- 監査の 5 段階(計画→予備調査→本調査→報告→フォローアップ)と、各段階の成果物
- システム監査基準(行為規範)とシステム管理基準(判断尺度)の役割の違い、監査人の独立性
- 監査技法 7 種の使い分けと、CAAT(コンピュータ支援監査技法)でできること
- 監査証拠・監査調書・監査報告書の裏付け関係と、フォローアップでの役割分担
- 内部統制の 4 つの目的・6 つの基本的要素、IT 全般統制と IT 業務処理統制の区分
- IT ガバナンスと 3 つのディフェンスラインの中で、システム監査がどこに立つか
科目 A では直近 10 年(19 回)で 60 問、1 回平均 3.2 問が出ています。問番号もほぼ固定で、3 問の回は問 58〜60、4 問の回は問 57〜60 です。計算問題は 10 年間で 0 問、直近 6 回の 19 問のうち 12 問が過去論点の再出題という、マネジメント系で最も費用対効果の高い分野です。3 問確保が目標です。科目 B の「システム監査」を選ぶ人は本章の語彙がそのまま問題文を読む前提になります(解き方は第 25 章)。
1. システム監査とは何か ― 目的・種類・三つの視点
システム監査の目的は、情報システムに係るリスク(情報システムリスク)に適切に対応しているかどうかを、高い倫理観をもった独立かつ客観的な立場のシステム監査人が検証・評価し、保証や助言を行うことです。それを通じて経営活動・業務活動の効果的かつ効率的な遂行とその変革を支援し、組織体の目標達成に寄与するとともに、利害関係者に対する説明責任を果たします。
ここで押さえるべきは「監査人は検証・評価して伝える人であって、直す人ではない」という一点です。この分野の科目 A の問題は、ほとんどがこの役割分担のどこかを崩した誤答肢でできています。監査人が改善計画を作る、改善作業を代行する、被監査部門に命令する。いずれも独立性を失う行為なので、選択肢に現れたらその時点で誤りと判断できます。
監査の種類 ― 誰が何を対象に行うか
監査は「対象」「根拠」「実施主体」の 3 つの軸で名前が付きます。対象で切れば会計監査・業務監査・システム監査・情報セキュリティ監査、根拠で切れば法定監査と任意監査、実施主体で切れば内部監査と外部監査です。同じ監査が複数の名前を同時に持つ点に注意してください。上場企業の財務諸表監査は「会計監査」であり「法定監査」であり「外部監査」です。
| 分類軸 | 種類 | 内容 |
|---|---|---|
| 対象 | 会計監査 | 財務諸表が適正に作成されているかを検証する |
| 対象 | 業務監査 | 業務が規程・方針に沿って有効・効率的に行われているかを検証する |
| 対象 | システム監査 | 情報システムに係るリスクへの対応状況を検証・評価する |
| 対象 | 情報セキュリティ監査 | 情報セキュリティに係るコントロールを対象とする。判断尺度は情報セキュリティ管理基準 |
| 根拠 | 法定監査 | 法令で義務づけられた監査(金融商品取引法監査・会社法監査など) |
| 根拠 | 任意監査 | 組織体が自らの判断で行う監査。システム監査は通常こちら |
| 主体 | 内部監査 | 組織内部の内部監査部門が実施する。基準は内部監査基準・IPPF(専門職的実施の国際フレームワーク) |
| 主体 | 外部監査 | 組織外部の第三者が実施する。監査法人への委託はシステム監査委託契約書で範囲を定める |
| 方法 | 立入監査 | 現場に立ち入って実地で確かめる形態 |
もう一つの重要な軸が、監査の結論の出し方です。保証を目的としたシステム監査は「コントロールは有効である」という意見(保証)を表明し、助言を目的としたシステム監査は改善のための助言を提供します。どちらを目的とするかは監査計画で先に決めます。同じ監査手続を実施しても、報告書に書く結論の形が変わります。
監査対象は三つの視点で捉える
システム監査の対象は、個々のコントロールだけではありません。シラバス Ver.7.2 では「情報システムのコントロールとマネジメントだけでなく、ガバナンスにまで及ぶ」と明記されています。この三層が図 17-1 の構造です。直近 2 年で連続出題された新傾向なので、階層の順番と各層の点検対象を言えるようにしてください。
監査対象となるプロセスも広く、情報システムの企画・開発(アジャイル開発を含む)・運用・保守・廃棄の全ライフサイクル、さらに外部サービスの調達・利活用のプロセスに及びます。どこまでを見るかは内部監査規程や監査計画、外部委託の場合は契約書で明確に定めます。「監査人が思いついた範囲を自由に見る」わけではありません。
2. 監査人の独立性と二つの基準
システム監査の世界には、名前の似た基準が 2 つあります。役割がまったく違うのに毎回入れ替えて出題されるので、ここを最初に切り分けます。どちらも経済産業省が策定し、2023 年に改訂されています。
| 基準 | 何を定めるか | 使う場面 |
|---|---|---|
| システム監査基準 | システム監査人の行為規範。監査人の倫理、独立性と客観性の保持、正当な注意と秘密の保持、専門的能力の保持と向上、監査の実施と報告の手順 | 監査人が「どう振る舞うか」の拠りどころ |
| システム管理基準 | 情報システムのあるべきコントロールを示す判断尺度。監査人が「良い/悪い」を判定する客観的な参照基準 | 監査対象が「どうあるべきか」の物差し |
独立性 ― 外観上と精神上の 2 種類
監査人の独立性は 2 つに分けて問われます。外観上の独立性は組織上・身分上の独立で、被監査部門の指揮命令下に置かれないことです。精神上の独立性は態度の独立で、公正かつ客観的に判断することです。システム監査基準では、独立性を「監査対象から不当な影響や圧力を受けていない状態」として説明します。
実務上これは組織図の話になります。内部監査部門は被監査部門と横並びに置き、経営者や取締役会に直属させます。情報システム部門の中に監査担当を置くと、自分の部門を監査することになり外観上の独立性が失われます。図 17-2 の位置関係が、選択肢の正誤判断に直結します。
監査人が守るべきこと ― 倫理と体制整備
独立性のほかに、監査人には次の義務があります。いずれも選択肢の文言として出るので、語のまま覚えてください。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 誠実性 | 職業倫理に基づき誠実に職務を遂行する |
| 専門的能力の保持と向上 | 監査に必要な知識・技能を継続的に維持し高める |
| 正当な注意と秘密の保持 | 職業的専門家として当然払うべき注意を払い、知り得た情報を正当な理由なく漏らさない |
| 独立性と客観性の保持 | 外観上・精神上の独立を保ち、事実に基づいて判断する |
| 権限と責任の明確化 | 監査人の権限(資料の入手・関係者への質問など)と責任を監査規程で定める |
| ニーズの把握と品質の確保 | 監査に対するニーズを満たす体制を整備・運用し、一定の監査品質を確保する |
3. 監査の流れ ― 計画・予備調査・本調査・報告・フォローアップ
システム監査は、監査計画の策定 → 監査の実施(予備調査・本調査・評価と結論の形成)→ 監査報告 → フォローアップという流れで進みます。図 17-3 の 5 段階が本章の背骨です。各段階の成果物まで一緒に覚えると、「この作業はどの段階か」を問う問題が一瞬で解けます。
① 監査計画 ― リスクの大きいところから見る
監査計画は 3 階層で作ります。数年先を見た中長期計画、その年に何を監査するかを決める年度計画、個々の監査テーマごとに監査目的・対象範囲・方法・実施時期・実施体制・スケジュールまで具体化した個別監査計画です。
どのテーマを選ぶかはリスクアプローチで決めます。すべてを均等に見るのではなく、情報システムリスクの大きい領域に監査資源を重点配分する考え方です。監査計画は状況変化に応じて見直すことがあり、たとえば外部委託先で問題が起きれば委託先を監査範囲に追加します。
② 予備調査と ③ 本調査 ― 「把握」と「検証」で切る
予備調査と本調査の区別は、この分野で最も安定して出る論点です。境目は一言で切れます。予備調査は「把握」、本調査は「検証」です。
| 観点 | ② 予備調査 | ③ 本調査 |
|---|---|---|
| 目的 | 監査対象の実態を把握する | 監査要点について検証し証拠を得る |
| 見るもの | 事務手続・マニュアル・規程・組織図・システム構成図 | 実際の記録・ログ・伝票・画面・現場の作業 |
| 分かること | 業務内容、職務分掌、実施体制、リスクの所在 | コントロールが設計どおり運用されているか |
| 代表的な作業 | アンケートでリスク認識を収集する、関係者に業務の流れを聞く | サンプルを抽出して承認印を確かめる、ログと作業記録を突き合わせる |
| 次に決めること | 本調査の範囲と監査手続(何を確かめるか) | 監査の結論(評価) |
評価と結論の形成、そして ④ 報告へ
本調査で得た監査証拠を、監査要点ごとに評価して監査の結論を形成します。判断尺度はシステム管理基準などの客観的な基準です。結論が固まったら監査報告書を作成し、監査の依頼者(通常は経営者)に報告します。報告先は被監査部門ではなく依頼者である点に注意してください。
4. 監査技法と CAAT ― 何をどう確かめるか
まず言葉の整理です。監査手続とは、十分かつ適切な監査証拠を入手するために実施する手順のことです。監査技法は、その手順で使う個々のやり方(質問する、閲覧する、突き合わせる)を指します。「監査手続とは何か」を問う問題は直近 10 年で 4 回出ており、正解肢はいつも「十分かつ適切な監査証拠を入手するための手順」です。誤答肢には監査計画・監査報告書・監査技法の定義が差し込まれます。
| 技法 | やること | 得られる証拠 |
|---|---|---|
| チェックリスト法 | あらかじめ用意した質問項目に沿って回答を得る | 回答済みチェックリスト |
| ドキュメントレビュー法 | 文書及び記録を収集して閲覧する | 規程・設計書・運用記録の写し |
| インタビュー法 | 関係者に直接口頭で問い合わせ、回答を入手する(質問書・調査票の併用も含む) | 面談記録 |
| ウォークスルー法 | データの生成から入力・処理・出力・活用までの流れと、その過程のコントロールを、書面上または実際に追跡する | 追跡記録、各段階の証跡 |
| 突合・照合法 | 2 つ以上の記録・証憑を突き合わせ、一致するかを確かめる | 照合結果、照合印 |
| 現地調査法 | 現場に赴き、実物や作業状況を自ら観察する | 視察記録、写真 |
| 統計的サンプリング | 母集団から統計的に標本を抽出して検証し、全体を推定する。逸脱の割合が許容逸脱率を超えるかで判定する | 標本の検証結果 |
ウォークスルー法 ― 1 件を通しでたどる
ウォークスルー法は直近 10 年で 4 回出題された最頻の技法です。名称から説明を選ぶ形と、説明から名称を選ぶ形の両方で出ます。他技法と違うのは、1 つの取引を最初から最後まで通して追いかける点です。個々の記録を点で見るのではなく、線でつなぎます。図 17-4 が受注業務での例です。
CAAT ― コンピュータで監査する
CAAT(Computer Assisted Audit Techniques:コンピュータ支援監査技法)は、監査ソフトウェアなどを使って監査を実施する技法群です。人手のサンプリングでは数十件しか見られないところを、全件検査できるのが強みです。
| 技法 | 内容 |
|---|---|
| 監査ソフトウェア | 監査人が用意したツールで対象データを抽出・集計・分析する |
| データサンプリング/データ分析 | 大量データから条件に合う件数を数え、異常値や重複を洗い出す |
| テストデータ法 | あらかじめ結果が分かっているテストデータを本番プログラムに投入し、出力が期待どおりかを確かめる |
| 監査モジュール法 | 監査用のモジュールを本番プログラムに組み込んでおき、稼働中の処理から継続的に証拠を採取する |
| ペネトレーションテスト法 | 実際に侵入を試み、セキュリティのコントロールが有効かを確かめる |
判定の型: 監査手続の書き方
監査手続は「①何を(資料の固有名) + ②どうやって(技法) + ③何を確かめるか」の 3 点セットで書きます。1 つ欠けると科目 B では減点されます。
- 監査要点を確認する(例: 受注入力が漏れなく行われていること=網羅性)
- その要点を裏付けられる資料を、本文の表記どおりの固有名で選ぶ(例: プルーフリスト、受注伝票)
- 技法を当てる(2 つの記録を比べるなら突合・照合法)
- 確認内容を動詞で締める(一致していること、照合印が押されていること)
答え: 「プルーフリストと受注伝票を照合し(①②)、全件に照合印が押されていることを確かめる(③)」。「アクセス権を確認する」のように資料名も確認内容もない書き方は、具体性不足で点になりません。
5. 監査証拠・監査調書・監査報告書
監査の結論には根拠が要ります。その根拠が監査証拠で、証拠と結論のつながりを記録したものが監査調書、調書をもとに依頼者へ伝えるのが監査報告書です。3 つは下から上へ積み上がる関係にあり、下がなければ上は成り立ちません(図 17-5)。
監査証拠 ― 十分性と適切性
監査証拠には 2 つの要件があります。十分性は量の話で、結論を支えるのに足りる件数・範囲があることです。適切性は質の話で、監査要点に適合し、証明力があることです。1 件だけ見て「全社的に問題なし」と結論づければ十分性を欠き、監査要点と関係のない資料を並べれば適切性を欠きます。
証拠になるのは、インシデント報告書、進捗管理資料、運用・保守の記録、アクセスログ、トランザクションログなどです。これらが後から追跡できる形で残っている状態を監査証跡といい、監査証跡を残すように情報システムが構築・整備されていることを可監査性と呼びます。ただし、監査対応のためだけのドキュメント作成を開発現場に強いることは望ましくないとされています。
監査調書 ― 過程が分かるように残す
監査調書は、調査・収集・検証・評価した情報を、監査の結論に至った過程が分かるように整理して文書化したものです。監査報告書を書くときの基礎資料になり、後から結論の妥当性を検証できるよう保管します。直近 10 年で 3 回出題され、誤答肢は「被監査部門へ提出する」「監査報告書と同じもの」「報告書を出したら保管しなくてよい」の 3 パターンに固定されています。
監査報告書 ― 何を書くか
監査報告書には、監査の対象・目的・範囲、実施した監査手続、監査の結論、指摘事項と改善提案を記載し、監査の依頼者および適切な関係者に報告します。保証を目的とした監査なら意見(保証)を、助言を目的とした監査なら改善のための助言を結論として示します。
| 記載項目 | 書く内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 監査の対象・目的・範囲 | どのシステム・業務を、何のためにどこまで見たか | 範囲外のことは結論に書けない |
| 実施した監査手続 | どの資料をどの技法で確かめたか | 結論と手続が対応していること |
| 監査の結論 | 保証意見または助言 | 監査の目的に応じた形式で書く |
| 指摘事項 | 発見した事実と、それがもたらすリスク | 事実と評価を分けて書く |
| 改善提案(改善勧告) | あるべき状態と、そこへ向かう方向性 | 実施方法の詳細設計までは踏み込まない |
6. 報告とフォローアップ ― 役割分担が全問の軸
フォローアップとは、監査報告書に記載した改善提案、または監査対象先が作成した改善計画について、所要の措置が適切かつ適時に実施されているかどうかを確かめる活動です。ここは科目 A でこの中分類の最頻論点で、フォローアップ 6 回、指摘事項への対応 2 回、改善勧告の記載 1 回を合わせて直近 10 年で 9 問が出ています。
そして 9 問すべての軸が同じです。改善計画を作るのも実施するのも被監査部門、監査人は確認して助言する。この一線だけで正誤が決まります(図 17-6)。
改善が遅れているときに監査人が取る行動
もう一つの出題パターンが「改善が計画より遅れているとき、監査人はどうするか」です。ここでも監査人は指揮命令をしません。原因を確かめ、状況を把握し、方策を助言するのが答えになります。
| 状況 | 監査人が取る行動(適切) | 選択肢に現れる誤り |
|---|---|---|
| 改善が進んでいる | 改善状況を確認し、フォローアップ報告書にまとめる | 改善完了まで監査報告書の発行を保留する |
| 改善が計画より遅れている | 遅れの原因を確かめるため、対策内容と実施状況を確認する。遅れを取り戻す方策を責任者に助言する | 監査人が改善作業を代行する/責任者に改善を命令する |
| 改善計画そのものが不十分 | 計画の妥当性について助言する | 監査人が改善計画を作り直して渡す |
| 改善が完了した | 改善結果が有効に機能しているかを、改めて監査手続で確かめる | 被監査部門の完了報告を受け取っただけで終える |
判定の型: 指摘事項の書き方
指摘事項は「①事実 → ②原因 → ③リスク → ④改善提案」の順に組み立てます。事実と評価を混ぜないことが要点です。
- 事実: 観察した事実だけを書く(例: 退職者 3 名の利用者 ID が削除されずに有効なまま残っていた)
- 原因: なぜ起きたかを構造で書く(例: 退職時の ID 削除依頼が人事部門から情報システム部門へ通知される手順が定められていない)
- リスク: 放置した場合に何が起きるかを書く(例: 退職者による不正なデータ参照・更新が行われる可能性がある)
- 改善提案: あるべき状態を示す(例: 退職手続に ID 削除の通知を組み込み、四半期ごとに ID 棚卸を実施すること)
④で「どの製品を導入し、どの画面をこう直す」まで書くのは行き過ぎです。実施方法の選択は被監査部門の裁量に残します。逆に①だけを書いて②③を欠くと、被監査部門が改善計画を立てられません。
7. 内部統制 ― 4 つの目的・6 つの基本的要素・IT 統制
内部統制とは、健全かつ効率的な組織運営のための体制を、企業などが自ら構築し運用する仕組みです。監査が「外から点検する」仕組みなのに対し、内部統制は「中に組み込む」仕組みです。実現には業務プロセスの明確化、職務分掌、実施ルールの設定、チェック体制の確立が必要になります。
内部統制が達成すべき目的は 4 つ、それを支える基本的要素は 6 つです(図 17-7)。要素は 6 つとも名称のまま出題されるので、順序と役割を図の位置で覚えてください。
統制活動には、承認、照合、記録、そして職務分掌(相互牽制)が含まれます。モニタリングは、業務に組み込まれた日常的モニタリングと、業務から離れた立場で行う独立的評価に分かれます。内部監査部門による監査は後者です。業務担当者自身が自部門の統制の有効性を評価する手法をCSA(Control Self Assessment:統制自己評価)といいます。
なお、内部統制には限界があります。判断の誤りや不注意、複数人による共謀、当初想定していなかった環境変化や非定型的な取引、費用と便益の比較衡量、そして経営者が不当な目的で内部統制を無効化する場合です。「内部統制を整備すれば不正は起こらない」と書かれた選択肢は誤りです。
職務分掌 ― 1 人に閉じさせない
職務分掌は、1 つの取引を 1 人で完結させないことで相互牽制を働かせる仕組みです。科目 B のシステム監査問では、この分離が崩れている箇所がほぼ毎回リスクの急所になります。
| 役割 | やること | 兼務した場合のリスク |
|---|---|---|
| 起票 | 取引の発生を伝票・申請書に記録する | 承認と兼務すると、架空取引を自分だけで正式データにできる |
| 承認 | 内容の妥当性を確認して許可する | 起票・入力と兼務すると牽制が働かない |
| 入力 | システムにデータを登録する | 承認と兼務すると、承認されていないデータが正式データになる |
| 実行 | 出荷・支払などの実務を行う | 承認と兼務すると、資産の不正流出を止められない |
| 記録・照合 | 結果を記録し、他の記録と突き合わせる | 実行と兼務すると、差異を自分で隠せる |
IT 全般統制と IT 業務処理統制
6 要素の「IT への対応」は、さらに IT 環境への対応・IT の利用・IT に係る全般統制・IT に係る業務処理統制に分かれます。試験でよく問われるのは後ろの 2 つで、区分を入れ替えた誤答肢が定番です(図 17-8)。
| 区分 | 具体例 | 誤答肢での混同 |
|---|---|---|
| IT に係る全般統制 | 本番移行手続の承認、プログラム変更管理、利用者 ID の付与・削除の管理、バックアップの運用、外部委託先との契約内容の見直し | 「入力データの正当性チェック」を全般統制と言い換える |
| IT に係る業務処理統制 | 入力データの正当性・完全性・正確性のチェック、エラーデータの修正と再処理、マスタデータの維持管理、画面や機能単位の操作権限の限定 | 「アクセス管理」「変更管理」を業務処理統制と言い換える |
入力統制 ― 網羅性を確かめる型
業務処理統制の中で最も出題が多いのが入力統制、それも網羅性(漏れなく・重複なく処理されたか)の確認手続です。代表例が図 17-9 のプルーフリスト照合です。
| 監査要点 | 確かめること | 代表的な監査手続 |
|---|---|---|
| 網羅性(完全性) | 漏れなく、重複なく処理されたか | プルーフリストと伝票の照合印を確かめる。連番の欠番・重複を確かめる |
| 正確性 | 金額・数量が正しく記録されたか | 合計金額を再計算し、システムの集計値と突き合わせる |
| 正当性 | 権限のある者が承認した取引か | 承認記録の有無と承認者の権限を確かめる |
| 機密性 | 権限のない者が参照できないか | アクセス権設定一覧と職務分掌を突き合わせる |
| 可用性 | 必要なときに使えるか | サーバの二重化、バックアップと復旧手順、訓練の記録を確かめる |
8. IT ガバナンスと 3 つのディフェンスライン
IT ガバナンスとは、組織体のガバナンスの構成要素で、取締役会等がステークホルダのニーズに基づき、組織体の価値および組織体への信頼を向上させるために、組織体における IT の利活用のあるべき姿を示す IT 戦略と方針の策定、およびその実現のための活動です。主語が取締役会等である点が要点で、「情報システム部門が行う IT の運用管理」と書かれていたらそれは IT マネジメントであってガバナンスではありません。
システム監査・情報セキュリティ監査・ソフトウェア資産管理は、いずれも IT ガバナンスを実現するための取組です。つまりシステム監査は IT ガバナンスの手段であり、章の冒頭で見た「監査の目的は IT ガバナンスの実現に寄与すること」という言い方はここにつながります。
| 枠組み・用語 | 内容 |
|---|---|
| JIS Q 38500(ISO/IEC 38500) | 組織の IT ガバナンスの規格。EDM モデル(Evaluate 評価・Direct 指示・Monitor モニタ)で経営陣の行動を定義する。原則は JIS Q 38500:2026(ISO/IEC 38500:2024 を採用)で 11 項目(目的・価値の生成・戦略・オーバーサイト・アカウンタビリティ・ステークホルダー対応・リーダーシップ・データ及び意思決定・リスクガバナンス・社会的責任・長期的な持続可能性及びパフォーマンス)に改められた。責任・戦略・取得・パフォーマンス・適合・人間行動の 6 原則は旧 JIS Q 38500:2015 |
| COBIT | ISACA が策定した IT のガバナンスとマネジメントのフレームワーク。ガバナンス目標(EDM)とマネジメント目標を分けて体系化している |
| PRM-IT | Process Reference Model for IT。IT のプロセスを参照モデルとして体系化したもの |
| 成熟度モデル | プロセスの成熟度を段階で評価し、改善の目標水準を示すモデル |
| CIO / CISO | Chief Information Officer(最高情報責任者)/Chief Information Security Officer(最高情報セキュリティ責任者)。IT 戦略と情報セキュリティの経営責任者 |
| データガバナンス | データの品質・整合性・利用ルールを組織横断で統制する取組 |
| コーポレートガバナンス | 企業統治。IT ガバナンスはその構成要素。詳細は第 21 章 |
3 つのディフェンスライン ― 監査人が立つ場所
リスク管理の責任を 3 層に分ける考え方が3 つのディフェンスライン(3 ラインモデル)です。システム監査人がどこに立つのかが、独立性の議論と直結します(図 17-10)。
この 3 層は内部統制の 6 要素と対応します。第 1 線と第 2 線の活動が日常的モニタリング、第 3 線の監査が独立的評価にあたります。令和 5 年春の科目 A では「内部監査人の役割はモニタリングである」という趣旨が出題されました。
法令遵守状況の評価・改善
情報システムの構築・運用は、関連する法令を遵守して行う必要があります。適切なタイミングと方法で法令・基準・社内外の行動規範の遵守状況を継続的に評価し、改善していきます。内部統制を整備することは、法令遵守の体制を確立するうえで有効な手段です。この観点を対象とする監査をコンプライアンス監査といい、行動指針・職務分掌・倫理・透明性が着眼点になります。
| 監査の種類 | 目的 | 参照する基準 |
|---|---|---|
| 情報セキュリティ監査 | 情報セキュリティに係るコントロールの適切性を検証・評価する | 情報セキュリティ監査基準、情報セキュリティ管理基準、クラウド情報セキュリティ管理基準 |
| 個人情報保護監査 | 個人情報の保護と情報漏えいリスクへの対応状況を検証する | 個人情報保護法、JIS Q 15001、プライバシーマーク制度の要求事項 |
| コンプライアンス監査 | 法令・規範の遵守状況を検証する | 関連法令、行動指針 |
| マネジメントシステム監査 | 品質・環境・サービス・情報セキュリティ・事業継続の各マネジメントシステムを対象とする | JIS Q 19011(マネジメントシステム監査のための指針)、JIS Q 27001 と ISMS 適合性評価制度 |
システム監査で参照する法令は広範です。刑法(電磁的記録不正作出及び供用、電子計算機損壊等業務妨害、電子計算機使用詐欺)、不正アクセス行為の禁止等に関する法律、電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)、電子署名及び認証業務に関する法律、個人情報保護法とマイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)および特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン、著作権法・特許法・不正競争防止法と営業秘密管理指針、労働基準法・労働者派遣法・男女雇用機会均等法、そして法定監査の根拠となる金融商品取引法・会社法です。監査人はこれらに照らして権利侵害行為や労働環境の問題点を指摘します。各法令の内容は第 22 章で扱い、この中分類では 10 年間で 1 問も出ていません。
9. 科目 B「システム監査」への橋渡し
科目 B の「システム監査」は、問 1(情報セキュリティ)が必須、問 2〜11 から 4 問を選ぶ選択問題の 1 つで、各問 20 点です。直近 19 回はすべて問 11 に置かれてきました。この分野の最大の特徴は、技術知識をほとんど要求しないことと、計算問題が 19 回で 0 本であることです。業務プロセスと承認フローを日本語で追えれば解けます。
設問の形は 19 回ともほぼ同一です。本文を読み、〔監査部長の指示〕と〔監査手続案の表〕に置かれた空欄を埋めます。解答欄は 1 問あたり平均 7.7 個で、その 63% は 10 字以内、77% は 15 字以内です。40 字を超える記述は 1 本もありません。
| 本文のブロック | 読み取るもの | 空欄との関係 |
|---|---|---|
| 会社とシステムの概要 | 組織名・部署名・システム名 | 解答に使う固有名の供給源 |
| 業務プロセス | 誰が起票し、誰が入力し、誰が承認するか | 職務分離の設問はここから作られる |
| 発生した事案・トラブル・不満 | 「〜することになっている」と「〜していなかった」の対比 | 急所。ほぼ必ず空欄の答えになる |
| 監査要点案の表 | 網羅性・正当性・準拠性などの要点 | 監査手続の空欄と 1 対 1 で対応する |
| 監査部長の指示 | 追加で確かめるべき点 | 空欄の大半がここに集中する |
頻出論点と、書き方で落とすポイント
19 問の主要論点を数えると、突合・照合による監査手続が 11 問、利用者 ID とアクセス権限の管理が 9 問、インタフェース処理・データ連携の正確性が 8 問、監査証拠となる資料の特定が 7 問です。上位 4 つはどれも本章の語彙で書けます。
| 失点パターン | 何が足りないか | 直し方 |
|---|---|---|
| 主体が書けていない | 「誰が」が抜けた手続・リスク記述 | 「入力した者が自ら承認できないこと」のように主語を必ず書く |
| 具体性が足りない | 「アクセス権を確認する」だけ | 資料の固有名と確認内容を足す |
| 資料名とデータ名の取り違え | 「受注データ」と書いてしまう | 閲覧できる資料・帳票・管理表の名前を書く |
| 本文の語を言い換えてしまう | 「保留ファイル」を「一時保存領域」と書き換える | 本文の表記をそのまま使うのが最大の得点源 |
| 時期・期限の指定漏れ | 「確認する」だけで時点がない | 「本番移行前までに」など時点を添える |
| 類似概念の混同 | 評価項目と目標レベル、自動化統制と手作業統制 | 本章の監査要点の表で語を切り分けておく |
本文の読み方と空欄の埋め方は第 25 章で、オリジナルの演習問題を使って手順として練習します。本章では「監査要点 → 監査手続 → 監査証拠」の 3 点セットと、突合・職務分離・ID 管理の語彙を確実にしておいてください。
ひっかけポイント
理解度チェック(科目 A 形式)
Q1. システム監査人が行うフォローアップとして適切なものはどれか。
- 監査人が改善計画を作成し、被監査部門に実施を指示する。
- 改善が完了するまで、監査報告書の発行を保留する。
- 被監査部門が実施した改善の状況を確認し、必要に応じて助言する。
- 被監査部門に代わって、監査人が改善作業を実施する。
正解: ウ フォローアップは、改善提案や改善計画について所要の措置が適切かつ適時に実施されているかを確認する活動です。ア は改善計画の作成が被監査部門の役割なので誤り、イ は報告とフォローアップの順序が逆で誤り、エ は監査人が実務を代行して独立性を失うので誤りです。
Q2. データの生成から入力・処理・出力・活用までの流れと、その過程のコントロールを、書面上または実際に追跡する監査技法はどれか。
- ウォークスルー法
- インタビュー法
- チェックリスト法
- 突合・照合法
正解: ア 1 件の取引を最初から最後まで通してたどるのがウォークスルー法です。イ は関係者に直接口頭で問い合わせる技法、ウ はあらかじめ用意した質問項目に沿って回答を得る技法、エ は 2 つ以上の記録を突き合わせて一致を確かめる技法です。
Q3. システム監査における監査手続の説明として適切なものはどれか。
- 監査の対象・目的・実施時期・実施体制などをあらかじめ定めたものである。
- 監査の結論と指摘事項を依頼者に伝えるために作成する文書である。
- システム監査人が守るべき行為規範を定めた基準である。
- 十分かつ適切な監査証拠を入手するために実施する手順である。
正解: エ 監査手続は証拠を入手するための手順です。ア は個別監査計画の説明、イ は監査報告書の説明、ウ はシステム監査基準の説明で、いずれも別の用語に置き換えた誤りです。
Q4. 監査調書の説明として適切なものはどれか。
- 監査の結論を被監査部門に通知する文書であり、通知後は保管しない。
- 調査・収集・検証した情報を、結論に至った過程が分かるように整理した記録である。
- 被監査部門が改善計画を記載し、監査人に提出する文書である。
- 監査報告書そのものであり、両者を区別する必要はない。
正解: イ 監査調書は結論を裏付ける基礎資料として作成・保管します。ア は保管しない点と通知文書とする点が誤り、ウ は作成主体が逆で誤り、エ は調書が報告書の基礎資料であって同一ではないので誤りです。
Q5. システム監査の予備調査で行う作業として適切なものはどれか。
- 事務手続やマニュアルを閲覧し、業務内容・職務分掌・実施体制を把握する。
- サンプルを抽出し、承認印が押されているかを 1 件ずつ確かめる。
- 入手した監査証拠を評価し、監査の結論を形成する。
- 改善提案の実施状況を被監査部門に確認する。
正解: ア 予備調査の目的は対象の実態を把握することです。イ は監査証拠を得る本調査の作業、ウ は本調査の後の評価・結論の形成、エ はフォローアップの作業で、いずれも段階が違います。
Q6. 受注伝票の入力漏れや二重入力がないことを確かめる監査手続として、最も適切なものはどれか。
- 受注データの合計金額を再計算し、システムの集計値と一致することを確かめる。
- 受注入力画面にアクセスできる利用者 ID が限定されていることを確かめる。
- プルーフリストと受注伝票が 1 件ずつ照合され、照合印が押されていることを確かめる。
- 受注データの登録が営業部長によって承認されていることを確かめる。
正解: ウ 漏れと重複の検出は網羅性の統制で、原始証憑と入力結果一覧の全件照合が代表的な手続です。ア は正確性、イ は機密性、エ は正当性を確かめる手続であり、監査要点が違います。
Q7. IT に係る業務処理統制に該当するものはどれか。
- 開発したプログラムを本番環境へ移行する手続の承認
- 情報システム部門の要員に対するアクセス権の付与・削除の管理
- システム運用を委託している外部業者との契約内容の定期的な見直し
- 受注入力画面における入力データの正当性チェック機能
正解: エ 業務処理統制は個々の業務プロセスに作り込まれた統制で、入力データのチェック機能はその代表例です。ア は開発・保守の管理、イ はアクセス管理、ウ は外部委託の契約管理で、いずれも IT 全般統制に分類されます。
Q8. 監査対象業務の関係者に直接口頭で問い合わせ、回答を入手する監査技法はどれか。
- ウォークスルー法
- インタビュー法
- 現地調査法
- ドキュメントレビュー法
正解: イ 「直接口頭で問い合わせる」がインタビュー法の定義です。ア はデータの流れを追跡する技法、ウ は現場に赴いて自ら観察する技法、エ は文書及び記録を収集して閲覧する技法です。
Q9. システム監査で発見された指摘事項への対応のうち、適切でないものはどれか。
- システム監査人が、被監査部門の改善計画を作成する。
- 被監査部門が改善計画を作成し、経営者の承認を得る。
- システム監査人が、改善計画の妥当性について助言する。
- システム監査人が、改善計画の実施状況をフォローアップする。
正解: ア 改善計画の作成は被監査部門の責任であり、監査人が代わって作成すると独立性を失います。イ・ウ・エ はいずれも正しい役割分担で、監査人は助言と確認までにとどまります。
Q10. 監査証拠の入手と評価に関する記述のうち、適切でないものはどれか。
- 監査の結論を裏付けるには、十分かつ適切な監査証拠を入手する必要がある。
- 監査証拠を円滑に入手できるように、情報システムが構築・整備されていることが望ましい。
- アジャイル開発では、体裁の整った管理用ドキュメントだけが監査証拠になる。
- 監査対応のためだけのドキュメント作成を開発現場に求めることは、避けることが望ましい。
正解: ウ 監査証拠は形式ではなく、結論を裏付けられるかで判断します。アジャイル開発ではタスクボードやレビューの記録、自動テストの結果なども証拠になります。ア は十分性と適切性の要件、イ は可監査性、エ は現場への過度な負荷を避ける配慮で、いずれも正しい記述です。
Q11. 業務システムをクラウドサービスへ移行する計画を監査する際、情報が消失することを予防する観点のチェックポイントとして最も適切なものはどれか。
- 現行システムと比べて運用コストが削減できること
- クラウド事業者の信頼性とサービス継続性が評価されていること
- 利用者が求める機能をすべて標準機能で実現できること
- 移行後の応答時間が現行システムと同等以上であること
正解: イ データが預け先ごと失われる事態を防ぐには、事業者そのものの信頼性とサービスが続くかどうかを見る必要があります。ア はコスト、ウ は機能適合性、エ は性能の観点であり、情報消失の予防とは直結しません。
Q12. システム開発を外部に委託した場合の、ユーザ受入テストの監査で確かめるべき事項として最も適切なものはどれか。
- 受託者がモジュール単位の単体テストを実施していること
- 受託者がテストデータを作成し、合否を判定していること
- 委託者がプログラムの内部構造に基づいてテストケースを設計していること
- 委託者が利用者の立場で、業務要件が反映されているかをテストしていること
正解: エ ユーザ受入テストは委託者(利用部門)が要件定義に基づいて実施し、業務要件が満たされているかを判断する工程です。ア は開発工程の内部テスト、イ は合否判定の主体が受託者になっている点が誤り、ウ は内部構造に着目するホワイトボックスの観点で、受入テストの目的と合いません。
Q13. システム監査基準における「独立性」の説明として適切なものはどれか。
- 監査対象のあるべき姿を示し、良否を判定するための判断尺度を提供することである。
- 監査で知り得た情報を、正当な理由なく他に漏らさないことである。
- 監査人が監査対象から、不当な影響や圧力を受けていない状態にあることである。
- 監査に必要な知識と技能を継続的に維持し、高めることである。
正解: ウ 独立性は外観上・精神上の 2 面があり、いずれも不当な影響を受けない状態を指します。ア はシステム管理基準の役割、イ は秘密の保持、エ は専門的能力の保持と向上であり、別の要件との取り違えです。
Q14. システム監査では監査対象を三つの視点で捉える。コントロール、マネジメントと並ぶ三つ目の視点はどれか。
- ガバナンス
- コンプライアンス
- アカウンタビリティ
- オペレーション
正解: ア 監査の対象は個々のコントロールとマネジメントにとどまらず、取締役会等が IT のあるべき姿を示すガバナンスにまで及びます。イ は法令遵守という監査の観点の 1 つ、ウ は説明責任で監査の目的側の概念、エ は日常業務の運用を指す語であり、三つの視点の名称ではありません。
まとめ
この章の要点を、出題頻度の高い順に 1 枚の表にまとめます。ここだけで科目 A の 3 問はほぼ拾えます。
| 論点 | 覚える一文 | 誤答肢の作られ方 |
|---|---|---|
| フォローアップ | 改善計画の作成も実施も被監査部門。監査人は状況を確認し助言する | 監査人が計画を作る・実施する・命令する |
| ウォークスルー法 | データの生成から活用までとコントロールを、書面上または実際に追跡する | 他技法(インタビュー・閲覧・現地調査)の説明に差し替え |
| 監査手続 | 十分かつ適切な監査証拠を入手するための手順 | 監査計画・監査報告書・監査技法の定義に差し替え |
| 監査調書 | 結論に至った過程が分かるよう整理した記録。作成・保管する | 被監査部門へ提出・報告書と同一・保管不要 |
| 予備調査/本調査 | 予備調査は把握、本調査は検証 | 2 つを入れ替える |
| 入力の網羅性 | プルーフリストと伝票の照合印、自動連番の付与 | 承認(正当性)やアクセス制御(機密性)にすり替え |
| IT 統制 | IT への対応は IT 全般統制と IT 業務処理統制から成る | アクセス管理・変更管理を業務処理統制と言う |
| 監査証拠 | 十分性(量)と適切性(質)。アジャイルでも文書だけが証拠ではない | 「管理用ドキュメントだけが証拠」の否定形 |
| 2 つの基準 | システム監査基準=行為規範、システム管理基準=判断尺度 | 2 つを入れ替える |
| 三つの視点 | ガバナンス・マネジメント・コントロール | コンプライアンス等を混ぜる |
| 内部統制 | 目的 4・要素 6。統制環境が土台、IT への対応が横串 | COSO の 5 要素・3 目的と混同させる |
| 3 ライン | 第 3 線=内部監査。1 線・2 線から独立し経営者へ保証を提供する | 第 2 線の監視を独立的評価と呼ぶ |
- 監査の 5 段階と成果物: 監査計画(監査計画書)→ 予備調査 → 本調査(監査証拠・監査調書)→ 監査報告(監査報告書)→ フォローアップ(フォローアップ報告書)
- 監査計画は中長期計画・年度計画・個別監査計画の 3 階層。テーマ選定はリスクアプローチ
- 技法は動詞で判別する。聞く=インタビュー法、読む=ドキュメントレビュー法、見に行く=現地調査法、突き合わせる=突合・照合法、たどる=ウォークスルー法
- CAAT にはテストデータ法(結果既知のデータを投入)と監査モジュール法(本番プログラムに監査用モジュールを組み込む)がある
- 内部統制の限界: 判断の誤り、共謀、想定外の変化、費用と便益、経営者による無効化
- 科目 B のシステム監査は計算が出ず、解答の 63% は 10 字以内。本文の語をそのまま使うのが最大の得点源
マネジメント系はここまでです。次の第 18 章からはストラテジ系に入り、システム戦略とシステム企画を扱います。本章の IT ガバナンスと経営陣の責任という視点が、そのまま情報戦略の出発点になります。