宅建士合格教科書|2026年度(令和8年度)
第 11 章|例年 2 問前後出題(登記法 1 問+物権変動 1 問)

物権変動と不動産登記法

「登記がなければ対抗できない」の射程と、登記簿の読み方・新義務

この章で学ぶこと

例年 2 問前後出題(物権変動 1 問+不動産登記法 1 問)。前後理論と登記法の暗記事項を固めて 2 問とも確保するのが目標です。

物権変動の基本 — 意思主義と対抗要件主義

物権とは、所有権や抵当権のように物を直接支配する権利です。その発生・移転・消滅をまとめて物権変動と呼びます。民法176条は「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる」と定めます(意思主義)。つまり A と B が売買契約を結べば、契約だけで所有権は B に移転します。登記も、引渡しも、代金の支払いも要りません(特約があれば別です)。

ところが、当事者間で所有権が移ったことを第三者に主張する(対抗する)には登記が必要です。民法177条は、不動産の物権変動は「登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と定めます(対抗要件主義)。この 2 段構えが本章の出発点です。典型例が二重譲渡です。

A(売主) B(第一買主) C(第二買主) ①売買 ②売買 対抗関係 =先に登記した者が勝つ
図 11-1 二重譲渡の対抗関係。契約の先後ではなく登記の先後で決着します。C が①の売買を知っていた(単純悪意)だけなら、C は登記を備えれば B に勝てます。

ここで最重要なのは、C が悪意(B への売却を知っていた)でも構わないという点です。不動産取引は自由競争であり、「早い者勝ちの競争に登記で勝った」だけなら保護されます。悪意者を排除するのは、次に述べる「背信的悪意者」に至った場合だけです。

暗記テク 図を書いて「1 人の人から 2 本の矢印が出たら、登記の先後で決める」と覚えます。二重譲渡はもちろん、後で学ぶ「取消し後」「解除後」「時効完成後」の第三者もすべてこの形(対抗関係)に還元できます。

「第三者」の範囲 — 登記がなくても勝てる相手

民法177条の「第三者」とは、当事者とその包括承継人(相続人など)以外の者で、登記がないことを主張する正当な利益を有する者に限られます(判例)。裏返すと、正当な利益のない者に対しては登記がなくても所有権を対抗できます。試験では「登記がないと負ける相手か、登記なしで勝てる相手か」の仕分けがそのまま出題されます。

登記なしで対抗できる相手理由具体例
無権利者・その譲受人そもそも権利がなく、保護に値しない偽造書類で登記名義を得た者、虚偽表示と知って譲り受けた者
不法占拠者・不法行為者正当な利益がない権原なく建物を占拠する者。登記なしで明渡し請求可
背信的悪意者自由競争の範囲を逸脱B を害する目的だけで買い受けて高値で売りつけようとする者
詐欺・強迫で登記申請を妨げた者登記がないことに自ら加担B の登記申請を強迫で妨害して自分が登記した C
他人のために登記を申請する義務を負う者登記への協力義務と矛盾B の登記申請を代理すべき者が自分名義で登記した場合

注意点が 2 つあります。第 1 に、背信的悪意者からの転得者は、転得者自身が背信的悪意者と評価されない限り、登記を備えれば所有権を対抗できます(判例)。背信性は人ごとに判断されるからです。第 2 に、A→B→C と順次譲渡されて登記名義が A に残っている場合、A は C から見て「前々主」=当事者側の無権利者であり第三者に当たりません。C は登記がなくても A に所有権を対抗できます。二重譲渡(1 人から 2 本の矢印)と、順次譲渡(矢印が一直線)を図で見分けてください。

取消し・解除・時効と登記 — 「前」と「後」の理論

物権変動の最頻出テーマです。契約の取消し・解除や時効完成をはさんで、第三者 C がその前に現れたか、後に現れたかで適用ルールが変わります。理屈はシンプルで、「後」に現れた C との関係は、取消し・解除では復帰的物権変動によって、時効では A を起点として、いずれも1 人から 2 本の矢印が出る二重譲渡類似の形になるため、177条の対抗関係(登記の先後)で処理されるのです。

取消しと登記

時間 ①売買契約 (BがAを騙した) ②Aが詐欺を理由に取消し C登場(前) C登場(後) 取消し前に現れた C 意思表示のルールで決着 善意無過失のCが勝つ(登記不問) 取消し後に現れた C 民法177条の対抗関係で決着 先に登記を備えた方が勝つ
図 11-2 詐欺取消しと第三者。取消しの時点を境に、適用されるルールが「意思表示の規定」から「177条の対抗関係」に切り替わります。

取消し前に利害関係に入った C との関係は、第9章で学んだ意思表示の規定で処理します。詐欺取消しは善意無過失の C に対抗できず、強迫取消しはどんな C にも対抗できます。ここでは C の登記の有無は問いません。これに対し取消し後に B から買い受けた C との関係では、「取消しによる B→A の復帰」と「売買による B→C の移転」が B を起点とする二重譲渡類似の関係になり、A と C のうち先に登記を備えた方が勝ちます。取り消して安心して登記を放置した A は、C に登記を先に取られると負けるのです。

解除と登記

契約の解除では結論がさらに簡明です。解除前の第三者は民法545条1項ただし書で保護されますが、判例によりC が保護されるには登記(権利保護のための資格要件)が必要で、C の善意・悪意は問いません。解除後の第三者とは177条の対抗関係になります。つまり解除の場面は、前後を問わず「C 側に登記があるかどうか」で決まると整理できます。ただし理屈は別物で、解除前は C が保護されるための権利保護資格要件(A と登記を取り合う競争ではなく、C に登記がなければ A は登記なくして対抗できます)、解除後は177条の対抗関係で先に登記を備えた方が勝つ、という違いがあります。

時効と登記

時間 ①Bが占有開始 (Aの土地を所有の意思で) ②時効完成(10年/20年) C登場(前) C登場(後) 時効完成前に現れた C Bは登記なくして対抗できる (Cは当事者に近い立場) 時効完成後に現れた C 民法177条の対抗関係で決着 先に登記を備えた方が勝つ
図 11-3 時効と第三者。完成「前」に A から買った C は、時効で権利を失う立場をそのまま引き継ぐため、B は登記なしで勝てます。

時効完成前に A から土地を買った C は、「時効で取られるかもしれない土地」を買った当事者に近い立場です。だから時効取得者 B は登記なくして C に対抗できます。占有者 B に登記を要求するのは酷だからです。一方完成後に A から買った C とは、A を起点に「時効による B への移転」と「売買による C への移転」が並ぶ対抗関係となり、登記の先後で決まります。なお、完成後の C に登記で負けた B でも、C の登記時点からさらに時効期間の占有を続ければ、あらためて時効取得できます(発展知識)。

場面「前」に現れた第三者 C「後」に現れた第三者 C
詐欺取消しC が善意無過失なら対抗不可(登記不問)177条 — 登記の先後
錯誤取消しC が善意無過失なら対抗不可(登記不問)177条 — 登記の先後
強迫取消しC が善意無過失でも常に対抗可177条 — 登記の先後
制限行為能力取消し常に対抗可(第三者保護規定なし)177条 — 登記の先後
解除545条1項ただし書 — C は善意悪意不問だが登記が必要177条 — 登記の先後
取得時効時効取得者は登記なくして対抗可177条 — 登記の先後

相続と登記

相続をめぐる物権変動には民法899条の2という専用ルールがあります。柱は「法定相続分までは登記なしで対抗できる。法定相続分を超える部分は登記(対抗要件)がなければ第三者に対抗できない」です。

A(被相続人) B(相続人) C(相続人) 相続 1/2 相続 1/2 遺産分割で持分移転 D(Cから譲受け) 持分1/2を譲渡 自分の法定相続分1/2 → 登記不要で対抗可 分割で増えた+1/2の部分 → 登記がなければ D に対抗不可
図 11-4 遺産分割と第三者。B が単独取得する遺産分割が成立しても、登記前に C の持分を差し押さえた債権者や譲受人 D には、法定相続分を超える部分を対抗できません。
場面第三者への対抗考え方
共同相続(法定相続分)登記不要で対抗可他の相続人が勝手に単独名義で登記して売却しても、自己の持分については相手が無権利
遺産分割で法定相続分を超えて取得超える部分は登記が必要(899条の2)分割による持分移動は第三者から見えないため、公示を要求
特定財産承継遺言・相続分の指定法定相続分を超える部分は登記が必要(899条の2)「相続させる」遺言でも同じ。遺言の存在は第三者から見えない
相続放棄登記不要で対抗可放棄の遡及効は絶対的。放棄者は初めから相続人でなかったことになり、放棄者の持分を差し押さえた債権者も保護されない

対比の軸は「相続放棄だけは登記不要側」という点です。放棄には熟慮期間(3 ヶ月)という短い期限があり家庭裁判所への申述で公的に確定するため、遡及効が徹底されます。一方、遺産分割や遺言による「法定相続分超え」はいつ起きたか外から分からないため、登記を要求して取引の安全を守ります。

不動産登記法① — 登記記録の構成と表示に関する登記

ここからは手続法である不動産登記法です。理屈よりルールの正確な暗記が得点に直結します。登記記録は1 つの不動産(1 筆の土地・1 個の建物)ごとに 1 つ作成され(一不動産一登記記録)、表題部と権利部で構成されます。

登記記録(1つの不動産に1つ作成) 表題部 =表示に関する登記 物理的現況を公示する 土地: 所在・地番・地目・地積 建物: 種類・構造・床面積など 申請義務あり(1ヶ月以内) 権利部 =権利に関する登記(原則任意) 甲区: 所有権に関する登記 (保存・移転・差押え等) 乙区: 所有権以外の権利 (抵当権・賃借権・地上権等)
図 11-5 登記記録の構成。「目に見える現況=表題部(申請義務あり)」「目に見えない権利=権利部(原則任意)」と対で覚えます。

表示に関する登記は不動産の物理的現況(土地なら所在・地番・地目・地積、建物なら所在・家屋番号・種類・構造・床面積)を公示するもので、課税等の基礎になるため申請が義務です。建物を新築したとき・建物が滅失したときなどは、所有者は1 ヶ月以内に申請しなければなりません。表示に関する登記は登記官が職権ですることもできます。一方、権利に関する登記は対抗力を得るための登記であり、するかどうかは原則自由(任意)です。ただし後述のとおり、相続登記と住所等変更登記は例外的に義務化されています。

不動産登記法② — 共同申請の原則と単独申請の例外

権利に関する登記は、登記によって利益を受ける登記権利者(例: 買主)と不利益を受ける登記義務者(例: 売主)が共同で申請するのが原則です(共同申請主義)。不利益を受ける側を関与させることで、登記の真実性を担保する趣旨です。したがって例外=単独申請できるのは、「相手がいない、または相手の協力を求める必要がない」場合に限られます。

単独申請できる登記単独でよい理由
登記手続を命じる確定判決による登記判決が義務者の協力を代替する
相続・法人の合併による権利移転登記義務者となるべき者が存在しない(包括承継)
相続人に対する遺贈による所有権移転登記相続登記との均衡(近年の改正で単独申請化)
登記名義人の氏名・名称・住所の変更・更正の登記誰も不利益を受けない
所有権保存登記甲区最初の登記であり、そもそも相手(義務者)がいない
仮登記(仮登記義務者の承諾があるとき・仮登記を命ずる処分があるとき)承諾・裁判所の処分が共同申請を代替する
仮登記の抹消(仮登記名義人/承諾を得た利害関係人)本人の申請または承諾で真実性を確保できる
買戻しの特約の登記の抹消(売買契約の日から10年経過)期間経過で買戻権の消滅が明らか

暗記テク 単独申請の共通イメージは「相手がいない・相手に頼まなくても真実だと分かる」。逆に、所有権移転登記の抹消は原則どおり共同申請です。「単独でできる」と書かれたら疑ってください。

所有権保存登記(甲区に最初にされる所有権の登記)を申請できる者は限定されています。①表題部所有者とその相続人その他の一般承継人、②所有権を有することが確定判決で確認された者、③収用によって所有権を取得した者。さらに区分建物(マンション)では、表題部所有者から直接所有権を取得した者(分譲業者から買った買主)も保存登記ができます(ただしその建物が敷地権付き区分建物であるときは、敷地権の登記名義人の承諾が必要です)。分譲のたびに業者名義の保存登記を挟む無駄を省くための特例で、頻出です。

不動産登記法③ — 相続登記・住所等変更登記の義務化

所有者不明土地問題への対策として、権利に関する登記の「原則任意」に大きな例外が 2 つ設けられました。数字の対比がそのまま出題される、今年度の最重要ゾーンです。

相続登記の申請義務化(2024年4月1日施行): 相続(相続人に対する遺贈による取得を含む)で所有権を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から 3 年以内に移転登記を申請しなければなりません。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料です。遺産分割で法定相続分を超えて取得した場合は、分割成立日から 3 年以内にその内容の登記も必要です。期限内の分割が難しいときは、自分が相続人である旨を申し出る相続人申告登記をすれば義務を履行したとみなされます(その後の遺産分割成立時は成立日から 3 年以内に登記)。なお、この義務は施行日前に開始した相続にも適用されます。この場合の起算点は「知った日」と「2024年4月1日」のいずれか遅い日で、施行日前にすでに取得を知っていた人の期限は2027年3月31日です。「2024年4月1日以後の相続だけが対象」と思い込ませる肢に注意してください。

2026年法改正 住所等変更登記の義務化(2026年4月1日施行): 所有権の登記名義人は、氏名・名称・住所に変更があった日から 2 年以内に変更登記を申請する義務を負います。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料です。施行日前に生じた変更も対象で、施行日から 2 年以内に申請すれば足ります。あわせて、自然人が「検索用情報」の申出をしておけば法務局が職権で(本人の了解を前提に)住基ネット情報等をもとに変更登記をする仕組みも始まりました。相続登記「知った日から 3 年・10万円」との数字クロスが本命の出題予想です。

項目相続登記の義務住所等変更登記の義務
施行日2024年4月1日(施行日前の相続も対象)2026年4月1日(施行日前の変更も対象)
起算点相続開始+所有権取得を知った日(施行日前の相続は施行日と知った日の遅い方)変更があった日(施行日前の変更は施行日)
期間3 年以内2 年以内
過料10万円以下5万円以下
簡易な履行手段相続人申告登記検索用情報の申出→職権変更登記

2026年法改正 所有不動産記録証明制度(2026年2月2日運用開始): 自分(または被相続人)が所有権の登記名義人として記録されている不動産の一覧を法務局が証明書として発行する制度です。請求できるのは本人と、相続人その他の一般承継人(代理人による請求も可)に限られ、無関係の第三者は請求できません。相続財産の見落とし防止が目的です。

不動産登記法④ — 仮登記・区分建物・登記の公開

仮登記は、本登記の順位を前もって確保しておくための予備的な登記です。2 種類あります。

種類使う場面例
1号仮登記物権変動は既に生じているが、手続上の条件(登記識別情報の提供など)が備わっていない売買は成立したが書類がそろわない
2号仮登記物権変動はまだ生じていないが、請求権を保全したい売買の予約による所有権移転請求権、停止条件付きの権利
時間 ①B 仮登記 (4月1日) ②C 所有権移転登記 (6月1日) ③B 本登記 (9月1日) 本登記の順位=①仮登記の順位(順位保全効) → 後からでも B は②の C に優先できる 所有権の仮登記の本登記には、C(利害関係第三者)の承諾が必要
図 11-6 仮登記の順位保全効。仮登記自体に対抗力はありませんが、本登記をしたとき、その順位が仮登記の時にさかのぼって確保されます。

押さえるべきは 3 点です。①仮登記に基づいて本登記をすると、本登記の順位は仮登記の順位によります(順位保全効)。②仮登記のままでは対抗力はありません。③所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者(図の C)がいる場合、その承諾があるときに限り申請できます(本登記がされると C の登記は職権で抹消されるため)。なお乙区の権利(抵当権など)の仮登記の本登記には、この承諾は不要です。

区分建物(マンション)の登記では、専有部分の登記記録の表題部に敷地権(登記された敷地利用権で専有部分と分離処分できないもの)が表示されます。敷地権の登記がされると、以後は専有部分と敷地利用権を分離して処分できないことが公示され、原則として専有部分の登記の効力が敷地権にも及びます。

最後に登記の公開です。登記事項証明書は、手数料を納付すれば誰でも交付を請求でき、利害関係を疎明する必要はありません(オンライン請求も可)。他方、登記識別情報は登記名義人だけに通知される 12 桁の英数字(従来の権利証に相当)で、登記完了時に通知されます(申請人があらかじめ希望しない旨を申し出れば通知されません)。「誰でも見られる証明書」と「本人だけの識別情報」を対にして覚えてください。

ひっかけポイント

ここがひっかけ①「悪意の第三者には登記なしで対抗できる」 誤りです。二重譲渡の C は単純悪意でも 177条の第三者に当たり、登記を先に備えれば勝ちます。登記なしで勝てるのは、背信的悪意者・無権利者・不法占拠者など「正当な利益」のない者に限られます。「知っていた C」で切らず「害する目的まであったか」で切るのが正解筋です。

ここがひっかけ②「前後」の入替え 「時効完成前に買い受けた C に対し、B は登記がなければ対抗できない」(正しくは登記不要)、「詐欺取消し後に現れた C との関係は C の善意悪意で決まる」(正しくは登記の先後)のように、前後理論の結論を入れ替える肢が定番です。必ず時系列を図にし、「後」=二重譲渡類似=登記、と機械的に処理してください。

ここがひっかけ③ 期間・金額のクロス 相続登記「知った日から 3 年・10万円以下の過料」と住所等変更登記「変更日から 2 年・5万円以下の過料」の数字・起算点の入替えが 2026 年度の本命です。表示に関する登記の「1 ヶ月以内」も混ぜて出題されます。「表題 1 ヶ月 → 住所 2 年 → 相続 3 年」と期間順に唱えて固定しましょう。

ここがひっかけ④「単独で申請できる」の乱用 所有権移転登記の抹消や、通常の売買による移転登記を「当事者の合意があれば単独で申請できる」とする肢は誤りです。原則は共同申請。単独申請は判決・相続合併・相続人への遺贈・氏名住所変更・保存登記・仮登記関係など列挙された例外だけです。

一問一答で総仕上げ

Q1. Aが自己所有の土地をBに売却した後、同じ土地をCにも売却した。Cは、AB間の売買を知って買い受けた場合であっても、先に所有権移転登記を備えればBに所有権を対抗できる。(○か×か)

答え: ○ 単純悪意の C も民法177条の「第三者」に当たります。自由競争の範囲内であり、登記の先後で決まります。対抗できないのは背信的悪意者に至った場合です。

Q2. Aから土地を買い受けたBは、所有権移転登記を備えていない場合、その土地を権原なく占拠するCに対して明渡しを請求できない。(○か×か)

答え: × 不法占拠者は登記がないことを主張する正当な利益を有する「第三者」に当たりません。B は登記なくして所有権を対抗し、明渡しを請求できます。

Q3. AはBの詐欺により土地をBに売却し、その後この売買を取り消した。取消し後にBがその土地をCに転売して移転登記をした場合でも、Aは登記なくしてCに所有権を対抗できる。(○か×か)

答え: × 取消し「後」の第三者との関係は、B を起点とする二重譲渡類似の対抗関係(民法177条)になります。先に登記を備えた C が優先し、A は対抗できません。

Q4. Bが所有の意思をもって平穏かつ公然にA所有の土地を占有し取得時効が完成した場合、完成前にAからその土地を買い受けて移転登記を備えていたCに対し、Bは登記がなければ時効取得を対抗できない。(○か×か)

答え: × 時効完成「前」に現れた第三者に対しては、時効取得者は登記なくして対抗できます。C は時効により権利を失う当事者に近い立場だからです。完成「後」の第三者との関係で初めて登記の先後になります。

Q5. AとBが土地を共同相続したが、Bが単独名義の相続登記をしてCに売却し移転登記をした。Aは自己の法定相続分について、登記なくしてCに対抗できる。(○か×か)

答え: ○ A の持分について B は無権利であり、無権利者からの譲受人 C も A の持分については権利を取得できません。法定相続分は登記なしで対抗できます。

Q6. 遺産分割により法定相続分を超える持分を取得した相続人は、その超える部分については、登記を備えなければ分割後に現れた第三者に対抗できない。(○か×か)

答え: ○ 民法899条の2 のとおりです。法定相続分までは登記不要、超える部分は登記(対抗要件)が必要、と二段で整理します。

Q7. 建物を新築した場合、所有者は1ヶ月以内に所有権保存登記を申請しなければならない。(○か×か)

答え: × 1 ヶ月以内に申請義務があるのは表題登記(表示に関する登記)です。所有権保存登記は権利に関する登記であり、申請義務はありません。「表示=義務・権利=原則任意」のすり替えに注意。

Q8. 所有権移転登記の抹消は、登記権利者が単独で申請することができる。(○か×か)

答え: × 権利に関する登記は共同申請が原則で、移転登記の抹消も共同申請です。単独申請できるのは判決による登記・相続や合併による移転・氏名住所の変更・所有権保存・仮登記の抹消など、法定の例外に限られます。

Q9. 相続により不動産の所有権を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から2年以内に、移転登記を申請しなければならない。(○か×か)

答え: × 相続登記の申請義務は「知った日から 3 年以内」です(正当な理由のない懈怠は 10万円以下の過料)。「2 年」は住所等変更登記の義務の数字で、クロスひっかけの典型です。

Q10. 所有権の登記名義人は、住所に変更があった日から2年以内に変更登記を申請しなければならず、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料に処されることがある。(○か×か)

答え: ○ 2026年4月1日施行の住所等変更登記の義務化のとおりです。起算点は「変更があった日」で、施行日前の変更も施行日から 2 年以内に申請すれば足ります。

Q11. 所有権移転請求権保全の仮登記に基づいて本登記を申請する場合、登記上の利害関係を有する第三者がいるときは、その承諾がなくても本登記をすることができる。(○か×か)

答え: × 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、利害関係第三者の承諾があるときに限り申請できます。本登記により第三者の登記が職権で抹消されるためです。

Q12. 登記事項証明書の交付は、当該不動産について利害関係を有する者に限り請求することができる。(○か×か)

答え: × 登記事項証明書は手数料を納付すれば誰でも請求できます。利害関係は不要です。なお、所有不動産記録証明書は本人・相続人等の一般承継人に限られる点と対比して覚えます。

まとめ

論点結論キーワード
所有権の移転契約(意思表示)のみで移転意思主義(176条)
第三者への対抗登記が必要。単純悪意の第三者にも登記で勝負対抗要件主義(177条)
登記なしで勝てる相手無権利者・不法占拠者・背信的悪意者・登記申請を妨げた者など正当な利益なし
取消し・解除・時効の「後」の第三者すべて対抗関係=登記の先後復帰的物権変動/A 起点の二重譲渡類似
相続と登記法定相続分は登記不要/超える部分は登記必要/放棄は登記不要899条の2
表示に関する登記申請義務あり・1 ヶ月以内表題部
相続登記知った日から 3 年以内・10万円以下の過料(施行日前の相続も対象)相続人申告登記
住所等変更登記変更日から 2 年以内・5万円以下の過料(2026年施行)職権変更登記
仮登記順位保全効あり・対抗力なし・所有権の本登記は第三者の承諾必要1号・2号
登記事項証明書誰でも請求可登記識別情報は名義人のみ

「契約で権利は動き、登記で勝負が決まる」— この章の視点は、次章で学ぶ抵当権の順位や対抗の場面でもそのまま使います。第12章では、競売の優先弁済をめぐる担保物権の攻防に進みます。