宅建士合格教科書|2026年度(令和8年度)
第 14 章|例年 2〜3 問出題

契約各論と不法行為 — 売買・賃貸借から使用者責任まで

手付・契約不適合・敷金・工作物責任。実務にも直結する頻出領域

この章で学ぶこと

例年 2〜3 問出題。売買・賃貸借・不法行為はどれも本試験の常連です。この章で 2 問確保が目標です。

売買① — 手付による解除

売買契約は申込みと承諾の合意だけで成立します。しかし「やっぱりやめたい」という事態は起こるもので、そのときの撤退コストをあらかじめ金銭で見える化しておく仕組みが手付です。交付された手付は、反対の意思表示がない限り解約手付と推定されます(民法557条)。つまり、B(買主)は手付を放棄して(手付流し)、A(売主)は倍額を現実に提供して(倍返し)、理由を問わず契約を解除できます。

急所は 2 つです。第一に、売主からの解除は「倍返しします」と口頭で告げるだけでは足りず、倍額を実際に持参・振込するなど現実の提供が必要です。買主の側は手付を放棄する意思表示だけで足ります(すでに渡してあるからです)。第二に、解除できるのは相手方が契約の履行に着手するまでです。履行の着手とは、中間金の支払いや引渡し・登記手続の準備など、外部から客観的に認識できる行為をいいます。判断の基準はあくまで「相手方」なので、自分が履行に着手していても、相手方がまだ着手していなければ解除できます(判例)。自分の投下費用を捨てるのは自由だからです。

A(売主) 倍額を現実に提供して解除 B(買主) 手付を放棄して解除 手付を交付 契約締結・手付交付 相手方が履行に着手 解除できる(手付流し・倍返し) 解除できない 自分が着手していても、相手方が未着手なら解除できる(判例)
図 14-1 手付解除の基本構造。時計を止めるのは「相手方の」履行の着手です。自分側の着手は解除の障害になりません。

手付解除は債務不履行による解除ではないので、解除された相手方は損害賠償を請求できません(民法557条2項)。手付の額の清算で決着済み、という発想です。なお民法上は手付の額に上限がありませんが、宅建業者が自ら売主となる場合は代金の 2 割まで・常に解約手付・買主に不利な特約は無効という 8 種制限が上書きします(第 7 章参照)。民法と業法のどちらの土俵の問題かを最初に確認する癖をつけましょう。

解除する者方法注意点
B(買主)手付を放棄する意思表示だけで足りる(交付済みのため)
A(売主)倍額を現実に提供する口頭で告げるだけでは解除できない

売買② — 契約不適合責任

引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないとき、売主は「約束どおりの物を渡す債務」を果たしていません。そこで買主には 4 つの救済が与えられます。①追完請求(修補・代替物・不足分の引渡し。売主は買主に不相当な負担を課さなければ別の方法で追完できます)、②代金減額請求(原則として相当期間を定めた追完の催告が先。追完不能・売主の明確な拒絶・定期行為・催告しても見込みなしが明らか、の場合は無催告で可)、③損害賠償請求(売主の帰責事由が必要)、④契約の解除(催告解除は不履行が軽微なら不可)です。なお①②は買主に帰責事由があるときは請求できず、④解除も買主の帰責事由による不適合では認められません(民法543条)。売主に落ち度を求めるのは③だけ、買主に落ち度があれば①②④が封じられる、と方向を分けて覚えます。

目的物が契約の内容に適合しない 買主の救済(4 本柱) ①追完請求 修補・代替物など 帰責事由は不要 ②代金減額請求 まず追完の催告 無催告の例外あり ③損害賠償請求 売主の帰責事由が 必要(ここだけ) ④解除 軽微な不適合は不可 帰責事由は不要 損害賠償と解除は併用できる ―「どちらか一方だけ」は誤り
図 14-2 買主の救済 4 本柱。売主の帰責事由が要求されるのは③損害賠償だけです。①②④は「約束と違う物を渡された」事実だけで発動します。

暗記テク 4 本柱はリズムで「追・額・損・解除」。責任を負うのはあくまで売主で、媒介した宅建業者に契約不適合責任を追及することはできません(定番の誤り肢)。

期間制限は本試験の最重要ポイントです。種類・品質に関する不適合は、買主が不適合を知った時から 1 年以内にその旨を売主に通知しないと、責任追及の権利を失います(民法566条)。通知で足り、1 年以内に裁判や請求までする必要はありません。ただし売主が引渡しの時に不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは、この期間制限は適用されません —「悪いやつは保護しない」の原則です。これに対し数量・権利の不適合には 1 年の通知期間がありません。数量不足や他人の権利の存在は外形的に明確で、期間制限で早期に売主を保護する必要が乏しいからです。

引渡し 不適合を知った時 1年以内に通知 1年経過 消滅時効: 知った時から5年 消滅時効: 引渡し(権利行使できる時)から10年 売主が悪意または重過失のときは、1年の通知期間の制限なし
図 14-3 種類・品質の不適合の二重制限。1 年以内に通知して権利を保存しても、別途、消滅時効(5 年・10 年)は進行し続けます。
不適合の種類1 年の通知期間消滅時効(5 年・10 年)
種類・品質(雨漏り・土壌汚染など)あり(売主が悪意・重過失なら適用なし)かかる
数量(面積の不足など)なしかかる
権利(一部他人物・用益権の負担・抵当権の実行)なしかかる

権利の不適合(民法565条)も、上の 4 本柱がそのまま準用されます。典型は 3 つで、①買った土地の一部が他人の物で、その部分の権利を移転してもらえない、②地上権・地役権など用益権の負担が付いていて自由に使えない、③抵当権が実行されて買主が所有権を失った、という場面です。いずれも「約束した権利がそのまま手に入らなかった」点で共通し、追完・代金減額・損害賠償・解除で救済されます。ただし前述のとおり、1 年の通知期間はありません。

関連論点を 3 つ押さえます。第一に、担保責任を負わない特約は有効ですが、売主が知りながら告げなかった事実と、自ら第三者のために設定・譲渡した権利については免責されません(民法572条)。第二に、危険の移転(民法567条)— 目的物の引渡し後に当事者双方の責めに帰することができない事由(天災など)で滅失・損傷したときは、買主は追完・減額・損害賠償・解除のいずれも主張できず、代金の支払いも拒めません。引渡しがリスクのバトンタッチ地点です。第三に、買戻しの特約は売買契約と同時にしなければならず、期間は最長 10 年です。

賃貸借① — 存続期間・修繕・費用・一部滅失

民法上の賃貸借の存続期間は最長 50 年です。これより長い期間を定めても 50 年に短縮され、更新もできますが更新後も 50 年が上限です。最短の制限はありません。不動産賃借権は登記すれば第三者に対抗できますが、賃貸人に登記への協力義務はなく、実務では借地借家法の特例(建物の引渡し・借地上建物の登記)が主役になります(第 15 章)。

目的物の修繕義務は賃貸人が負います。賃料はまさに「使わせてもらうこと」の対価だからです。ただし賃借人の帰責事由によって修繕が必要となったときは、賃貸人は義務を負いません。逆に賃借人が自ら修繕できるのは、①修繕が必要な旨を通知し(または賃貸人が知り)、相当期間内に修繕されないとき、②急迫の事情があるとき、の 2 つの場合です。

賃借人が支出した費用は 2 種類に分けて処理します。必要費(雨漏りの修理代など本来賃貸人が負担すべき費用)は直ちに全額を償還請求できます。有益費(トイレの水洗化など価値を高める費用)は賃貸借の終了時に、価値の増加が現存する場合に限り、賃貸人の選択により支出額または増価額の償還を請求できます。

必要費=雨漏りの修理など 賃貸人が本来負担すべき費用 支出後、直ちに全額を 償還請求できる 有益費=トイレの水洗化など 目的物の価値を高める費用 終了時に価値増加が残る場合に限り 支出額か増価額を賃貸人が選択 支出の時 賃貸借の終了時
図 14-4 費用償還の 2 レーン。請求できる「時期」(直ちに/終了時)と「誰が選ぶか」(有益費は賃貸人の選択)を入れ替える出題が定番です。

賃借物の一部が滅失その他の事由で使用収益できなくなった場合、それが賃借人の帰責事由によらないものであれば、賃料はその割合に応じて当然に減額されます。改正民法で「減額を請求できる」から「当然に減額される」へ改められた点が狙われます。解除はこれとは別のルールです。残存する部分だけでは賃借人が借りた目的を達成できないときは、賃借人は契約を解除できます(民法611条2項)。減額には「賃借人に帰責事由がないこと」という条件が付きますが、解除にはこの条件が付きません。条件の付き方が違う点まで込みで覚えてください。

賃貸借② — 転貸借・敷金・賃貸人の地位の移転

賃借権の譲渡・転貸には賃貸人の承諾が必要で、無断で第三者に使用収益させたときは賃貸人は契約を解除できます(民法612条)。ただし判例は、無断転貸であっても背信的行為と認めるに足りない特段の事情(同居の親族に貸したなど)があれば解除できないとします。信頼関係が壊れていないのに追い出すのは行き過ぎだからです。

A(賃貸人) B(賃借人) =転貸人 C(転借人) また借りした人 賃貸借 賃料 月10万円 転貸借(Aの承諾が必要) 転借料 月12万円 賃料を直接請求できる (低い方の10万円が限度) AB間を合意解除しても、Cには対抗できない(Cは使用を続けられる) Bの賃料不履行でAが解除すれば、Cにも対抗できる(Cへの催告は不要)
図 14-5 適法な転貸借の三面関係。A は C に直接請求できますが、取れるのは賃借料と転借料の「低い方」までです。C が転借料を B に前払いしていても A には対抗できません。

親亀(AB 間の賃貸借)がこけたとき、子亀(BC 間の転貸借)がどうなるかは終了原因で結論が分かれます。合意解除は C に対抗できません。A と B が話し合いだけで C の生活基盤を奪えるのは不当だからです(ただし合意解除の当時、A が B の債務不履行による解除権を有していたときは対抗できます)。一方、債務不履行による解除は C に対抗でき、しかも判例は、解除の前にC へ催告して賃料支払いの機会を与える必要もないとします。第 3 の原因が期間満了・解約申入れです。建物の賃貸借がこれで終了する場合、A は C にその旨を通知しなければ終了を C に対抗できず、通知から6 か月の経過で転貸借も終了します(借地借家法34条。第 15 章で扱います)。

AB 間の賃貸借の終了原因転借人 C に対抗できるかポイント
合意解除できない解除当時に債務不履行解除権があったときは対抗可
B の債務不履行による解除できるC への催告(支払いの機会の付与)は不要
期間満了・解約申入れ(建物)通知しなければできない通知から 6 か月の経過で転貸借も終了(借地借家法34条・第 15 章)

賃貸人の地位の移転も頻出です。対抗要件を備えた賃借人がいる不動産が譲渡されると、賃貸人の地位は賃借人の承諾なしに譲受人へ当然に移転します(新旧所有者の合意も不要です。賃借人にとって「誰が大家か」は賃料の払い先が変わるだけだからです)。ただし新賃貸人が賃借人に賃料を請求するには所有権移転登記が必要です。賃貸人の地位を譲渡人にとどめる留保も可能ですが、そのためには譲渡人と譲受人が①賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨と②譲受人が譲渡人にその不動産を賃貸する旨の両方を合意しなければなりません。①だけでは留保できません。②を要求するのは、賃借人を宙に浮かせず転借人の立場に受け止めるためです。

敷金は、名目を問わず、賃料債務などを担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する金銭です。返還時期は「賃貸借が終了し、かつ、明渡しを受けたとき」— つまり明渡しが先履行で、明渡しと敷金返還は同時履行の関係に立ちません。賃貸人は敷金を未払賃料に充当できますが、賃借人の側から充当を請求することはできません。承継関係は非対称です。賃貸人が交代した場合(地位の移転)、敷金関係は未払賃料に充当した残額が新賃貸人に承継されます。他方、賃借人が適法に交代した場合(賃借権の譲渡)、敷金は新賃借人に承継されません(旧賃借人に返還されます)。他人の債務の担保にされる筋合いはないからです。

賃貸借終了時の原状回復義務について、通常の使用収益によって生じた損耗(家具の設置跡など)と経年変化は義務の対象に含まれないことが明文化されています。賃借人の帰責事由によらない損傷(災害など)も原状回復の義務を負いません。

タダで貸す使用貸借は、同じ「貸し借り」でも保護の厚みがまったく違います。対比で覚えましょう。

項目賃貸借使用貸借
対価有償(賃料)無償
第三者への対抗力登記等で対抗できるなし
借主の死亡終了しない(相続される)終了する(相続されない)
通常の必要費賃貸人の負担借主の負担

請負・委任・贈与

請負は「仕事の完成」を約束する契約です。報酬は仕事の完成後、目的物の引渡しと同時に支払います(引渡しを要しない仕事は仕事終了後)。仕事を完成できなかった場合でも、注文者の帰責事由なく完成不能となったときや完成前に解除されたときは、既にした仕事のうち可分な部分で注文者が利益を受ける部分について、割合に応じた報酬を請求できます。請負人の契約不適合責任は売買の規定が準用され、種類・品質の不適合には知った時から 1 年以内の通知が必要です。もっとも、引渡しの時に請負人が不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは、この 1 年の制限は適用されません(民法637条2項)。売買の 1 年通知に付いていた「売主が悪意・重過失なら制限なし」と同じ発想です。また注文者の供した材料や注文者の指図によって生じた不適合については追及できません(請負人がその不適当を知りながら告げなかったときを除く)。解除については、注文者は仕事の完成前ならいつでも、損害を賠償して解除できます。また注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人(仕事完成前に限る)または破産管財人が解除できます。

委任は法律行為などの事務処理を任せる契約です。受任者は報酬の有無にかかわらず善良な管理者の注意義務(善管注意義務)を負います。タダで引き受けても手抜きは許されません。報酬は特約がなければ請求できず(原則無償)、支払時期は原則後払いです(成果完成型で成果の引渡しを要するときは引渡しと同時)。事務処理そのものに報酬を払う履行割合型では、①委任者の帰責事由によらずに事務処理ができなくなったとき、②委任が履行の中途で終了したときは、受任者は既にした履行の割合に応じて報酬を請求できます(民法648条3項)。途中で終わっても、やった分は取れるということです。費用は受任者の請求により前払いを受けられます。委任は各当事者がいつでも解除できますが、①相手方に不利な時期に解除したとき、②委任者が「受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く)をも目的とする委任」を解除したときは、損害賠償が必要です(やむを得ない事由があれば不要)。

終了事由委任者に生じた場合受任者に生じた場合
死亡終了する終了する
破産手続開始の決定終了する終了する
後見開始の審判終了しない終了する

後見開始で終了するのは受任者側だけです。事務を処理する側の判断能力が失われれば任せ続けられませんが、任せる側が被後見人になっても受任者は仕事を続けられるからです。代理権の消滅事由(第 10 章)と同じ構造なのでセットで覚えましょう。

贈与で試験に出るのはほぼ 1 点です。書面によらない贈与は、各当事者が解除できます。ただし履行の終わった部分は解除できません。不動産の贈与では、引渡しまたは所有権移転登記のいずれかがあれば履行が終わったものとされます(判例)。両方は不要です。

不法行為 — 使用者責任・工作物責任まで

契約関係のない相手に、故意または過失によって損害を与えたときの賠償ルールが不法行為(民法709条)です。成立要件は、①故意・過失、②権利または法律上保護される利益の侵害、③損害の発生、④行為と損害の因果関係です(加害者に責任能力があることも前提となります)。同じ損害賠償でも、債務不履行とはルールの細部が異なり、その「ズレ」が出題の的になります。

項目債務不履行不法行為
過失相殺必要的(責任と額を必ず考慮)任意的(額について考慮できる)
遅滞の起算点期限の定めのない債務は請求を受けた時不法行為の時(催告不要・判例)
消滅時効知った時から 5 年/行使できる時から 10 年(人身は 20 年)知った時から 3 年(人身は 5 年)/行為の時から 20 年

被害者側の論点も 2 つ。胎児は損害賠償請求権については既に生まれたものとみなされます。また被害者が死亡した場合の慰謝料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明していなくても当然に相続されます(判例)。

3年(原則) 5年(生命・身体の侵害) 不法行為の時 損害と加害者を知った時 20年(不法行為の時から) どちらか一方でも期間が経過すれば請求できなくなる(二重の期間制限)
図 14-6 不法行為の消滅時効。起算点が「知った時」(3 年・5 年)と「行為の時」(20 年)で違う点を、数字の入替えとセットで狙われます。

使用者責任(民法715条)は、被用者が「事業の執行について」第三者に加えた損害を、使用者も賠償する制度です。判例は「事業の執行について」を行為の外形から客観的に判断します(外形理論)。勤務時間外でも、制服姿で社用車を運転して起こした事故なら該当し得ます。使用者は選任・監督に相当の注意をしたことを証明すれば免責されますが、実際にはほとんど認められません。被用者自身の不法行為責任も消えず、被害者は使用者・被用者のどちらにも全額を請求できます。賠償した使用者から被用者への求償は信義則上相当と認められる限度に制限され(全額回収できるとは限りません)、逆に先に賠償した被用者から使用者への逆求償も認められます(判例)。なお注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を原則として賠償する責任を負いません(注文・指図に注文者の過失があった場合は別です)。請負人は被用者ではなく独立の事業者だからです。

工作物責任(民法717条)は 2 段ロケットの構造です。塀や建物など土地の工作物の設置・保存の瑕疵によって他人に損害が生じたときは、まず占有者(賃借人など)が責任を負いますが、損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたことを証明すれば免責されます(過失責任)。占有者が免責されると、所有者が責任を負い、こちらは無過失でも免責されない無過失責任です。被害者救済の最後の砦として、物の帰属主体に危険責任を負わせる趣旨です。賠償した占有者・所有者は、手抜き工事をした施工業者など他に損害の原因について責任を負う者に求償できます。

第1次: 過失責任 第2次: 無過失責任 工作物の瑕疵で 通行人がケガ ①占有者(借主) 注意していれば免責 ②所有者 免責されない 請求 免責なら 原因を作った施工業者など (求償の相手) 求償 所有者は無過失を証明しても免責されない(最後の砦の無過失責任)
図 14-7 工作物責任の 2 段ロケット。占有者には免責の道がありますが、所有者にはありません。「所有者も注意していれば免責」型の誤り肢を潰します。

残る 2 つは要点だけで足ります。動物の占有者は動物が他人に加えた損害を賠償しますが、動物の種類・性質に従い相当の注意をもって管理していたときは免責されます。共同不法行為では、数人が共同で損害を加えたとき各自が連帯して全額の賠償責任を負い(教唆者・幇助者も共同行為者とみなされます)、賠償した者は他の行為者に過失の割合(負担部分)に応じて求償できます。

ひっかけポイント

ここがひっかけ① 手付解除は「相手方」基準 「買主は自ら履行に着手した後は手付放棄による解除ができない」→ 誤り。解除を封じるのは相手方の着手だけです。もう 1 つ、手付解除された相手方が「損害賠償も請求できる」としたら誤り。手付の清算で終わりです。

ここがひっかけ② 1 年通知の守備範囲 1 年の通知期間があるのは種類・品質の不適合だけ。「数量不足や権利の不適合を知った時から 1 年以内に通知しなければ…」と書かれたら誤りです。逆に、種類・品質でも売主が悪意・重過失なら 1 年経過後でも追及できます。

ここがひっかけ③ 転貸借と敷金の非対称 合意解除は転借人に対抗不可、債務不履行解除は対抗可(催告も不要)。敷金は、賃貸人の交代では承継されるのに、賃借人の交代では承継されない。方向で結論が変わる論点は表で固めましょう。

ここがひっかけ④ 債務不履行とのクロス出題 不法行為の過失相殺は任意的(考慮「できる」)、債務不履行は必要的。遅延損害金は不法行為では催告なしに不法行為の時から発生。時効は 3 年(人身 5 年)・20 年 — 債権一般の 5 年・10 年と混ぜた肢に注意です。

一問一答で総仕上げ

Q1. 買主Bは売主Aに手付を交付し、その後、代金の一部を中間金として支払った。Aがまだ履行に着手していない場合、Bは手付を放棄して契約を解除できる。(○か×か)

答え: ○ 解除の可否は相手方(A)が履行に着手したかで判断します。B自身が中間金の支払いで履行に着手していても、Aが未着手である以上、Bは手付放棄による解除ができます。

Q2. 売主Aが手付による解除をするには、買主Bに対して手付の倍額を償還する旨を口頭で告げれば足りる。(○か×か)

答え: × 売主からの手付解除には倍額の「現実の提供」が必要です。口頭で告げるだけでは解除の効力は生じません。

Q3. 買主Bは、引き渡された土地の面積が契約より不足していることを知ったが、知った時から1年以内にその旨をAに通知しなかったため、代金減額請求ができなくなる。(○か×か)

答え: × 知った時から1年以内の通知が要求されるのは種類・品質に関する不適合だけです。数量・権利の不適合には通知期間の制限がなく、消滅時効の一般ルールに服するのみです。

Q4. 売買契約で「売主は契約不適合責任を一切負わない」と特約した場合、売主Aが知りながら告げなかった雨漏りについても、Aは責任を免れる。(○か×か)

答え: × 免責特約自体は有効ですが、売主が知りながら告げなかった事実については免責されません(民法572条)。悪意の売主は特約の陰に隠れられません。

Q5. 賃借物の一部が賃借人の責めに帰することができない事由により滅失して使用できなくなったときは、賃借人が減額請求をしなくても、賃料はその割合に応じて当然に減額される。(○か×か)

答え: ○ 改正民法611条の明文です。「減額を請求できる」ではなく「当然に減額される」に改められた点がそのまま出題されます。

Q6. AがBに賃貸し、BがAの承諾を得てCに転貸している場合、AとBが賃貸借契約を合意解除すれば、AはCに建物の明渡しを請求できる。(○か×か)

答え: × 合意解除は原則として転借人Cに対抗できません。AとBの合意だけでCの利用権を奪うのは不当だからです(合意解除当時、Bの債務不履行による解除権をAが有していた場合は対抗できます)。

Q7. 賃貸人Aは、賃借人Bが賃料を支払わないとき敷金をその弁済に充てることができるが、Bの側から敷金を未払賃料に充てるよう請求することはできない。(○か×か)

答え: ○ 充当できるのは賃貸人からの一方通行です。賃借人からの充当請求を認めると、敷金が賃料の前払いに流用され担保機能が失われるためです。

Q8. 使用貸借の借主が死亡した場合、使用貸借は終了せず、借主の地位は相続人に承継される。(○か×か)

答え: × 使用貸借は借主の死亡によって終了します。無償の貸し借りは「その人だから」貸すものだからです。賃借権が相続されるのと対比して覚えます。

Q9. 請負契約で、注文者の供した材料の性質によって仕事の目的物に不適合が生じた場合でも、請負人がその材料が不適当であることを知りながら告げなかったときは、注文者は請負人の契約不適合責任を追及できる。(○か×か)

答え: ○ 注文者の材料・指図による不適合は原則追及できませんが、請負人が不適当と知りながら告げなかったときは例外的に追及できます。プロが黙っていたことの責任です。

Q10. 無報酬で委任を受けた受任者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって委任事務を処理すれば足りる。(○か×か)

答え: × 受任者は報酬の有無にかかわらず善良な管理者の注意義務を負います。「無償なら注意義務が軽くなる」は委任では通用しません。

Q11. 被用者が事業の執行について第三者に損害を与え、使用者が全額を賠償した場合、使用者は被用者に対しその全額を常に求償できる。(○か×か)

答え: × 使用者から被用者への求償は、信義則上相当と認められる限度に制限されます(判例)。事業の利益を得ているのは使用者だからです。なお賠償した被用者から使用者への逆求償も認められます。

Q12. 土地の工作物の瑕疵により他人に損害が生じた場合において、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたときは、所有者は自己に過失がなくても損害賠償責任を負う。(○か×か)

答え: ○ 占有者が免責されると所有者が責任を負い、これは無過失責任です。所有者に免責の道はありません。

まとめ

手付解除相手方の履行の着手まで。買主=放棄/売主=倍額を現実に提供。損害賠償請求は不可
契約不適合の救済追完・代金減額・損害賠償(帰責事由必要)・解除。損害賠償と解除は併用可
1 年通知種類・品質のみ。売主が悪意・重過失なら制限なし。数量・権利は通知期間なし
賃貸借の費用必要費=直ちに全額/有益費=終了時に賃貸人の選択。一部滅失は当然減額
転貸借と解除合意解除は転借人に対抗不可/債務不履行解除は対抗可(催告不要)
敷金明渡しが先履行。賃貸人交代→承継する/賃借人交代→承継しない
委任・請負無償でも善管注意義務。注文者は完成前なら損害を賠償していつでも解除可
不法行為の時効知った時から 3 年(人身 5 年)・行為の時から 20 年
工作物責任①占有者(過失責任・注意で免責)→ ②所有者(無過失責任)。原因者へ求償可

民法の賃貸借を押さえたら、次章はその特別法 — 借主保護をさらに強化する借地借家法です。「民法とどこが違うか」の対比が得点に直結します。