宅建士合格教科書|2026年度(令和8年度)
第 13 章|例年 2〜3 問出題

債権総論 — 債務不履行・解除から保証・債権譲渡まで

改正民法の本丸。約束が破られたときのルールを体系で覚える

この章で学ぶこと

例年 2〜3 問出題。範囲は広いのですが、聞かれる論点は毎年ほぼ同じです。この章の表と図を覚えれば 2 問確保が狙えます。

2026年法改正 債権総論の分野には、2026年度(令和8年度)試験に向けた新規の法改正はありません。出題の主戦場は 2020年4月に施行された債権法の大改正で、古いテキストや旧知識のままだと確実に失点します。本章では改正で結論が変わった論点に「改正の要点」と印を付けてあります。そこだけでも先に読んでください。なお、法定利率は 3 年ごとに見直される変動制ですが、2026年度試験では年 3%で押さえます。

債務不履行の 3 つの型と、遅滞の起算点

債務不履行とは、債務者が約束どおりに債務を果たさないことをいいます。型は 3 つです。期限を過ぎても履行しない履行遅滞、履行が不可能になった履行不能、そして一応履行はしたが内容が不十分な不完全履行です。宅建試験で問われるのはほぼ履行遅滞と履行不能の 2 つで、債権者ができることも損害賠償請求と契約の解除の 2 つだけです。

暗記テク 約束を破られたら「罰金ね(損害賠償)」と「絶交ね(解除)」。この 2 つは両方できます。「どちらか一方しか選べない」という肢は毎年のように出る誤りです。

履行遅滞は「履行期を過ぎた」ことが出発点ですが、その履行期がいつ来るかは期限の定め方によって変わります。民法412条は次の 3 パターンを定めています。

① 確定期限 時間 期限の到来 この時から履行遅滞 ② 不確定期限 期限の到来 到来を知った時 履行の請求 いずれか早い方から遅滞 ③ 期限の定めなし 履行の請求を受けた時 その時から遅滞
図 13-1 ②の不確定期限だけが 2 つの候補時点を持ちます。「知った時」と「請求を受けた時」の早い方が起算点で、期限の到来そのものではありません。③は債務発生時ではなく請求時である点が狙われます。
期限の定め遅滞となる時具体例
確定期限期限が到来した時「4月1日に引き渡す」
不確定期限到来を知った時と請求を受けた時の早い方「父が死亡したら返す」
定めなし履行の請求を受けた時支払日を決めなかった売買代金

履行不能かどうかは、契約その他の債務の発生原因と取引上の社会通念に照らして判断します(民法412条の2第1項)。物理的に燃えてなくなった場合だけでなく、二重譲渡で相手方が先に移転登記を備えてしまった場合も履行不能です。また、契約を結んだ時点ですでに履行が不可能だった原始的不能でも契約は有効に成立し、債権者は債務不履行として損害賠償を請求できます(同条2項)。「最初から不能な契約は無効」という古い理解は改正で否定されました。

損害賠償請求 — 帰責事由・範囲・金銭債務の特則

損害賠償を請求するには、債務不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものでないことが必要です(民法415条1項ただし書)。この「帰責事由」は、単なる故意・過失ではなく、契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして判断される点が改正の要点です。要するに「その契約で誰がどこまでリスクを引き受けたか」で決まります。落雷や大地震のように誰の責任でもない事情で履行できなくなった場合、損害賠償は請求できません。

賠償の範囲は民法416条が決めています。債務不履行から通常生ずべき損害(通常損害)は当然に賠償対象です。これに対し、特別の事情によって生じた損害(特別損害)は、当事者がその事情を予見すべきであったときに限り賠償対象となります。基準は「予見していた」ではなく「予見すべきであった」という規範的な判断である点に注意してください。

金銭債務だけは別格です 代金や借入金のような金銭債務の不履行には特則があります(民法419条)。①損害額は法定利率(年 3%)で自動的に決まり、約定利率が高いときはそちら、②債権者は損害の証明が不要、③債務者は不可抗力を抗弁にできません。「取引先の入金が遅れたので払えなかった」「災害で送金できなかった」はいっさい通用しません。お金は世の中に必ず存在するので「調達できなかった」は言い訳にならない、というのが理由です。

あらかじめ「不履行のときは 500 万円払う」と決めておくのが賠償額の予定です(民法420条)。予定しておけば債権者は実際の損害額を証明せずに予定額を請求できます。予定をしても履行の請求や解除は妨げられず(同条2項)、違約金は賠償額の予定と推定されます(同条3項)。なお宅建業者が自ら売主となる場合は、賠償額の予定と違約金の合計が代金の 20% を超える部分が無効になります(8種制限。第7章)。民法の原則には上限がないので、上限が付くのは業法の世界だけだと区別してください。

債権者にも落ち度があったときは過失相殺がされます。債務不履行の過失相殺(民法418条)は、裁判所が必ず考慮しなければならず、賠償額だけでなく責任の有無まで判断できます。不法行為の過失相殺(民法722条2項)が「考慮することができる」=任意的で、しかも額の減額だけであるのと対照的です。この対比は第14章の不法行為と合わせて出題されます。

補助的な制度も 2 つ。債権者が損害賠償として全部の価額を受け取ったときは、その物や権利は債務者に移ります(損害賠償による代位。民法422条)。条文は「債務者は……当然に債権者に代位する」と書かれており、代位するのは債務者の側です。全額を賠償した債務者が、後から見つかった目的物を取得できる、という趣旨で、債権者が賠償金と目的物の両取りをするのを防ぐための規定です。また、履行不能と同一の原因で債務者が保険金などの利益を得たときは、債権者は損害額の限度でその引渡しを請求できます(代償請求権。民法422条の2)。焼失した建物の火災保険金を買主が押さえられるのはこの規定によります。

契約の解除 — 催告解除と無催告解除

解除は、契約をなかったことにして自分の債務からも解放される制度です。改正前は「債務者に落ち度があるから契約を解消させてやる」という制裁的な理解でしたが、現行法では「契約に縛られ続けることから債権者を解放する」制度と位置づけられました。そのため、解除に債務者の帰責事由は不要です(改正の要点)。落雷で建物が焼けた場合、損害賠償は請求できませんが解除はできます。

原則は催告解除です(民法541条)。相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がなければ解除できます。ただし、期間経過時の不履行が契約や取引上の社会通念に照らして軽微であるときは解除できません(同条ただし書)。一方、催告しても無意味な場面では無催告解除ができます(民法542条)。そして、債権者自身に帰責事由があるときは解除できません(民法543条)。

債務不履行が発生 債権者に帰責事由あり? はい 解除できない (543条) いいえ 全部不能/明確な履行拒絶/ 定期行為 等に当たるか? はい 無催告で解除可 (542条) いいえ 相当の期間を定めて催告 不履行が軽微でない → 解除できる 不履行が軽微 → 解除できない
図 13-2 最初に見るのは債権者側の帰責事由です。債務者に帰責事由があるかは、この図のどこにも登場しません。催告解除まで進んだ場合だけ「軽微かどうか」のフィルターがかかります。なお無催告解除の判断肢は代表例のみを示しています。全 5 事由は直後の表で確認してください。
解除の種類要件代表例
催告解除相当の期間を定めた催告+期間内に履行なし+不履行が軽微でない引渡しが遅れている
無催告解除債務の全部が履行不能建物が焼失した
債務者が履行を明確に拒絶「絶対に渡さない」
一部不能・一部拒絶で、残る部分だけでは目的を達成できない2 筆セットで買った一方が滅失
定期行為の時期を経過結婚式当日の引渡し
催告しても目的達成に足りる履行の見込みがない再三の不履行

解除すると契約ははじめから存在しなかったことになり、当事者は原状回復義務を負います(民法545条1項)。返還は同時履行の関係に立ちます。金銭を返すときは受領した時からの利息を付け(同条2項)、金銭以外の物を返すときは受領後に生じた果実も返します(同条3項)。そして解除をしても損害賠償請求は妨げられません(同条4項)。

問題は第三者Cが登場した場合です。民法545条1項ただし書は、解除によって第三者の権利を害することはできないと定めています。判例は、この保護を受けるにはCが登記を備えていることを要求します。他方、解除後に登場したCは、解除によって復帰した所有権をめぐってAと対抗関係に立つため、民法177条により先に登記を備えた方が勝ちます。結論として、解除の前後どちらでもCは登記が必要です。

時間 AB間の売買 Aが契約を解除 解除前にCが登場 (545条1項ただし書) 結論 Cは登記を備えていれば保護 Cの善意悪意は問わない 解除後にCが登場 (民法177条の対抗関係) 結論 AとCは登記の先後で決する 先に登記した方が勝つ いずれにしてもCが守られるには登記が必要
図 13-3 詐欺・錯誤による取消しなら「取消し前は善意無過失で保護、取消し後は登記勝負」と前後で保護要件が変わりますが(強迫にはこの第三者保護がありません)、解除は前後どちらでも登記が要る点が違います(第11章と比較してください)。

解除権は消えることもあります。相手方が相当の期間を定めて「解除するかどうか確答せよ」と催告し、その期間内に通知がなければ解除権は消滅します(民法547条)。また、解除権者が故意・過失で目的物を著しく損傷したり返還不能にしたりした場合も消滅します(民法548条。解除権を有することを知らなかったときを除く)。

危険負担と受領遅滞

売買契約の後、引渡し前に、誰の責任でもない事情(落雷など)で建物が焼失したとします。売主Aの引渡債務は履行不能で消滅しますが、買主Bの代金債務はどうなるか。これが危険負担の問題です。改正前は「特定物の危険は買主が負う(債権者主義)」とされ、Bは受け取れない建物の代金を全額払う建前でした。あまりに不合理なので、現行法はBに履行拒絶権を与える構成に改めました(民法536条1項。改正の要点)。

A(売主) 建物を引き渡す B(買主) 代金を支払う ①引渡し債務 落雷で履行不能 ②代金債務 ②はどうなる? 旧法: 債権者主義で Bは全額払う必要があった 改正 現行: 履行拒絶権 Bは代金の支払を拒める 契約を消すには解除が必要
図 13-4 現行法でも契約自体は自動的には消えません。Bは払わなくてよいだけで、契約から抜けたければ別途解除の意思表示が要ります。「当然に消滅する」という肢は誤りです。

例外もあります。履行不能が債権者Bの帰責事由による場合(買主が内覧中に失火した等)、Bは支払を拒めません。この場合、Aは自分の債務を免れて得た利益をBに償還します(民法536条2項)。また、いったん引渡しが済んだ後に双方無責で滅失・損傷したときは、Bは追完請求も代金減額請求も解除もできず、代金の支払も拒めません(民法567条1項)。危険は引渡しで買主に移るのです。

受領遅滞は、債権者が受け取りを拒んだり受け取れなかったりする場面です(民法413条)。効果は 3 つ。①特定物の引渡債務における債務者の注意義務が「自己の財産に対するのと同一の注意」に軽減される、②増加した保管費用等は債権者の負担、③受領遅滞中に双方無責の事由で履行不能となったときは債権者の帰責事由によるものとみなされる(民法413条の2第2項)。③により、債権者は解除も損害賠償もできず、代金支払も拒めなくなります。受け取らないでいると立場が逆転する、というのが要点です。

弁済と相殺

債務を消滅させる代表が弁済です。弁済は債務者本人以外の第三者もできますが(民法474条1項)、「弁済をするについて正当な利益」を有するかどうかで扱いが分かれます。正当な利益があるのは、物上保証人・抵当不動産の第三取得者・借地上の建物賃借人など、放っておくと自分の権利を失う立場の人です。単なる親族や友人は、情義上の利害しかないので正当な利益がありません。

弁済する第三者債務者の意思に反する場合債権者の意思に反する場合
正当な利益あり弁済できる弁済できる
正当な利益なしできない。ただし債権者が意思に反すると知らなかったときは有効できない。ただし債務者の委託を受け、それを債権者が知っていたときは可

弁済の相手を間違えた場合も押さえます。債権者らしい外観を持つ者(受領権者としての外観を有する者。偽の相続人や債権の二重譲受人など)に弁済したときは、弁済者が善意かつ無過失であれば有効な弁済になります(民法478条)。取引の安全を守るための規定なので、少しでも怪しむべき事情があれば保護されません。

弁済の提供をすれば、債務者は履行遅滞の責任を免れます。原則は債務の本旨に従った現実の提供ですが、債権者があらかじめ受領を拒んでいるときや、債権者の行為(取立て等)がなければ履行できないときは、準備をして受領を催告する口頭の提供で足ります(民法493条)。なお代物弁済は、当事者の合意だけで成立する諾成契約に改められましたが、債務が実際に消滅するのは給付がされた時です。不動産で代物弁済するなら、所有権移転登記まで済ませて初めて債務が消えます。

弁済した第三者は、求償できる範囲で債権者が持っていた債権と担保権を行使できます(弁済による代位。民法499条・501条)。正当な利益を有する者は当然に代位し、そうでない者は債権譲渡と同じ対抗要件(通知または承諾)が要ります。物上保証人が弁済すれば、債権者の抵当権をそのまま使って主債務者から回収できる、という仕組みです。

相殺は、互いに同種の債権を持ち合っているときに、一方的な意思表示で対当額を消滅させる制度です。自分が持っている債権(相殺に使う方)を自働債権、自分が負っている債務(消される方)を受働債権と呼びます。相殺するには双方の債務が弁済期にあること(相殺適状)が必要ですが、受働債権は弁済期未到来でもかまいません。自分の期限の利益を放棄すればよいだけだからです。自働債権の弁済期が来ていないのに相殺することはできません。

A(相殺する側) =相殺権者 B(相手方) =相殺の相手 自働債権(Aの債権) 受働債権(Aの債務) 自働債権は弁済期が必要/受働債権は期限の利益放棄で可 差押えと相殺 — 取得の前後で決まる Cが差押え 差押え前に取得した債権 → 相殺できる 差押え後に取得した債権 → 相殺できない
図 13-5 差押えの後に慌てて債権を買ってきて相殺する「後出し」は認められません(民法511条1項)。判断基準は債権を取得した時期であって、弁済期の到来時期ではありません。
相殺が禁止される場面禁止される向き根拠
悪意による不法行為に基づく損害賠償債務加害者側からは不可/被害者側からは可509条1号
人の生命・身体の侵害による損害賠償債務加害者側からは不可/被害者側からは可509条2号
差押禁止債権(給料の一部等)受働債権とすることが不可510条
差押え後に取得した債権自働債権とすることが不可511条1項

相殺の意思表示をすると、効力は相殺適状が生じた時点にさかのぼります(民法506条2項)。そのため、相殺適状になった後にどちらかの債権が時効で消滅していても、消滅前に適状にあったのであれば相殺できます(民法508条)。「時効で消えた債権はもう使えない」は誤りです。

債権譲渡と債務引受

債権は原則として自由に譲渡できます(民法466条1項)。まだ発生していない将来債権も譲渡でき、発生すれば譲受人が当然に取得します(民法466条の6)。当事者が「この債権は譲渡しない」と譲渡制限の意思表示をしていても、譲渡自体は有効です(民法466条2項。改正の要点)。ただし、特約について悪意または重過失の譲受人に対しては、債務者は履行を拒み、かつ譲渡人への弁済等をもって対抗できます(同条3項)。債務者は債権額に相当する金銭を供託して、面倒な二者択一から抜けることもできます(民法466条の2)。

次が最頻出の対抗要件です。二段構えになっている点を必ず区別してください。

誰に対抗するか必要な要件優劣の決め方
債務者に対して譲渡人からの通知または債務者の承諾(口頭可)—
第三者(二重譲受人等)に対して確定日付のある証書による通知または承諾債務者への到達の先後
A(譲渡人) もとの債権者 ①債権譲渡 ②債権譲渡 確定日付ある通知 B(譲受人1) 通知が先に到達 D(債務者) 二重に請求される C(譲受人2) 通知が後に到達 結論 結論 Bが優先する 確定日付の先後ではなく到達の先後 Dは先に到達した方に払う 到達の先後で決まる
図 13-6 通知は必ず譲渡人Aが出します。譲受人B・Cが自分で通知しても効力はありません(勝手に「私が新しい債権者です」と名乗る詐欺を防ぐためです)。承諾だけは債務者Dがします。

債務者Dは、対抗要件が備わる時までに譲渡人Aに対して生じていた事由を、そのまま譲受人にも主張できます(民法468条1項)。すでに一部を弁済していた、同時履行の抗弁がある、といった事情は譲渡で消えません。Aに対する反対債権を持っていた場合の相殺も、対抗要件具備時より前に取得した債権であれば主張できます(民法469条1項)。さらに、対抗要件具備時より後に取得した債権であっても、①具備時より前の原因に基づいて生じた債権、②譲受人が取得した債権の発生原因である契約から生じた債権であれば、相殺を対抗できます(民法469条2項。改正の要点)。取引が続いている相手との債権債務は、譲渡された瞬間にすっぱり切れるわけではない、という趣旨です。

債務引受も押さえておきます。併存的債務引受は、引受人が債務者と連帯して同じ債務を負うもので、債権者と引受人の契約でできます(債務者の意思に反しても可)。債務者と引受人の契約でもできますが、その場合は債権者の承諾が効力要件です。免責的債務引受は債務者が債務を免れるため債権者に不利になり得るので、債権者と引受人の契約(債務者への通知で効力発生)か、債務者と引受人の契約+債権者の承諾が必要です。免責的債務引受の引受人は、債務者に求償することができません(民法472条の3)。

保証・連帯保証・連帯債務

保証は、主債務者Aが払えないときに保証人Cが代わりに払う人的担保です。まず当事者を間違えないでください。保証契約は債権者Bと保証人Cの間で結びます。Aと結ぶのではありません。しかも保証契約は書面(または電磁的記録)でしなければ効力を生じません(民法446条2項・3項)。軽い気持ちで保証人になる悲劇を防ぐためです。

保証債務には 3 つの性質があります。①付従性(主債務が消えれば保証債務も消え、主債務より重くなることもない)、②随伴性(債権が譲渡されれば保証債務も付いていく)、③補充性(主債務者が先、保証人は後)。③の現れが 2 つの抗弁権です。催告の抗弁は「まず主債務者に請求してください」と言える権利(民法452条。ただし主債務者が破産手続開始の決定を受けたときや行方不明のときは行使できません)。検索の抗弁は「主債務者に弁済の資力があり執行も容易だ」と保証人が証明して、先に主債務者の財産へ執行させる権利です(民法453条)。

B(債権者) 貸した人 A(主債務者) 借りた人 C(保証人) 肩代わりする人 ①貸付け ②保証契約 ③弁済したら求償 単純保証 催告・検索の抗弁あり 連帯保証 どちらの抗弁もない
図 13-7 ②の矢印がAではなくBに向かっている点が最重要です。「保証契約は主債務者と保証人の間で締結する」という肢は、それだけで誤りと判定できます。

暗記テク 合言葉は「連帯とついたら全員に全額」。連帯保証人には催告の抗弁も検索の抗弁も分別の利益もありません。債権者はいきなり連帯保証人に全額を請求できます。「連帯保証人が 3 人いるから 3 分の 1 ずつ」は分別の利益の話で、連帯保証には当てはまりません。

保証債務の範囲は広く、主債務の利息・違約金・損害賠償その他従たるものをすべて含みます(民法447条1項)。判例は、特定物売買の売主のために保証した者は、売主の債務不履行で契約が解除された場合の代金返還義務(原状回復義務)についても責任を負うとしています。

誰に生じた事由かでも扱いが変わります。主債務者に生じた事由は、時効の完成猶予・更新も含めて原則として保証人にも効力が及びます(付従性の現れ)。逆に保証人に生じた事由は、弁済のように主債務を消滅させるもの以外は主債務者に影響しません。連帯保証でも同じで、連帯保証人への履行の請求は主債務者に効力を及ぼしません。

保証人保護のルールも近年整備されました。個人が保証人となる個人根保証契約は、極度額を書面で定めなければ効力を生じません(民法465条の2)。また、事業のために負担した貸金等債務を個人が保証する場合は、契約締結日前 1 か月以内に作成された公正証書で保証意思を表示していなければ効力を生じません(民法465条の6)。ただし主債務者の取締役や、主債務者と共同して事業を行う者などは例外です。さらに、委託を受けた保証人から請求があれば債権者は主債務の履行状況を情報提供する義務を負い(民法458条の2)、主債務者が期限の利益を失ったときは、個人保証人に対し知った時から 2 か月以内に通知しなければなりません(民法458条の3)。

連帯債務は、複数の債務者が同一内容の債務をそれぞれ全額負う形です。誰か 1 人に生じた事由が他の債務者にも影響するか(絶対効)しないか(相対効)が出題の核心で、原則は相対効です(民法441条)。

1人に生じた事由他の連帯債務者への影響キーワード
弁済・代物弁済・供託絶対効(他も債務を免れる)債権が満足した
相殺絶対効実質的に弁済と同じ
更改絶対効債権が入れ替わった
混同絶対効弁済したものとみなす
履行の請求相対効(改正の要点)他の時効は止まらない
免除相対効(改正の要点)他は全額のまま
時効の完成相対効(改正の要点)他は全額のまま
1人についての無効・取消し影響しない(他は全額を負う)債務の独立性

暗記テク 絶対効は「こんど(混同)そう(相殺)こう(更改)べんさい(弁済)」の 4 つだけ。要するにお金の決着がついた場面だけが絶対効です。請求・免除・時効という「決着していない事情」は全部相対効、と理由で覚えると入れ替えのひっかけに強くなります。

弁済した連帯債務者は、他の債務者にその負担部分に応じて求償できます。全額を弁済しなくても、一部の弁済でも割合に応じて求償できる点が重要です(民法442条1項)。300万円の連帯債務(負担部分平等)で 60 万円だけ払った人は、他の 2 人に 20 万円ずつ求償できます。ただし、弁済する前と後に他の債務者へ通知を怠ると求償が制限される場合があります(民法443条)。

ひっかけポイント

ここがひっかけ① 「解除するには債務者の帰責事由が必要である」「損害賠償を請求したので解除はできない」はいずれも誤りです。解除に債務者の帰責事由は不要(改正の要点)、損害賠償と解除は併用可(民法545条4項)。逆に、損害賠償には債務者の帰責事由が必要で、債権者に帰責事由があると解除できない(民法543条)。「誰の帰責事由の話をしているか」を必ず確認してください。

ここがひっかけ② 相殺の禁止はどちら側からの相殺かで結論が反転します。悪意の不法行為や人身侵害の損害賠償債務を受働債権とする相殺(=加害者からの相殺)は禁止ですが、被害者の側からこれを自働債権として相殺するのは自由です。被害者に現実の金銭を渡させるための規定なので、被害者自身が「差引きでいい」と言うなら止める理由がないからです。

ここがひっかけ③ 債権が二重に譲渡され、どちらも確定日付のある通知だった場合、優劣は債務者への到達の先後で決まります。確定日付の先後ではありません。日付が古い方が勝つように見せる肢が定番です。また通知は譲渡人から行うもので、譲受人からの通知には効力がありません(承諾は債務者が行います)。

ここがひっかけ④ 連帯債務者の 1 人に対する履行の請求・免除・時効の完成はすべて相対効です。「1 人に請求すれば全員の時効の完成が猶予される」「1 人を免除すれば他の債務者もその負担部分について債務を免れる」はどちらも改正前の知識で、現在は誤りです。連帯保証でも同じで、連帯保証人への請求は主債務者に効力を及ぼしません。

一問一答で総仕上げ

Q1. 返還時期を定めずに金銭を貸し付けた場合、借主は、金銭を受け取った時から履行遅滞の責任を負う。(○か×か)

答え: × 期限の定めのない債務では、債務者は履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負うのが原則です(民法412条3項)。債務が発生した時ではありません。なお返還時期を定めない消費貸借には特則があり、貸主が相当の期間を定めて催告し、その期間が経過した時から遅滞となります(民法591条1項)。いずれにせよ「受け取った時から」ではありません。

Q2. 売買代金の支払を怠った買主は、大規模な災害で金融機関が停止し送金できなかったことを証明すれば、遅延損害金の支払を免れる。(○か×か)

答え: × 金銭債務の不履行については、債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができません(民法419条3項)。債権者は損害の証明も不要で、法定利率(年 3%)による遅延損害金を当然に請求できます。

Q3. 債権者が相当の期間を定めて履行を催告したが、その期間を経過した時点における債務不履行が契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、債権者は契約を解除することができない。(○か×か)

答え: ○ 民法541条ただし書のとおりです。催告さえすれば必ず解除できるわけではなく、軽微性のフィルターがかかります。軽微かどうかは催告期間が経過した時点で判断します。

Q4. 債務不履行を理由に契約を解除した債権者は、契約が遡って消滅する以上、あわせて損害賠償を請求することはできない。(○か×か)

答え: × 解除は損害賠償の請求を妨げません(民法545条4項)。「罰金ね(損害賠償)」と「絶交ね(解除)」は両方できます。この形の誤り肢は毎年のように出題されます。

Q5. AがBに建物を売却したが、引渡し前に落雷により建物が滅失した。この場合、売買契約は当然に消滅するので、Bは解除の意思表示をする必要がない。(○か×か)

答え: × 双方無責の履行不能では、Bは代金の支払を拒むことができるにとどまります(民法536条1項)。契約自体を消滅させるには解除が必要です。なお、この解除にAの帰責事由は要りません。

Q6. 債権者が受領を拒んでいる間に、当事者双方の責めに帰することができない事由で履行が不能となった場合、その不能は債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなされる。(○か×か)

答え: × 受領遅滞中の双方無責の履行不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなされます(民法413条の2第2項)。その結果、債権者は解除できず、反対給付の履行も拒めません。

Q7. AがBから借入れをし、A所有の甲土地にBの抵当権が設定されている。甲土地をAから買い受けたCは、Aの意思に反しても、AのBに対する債務を弁済することができる。(○か×か)

答え: ○ 抵当不動産の第三取得者Cは、弁済しなければ競売で甲土地を失う立場にあり、弁済をするについて正当な利益を有します。正当な利益がある第三者は債務者の意思に反しても弁済でき(民法474条2項)、弁済によってBの抵当権に代位します。

Q8. 債務者が、差押えを受ける前に取得していた債権を自働債権として、差押え後に相殺の意思表示をした場合、この相殺を差押債権者に対抗することができる。(○か×か)

答え: ○ 基準は債権を取得した時期です。差押え前に取得していた債権であれば、相殺の意思表示が差押え後でも対抗できます(民法511条1項)。差押え後に取得した債権による「後出し」相殺は対抗できません。

Q9. Aに対する債権がBとCに二重に譲渡され、いずれについても確定日付のある証書による通知がされた場合、確定日付の早い方の譲受人が優先する。(○か×か)

答え: × 優劣は債務者Aへの通知の到達の先後で決まります(判例)。確定日付は「通知が本当にその時点で存在したこと」を示す道具にすぎず、日付そのもので順位が決まるわけではありません。

Q10. 譲渡制限の意思表示がされた債権を第三者に譲渡した場合、その譲渡は無効となる。(○か×か)

答え: × 譲渡制限の意思表示があっても、債権譲渡自体は有効です(民法466条2項)。特約について悪意または重過失の譲受人に対しては、債務者が履行を拒み、譲渡人への弁済等をもって対抗できるにとどまります。

Q11. 保証契約は、主たる債務者と保証人との間で、書面によって締結しなければ効力を生じない。(○か×か)

答え: × 書面(または電磁的記録)が必要な点は正しいのですが、保証契約の当事者は債権者と保証人です(民法446条)。主債務者の委託は要件ではなく、その意思に反していても保証契約は有効に成立します。

Q12. 債権者が連帯債務者の1人に対して債務を免除した場合、他の連帯債務者も、その者の負担部分について債務を免れる。(○か×か)

答え: × 免除は相対効です(民法441条)。他の連帯債務者は依然として全額の債務を負います。改正前は負担部分について絶対効とされていたため、古い教材で学んだ人ほど間違えます。

まとめ

債権総論は範囲が広く見えますが、得点源になるのは下の数字と分岐です。ここだけは即答できるようにしてください。

論点結論ひっかけの型
遅滞の起算点(期限なし)履行の請求を受けた時債務の発生時とする
遅滞の起算点(不確定期限)知った時と請求時の早い方期限到来時とする
法定利率年 3%(変動制)年 5% とする(旧法)
金銭債務不可抗力でも免責されない災害で免責とする
解除の帰責事由債務者の帰責事由は不要必要とする
危険負担債権者の履行拒絶権契約が当然消滅とする
解除と第三者前後とも登記が必要解除前は登記不要とする
債権譲渡の第三者対抗確定日付ある通知の到達の先後確定日付の先後とする
譲渡制限特約譲渡は有効/履行拒絶で処理譲渡が無効とする
保証契約債権者と保証人/書面必須主債務者と結ぶとする
連帯保証催告・検索の抗弁・分別の利益なし抗弁ありとする
個人根保証極度額を定めないと無効書面だけで足りるとする
連帯債務の絶対効弁済・相殺・更改・混同の4 つだけ請求・免除・時効を加える
連帯債務の求償一部弁済でも割合に応じて可全額弁済を要するとする

次の第14章では、この総論のルールが実際の契約類型でどう働くかを見ます。売買の手付と契約不適合責任、賃貸借と敷金、そして不法行為です。とくに契約不適合責任は、本章の損害賠償・解除の理解がそのまま前提になります。