し、ITIL は「どう進めるか」を書きます。科目 A では ITIL 2011 edition の用語定義が直近 10 年で 4 回出題されました(最後は R3 春で、それ以降は 0 回)。頻出は次の包含関係です。

用語含む範囲ひっかけの作り方
サービスポートフォリオ検討中・開発中+稼働中+廃止済みのサービス全体稼働中だけの記述にすり替える
サービスパイプライン検討中・開発中で、まだ顧客に提供していないサービスカタログと入れ替える
サービスカタログ稼働中のサービスと、その成果・依存関係を記した文書ポートフォリオの説明を当てる
サービスパッケージコアサービス+実現サービス+強化サービスの組合せサービスレベルパッケージ(SLP)と混同させる

ITIL 2011 のライフサイクルはサービスストラテジ → サービスデザイン → サービストランジション → サービスオペレーションの 4 段階を、継続的サービス改善(CSI)が取り巻く 5 段階構成です。CSI の 7 ステップの改善(ITIL 4 では「継続的改善モデル」に置き換わっています)は「① 改善戦略の識別 → ② 測定対象の定義 → ③ データの収集 → ④ データの処理 → ⑤ 情報とデータの分析 → ⑥ 情報の提示と利用 → ⑦ 改善の実施」で、R1 秋は④〜⑥の順序(処理 → 分析 → 提示)が空欄補充で問われました。「集めた生データをまず使える形に整え、分析してから見せる」という順序で覚えます。

最新版の ITIL 4 では、ライフサイクル 5 段階に代えてサービスバリューシステム(SVS)という全体像を置き、その中核に 6 つの活動(計画・改善・エンゲージ・設計及び移行・取得/構築・提供及びサポート)からなるサービスバリューチェーン(SVC)を据えます。従来「プロセス」と呼んでいた個々の管理活動はプラクティスという名前になりました。応用情報の出題は JIS Q 20000-1 のプロセス名(インシデント管理・問題管理など)で書かれるので、ITIL 4 は用語の存在を知っておく程度で足ります。

出題実績 この中分類の「サービスマネジメントの目的と考え方」「サービスの計画」「サービスカタログ管理」「資産管理」「事業関係管理」「需要管理」「情報セキュリティ管理」「パフォーマンス評価」は、直近 10 年(19 回・53 問)で正解テーマとしていずれも 0 回です。用語の意味が言えれば十分で、深追いは不要です。厚く学ぶのは次節以降の SLA・可用性・問題管理・バックアップです。

2. SLA とサービスレベル管理 ― 誰と何を合意するか

SLA(Service Level Agreement、サービスレベル合意書)は、サービスとその合意されたパフォーマンスを特定した、組織と顧客との間の合意文書です。「顧客との合意文書」という一点が定義の核で、社内の運用部門と結ぶ取決めや外部委託先との契約は SLA とは呼びません。相手が誰かで名前が変わるところを図 16-2 で押さえます。

顧客・利用者 (事業部門) サービス提供者 内部供給者 (運用部門) 外部供給者 (クラウド等) SLA サービスレベル管理 OLA 供給者管理 契約(UC) 事業関係管理 (顧客満足・苦情)
図 16-2 合意関係の 3 本立て。顧客との約束が SLA、社内の運用部門との取決めが OLA、外部供給者との約束が契約です。科目 B ではこの三角形を問題文の構成図から自分で描き起こすと設問の主体を外しません。

社内の運用部門やデータセンタ部門は内部供給者で、ここと結ぶ取決めが OLA(Operational Level Agreement、運用レベル合意書)です。外部委託先やクラウド事業者は外部供給者で、こちらは契約を結びます。ITIL ではこの契約を SLA を下支えするものという意味で UC(Underpinning Contract、基盤となる契約)と呼びます。SLA で「4 時間以内に復旧」と顧客に約束するなら、内部供給者の OLA と外部供給者の契約はそれより短い目標になっていなければ約束が守れません。この整合を取るのが供給者管理の仕事です。

SLA に載せるサービスレベル項目

SLA に何を書くかは決まっています。過去問はここから「適切なレベル項目の組合せ」を選ばせ、科目 B は「この SLA に足りない項目は何か」を書かせます。

レベル項目目標値の書き方の例試験で狙われる点
サービス時間(提供時間)平日 8:00〜20:00、月曜〜土曜稼働率の分母になる。暦時間ではない
サービス可用性(稼働率)月間 99.5% 以上計画停止を停止時間に含めるかを明記する
信頼性MTBF 720 時間以上、月間の重大障害 1 件以内可用性ではなく「壊れにくさ」の指標
応答時間検索画面の応答 3 秒以内(全要求の 95%)平均値だけの目標は実態を隠す
復旧時間(サービス回復時間)重大障害の発生から 4 時間以内に回復計測の起点と終点(検知か通報か、復旧か利用者確認か)
解決目標時間優先度「高」のインシデントは 2 時間以内に解決優先度の区分ごとに定める
サービスデスクの応対受付 9:00〜18:00、一次解決率 70% 以上受付時間はサービス時間と別に定めることがある

関連する 3 つの略語を整理します。SLI(Service Level Indicator、サービスレベル指標)は「何を測るか」、SLO(Service Level Objective、サービスレベル目標)は「その指標をいくつにするか」、SLAは「その目標を顧客と合意し、未達のときどうするかまで文書化したもの」です。たとえば SLI が「月間の正常応答率」、SLO が「99.9% 以上」、SLA が「99.9% を下回った月は利用料の 10% を減額する」という関係になります。

覚え方 末尾の 1 文字で区別します。Indicator は測る物差し、Objective は狙う値、Agreement は握った約束。物差し → 目標 → 合意の順に外側へ広がります。

ペナルティ(減額)の計算

SLA には未達時の措置を書きます。多いのは利用料の減額(サービスクレジット)で、未達の幅に応じた区分表が付きます。計算自体は単純ですが、どの区分に入るかの判定で落とします。

計算の型: SLA 未達時の減額額

減額額 = 月額サービス料金 × 減額率(減額率は「目標値 − 実績値」の未達幅で決まる区分表から引く)

例題 月額料金 300 万円。稼働率の目標は 99.5%、実績は 98.8% だった。減額率は「未達幅 0.5 ポイント未満 = 5%、0.5 ポイント以上 1.0 ポイント未満 = 10%、1.0 ポイント以上 = 20%」と定められている。減額額はいくらか。

  1. 未達幅をポイント(差)で出す: 99.5 − 98.8 = 0.7 ポイント
  2. 区分表を引く: 0.5 以上 1.0 未満なので減額率は 10%
  3. 料金に掛ける: 300 万円 × 0.10 = 30 万円

未達幅は「98.8 ÷ 99.5」のような比率ではなく差で取ります。0.7% と 0.7 ポイントを混同させる誤答肢が定番です。

サービスレベル管理と隣接プロセスの弁別

サービスレベル管理は直近 10 年で 4 回出題され、正解肢は 2 パターンしかありません。ひとつは「顧客と提供するサービスについて SLA を合意する」、もうひとつは「あらかじめ決められた間隔で、サービスレベル目標に照らしたパフォーマンスと実績の周期的な変化を監視・レビュー・報告する」です。「あらかじめ定めた間隔で」という言い方が出たらこのプロセスだと判断できます。誤答肢は隣のプロセスの活動をそのまま置いてきます。

プロセス相手中心の活動(正解肢になる文言)
サービスレベル管理顧客SLA を合意し、定めた間隔で目標に照らして監視・レビュー・報告する
事業関係管理顧客・利害関係者顧客関係を管理し、顧客満足度を測定し、苦情を管理する
供給者管理外部・内部供給者外部供給者との契約とパフォーマンスを監視し、内部供給者とは OLA を合意する
サービスカタログ管理顧客・利用者稼働中サービスの成果と依存関係を記したカタログを作成・維持する

クラウド利用と責任分界

供給者管理の用語例には SaaS・PaaS・IaaS が入っています。ここは「クラウドへ移行するとどの運用作業が不要になるか」という読解型で直近 10 年に 2 回、しかも正解肢まで同一で出題されました。図 16-3 の境界線の位置を覚えるだけで確実に取れます。

管理する階層 オンプレミス IaaS PaaS SaaS 自社が すべて管理 利用者が 管理する 事業者が管理 利用者が管理 事業者が 管理する 利用者が設定 事業者が すべて管理 データ・設定 アプリケーション ミドルウェア OS 仮想化・ハード 施設・電源
図 16-3 責任分界。IaaS へ移すと施設・電源とハードウェアの保守が不要になり、PaaS まで移すと OS とミドルウェアのパッチ適用も不要になります。データ・アカウント・権限の管理と顧客への説明責任は、どの形態でも自社に残ります。
ここがひっかけ 「PaaS ならアプリケーションの改修も事業者がやってくれる」は誤りです。アプリケーションが事業者側に移るのは SaaS だけです。IaaS で OS 管理が不要になるという肢も誤りで、IaaS の OS は利用者が管理します(パッチ適用も利用者側)。境界は「IaaS = ハードと設備まで」「PaaS = OS とミドルウェアまで」「SaaS = アプリまで」の 3 段で覚えます。

3. サービス可用性管理と稼働率の計算

サービス可用性管理は、可用性のリスクをアセスメントし、要求事項と目標を決め、可用性を監視して結果を記録し目標と比較し、計画外のサービス可用性の喪失を調査して処置をとるプロセスです。「計画外の」という限定が入っているのがポイントで、計画停止は調査対象ではありません。可用性の計算は直近 10 年で 4 回出題され、この中分類の計算問題の柱です。

まず用語を層別します。信頼性は「壊れにくさ」、保守性は「直しやすさ」、可用性は「使える割合」で、この 3 つが別の指標で測られることが問われます(直近 10 年で 2 回)。冗長構成の組み方や直列・並列の稼働率計算は第 5 章の担当なので、本章はサービスから見た指標と SLA との結び付きに絞ります。単一障害点(SPOF:Single Point Of Failure)を洗い出して冗長化するのが可用性設計の基本で、これも第 5 章を参照してください。

指標正式名と意味測っている特性
MTBFMean Time Between Failures。平均故障間隔。故障が直ってから次に故障するまでの稼働時間の平均信頼性
MTRSMean Time to Restore Service。平均サービス回復時間。中断からサービスが使える状態に戻るまでの平均保守性
MTTRMean Time To Repair。平均修理時間。故障箇所を直すのにかかる時間の平均保守性
MTBSIMean Time Between Service Incidents。平均サービスインシデント間隔。発生から次の発生までで、MTBF + MTRS にあたる信頼性
稼働率MTBF ÷(MTBF + MTRS)。または(サービス時間 − 停止時間)÷ サービス時間可用性

可用性管理の KPI として問われるのは「サービスの中断回数及びインパクトの削減率」です。「稼働率」そのものではなく、中断を減らせているかという改善の度合いを測るところが選択のポイントになります。

稼働率の計算 ― 分母は合意サービス時間

計算で落ちる原因はほぼ 2 つです。分母を暦時間にしてしまうことと、計画停止(メンテナンス)を停止時間に足してしまうことです。図 16-4 で帯の関係を見てください。

対象外 暦時間(1 日 24 時間) 対象外 合意サービス時間 = 12 時間(8:00〜20:00) 計画停止 1 時間 障害停止 1 時間 稼働率 = (12 − 1) ÷ 12 = 91.7%
図 16-4 分母は暦時間 24 時間ではなく合意サービス時間 12 時間です。計画停止 1 時間は「合意のうえで止めている」ので停止時間に数えず、明滅している障害停止 1 時間だけを引きます。ただし SLA に「計画停止も停止時間に含める」と書かれていればその定義に従うので、問題文の断り書きを必ず確認します。

計算の型: 稼働率とその逆算(3 つの型を一組で覚える)

可用性(稼働率)=(合意サービス時間 − 停止時間)÷ 合意サービス時間

型 A(実績から求める) 合意サービス時間が 1 か月 600 時間で、障害による停止が合計 3 時間だった。稼働率は何 % か。

  1. 分子を出す: 600 − 3 = 597 時間
  2. 分母で割る: 597 ÷ 600 = 0.995
  3. 百分率にする: 99.5%

型 B(許容停止時間を逆算する) 同じ 600 時間で、目標稼働率を 99% とする。許容される停止時間は何時間か。

  1. 許容停止時間 = 合意サービス時間 ×(1 − 目標稼働率)
  2. 600 ×(1 − 0.99)= 600 × 0.01
  3. 6 時間

型 C(必要な短縮幅を逆算する) 同じ条件で実績の停止時間が 6.6 時間だった。目標を達成するには停止時間を何時間短縮する必要があったか。

  1. 型 B で許容停止時間を出す: 6 時間
  2. 実績との差を取る: 6.6 − 6 = 0.6 時間

直近の出題は型 B・型 C に寄っています。「稼働率を求めよ」ではなく「何時間まで止められるか」「何時間短縮すればよかったか」と聞かれても、使う式は 1 本だけです。

ここがひっかけ 複数か月の停止状況表から通算の稼働率を求めさせる型では、月ごとに稼働率を出して平均してはいけません。3 か月分の合意サービス時間を合計し、3 か月分の停止時間を合計してから 1 回だけ割ります。各月のサービス時間が違うと平均値と通算値がずれ、その差が誤答肢になります。

4. インシデント管理・サービス要求管理・問題管理

問題管理はこの中分類の最頻出テーマで、直近 10 年に 5 回出題されています(うち 4 回が R3 以降)。しかも正解肢は「根本原因を特定する」「再発を防止する恒久的な解決策を決める」「インシデントのデータ及び傾向を分析する」の 3 通りしかありません。誤答肢はインシデント管理(迅速な復旧・回避策)や変更管理・構成管理の活動を混ぜてきます。つまりプロセスの役割分担が言えれば取れる 1 問です。

インシデントとは、サービスに対する計画外の中断、サービスの品質の低下、または顧客・利用者へのサービスに影響していない事象です。「影響していない事象」も含む点が定義の特徴で、冗長構成の片系が落ちてサービスは継続している状態もインシデントに当たります。インシデント管理の対応手順は次の 5 段階です。

  1. 記録し、分類する(あとで傾向分析に使うため、対応しながら必ず残す)
  2. 影響及び緊急度を考慮して優先順位付けをする
  3. 必要であればエスカレーションする
  4. 解決する(根本原因が分からなくても、回避策で使える状態に戻せば解決)
  5. 終了する(利用者に回復を確認してから閉じる)

優先度は影響度(何人・どの業務が止まるか)と緊急度(どれだけ早く直す必要があるか)の組合せで決めます。この 2 語のどちらかだけで決めると、「影響は小さいが締切直前で緊急」という案件を取りこぼします。よく起きるインシデントの対応手順を型として登録したものがインシデントモデルです。重大なインシデントについては、それを特定する基準をあらかじめ決め、文書化された手順に従って分類・管理し、トップマネジメントに通知することが求められます。

サービス要求管理は、障害ではない定型的な依頼(アカウントの発行、パスワードの再発行、機器の貸出しなど)を扱います。手順はインシデントと似て「記録・分類 → 優先順位付け → 実現 → 終了」ですが、解決ではなく実現という言葉を使うところが違います。実現に関わる要員が使える指示書を用意しておくのがこのプロセスの要求事項です。

インシデント管理と問題管理の役割分担

2 つのプロセスは目的が違うので同時に走ります。インシデント管理は「早く戻す」、問題管理は「二度と起こさない」。この分担を図 16-5 で確認してください。

問合せ・検知 サービスデスク インシデント管理 記録・分類・優先度 回避策で復旧 解決目標時間内に 終了・記録 利用者へ確認 傾向を分析 問題管理 根本原因の特定 既知の誤り 回避策を記録 恒久対策 変更管理へ RFC 回避策を提供
図 16-5 上段がインシデント管理の流れ、下段が問題管理です。上段は根本原因が分からなくても回避策で復旧すれば終了できます。下段は記録されたインシデントの傾向から問題を特定し、既知の誤りとして回避策を残し、恒久対策は変更管理へ RFC として渡します。上段へ戻る矢印が「問題管理の成果がインシデント対応を速くする」経路です。
用語定義ゴール
インシデントサービスの計画外の中断・品質低下、または影響していない事象合意した時間内にサービスを回復する
サービス要求障害ではない定型的な依頼(アカウント発行・貸出しなど)指示書に従って実現する
問題1 つ以上のインシデントの原因、または潜在的な原因根本原因を特定し再発を防止する
既知の誤り根本原因は特定できたが、まだ恒久的に解決していない問題の記録影響を低減する処置を決めて記録する
回避策根本原因を除去せずに影響を低減・除去する手段(再起動・縮退運用など)今日の業務を止めない
恒久的な解決策根本原因を除去する変更。変更管理の方針に従って実施する同じ原因の再発をなくす
覚え方 選択肢を読むとき、動詞だけを見ます。「回復」「迅速」「回避」が出たらインシデント管理。「根本原因」「再発防止」「傾向分析」が出たら問題管理。「承認」なら変更管理、「記録・追跡・検証」なら構成管理です。

エスカレーションの 2 方向

エスカレーションには 2 種類あり、科目 B ではどちらを行うべきかを書かせます。機能的エスカレーションはより高い技術力や権限をもつ別の担当・部署へ横に渡すこと、階層的エスカレーションは上位の管理者へ縦に上げることです。判断基準は、技術的に手が足りないなら機能的、解決目標時間を超えそう・重大なインシデントである・顧客への通知や資源投入の判断が要るなら階層的です。

管理責任者・上位者 利用者 (問合せ元) サービスデスク (一次サポート) 二次・三次サポート (開発課・保守業者) 問合せ 機能的 階層的 解決目標時間を超過 SPOC(単一の窓口) 解決に専門知識が必要
図 16-6 横が機能的、縦が階層的です。どちらのエスカレーションでもインシデントの所有権はサービスデスクに残り、利用者への窓口は一本のままです。「専門部署へ渡したので以後はそちらへ連絡してください」と案内するのは SPOC(単一の窓口)に反します。

5. 変更管理とリリース及び展開管理

変更管理は、直近 10 年の科目 A で正解テーマとして1 度も出ていません。しかし科目 B のサービスマネジメント問では直近 10 年に 6 回題材になっており(RFC の優先度、CAB の構成員、切り戻し計画、PIR の理由など)、放置できないプロセスです。科目 A 対策としては流れを 1 度たどれば十分、科目 B を選ぶなら各段階で何を決めるかまで押さえます。

変更管理方針では、変更管理が扱うサービスコンポーネントと他の品目、緊急の変更を含む変更のカテゴリと管理の方法、そして顧客又はサービスに重大な影響を及ぼす可能性のある変更を判断する基準を定義します。次に変更管理の開始で、サービスの追加・廃止・変更の提案を含む変更要求(RFC:Request For Change)を記録・分類し、この変更を「サービスの設計及び移行」で管理するか「変更管理の活動」で管理するかを決めます。大がかりな新規サービスは前者、既存サービスの手直しは後者という振り分けです。

RFC の記録・分類 変更要求を受け付ける 優先度と影響の評価 リスク・事業利益・費用 CAB で承認判断 変更諮問委員会 却下 承認 構築・試験 切り戻し計画も作る リリース及び展開 稼働環境へ配付 PIR 変更実施後レビュー 改善の機会として記録
図 16-7 変更管理の流れ。承認の前に切り戻し(ロールバック)の計画を作り、可能なら試験しておくのが規格の要求事項です。展開後の PIR で「狙った効果が出たか・副作用がなかったか」を確認し、結果を改善の機会として記録します。却下された RFC も記録は残します。

変更管理の活動は、① 変更要求の優先度を決定する、② リスク・事業利益・実現可能性・財務影響を考慮して変更要求を承認する、③ 承認された変更を計画・開発(構築)・試験する、④ 成功しなかった変更を戻す又は修正する活動を計画し、可能であれば試験する、⑤ 試験された変更をリリース及び展開管理に送り稼働環境に展開する、の 5 つです。④ を落とすと「展開計画に何が欠けているか」という科目 B の定番設問を取れません。承認を審議する会議体が CAB(Change Advisory Board、変更諮問委員会)で、IT 部門だけでなく影響を受ける業務部門の代表を入れるのが原則です。展開後の振り返りが PIR(Post Implementation Review、変更実施後レビュー)です。

変更のカテゴリ内容承認の扱い
標準変更手順とリスクが確立した反復的な変更(アカウント発行、既知の設定変更)あらかじめ承認済み。都度の CAB 審議は不要
通常の変更上記以外の一般的な変更優先度に応じて CAB が審議・承認
プロジェクト変更規模が大きく、サービスの設計及び移行として扱う変更プロジェクトの意思決定機構で承認
緊急変更重大なインシデントの解決など、通常の手順を待てない変更簡略化した緊急手順で承認し、事後に記録とレビューを行う
ここがひっかけ 緊急変更は「承認なしでよい」ではなく「簡略化した承認手順を事前に定めておく」です。標準変更も「変更管理の対象外」ではなく「事前に一括で承認されている」だけで、記録は必要です。科目 B では、頻発するサービス要求を標準変更に移して CAB の負荷を下げる、という改善案が定番です。

サービスの設計及び移行/リリース及び展開管理

新規サービスや大きなサービス変更は、計画 → 設計 → 構築及び移行の順に進みます。設計ではサービス受入れ基準と非機能要件を明確にし、サービス設計書にまとめ、あわせて SLA・サービスカタログ・契約書の新設や更新を行います。構築及び移行では、設計に適合する構築を行い、受入れ基準を満たすことを検証するために試験します。移行に固有の用語は次のとおりです。

用語意味
移行計画・移行判断いつ・何を・どの順序で移すかの計画と、移行を実行してよいかの判断
移行リハーサル本番と同等の環境・手順で移行作業を通しで試すこと。所要時間と切り戻し時間の実測が目的
移行の通知・移行評価利用者や関係者への事前告知と、移行後の結果評価
運用テスト・受入れテスト運用手順が回るかの検証と、顧客が受入れ基準の充足を確認する試験
運用引継ぎ・運用サービス基準開発側から運用側へ手順・既知の問題・連絡体制を渡すこと。引継ぎの完了条件をあらかじめ定める
継続的インテグレーション変更をこまめに統合してビルドと試験を自動で回すこと(第 14 章)
継続的デリバリー/継続的デプロイいつでも本番へ出せる状態を保つこと/承認を挟まず自動で本番へ出すこと

リリース及び展開管理は、新規サービス・サービス変更・サービスコンポーネントを稼働環境へ展開することを計画し実施します。あわせてリリースの成功又は失敗を監視し、分析結果をレビューして改善の機会を特定し、成功・失敗の情報と将来のリリース期日を他のサービスマネジメント活動が使えるようにします。リリースの受入れ基準、受入れ試験環境と稼働環境の分離、緊急リリースを含むリリースの種類の定義が要求事項です。

構成管理と資産管理 ― 変更管理の土台

構成管理は直近 10 年で 2 回出題されています。活動は「構成品目(CI:Configuration Item)を識別・記録・制御・追跡・検証し、サービスに関連する構成情報を管理する」ことで、記録先がCMDB(Configuration Management Database、構成管理データベース)です。定められた間隔で構成情報の正確性を検証する(構成監査)ことと、構成情報を他のサービスマネジメント活動が利用可能にすることが規格の要求事項です。CI を正確に把握できていれば、変更管理は影響範囲を、インシデント管理は影響を受ける利用者を、問題管理は同じ構成の他機器への波及を即座に判断できます。これが「構成管理は他のプロセスを支援する」という正解肢の意味です。

ある時点の構成を確定させて基準とするのが構成ベースライン、CI にどの識別子を付けるかを決めるのが構成識別、CI の改訂番号が版(バージョン)です。よく似た資産管理(ITAM:IT Asset Management)は、資産の取得から廃棄までを費用・契約・ライセンスの観点で管理するプロセスで、ソフトウェアに限った活動が SAM(Software Asset Management)とライセンスマネジメントです(関連規格は JIS X 0164 シリーズ。ただし同シリーズはソフトウェアに限らず IT 資産管理全般を対象とする規格です)。構成管理は「サービスを成り立たせている関係」を、資産管理は「持ち物としての価値と契約」を管理すると区別します。

6. 容量・能力管理/需要管理/予算業務及び会計業務

科目 A ではこの 3 プロセスの出題は合計 2 問(容量・能力管理 1 問、逓減課金方式 1 問)にとどまります。一方で科目 B のサービスマネジメント問はキャパシティと需要予測を題材に直近 10 年で 4 回、予算・会計を 3 回扱っています。用語の定義と計算の型を押さえるところまでで十分です。

需要管理は、あらかじめ定めた間隔で現在の需要を決定し、将来の需要を予測し、需要と消費を監視して報告するプロセスです。予測の材料は IT 部門の中にはありません。営業の販売計画、キャンペーンの実施予定、人事の採用計画、繁忙期のカレンダーといった事業部門の情報を定期的にもらう仕組みを作ることが、科目 B での定番の解答になります。

容量・能力管理(キャパシティ管理)は、資源の容量・能力の要求事項を決定し、需要に基づいて現在と予測の容量・能力を計画し提供するプロセスです。あわせて利用状況を監視し、容量・能力とパフォーマンスのデータを分析してパフォーマンス改善の機会を特定します。監視する管理指標は CPU 使用率・メモリ使用率・ディスク使用率・ネットワーク使用率が代表で、それぞれにしきい(閾)値を設定します。しきい値は「超えたら即障害」ではなく「増設の検討を始める合図」として、余裕をもった水準に置くのが実務です。

監視で上がるメッセージは、放置してよい情報、しきい値超過などの警告、即対応が必要な例外(エラー)に分類し、分類ごとに通知先と対応手順を決めます。この分類を怠ると、本当のエラーが大量の情報メッセージに埋もれます。運用の自動化を機械学習で支援する考え方が AIOps です。

計算の型 1: しきい値に到達するまでの期間

到達までの期間 =(しきい値の使用量 − 現在の使用量)÷ 1 期間当たりの増加量 (端数は切り上げず、超える月を答える)

例題 ディスクの総容量は 4 TB、現在の使用量は 2.2 TB で、毎月 120 GB のペースで増えている。使用率のしきい値を 80% とすると、何か月後にしきい値を超えるか(1 TB = 1,000 GB とする)。

  1. しきい値の使用量を出す: 4 TB × 0.8 = 3.2 TB
  2. 余裕を出す: 3.2 − 2.2 = 1.0 TB = 1,000 GB
  3. 増加量で割る: 1,000 ÷ 120 = 8.33…
  4. 8 か月後は 2.2 + 0.96 = 3.16 TB でまだ超えず、9 か月後に 3.28 TB で超える

計算の型 2: 増加率と集中度を重ねた必要台数

必要台数 = ピーク需要 ×(1 + 増加率)×(1 + 集中率)÷ 1 台の処理能力 (端数は切り上げ)

例題 現在のピークは毎秒 400 トランザクション。1 年後に 20% 増え、さらにキャンペーン時は 2 割が短時間に集中すると見込む。1 台で毎秒 150 トランザクションを処理できるサーバは何台必要か。

  1. 増加を反映: 400 × 1.20 = 480
  2. 集中を掛け算で重ねる: 480 × 1.20 = 576
  3. 能力で割る: 576 ÷ 150 = 3.84
  4. 切り上げて 4 台

増加率と集中率を「20% + 20% = 40% 増」と足し算にすると 560 になり、答えが変わります。率の重ね合わせは必ず掛け算です。

サービスの予算業務及び会計業務

費用はサービスごとに予算化し、あらかじめ定めた間隔で予算に照らして実際の費用を監視・報告し、財務予測をレビューします。費用の性質による区分と、それを利用者にどう見せるかが問われます。

用語意味例
直接費特定のサービスに直接ひも付けられる費用そのサービス専用サーバのリース料、専任要員の人件費
間接費複数のサービスで共用し、直接ひも付けられない費用データセンタの電気代、共用ネットワーク、管理部門の人件費
配賦間接費を一定の基準で各サービスへ割り振ること利用者数・CPU 時間・アクセスログの件数・床面積で按分する
課金費用を利用部門へ請求すること。費用意識を持たせて需要を適正化する狙いもある一律課金・従量課金・逓減課金方式
逓減課金方式利用量が増えるほど単価が下がる方式。大量利用を促し、規模の経済を利用部門に還元するグラフは右上がりだが傾きが徐々に緩くなる
減価償却取得した資産の費用を耐用年数にわたって配分することサーバの取得費を 5 年に分けて計上する
TCOTotal Cost of Ownership、総所有費用。取得費だけでなく運用・保守・教育・廃棄までの総額クラウドとオンプレの比較は TCO で行う
ここがひっかけ 「あるサービスの利用実績をログから測れるようになったので、その分の電気代を直接費に区分し直した」という判断は正しいです。直接費と間接費の境目は費用の種類ではなく、特定のサービスにひも付けられるかどうかだからです。「電気代は必ず間接費」と決め付ける肢は誤りです。

7. サービス継続管理 ― BCP と RTO・RPO・RLO

サービス継続管理は、サービス継続のリスクをアセスメントし、要求事項を決定してサービス継続計画を作成・実施・維持するプロセスです。計画は作って終わりではなく、あらかじめ定めた間隔、又はサービス環境に重大な変更があった場合に試験することが規格の要求事項です。この「重大な変更があったら試験し直す」が抜けた選択肢はよく作られます。

上位の枠組みがBCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)で、事業全体をどう継続・復旧させるかを定めます。BCP を作って運用し見直す活動全体が BCM(Business Continuity Management)、BCP のうち IT サービスの部分を担うのがサービス継続計画(IT サービス継続計画)、災害からの復旧に絞った計画と体制が DR(Disaster Recovery、災害復旧)です。優先順位を決める分析が BIA(Business Impact Analysis、事業影響度分析)で、業務が止まったときの影響(売上・法令違反・信用失墜)を時間の経過に沿って評価し、どの業務を何時間以内にどのレベルまで戻すかを導きます。BIA の出力が、次に述べる 3 つの目標値です。

データ損失の許容 復旧に許される時間 復旧する範囲 RPO RTO RLO 時間 最終バックアップ 障害発生 復旧完了 取得間隔 ≦ RPO 検知→切替え→確認 RLO まで復旧
図 16-8 障害発生点を境に、左が RPO(どこまで戻るか=失ってよいデータの幅)、右が RTO(いつまでに戻すか)です。RLO は時点ではなく復旧する業務の範囲とレベルで、「まず受注入力だけを平常の 6 割の処理能力で復旧する」のような形で定めます。RPO は正式には「復旧すべき時点」、RTO は「業務を許容水準まで戻すまでの時間」を指す定義で、ここでの「幅」「完了」という言い換えは試験の計算のための簡略表現です。

計算の型: RPO からバックアップ取得間隔を決める

バックアップの取得間隔 ≦ RPO (RTO は取得間隔と無関係)

例題 あるサービスの目標は「RTO は 3 時間、RPO は障害発生の 12 時間前」と定められた。フルバックアップを取得する間隔は最長で何時間にできるか。

  1. 失ってよいデータの幅を確認する: RPO = 12 時間前まで戻ってよい
  2. 取得間隔が 12 時間なら、最悪でも障害の 12 時間前の状態には戻せる
  3. したがって最長 12 時間。RTO の 3 時間は「復旧作業を 3 時間で終える」という別の制約で、間隔の計算には使わない

誤答肢は RTO の 3 時間や、両方を足した 15 時間、平均した値で作られます。間隔を決めるのは RPO の一点だけを握ります。

覚え方 真ん中の 1 文字で切り分けます。Point は点=時間軸上のどこまで戻るか、Time は時間の長さ=復旧までに使える時間、Level は水準=どこまで戻すか。RLO を「時点」として説明する肢は必ず誤りです。

復旧の方式と段階的復旧

待機系をどこまで動かしておくかで、費用と復旧時間が交換関係になります。冗長構成の詳しい話は第 5 章の担当なので、ここではサービス継続の観点で整理します。

方式待機系の状態復旧の速さと費用
コールドスタンバイ建物・電源・回線だけ確保。機器は未設置または停止。データは媒体から復元する復旧は遅い(日単位)/費用は安い
ウォームスタンバイ機器は設置・起動済み。データは定期的に同期し、障害時に差分を反映して切り替える復旧は中程度(時間単位)/費用は中程度
ホットスタンバイ待機系も稼働し、データはほぼリアルタイムに同期。切替えは即時復旧は速い(分単位以下)/費用は高い

すべてを同時に元へ戻すのではなく、重要な業務から順に、限定した範囲で復旧していくのが段階的復旧です。RLO を「1 日以内に重要サービスに限定して復旧する」と定めるのがこの考え方で、R6 秋に問われました。バックアップ媒体を同一の被災圏の外に置く遠隔地保管と、遠隔地に用意した代替拠点である DR サイトも継続管理の手段です。データセンタの隣の倉庫に置いた媒体は、地震や水害では一緒に失われるため遠隔地保管になりません。

あわせて情報セキュリティ管理も SMS の一部として要求されます。情報セキュリティ方針、情報セキュリティ管理策、情報セキュリティインシデントに関する事項を実施するもので、ISMS の要求事項を規定する ISO/IEC 27000 シリーズ(要求事項そのものを規定するのは ISO/IEC 27001/JIS Q 27001 で、27000/JIS Q 27000 自体は概要・用語を扱う規格です)と連携させます。管理策の中身は第 11・12 章の担当です。この小分類は直近 10 年の科目 A では 0 問ですが、可用性とセキュリティを同時に問う科目 B の題材にはなり得ます。

8. サービスの運用 ― オペレーション・バックアップ・サービスデスク

ここが得点源です。運用オペレーション(バックアップ)で 6 問、システム運用管理で 5 問、サービスデスクで 2 問と、53 問のうち 13 問がこの節の範囲から出ています。しかも「差分バックアップ方式」は 3 回とも正解肢が同一、「媒体本数の計算」も 3 回とも同型の再出題です。ここを固めれば 1 問は計算できます。

システム運用管理と運用オペレーション

システム運用管理は、日常の運用計画、障害発生時運用の計画、運用負荷低減のための改善計画を立て、あわせて容量・能力管理/情報セキュリティ管理/サービス可用性管理/サービス継続管理の方針を受けた活動を実施することです。運用の資源管理は、設備・コンピュータシステム・データ・マニュアル・成果物・要員を、組織の目標に適合するように維持・運用する活動を指します。要員が資源に含まれるところが「シフト要員数の算出」という計算問題につながります。仮想環境は台数が容易に増えるため、構成管理と資源使用率の監視をより厳密に行う必要があります。

運用オペレーションは、定められた手順に沿ってシステムの監視・操作・状況連絡を行うことです。操作は必ず作業指示書に従い、判断が必要になったら手順書の範囲を超えずにエスカレーションします。主な内容は次のとおりです。

領域内容試験で狙われる点
ジョブスケジューリングジョブの依存関係と実行時間帯(バッチの処理枠)を設計し、自動実行させる先行ジョブが異常終了したときに後続を止める設計になっているか
ジョブの復旧と再実行異常終了したジョブを、途中から再開するか先頭から流し直すかを決めておく二重計上を防ぐため、再実行前にデータを戻す手順が要る
アウトプット管理出力帳票・ファイルの生成、配付、保管、廃棄までを管理する授受管理表で管理し、重要帳票は手渡しする
入力データの管理入力原票の記載内容の判断・訂正は業務部門が行う情報システム部門が原票の内容を判断・訂正する肢は職務分掌に反する
処理結果の確認処理結果リストを業務部門へ送付し、業務部門に内容を確認させる「情報システム部門だけで確認して完了」は誤り
起動方式コールドスタートは初期状態から立ち上げ直す、ウォームスタートは実行中の状態の一部を引き継いで再開する語の向きだけ押さえる
データ管理の役割DA(データ管理者)は全社のデータ標準・データ辞書を定める。DBA(データベース管理者)は個々のデータベースの設計・性能・バックアップを担うDA は全社、DBA は個別のデータベース
利用者の管理入退社・異動に合わせてアカウントと権限を棚卸しし、最小権限を保つ退職者アカウントの放置、特権 ID の共用
ここがひっかけ 帳票の管理は職務分掌で解けます。「情報システム部門が入力原票の不備を判断して訂正し、処理を続行する」「出力帳票を各部門の共用棚に置き、取りに来てもらう」はいずれも誤りです。内容の判断は業務部門、受渡しは記録を残すという 2 原則で誤答肢を落とせます。

バックアップ方式 ― 差分と増分の違いが得点源

直近 10 年で 3 回、正解肢まで同一で問われるのは「フルバックアップで復元してから、最新の差分バックアップを反映して復旧する」です。図 16-9 で、取得量の増え方と復旧に使う媒体の数を並べて見ます。

日 月 火 水 木 差分方式 フル 全体 差分1 1日分 差分2 2日分 差分3 3日分 差分4 4日分 復旧に使う媒体は 2 本(フル + 最新の差分) 増分方式 フル 全体 増分1 1日分 増分2 1日分 増分3 1日分 増分4 1日分 復旧に使う媒体は 5 本(フル + 増分すべて)
図 16-9 木曜日の障害から復旧する場合に使う媒体を色で示しました。差分は「前回のフルからの変化分」なので毎日太っていき、復旧は 2 本で済みます。増分は「前回のバックアップからの変化分」なので毎日一定量ですが、復旧にはフルと増分すべてを順に当てる必要があります。
観点差分バックアップ増分バックアップ
取得する対象前回のフルからの変化分前回のバックアップ(フルまたは増分)からの変化分
取得時間・容量日を追って増えていく毎回ほぼ一定で小さい
復旧の手順フルを復元し、最新の差分 1 本を反映するフルを復元し、増分を取得順にすべて反映する
復旧時間短い長い(媒体が 1 本でも欠けると復旧できない)
ここがひっかけ 「差分バックアップは取得順にすべて反映して復旧する」は増分の手順で、誤りです。「差分の取得時間は増分より短い」も逆で誤りです。取得が軽いのは増分、復旧が軽いのは差分という交換関係で覚えます。バックアップ媒体は世代管理(何世代分を残すか)と遠隔地保管をあわせて設計します。

計算の型: バックアップ媒体の最少本数

必要本数 =(フル用の保持世代数 + 1)+(差分用の保持世代数 + 1) 「+ 1」は、新しい取得が終わるまで最古の媒体を上書きできないための予備

例題 毎月 1 日にフルバックアップを 1 本の媒体に取得し、毎週日曜に差分バックアップを 1 本の媒体に取得する(1 か月に 4 回)。フルは 3 か月分、差分は直近 1 か月分を保持し、保持期間を過ぎた媒体だけを再利用する。取得中に既存の媒体を上書きしないとき、必要な媒体は最少何本か。

  1. フル用: 保持は 3 世代。4 世代目を取り終えるまで最古を残すので 3 + 1 = 4 本
  2. 差分用: 1 か月分 = 4 世代。同様に 4 + 1 = 5 本
  3. 合計: 4 + 5 = 9 本

フル用と差分用を分けて数えるのが型です。誤答肢は、再利用を考えず全期間分を積み上げた本数(3 か月 × 5 本 = 15 本など)や、保持世代の数え間違い(± 1 本)で作られます。

サービスデスク

サービスデスクは、利用者からの問合せに対して単一の窓口機能(SPOC:Single Point Of Contact)を提供し、適切な部署への引継ぎ、対応結果の記録、記録の管理を行う一連の活動です。窓口を 1 つにすることで、利用者が「どこに聞けばよいか」を考えずに済み、記録が 1 か所に集まって傾向分析ができるようになります。組織の構造は 4 類型が問われます。フォロー・ザ・サンは直近 10 年で 2 回出題されました。

類型配置特徴
ローカルサービスデスク利用者と同じ拠点に置く現地対応や対面が容易。拠点ごとに要員が必要で非効率
中央サービスデスク1 か所に集約する要員効率と知識の集約に優れる。現地作業は別手段が必要
バーチャルサービスデスク要員は各地に分散通信技術で1 つの窓口に見せる。在宅勤務も組み込める
フォロー・ザ・サン時差のある複数拠点各拠点は日中だけ勤務しながら、連携して24 時間体制を実現する

サービスデスクの道具立ても用語で問われます。CTI(Computer Telephony Integration)は電話とコンピュータを連携させ、着信時に発信者の契約情報や過去の問合せ履歴を画面に出す仕組みです。FAQと知識ベースは、過去の問合せと回答を整理して利用者や担当者が引けるようにしたもので、AI を使ったチャットボットで自動応答させる構成も一般的になりました。指標としては、二次サポートへ回さずサービスデスクだけで解決できた割合が一次解決率、利用者が FAQ を見て自分で解決した割合が自己解決率です。FAQ を整備しても自己解決率が上がらないときは、内容の不足ではなく「探せない・更新されていない」ことが原因という筋で分析します。

計算の型: シフト要員数の算出

必要人数 =(シフト数 × 1 シフト当たりの人数 × 日数)÷ 1 人当たりの勤務回数の上限 端数は切り上げ

例題 24 時間を 3 交代で回すサービスデスクを、7 日間連続で運用する。各シフトには 2 人以上を置く。1 人が 7 日間に勤務できるのは 5 回までとする。必要な要員は最少で何人か。

  1. 延べ勤務回数を出す: 3 シフト × 2 人 × 7 日 = 42 回
  2. 1 人当たりの上限で割る: 42 ÷ 5 = 8.4
  3. 端数を切り上げる: 9 人(8 人では 40 回しか埋まらず、2 回分が空く)

誤答肢は切り捨てた 8 人、稼働日を 5 日で数えた値、シフト数を掛け忘れた値で作られます。切り上げの根拠は「人を 0.4 人分だけ雇えない」と言い換えれば迷いません。

9. ファシリティマネジメント

ファシリティマネジメントは、コンピュータシステムやネットワークの施設基盤の設計・構築の管理と運営を通じて、費用の削減・快適性・安全性を確保する活動です。直近 10 年での出題は少ない領域ですが、R6 春に GHG プロトコル、R7 秋に液浸冷却と、直近 3 年で環境側面と冷却技術が 2 問出ています。初出テーマは数年内に再出題される傾向があるので、定義と代表例だけは押さえておきます。

商用電源 自家発電設備 UPS 無停電電源装置 サーバラック 空調設備 (CRAC) 常時 停電時 無停電で給電 冷気 排熱 コールドアイル: ラック前面へ冷気 ホットアイル: 背面の排熱を回収 PUE = 全体の消費電力 ÷ IT 機器の消費電力
図 16-10 電源は「商用電源 → UPS → 機器」が常時の経路で、停電するとUPS がバッテリで数分から数十分をつなぎ、その間に自家発電設備が立ち上がって長時間の停電に対応します。UPS は自家発電の代わりではなく、切替えの空白を埋める装置である点が出題の核心です。空調は冷気と排熱の通り道を分ける(コールドアイル・ホットアイル)ことで効率が上がります。
分類用語要点
電気設備UPS、自家発電設備UPS は瞬断・短時間停電をバッテリでしのぐ。長時間は自家発電設備。両方を二重化する
建物管理耐震・免震・制震、アレスタ耐震は構造を強くする、免震は装置で揺れを伝えない、制震はダンパで吸収する。アレスタは雷サージから機器を守るサージ防護デバイス
消火設備不活性ガス、ハロゲン化物、泡サーバ室は水損を避けるため不活性ガス消火設備などを使う。泡消火設備は燃料庫・駐車場向け
空調設備エアフロー、コールドアイル/ホットアイル冷気の通路と排熱の通路を分離して混合を防ぐ。伝熱負荷は機器の発熱と外部からの熱侵入を合計した冷却すべき熱量
冷却の新技術液浸冷却サーバを絶縁性の液体に浸して冷やす。空冷より高密度で高効率、発熱の大きい GPU 集積に向く
通信設備MDF、IDFMDF は主配線盤(建物への引込み点)、IDF は各フロアの中間配線盤。ケーブル管理は経路と敷設本数を記録し、抜線事故と気流妨害を防ぐ
設計基準ティア(Tier)基準データセンタの信頼性を 4 段階で表す。段階が上がるほど電源・空調の冗長度が高く、上位では保守中もサービスを止めない
入退室入退室管理、施錠管理共連れの防止と入退室記録の保存。認証方式の詳細は第 12 章
維持保全修繕計画、ライフサイクル費用水道光熱費・保守メンテナンス費・修繕費まで含めた総額を下げ、設備を長寿命化する

環境側面 ― グリーン IT と評価指標

地球環境に配慮した IT 製品・インフラの利用や、IT による環境負荷低減をグリーン IT と呼びます。評価の物差しが指標として問われます。

指標・制度正式名・意味読み方
PUEPower Usage Effectiveness。データセンタ全体の消費電力 ÷ IT 機器の消費電力1.0 に近いほど効率がよい。空調と電源のロスが小さい
ITEEIT 機器そのもののエネルギー効率を表す指標高いほどよい
ITEUIT 機器の利用率を表す指標。遊休サーバが多いと下がる高いほどよい
GECグリーンエネルギー係数。再生可能エネルギーの利用割合を表す高いほどよい
ZEBnet Zero Energy Building。省エネと創エネで建物の年間一次エネルギー消費の収支をゼロに近づける建物単位の目標
LEEDLeadership in Energy & Environmental Design。建築物の環境性能の評価・認証制度第三者認証の制度名
GHG プロトコル温室効果ガス排出量の算定・報告の国際的な基準。排出を 3 つのスコープに分けるスコープ 1=自社の直接排出(自家発電の燃料燃焼など)、スコープ 2=購入した電力・熱の使用に伴う間接排出、スコープ 3=それ以外の間接排出全般(サプライチェーンの排出はその代表例で、輸送や販売後製品の使用なども含みます)
ここがひっかけ PUE は「小さいほどよい」指標です。ほかの多くの指標が「大きいほどよい」なので、方向を逆にした肢が作られます。分母が IT 機器の消費電力、分子がデータセンタ全体なので値は必ず 1.0 以上になり、1.0 を下回る値の選択肢は定義上あり得ません。GHG プロトコルは、購入電力の排出がスコープ 2、自家発電の燃料燃焼がスコープ 1 という切り分けが問われます。

ひっかけポイント

この中分類の誤答肢は、作られ方が 6 通りしかありません。どれも「隣にある別のもの」と入れ替える手口です。

ここがひっかけ 1: インシデント管理と問題管理の入替え 最頻出のパターンです。問題管理を問う設問に「サービスを合意した時間内に回復する」「回避策を適用して業務を継続させる」という肢が並びます。これらはインシデント管理の活動です。逆にインシデント管理を問う設問には「根本原因を特定する」が置かれます。復旧はインシデント管理、原因究明は問題管理という 1 行で切り分けます。
ここがひっかけ 2: 稼働率の分母と計画停止 分母は合意サービス時間であって暦時間ではありません。また、SLA に別段の定めがなければ計画停止(メンテナンス)は停止時間に含めません。この 2 つを間違えた値がそのまま誤答肢に並びます。複数月をまとめて評価するときは、月ごとの稼働率を平均せず、時間の合計どうしで 1 回だけ割ります。
ここがひっかけ 3: 差分と増分の取り違え 「取得時間が日を追って長くなるのはどちらか」「復旧に何本の媒体を使うか」の 2 点で必ず逆にしてきます。差分=前回のフルからの差なので太る・復旧は 2 本、増分=前回のバックアップからの差なので一定・復旧は全部。媒体本数の計算では、フル用と差分用を分けて数え、取得中に上書きしない前提の予備 1 本を忘れないことです。
ここがひっかけ 4: RTO・RPO・RLO の取り違え バックアップの取得間隔を決めるのは RPO だけです。RTO を間隔にした値、両方を足した値が誤答肢になります。RLO は「時点」ではなく「復旧する業務の範囲とレベル」で、「◯時◯分の状態まで戻す」という説明が付いていたらそれは RPO の説明です。
ここがひっかけ 5: 隣接プロセスの入替えと、計算の端数・責任分界 サービスレベル管理/事業関係管理(顧客満足・苦情)/供給者管理(外部との契約)と、構成管理(CI の記録・追跡・検証)/変更管理(承認)/資産管理(費用とライセンス)の 2 組が定番の差し替え元です。計算では要員数の端数を切り捨てた値、クラウドではIaaS の OS 管理を事業者側にした肢が定番の誤りです。

理解度チェック(科目 A 形式)

Q1. JIS Q 20000-1 における問題管理の活動の説明として、最も適切なものはどれか。
  1. インシデントの影響及び緊急度を考慮して優先順位を付け、合意した時間内にサービスを回復する。
  2. インシデントのデータ及び傾向を分析して根本原因を特定し、再発を防止するための処置を決定する。
  3. 変更要求のリスク、事業利益、実現可能性及び財務影響を評価し、稼働環境への展開を承認する。
  4. 構成品目を識別・記録し、定められた間隔で構成情報の正確性を検証する。

正解: イ 問題管理は「傾向分析 → 根本原因の特定 → 再発防止」が活動の核で、この 3 語のいずれかが必ず正解肢に入ります。ア はインシデント管理(回復が目的)、ウ は変更管理(承認が目的)、エ は構成管理(CI の記録と検証が目的)の活動です。

Q2. 合意サービス時間が 1 か月あたり 500 時間のサービスで、当月は計画停止が 8 時間、障害による停止が 5 時間発生した。SLA には「計画停止は停止時間に含めない」と定められている。このサービスの当月の稼働率は何 % か。1 か月は 30 日とする。
  1. 97.4
  2. 98.4
  3. 99.0
  4. 99.3

正解: ウ (500 − 5)÷ 500 = 0.99 で 99.0% です。ア は計画停止も停止時間に含めた(500 − 13)÷ 500、イ は障害停止ではなく計画停止だけを引いた(500 − 8)÷ 500、エ は分母を暦時間 720 時間(30 日 × 24 時間)にした(720 − 5)÷ 720 の誤りです。

Q3. 合意サービス時間が 1 か月あたり 300 時間のサービスについて、月間稼働率の目標を 99.5% と定めた。この目標を満たすために許容される 1 か月の停止時間は、最大で何時間か。
  1. 1.5
  2. 3.0
  3. 15.0
  4. 298.5

正解: ア 許容停止時間 = 合意サービス時間 ×(1 − 目標稼働率)= 300 × 0.005 = 1.5 時間です。イ は目標を 99% と読み違えた 300 × 0.01、ウ は 0.5% を 5% と桁違いにした 300 × 0.05、エ は稼働率のほうを掛けた 300 × 0.995 の誤りです。

Q4. JIS Q 20000-1 におけるサービスレベル管理の活動の説明として、最も適切なものはどれか。
  1. 顧客満足度を測定し、サービスに対する苦情を管理する。
  2. 外部供給者との契約を締結し、外部供給者のパフォーマンスを監視する。
  3. 顧客に提供するサービスの意図した成果とサービス間の依存関係を記した文書を作成し、維持する。
  4. 顧客と SLA を合意し、あらかじめ決められた間隔でサービスレベル目標に照らしたパフォーマンスを監視し、レビューする。

正解: エ 「SLA を合意する」と「あらかじめ決められた間隔で監視・レビューする」の 2 点がサービスレベル管理の定義です。ア は事業関係管理、イ は供給者管理、ウ はサービスカタログ管理の活動で、いずれも隣接プロセスからの差し替えです。

Q5. ITIL におけるサービスポートフォリオの説明として、最も適切なものはどれか。
  1. 検討中・開発中のサービス、稼働中のサービス、及び廃止済みのサービスの全体を管理するもの。
  2. 現在稼働中のサービスについて、意図した成果とサービス間の依存関係を記述したもの。
  3. コアサービス・実現サービス・強化サービスを組み合わせて顧客に提示する単位。
  4. 同じサービスに複数のサービスレベルの選択肢を用意し、顧客が選べるようにしたもの。

正解: ア サービスポートフォリオは、パイプライン(検討中・開発中)とカタログ(稼働中)と廃止済みを合わせた全体です。イ はサービスカタログの説明で、稼働中だけに限定されている点が違います。ウ はサービスパッケージ、エ はサービスレベルパッケージ(SLP)の説明です。

Q6. 毎週月曜日にフルバックアップを取得し、火曜日から金曜日まで毎日 1 回の差分バックアップを取得している。金曜日の差分バックアップの取得直後に障害が発生した場合の復旧手順として、適切なものはどれか。
  1. 金曜日の差分バックアップだけを復元する。
  2. 月曜日のフルバックアップを復元した後、火曜日から金曜日までの差分バックアップを取得順にすべて反映する。
  3. 月曜日のフルバックアップを復元した後、金曜日の差分バックアップを反映する。
  4. 金曜日から火曜日までの差分バックアップを、新しいものから順に反映する。

正解: ウ 差分はフルからの累積の変化分なので、最新の 1 本だけを反映すれば足ります。ア は変化分だけでは全体を復元できません。イ は増分バックアップの復旧手順です。エ はフルの復元がなく、順序も逆です。

Q7. 毎月末にフルバックアップを 1 本の媒体に、毎週末に差分バックアップを 1 本の媒体に取得する(差分は 1 か月に 4 回)。フルは 6 か月分、差分は直近 1 か月分を保持し、保持期間を過ぎた媒体だけを再利用する。新しいバックアップの取得が完了するまで最も古い世代の媒体を上書きしないとき、必要な媒体は最少で何本か。
  1. 10
  2. 12
  3. 24
  4. 30

正解: イ フル用は保持 6 世代に取得中の予備 1 本を足して 7 本、差分用は保持 4 世代に予備 1 本を足して 5 本、合計 12 本です。ア は予備の 1 本ずつを数えなかった 6 + 4、ウ は差分を 6 か月分すべて残した 4 × 6 でフルを数え忘れた値、エ は再利用を考えずに全期間分を積み上げた 6 + 24 です。

Q8. 自社のデータセンタで稼働している業務システムを IaaS へ移行する。次の運用作業①〜④のうち、この移行によって自社で行う必要がなくなるものだけをすべて挙げたものはどれか。 ① サーバ機器の故障部品の交換 ② 空調設備の点検 ③ OS のセキュリティパッチの適用 ④ 業務アプリケーションの改修
  1. ①
  2. ①③
  3. ①②③
  4. ①②

正解: エ IaaS では、ハードウェア(①)と施設・設備(②)が事業者の責任範囲に移ります。③ の OS 管理は IaaS では利用者の責任のままで、事業者側へ移るのは PaaS からです。④ は自社の業務アプリケーションなので、どの形態でも自社に残ります。ウ は PaaS の責任分界を IaaS に当てた誤りです。

Q9. JIS Q 20000-1 における是正処置の説明として、最も適切なものはどれか。
  1. 発生した不適合そのものを直し、それによって起こった結果に対処すること。
  2. 発生した不適合の原因を除去し、同じ不適合が再発しないようにすること。
  3. まだ発生していない潜在的な不適合について、その原因を除去すること。
  4. SMS 及びサービスの適切性、妥当性及び有効性を高めるために繰り返し行う活動のこと。

正解: イ 是正処置は「原因の除去による再発防止」です。ア は修正(症状への対処にとどまる)、ウ は予防処置(まだ起きていないものが対象)、エ は継続的改善(不適合の有無に関係なく回す活動)の説明です。

Q10. あるサービスの復旧目標を「RTO は 4 時間、RPO は障害発生時点の 6 時間前」と定めた。この目標を満たすためのバックアップ取得間隔の上限として、適切なものはどれか。
  1. 2 時間
  2. 4 時間
  3. 6 時間
  4. 10 時間

正解: ウ 取得間隔を決めるのは RPO です。6 時間間隔なら、最悪でも障害の 6 時間前の状態には戻せます。ア は RPO と RTO の差、イ は RTO を取り違えた値、エ は両方を足した値で、いずれも RTO を計算に混ぜた誤りです。RTO の 4 時間は復旧作業を終える時間の制約であって、取得間隔とは無関係です。

Q11. 情報システム部門と業務部門の職務分掌を踏まえた入出力データの管理として、最も適切なものはどれか。
  1. バッチ処理の結果リストを業務部門へ送付し、業務部門が内容を確認する。
  2. 入力原票の記載内容に不備があった場合、情報システム部門が内容を判断して訂正し、処理を続行する。
  3. 出力した帳票は各部門の共用の書棚に置き、必要な担当者が随時取りに来る運用とする。
  4. 保存期間を過ぎた帳票は、廃棄の記録を残さずに一般ごみとして処分する。

正解: ア 処理結果の妥当性を判断できるのは業務内容を知る業務部門なので、結果を返して確認させるのが正しい分担です。イ は業務内容の判断を情報システム部門が行っており職務分掌に反します。ウ は授受の記録が残らず、重要帳票は授受管理表で管理し手渡しすべきです。エ は廃棄記録と確実な廃棄手段が必要です。

Q12. 24 時間のサービスデスクを 3 交代制で運用する。各シフトには常に 3 人を配置し、30 日間連続で運用する。1 人が 30 日間に勤務できるのは 20 回までとするとき、必要な要員は最少で何人か。
  1. 5
  2. 9
  3. 13
  4. 14

正解: エ 延べ勤務回数は 3 シフト × 3 人 × 30 日 = 270 回で、270 ÷ 20 = 13.5 を切り上げて 14 人です。ア はシフト数を掛け忘れた 3 × 30 ÷ 20、イ は日数を 20 日で数えた値、ウ は端数を切り捨てた値です。13 人では 260 回分しか埋まらず 10 回分の穴が空きます。

Q13. サービス可用性管理において、保守性を表す指標として最も適切なものはどれか。
  1. MTBF(平均故障間隔)
  2. MTBSI(平均サービスインシデント間隔)
  3. MTRS(平均サービス回復時間)
  4. 稼働率

正解: ウ 保守性は「直しやすさ」なので、回復にかかる時間の平均である MTRS が対応します。ア と イ は故障やインシデントの発生間隔なので信頼性の指標、エ は使える割合そのものなので可用性の指標です。

まとめ

論点覚える 1 行誤答肢の作られ方
SMS の PDCA(JIS Q 20000-1:2012 準拠の出題)Do は「サービスの設計・移行・提供及び改善のために SMS を導入し運用する」Plan・Check・Act の記述と入替え
改善の 4 語修正=症状、是正処置=原因除去、予防処置=未発生、継続的改善=繰り返す活動4 語の定義の入替え
ITIL の包含関係ポートフォリオ = パイプライン + カタログ + 廃止済みカタログ(稼働中のみ)とすり替え
合意の三角形顧客=SLA、内部供給者=OLA、外部供給者=契約(UC)相手と合意文書の名前を入替え
サービスレベル管理SLA を合意し、定めた間隔で監視・レビュー・報告する事業関係管理(顧客満足・苦情)と入替え
稼働率(合意サービス時間 − 停止時間)÷ 合意サービス時間。計画停止は原則含めない分母を暦時間に、計画停止を停止時間に
可用性の指標信頼性=MTBF・MTBSI、保守性=MTRS、可用性=稼働率特性と指標の対応を入替え
インシデントと問題インシデント=回避策で早く戻す、問題=根本原因で二度と起こさない両者の活動記述を入替え
エスカレーション機能的=専門部署へ横、階層的=上位者へ縦2 種類の向きを入替え
変更管理RFC → 優先度 → CAB 承認 → 構築・試験(切り戻し計画つき)→ 展開 → PIR緊急変更を「承認不要」とする
RTO・RPO・RLOTime=復旧までの時間、Point=戻る時点、Level=復旧する範囲。取得間隔を決めるのは RPORTO と RPO を入替え、RLO を時点扱い
差分と増分差分=太る・復旧 2 本、増分=一定・復旧は全部取得時間と復旧本数を逆にする
クラウドの責任分界IaaS=ハードと設備、PaaS=+OS とミドル、SaaS=+アプリが事業者側IaaS の OS 管理を事業者側にする
要員計算延べ勤務回数 ÷ 1 人当たり上限、切り上げ切り捨て、シフト数の掛け忘れ
ファシリティUPS は切替えの空白を埋める。PUE は小さいほどよいUPS を自家発電の代替に、PUE の方向を逆に

本章のプロセスが「約束どおり回っているか」を第三者の立場で確かめるのが、次の第 17 章で扱うシステム監査と内部統制です。SLA・変更管理・アクセス権の記録が残っているかどうかが、そのまま監査証拠になります。