応用情報技術者試験 合格教科書|2026年度(令和8年度)対応
第 23 章|科目 B 問 1 必須解答(20 点)/直近 10 年 19 回すべて出題、1 問あたり平均 6.8 小設問 科目 B: 情報セキュリティ

科目 B 攻略法と必須問 1「情報セキュリティ」

記述式の読み方・時間配分・字数指定の答え方を型にし、10 年分の問 1 の題材と採点講評から失点原因を潰す

この章で学ぶこと

問 1 は 19 回すべてで情報セキュリティが出題される必須問題で、20 点は科目 B の 5 分の 1 です。採点講評の全体正答率は高 4 回・やや高 2 回・平均 8 回に対し、低はわずか 2 回。得点を読める問題です。ただし 19 回中 18 回で正答率の低い設問が 1〜3 個仕込まれるので、そこを深追いせず 12 点以上を確実に拾うのが目標になります。

科目 B の枠組みと 60 点の作り方

科目 B は記述式・150 分で、11 問が出題され 5 問に解答します。必須なのは問 1 だけで、残りは問 2〜11 から 4 問を選びます。配点は問 1 が 20 点、選択の 4 問も各 20 点、合計 100 点満点で基準点は 60 点です。応用情報技術者試験の採点は IRT(項目応答理論)ではなく素点方式なので、積み上げた部分点はそのまま得点になります。

科目 A(150 分・80 問・四肢択一)と科目 B は別日に実施され、科目 A が基準点 60 点に届かなければ多段階選抜で科目 B は採点されません。科目 B 対策は「科目 A を 60 点に乗せてある」ことを前提に積む、という順序を崩さないでください。

その 60 点は「20 点の問題を 3 問完答した分」に相当します。しかし当日どれか 1 問を完答できる保証はどこにもなく、実務的には5 問すべてで 6 割(12 点)を積むほうが易しいです。言い換えると到達条件は「どの 1 問も 0 点にしない」こと。空欄を残さない、迷ったら部分点を狙って書く、という当日の行動はすべてここから導かれます。

科目 B の 100 点の内訳と、基準点 60 点への 2 通りの積み方 基準点 60 点 経路 A 20 点 20 点 20 点 0 点 0 点 20 点 × 3 問 = 60 点(3 問完答で到達) 経路 B 12 点 12 点 12 点 12 点 12 点 12 点 × 5 問 = 60 点(各問 6 割でも到達)
図 23-1 同じ 60 点でも、経路 A は 2 問を捨てる前提の賭けになります。経路 B は 5 問それぞれで解ける小設問を拾うだけなので、当日の変動に強いのはこちらです。

問番号と分野の対応は、直近 10 年(19 回)で一度も入れ替わっていません。試験要綱 Ver.5.6 の別紙も同じ構造で、情報セキュリティが問 1 の「◎必須解答」、それ以外の分野が問 2〜11 の「○選択解答」(出題 10・解答 4)です。配置が固定である以上、捨てる分野は学習を始めた日に決められます。

問分野解答知識章解き方章
1情報セキュリティ必須第 11・12 章本章
2経営戦略・情報戦略選択第 18・19・21 章第 25 章
3プログラミング(アルゴリズム)選択第 3 章第 24 章
4システムアーキテクチャ選択第 5 章第 24 章
5ネットワーク選択第 10 章第 24 章
6データベース選択第 9 章第 24 章
7組込みシステム開発選択第 7 章第 24 章
8情報システム開発選択第 13・14 章第 24 章
9プロジェクトマネジメント選択第 15 章第 25 章
10サービスマネジメント選択第 16 章第 25 章
11システム監査選択第 17 章第 25 章

要綱の別紙では「経営戦略」「情報戦略」「戦略立案・コンサルティング技法」の 3 行が問 2 の 1 枠を分け合っていますが、19 回のうち IT 戦略が主題になったのは令和 3 年春の 1 問だけです。問 2 は実質「経営戦略の事例問題」と考えて構いません。

2026年度の注意 2026 年度から科目 A・科目 B とも CBT 方式になります。IPA は「出題形式(多肢選択式・記述式・論述式)、出題数・解答数、採点方式、配点、合格基準に変更はない」と明記しているので、過去問の分析はそのまま通用します。変わるのは操作です。メモ用紙と筆記用具は配布されず、持込みもできません。代わりに試験画面上のメモ機能・電卓機能を使います。構成図への書込みや登場人物のメモを紙でやってきた人は、画面のメモ欄に打ち込む練習が要ります。

設問の 6 形式と、記述式の採点で起きていること

科目 B の 1 問は、設問 1〜設問 5 程度に分かれ、その下に (1)(2)… の小設問がぶら下がります。問 1 情報セキュリティの 19 回分を小設問の単位で数えると合計 129 小設問、1 問あたり 5〜9(平均 6.8)でした。内訳は 5 個が 2 回、6 個が 7 回、7 個が 4 回、8 個が 5 回、9 個が 1 回です。20 点を平均 6.8 で割ると 1 小設問あたり 3 点前後。設問別の配点は公開されていないので、当日「この設問は配点が高そうだ」と重み付けする根拠はありません。全部同じ重さだと思って全部埋めるのが最善手です。

形式小設問数比率解答の作り方
字数記述5744%本文の固有名詞を使い、テンプレートに当てて上限の 7〜9 割を埋める
記号選択5442%目的・主体が違う肢を消去。「2 つ選べ」「すべて選べ」「適切でないもの」に注意
用語記述108%「アルファベット 3 字」「漢字 4 字」など字種指定から候補を絞る
穴埋め(図・表の項番)65%表の項番や手順番号を答える。図表を先に読めば取れる
手順番号記述11%令和 5 年秋、S/MIME の手順のどこで改ざんを検知するか
計算11%令和 6 年秋のみ。ペッパーの総当たり組合せ数を指数表記で答える

字数記述と記号選択で 86% を占めます。ここで見落としやすいのが、回ごとの偏りが非常に大きいことです。令和 3 年秋は 6 小設問中 5 が字数記述、逆に令和 3 年春は 8 中 6 が記号選択、令和 5 年春に至っては 9 中 8 が記号選択と穴埋めでした。「問 1 は記述が多い」と決めつけて臨むと、記号ばかりの回で消去法の精度が足りずに落とします。直近 4 回は記述 2〜4・選択 2〜3・用語 0〜2 とおおむね均衡しています。

字数指定は 15〜35 字が本命

19 回の字数指定は 59 件ありました。分布は次のとおりで、15〜35 字で 45 件と大半を占めます。

字数件数この字数で書けること
12 字以下11実質は用語記述。文にしようとすると入らない
15 字8主語 + 動詞 1 組。修飾語を足す余地はない
20 字11「〈対象〉を〈動作〉するため」がちょうど収まる
25 字9目的語を 1 つ足せる。攻撃名や機器名を入れる
30 字11条件(いつ・どの場面で)を 1 つ足せる
35 字6理由 + 結果の 2 段階まで書ける。令和 6 年春以降はこれが上限
40 字3平成 29 年秋・平成 30 年春・令和 5 年秋のみ

ここから 2 つの実務的な結論が出ます。第 1 に、40 字の練習より 20〜30 字の練習を優先すること。令和 6 年春以降は 35 字が上限で、長文を書く力より「短く言い切る力」が問われています。第 2 に、12 字以下の設問は文を作らないこと。「〜から」「〜ため」を付けようとすると本体が削れて、要点が消えます。

覚え方 用語記述は字種指定が最大のヒントです。「アルファベット 3 字」なら WAF・EDR・PKI・SPF・DNS・DLP、「アルファベット 4 字」なら SIEM・IDaaS・SBOM、「漢字 4 字」なら多層防御・完全性・可用性、「片仮名 12 字以内」ならデジタルフォレンジックス。字種と字数を先に見れば、思い出す範囲は一気に狭まります。

記述式の採点は、書いた文字列が解答例と一致しているかではなく、解答例が含んでいる要点が自分の答えにも入っているかで決まります。そのため「言い方が違うから 0 点」を恐れる必要はありません。逆に、要点が 2 つある設問で 1 つしか書かなければ、日本語としてどれだけきれいでも減点されます。採点講評が繰り返し指摘する「要素を挙げ切れていない」という誤答傾向は、この構造から生まれます。

問題文の読み方 ― 設問と本文を往復する

科目 B の本文は 3〜5 ページあり、頭から精読すると 1 問で 40 分が飛びます。正解は設問を先に読み、本文を「探しに行く」順序です。設問は本文のどこを見ればよいかを教えてくれる索引だからです。

設問側(先に読む) 本文側(図と会話を追う) ① 設問を全部読む 形式・字数・条件に丸(3 分) ② 本文を 1 周してマーク 構成図/人物/対策番号(8〜10 分) ③ 記号・用語を先に埋める 消去法で 5 分 ④ 下線部の前後 2〜3 文に戻る 答えの材料はここにある ⑤ 字数記述をまとめる テンプレートに当てる(8〜10 分)
図 23-2 矢印は視線の移動です。本文は 1 周しか通読せず、あとは下線部の周辺だけを往復します。①→⑤ の所要はおよそ 25 分で、これが 1 問の予算です。

本文 1 周目でマークする 4 種類

本文を最初に通すとき、次の 4 つだけを拾います。読解ではなく索引づくりだと考えてください。

  1. 構成図の機器と通信経路 ― ファイアウォール、プロキシ、DMZ、DNS、メール中継。どの通信がどの機器を通り、どこにログが残るかを図の上で確認します
  2. 登場人物と役割 ― 担当者・上司・外部専門家・委託先。誰の発言かで、その内容が「現状の説明」なのか「見落としの指摘」なのか「対策の方向づけ」なのかが変わります
  3. 「対策 1」「対策 2」のような番号付き箇条書き ― 設問はほぼ必ずこの番号を参照します
  4. 下線部と空欄 ― 下線部は設問の伏線です。答えの材料は下線部の前後 2〜3 文にあります

本文中の〔 〕や注釈も見落とせません。「〜は 6 か月で上書きされる」「〜は社外からは参照できない」といった一見どうでもいい条件が、そのまま理由記述の根拠になります。平成 29 年秋の問 1 では、会員番号の範囲が限定されているという本文の条件を根拠にハッシュ値の突合が成り立つことを説明させました。この条件を読み落とした受験者が「逆算する」と書いて失点しています。

登場人物の読み分け 問 1 は 19 回のうち 13 回が「情報システム部の担当者と上司(あるいは外部の専門家)の会話」形式です。上司や専門家の発言に出てくる疑問形(「その対策で〜は防げるのか」)は、ほぼそのまま設問になります。逆に担当者の発言は現状説明であることが多く、そこには答えではなく前提条件が入っています。

CBT 方式ではメモ用紙が配られません。画面のメモ機能に打ち込むことになるので、紙のように構成図へ矢印を書き込むことはできません。代わりにテキストで書ける形にメモの型を作っておきます。たとえば「PC → プロキシ → FW → 外部」「A 氏=担当、B 課長=指摘」「対策 1=定義ファイル更新、対策 2=バックアップ」のように 1 行で表す形です。図の読み取りを言葉に変換する練習は、そのまま字数記述の練習にもなります。

字数指定の答え方 ― 5 つのテンプレート

字数記述は 129 小設問のうち 57 を占める最大の形式です。ここを「文章力」で乗り切ろうとすると崩れます。問い方によって文末が決まり、文末が決まれば入れるべき部品も決まるという機械的な処理に落とすのが正解です。

問い方文末の型入れる部品解答の例
理由(なぜか)〜から原因となる事実 1 つ古い記録のログが上書きされるから
目的(何のためか)〜ため対象 + 防ぎたい事象社内の他の機器と通信させないため
対策(どうするか)〜する/〜させる対象 + 条件 + 動作共有ディスクはバックアップ時だけ接続し、それ以外は切り離す
懸念・問題点〜できないこと/〜されることできない主体 + できない内容受信者が送信者を確認できないこと
事象(何が起きているか)〜されている/〜している主体 + 観測できる動き特定の宛先へ定期的に通信している

いちばん取りこぼしが多いのが「対策」です。対策は対象・条件・動作の 3 部品でできています。どれか 1 つでも欠けると「一般論を書いた」と見なされます。図 23-3 は 30 字の対策記述を組み立てた例です。

30 字以内で「対策」を答えるときの組み立て ① 主体 ② 対象 ③ 条件 ④ 動作+文末 管理者が (省略可) 共有ディスクは バックアップ 時だけ 接続し、それ以外 は切り離す 共有ディスクはバックアップ時だけ接続し、それ以外は切り離す 29 字(上限 30 字)/文末は対策なので「〜す」で言い切る
図 23-3 ①〜④ の枠を埋めてから 1 文につなぎます。①の主体は「管理者が」のように自明なら省いてよく、その分の字数を③の条件に回すと具体性が上がります。

字数記述の 5 か条

  1. 上限の 7〜9 割を埋める。30 字なら 21〜27 字。半分しか書けていない答えは、要素が足りていない合図です
  2. 主語と対象を落とさない。採点講評が繰り返し指摘する失点で、字数枠が狭いほど主体が消えます。「切り離す」ではなく「共有ディスクを切り離す」
  3. 本文の固有名をそのまま使う。機器名(PC-A、FW、サーバ L)、対策番号、略語は言い換えず引用します
  4. 「本文中の字句を用いて」は抜き出し以外を認めない指示です。自分の言葉に直すと 0 点になります
  5. 文末を問い方に対応させる。理由を聞かれて「〜する」で終える、対策を聞かれて「〜だから」で終える答えは、内容が合っていても要点を外したと判定されます
ここがひっかけ 「〜の観点に着目して」「費用面から」「利用者側の対策として」といった限定条件は、字数が短いほど無視されがちです。観点を外した答えは、たとえ内容が正しくても得点になりません。設問を読んだ時点で、この限定語に丸を付けてから本文に戻ってください。

150 分の使い方と選択戦略

150 分を 5 問で割ると 1 問 30 分です。しかし 30 分をまるまる使うと、選択と見直しの時間がゼロになります。現実的な予算は1 問 25〜30 分で、そこから最初の 5 分と最後の 10 分を捻出します。

問 1 27 分 選択 1 27 分 選択 2 27 分 選択 3 27 分 選択 4 27 分 見直し 0 5 32 140 150 0〜5 分=問 2〜11 をスキャンして 4 問を決める(図の型・形式内訳・計算の個数) 140〜150 分=見直し 6 点(空欄/主体/文末/字数/単位/本文の字句) 撤退ライン=記述 1 問に 3 分以上迷ったら空欄で進み、最後の 5 分で戻る
図 23-4 横軸は経過時間(分)です。左端の細い帯が選択に使う 5 分で、ここを惜しむと 27 分 × 4 問すべての当たり外れが決まります。

問 1 から解く 3 つの理由

  1. 必須なので避けられない。後回しにしても解く時間が減るだけです
  2. 採点講評の全体正答率が高 4 回・やや高 2 回・平均 8 回と、19 回中 16 回が平均以上。得点が読めるので、序盤に処理すると残りの計画が立ちます
  3. 最初に解くからこそ35 分を超えると選択問題を圧迫することがはっきり分かります。時計を見る基準ができます

例外は問 3(プログラミング)を選ぶ人です。問 3 は「着手 10 分で実データと配列の対応表が書けなければ撤退」という判定が要るので、問 1 の直後に置きます。終盤に始めると撤退を決めた時点で残り時間が足りません。

当日 4 問を絞り込む

選択は当日ひらめくものではありません。5〜6 分野を仕込んでおき、当日 1〜2 分野を捨てるのが正しい形です。予備をゼロにすると、得意分野が難化した回に逃げ場がなくなります。

問 2〜11 を 5 分でスキャン コード・計算が苦にならないか? いいえ はい 長文を 25〜40 字で言い換えられるか? 理系ルート 問 3・4・5・6・7 予備は問 8 はい いいえ 実務ルート 図表の型の馴染みで選ぶ 業種名では選ばない 文系ルート 問 2・8・9・10・11 予備は問 6
図 23-5 入口の 2 つの質問は得意分野ではなく「苦にならない作業」を聞いています。実務ルートに落ちた人は、題材の業種ではなく図表の型(構成図・E-R 図・状態遷移表)の馴染みで選びます。

ルートを決めたら、当日は次の 4 基準で 4 問に絞ります。図表の型の馴染み、記述の本数と字数上限、計算の個数と型、本文の量。この 4 つはどれも問題を解かずに 1 分で判定できるもので、だからこそ 5 分のスキャンで機能します。

避けたい組合せなぜ危険か代わりに
問 3 + 問 7どちらもトレースと計算に集中する。分散が最大の 40 点分を同じリスクに賭ける片方を計算ゼロ系(問 8 か問 11)に替える
問 2・9・10・11 を全採用字数記述比率が 57.7〜78.6%。特に問 11 は 1 問 7.7 小設問で、書く量が 150 分に収まらない1 枠を記号選択の多い分野に振る
計算の多い分野を 3 本重ねる問 4・7 に加えてもう 1 本計算を重ねると、単位・桁のミスが連鎖する計算ゼロの回がある分野を 1 つ混ぜる
「SQL は読める」で問 6問 6 は構文を書かせる。採点講評で「低」が 5 回と全分野で最多書いた経験がないなら予備扱いにする
予備分野をゼロ得意分野が難化した回に逃げ場がなくなる5〜6 分野を仕込み、当日 1〜2 分野を捨てる

最後の 10 分の見直しは、新しい問題を解くより確実に点になります。確認するのは 6 点だけです。① 空欄が残っていないか ② 主体が設問の主語と一致するか ③ 文末が問い方に対応しているか ④ 字数は上限の 8 割以上か ⑤ 単位・桁数・切上げ/切捨て ⑥「本文中の字句を用いて」を守ったか。

採点講評の読み方と、問 1 の失点 8 型

IPA は問題・解答例と一緒に採点講評を公開しています。ここには「全体として正答率は平均的であった」といった総評に加え、正答率が低かった設問と誤答の傾向、そして「〜を理解してほしい」という出題側の意図が書かれています。過去問演習の価値の半分はここにあります。解いて答え合わせをしたら、必ず講評まで読んでください。

問 1 の 19 回分の全体正答率は、高が 4 回(平成 28 年秋・平成 29 年春・令和元年秋・令和 6 年春)、やや高が 2 回(令和 5 年春・令和 6 年秋)、平均が 8 回、低が 2 回(平成 28 年春・平成 30 年春)、明記なしが 3 回でした。19 回中 16 回が平均以上という、科目 B の中では取りこぼしにくい分野です。ただし19 回中 18 回で「正答率が低い」設問が 1〜3 個指摘されています(例外は令和 6 年秋のみ)。全問正解を狙いにいくと時間を溶かす構造だと理解してください。

#失点の型講評で指摘された例対処
1略語・新語を名前だけ知っていて、仕組みや用途を答えられないPKI、CC、SIEM、EDR、ゼロトラスト、イミュータブル、デジタルフォレンジックス用語は必ず「目的 + 仕組み + 何が防げるか」の 3 点セットで覚える
2目的の違う対策・用語を混同する定義ファイル更新とパッチ適用、誤送信対策と不正持出し対策、DV 証明書と EV 証明書、共通鍵と公開鍵の処理負荷似た用語は対比表で覚える。「これは何を防ぐか」で仕分ける
3本文の別の箇所を流用し、問われた特徴に答えない拡張子の変更を問われてネットワーク通信の話を書く(平成 30 年春)下線部の直前直後だけを根拠にする。離れた箇所は使わない
4攻撃者の視点で手順を追えない攻撃者が最初に集めるのはソフトウェアの種類とバージョン、ICMP エコー要求にポート番号はない、リバースブルートフォースは同一 ID で 2 回以上試行しない攻撃を「偵察→侵入→潜伏→持出し」の順に並べ、各段階で何が観測されるかを言えるようにする
5仕組みの「なぜ」を説明できないNTP で時刻を合わせる理由、ソルトでレインボーテーブルが使えなくなる理由、ランサムウェアが共有先まで暗号化する理由対策を覚えるとき「これが無いと何が起きるか」を 1 文で言う練習をする
6技術的対策に偏り、組織・心理面の対策を落とす不正のトライアングルを低減する心理的対策(令和 7 年秋。IPA は「技術的な対策に着目しがち」と明記)、対策の告知が抑止になる理由内部不正が題材なら、必ず「周知・監視の告知・教育」を候補に置く
7設定・運用レベルの具体策を知らないオートコンプリートの無効化、試行回数の上限設定、不要サービスの停止、バックアップ媒体を PC から切り離して保管知識章の対策を「画面のどの設定か」まで下ろして覚える
8解答群を吟味せず選ぶ複数選択で選び切れない、「パソコンの製造番号」を認証情報に選ぶ、SPF を選べない(平成 30 年秋・令和元年秋の 2 回とも低正答率)「2 つ選べ」「すべて選べ」に丸を付け、消去した肢に×を残す

この 8 型のうち、型 1 と型 6 は問 1 に固有の重さがあります。情報セキュリティは新語の登場が最も速い分野で、SIEM・EDR・ゼロトラスト・SBOM・イミュータブルはいずれも直近 4 年で初出です。そして問 1 は必ず技術と管理の両面を問います。19 回のどの回にも、技術的対策の設問と、体制・教育・抑止といった管理的対策の設問が同居しています。技術だけ固めても 20 点満点の 2〜3 割は取り逃します。

出題実績 正答率が低いと名指しされた設問には偏りがあります。SPF の記号選択は平成 30 年秋と令和元年秋の 2 回とも低正答率でした。SPF は「送信元 IP アドレスが正規の送信サーバか」を DNS の情報で検証する仕組みなので、正規ドメインを乗っ取られた場合や、正規ドメインからの本物のメールに悪意がある場合は検知できません。この「効かない場面」まで含めて説明できるかが分かれ目です。

過去問 1 回分のまわし方

問 1 は 19 回分の過去問が公開されており、これがそのまま最良の教材です。ただ解いて答え合わせをするだけでは、講評に書かれた情報の大半を捨てることになります。次の 5 手順で回してください。

  1. 27 分を計って解く。本番の予算と同じ時間でやらないと、撤退判断の感覚が身に付きません
  2. 採点する。字数記述は「解答例の要点が自分の答えに入っているか」で〇か×を付け、△を作りません。△は「たぶん部分点」という願望で、復習の対象から漏れます
  3. 採点講評を読む。正答率が低いと書かれた設問に印を付け、自分が正解できたかどうかと突き合わせます。低正答率の設問を落としているなら、それは想定内です
  4. 外した設問を失点 8 型に分類する。回を重ねると自分の型が偏ることが見えます。型 1(用語を名前だけで覚えている)が多いなら知識不足、型 3・5(本文の使い方・なぜの説明)が多いなら読み方と記述の型の問題で、対策が正反対です
  5. 戻る先を決める。型 1・2 なら第 11・12 章の対比表へ、型 4・5 なら本章の図 23-7(攻撃の段階と対策の位置)へ、型 6・7 なら組織的対策と設定レベルの具体策へ戻ります

19 回分をこの手順で通すと、129 の小設問に触れることになります。同じ論点が業種を変えて何度も出るので、5〜6 回分を過ぎたあたりから「またこれか」という感覚が出てきます。その感覚が出たら仕上がりです。

問 1 の 19 回分 ― 題材とジャンル

直近 10 年(19 回)の問 1 は、すべて情報セキュリティでした。過去問は旧・午後試験として実施されたものですが、試験要綱 Ver.5.6 の科目 B も問 1 が情報セキュリティの必須解答なので、分野配置はそのまま引き継がれます。まず全 19 回の題材を眺めてください。同じ論点が業種を変えて何度も戻ってくることが見えます。

回題材主要論点
平成 28 年春書籍販売サイトの侵入テストTLS/踏み台/ゼロデイ/ポートスキャン/WAF/SQL インジェクション/ログ監視
平成 28 年秋生体認証システムの導入アカウントロック/PKI/マニューシャ方式/他人受入率・本人拒否率/指紋情報の分離管理
平成 29 年春マルウェア対策の見直し水飲み場型/バックドア通信/URL フィルタリング/NTP によるログ時刻同期/対応体制
平成 29 年秋個人情報保護の強化AES/ハッシュの一方向性/鍵の世代管理/仮名化/限定範囲でのハッシュ突合/誤送信対策
平成 30 年春ランサムウェア感染対応拡張子の変更/ドライブバイダウンロード/定義ファイル更新/被害拡大の確認/バックアップの隔離
平成 30 年秋サーバの脆弱性診断と対策ポートスキャン/Web アプリ診断/SPF/SQL インジェクション/FW の多層制限/企画段階での脆弱性対応
平成 31 年春EC サイトの利用者認証認証の 3 方式/ブルートフォースとパスワードリスト/試行回数制限/ソルト/レインボーテーブル/使い回し
令和元年秋標的型サイバー攻撃対策初動の切り離し/FW による C&C 通信の遮断/SPF/水飲み場型/潜伏と URL フィルタリング/不審メール受信時の行動
令和 2 年 10 月内部不正による情報漏えい対策不正のトライアングル/デバイス制御/ホワイトリスト/メールアーカイブ/フォレンジックス/抑止
令和 3 年春DNS サーバへの攻撃対策キャッシュポイズニング/権威 DNS とキャッシュ DNS/DV・EV 証明書/ゾーン転送の禁止/TTL
令和 3 年秋オフィスの物理セキュリティ対策非接触 IC カード/CC(コモンクライテリア)/アンチパスバック/クリアデスク・クリアスクリーン/オンデマンド印刷/私物持込み
令和 4 年春通販サイトの改ざん対応不要サービスの停止/WAF/ゼロデイと暫定対策/ハッシュリスト比較型の改ざん検知/SIEM/対応チーム
令和 4 年秋マルウェア対応と EDR 導入FW/SPF とその限界/DNS リフレクション/ICMP エコーによるホスト探索/SYN スキャン/EDR
令和 5 年春マルウェア対策の体制整備サイバーキルチェーン/EDR/CSIRT/脆弱性情報と資産目録/訓練と対応フロー/バックアップ媒体
令和 5 年秋PPAP から S/MIME への移行PPAP の問題点/S/MIME/ハイブリッド暗号/電子署名とハッシュ/PKI と CA/証明書の検証
令和 6 年春学習塾のゼロトラスト移行境界型防御とゼロトラスト/URL フィルタリング/SIEM/IDaaS・SSO/多要素認証/EDR/リモートワイプ
令和 6 年秋ペネトレーションテストハッシュの一方向性/認証の 3 要素/ブルートフォースとレインボーテーブル/プレースホルダ/多層防御/ソルト・ペッパー・ストレッチング
令和 7 年春サプライチェーン攻撃への対応フォレンジックス/辞書攻撃とリバースブルートフォース/RDP/ロックアウトしきい値の限界/世代管理/イミュータブル
令和 7 年秋グループ会社のサプライチェーン対策境界防御とゼロトラスト/need-to-know/SIEM/SBOM/不正のトライアングル/脆弱性情報への迅速な対応

19 問を場面で分けると 4 ジャンルになります。

ジャンル場面件数
A. 事業者の情報保護診断結果や外部専門家の助言を受けて対策を検討する(サイト診断・認証・個人情報・物理)7
B. 感染・侵入のインシデント対応感染事案の原因を調べ、初動と再発防止を決める6
C. 認証・暗号・プロトコルの仕組み生体認証、DNS、S/MIME など仕組みそのものを追う3
D. 組織・ガバナンス内部不正、ゼロトラスト移行、グループ統制3

A と B で 13 / 19 を占め、どちらも中小〜中堅企業の情報システム部門(担当者 + 上司 + 外部専門家)の会話という同じ器に入っています。時系列で見ると、平成 28〜31 年は Web アプリ・認証・暗号、令和元〜5 年は標的型攻撃・EDR・SIEM・CSIRT、令和 6〜7 年はゼロトラスト・サプライチェーン・SBOM・イミュータブルと、題材の表面は移り変わります。それでも下敷きの論点(脆弱性管理・ログ・認証・初動)は変わりません。ランサムウェアは平成 30 年春・令和 5 年春・令和 7 年春の 3 回登場し、3 回ともバックアップの保護がセットでした。

#頻出論点回数どう問われるか
1脆弱性管理(診断・ペネトレ・脆弱性情報・ゼロデイ暫定対策・SBOM)5(題材そのものが 3 回)導入後の脆弱性への懸念、暫定対策の判断、企画段階への組込み
2URL フィルタリング5出口対策・ホワイトリスト・不要サイトの遮断。記号選択か 15 字記述
3FW と不要ポート・不要サービスの停止5「必要なポートだけ開ける」、FW で C&C 通信が遮断される理由
4ログ管理(監視・NTP・SIEM)5(SIEM 単独で 3)SIEM の用語記述、導入目的 30 字、NTP で時刻を合わせる目的
5パスワード攻撃(総当たり・リスト・辞書・リバースブルートフォース・レインボーテーブル)4攻撃名の用語記述と「違い」、対策が効かない理由
6ハッシュ関数(一方向性・ソルト・ペッパー・ストレッチング)4「ハッシュ値からパスワードの割出しは難しい」25 字が平成 31 年春と令和 6 年秋で同型
7標的型攻撃と侵入後の活動(水飲み場・C&C・潜伏・内部偵察・キルチェーン)4手口の記号選択、マルウェアの動作から検知すべき事象を導く
8インシデント対応体制(CSIRT・対応チーム・報告窓口・訓練)4組織名の用語記述、体制整備の施策を 2 つ選ぶ
9インシデント初動(切り離し・隔離)1(解答例には 3 回)「社内の他の機器と通信させないため」の 20 字
10暗号方式(共通鍵・公開鍵・ハイブリッド・TLS・危殆化)3(解答例には 4 回)共通鍵を使う理由「処理速度が速いから」

11 位以下も 3 回前後で並びます。PKI・電子証明書・CA が 3 回、ランサムウェアとバックアップ保護が 3 回、EDR が 3 回、SPF が 3 回、SQL インジェクション対策が 3 回、ポートスキャンとホスト探索が 3 回、アカウントロックと試行回数制限が 3 回、認証方式(3 要素・多要素・IDaaS)が 3 回、メール経由の漏えい対策(誤送信・PPAP・別送)が 3 回。さらに不正のトライアングル・ゼロトラスト・フォレンジックス・WAF・DNS 攻撃・改ざん検知・多層防御が各 2 回です。ゼロトラストは直近 3 回のうち 2 回に出ており、伸びている論点です。

項目問 1(情報セキュリティ)の実績
題材事案対応と対策の見直し
形式比率字数記述 44% / 記号選択 42% / 用語記述 8%(129 小設問・1 問平均 6.8)
字数記述15〜35 字が 45 件。令和 6 年春以降は 35 字が上限
計算19 回で 1 件のみ(令和 6 年秋、文字種数の 4 乗)
全体正答率高 4 / やや高 2 / 平均 8 / 低 2 / 明記なし 3
得点源にできる人用語を「仕組み + 目的」で覚え、構成図と登場人物の行動を追える人

頻出論点の定番フレーズ

字数記述は、頻出論点ごとに答えの核がほぼ決まっています。次に挙げるのは 19 回の解答例に繰り返し現れる骨格です。丸暗記して貼り付けるのではなく、本文の固有名詞に置き換えて使う型として覚えてください。

論点問い方答えの核
感染が疑われる機器の切り離し目的社内の他の機器と通信させないため
FW での C&C 通信の遮断理由外部の指令サーバとの通信を止め、遠隔操作をさせないため
URL フィルタリング目的業務に不要なサイトへの接続を遮断し、不正サイトへの誘導を防ぐため
NTP による時刻同期理由複数の機器のログを時系列で突き合わせるため
SIEM の導入目的複数の機器のログを集約し、相関分析して異常を検知するため
ハッシュの一方向性理由ハッシュ値から元のパスワードを求めることが困難だから
ソルトの付加理由利用者ごとにハッシュ値が変わり、事前計算した対応表が使えなくなるから
ハイブリッド暗号でデータ本体に共通鍵を使う理由公開鍵暗号より処理速度が速いから
バックアップの隔離対策バックアップ時だけ接続し、それ以外は切り離す
不要なサービス・ポートの停止理由攻撃者が侵入に利用できる経路を減らすため
ログ監視の周知理由発覚しないという認識をなくし、不正を行う機会を減らすため
ゼロデイへの暫定対策対策修正プログラムが提供されるまで、該当する機能を停止する

この 12 個は、そのまま本試験で通用する形になっています。ただし本文に機器名や対策番号が出ていれば、それを差し込むことを忘れないでください。「社内の他の機器と」を「同じセグメントの他の PC と」に、「バックアップ」を「共有ディスク D」に置き換えるだけで、一般論の答えが本文に即した答えに変わります。講評が指摘する「本文の固有条件を使わない」失点は、この一手間で消せます。

典型設問の型と、図表の読み取り手順

問 1 の本文には、ほぼ必ずネットワーク構成図が付きます。19 回のうち平成 29 年春・令和元年秋・令和 4 年秋・令和 7 年秋は、機器の並びまでほぼ同型でした。構成図は「絵」ではなくログの所在の一覧表だと考えて読むと、設問がどこを聞いているかが即座に分かります。

内部 PC → 外部(プロキシ経由) DMZ 内部 LAN インターネット FW 公開 Web サーバ メール中継サーバ 外部 DNS サーバ プロキシ 業務 PC 共有サーバ SIEM 全ログを集約・相関分析 許可・拒否のログ アクセス先 URL のログ
図 23-6 流れる破線が通信、止まっている実線がメールの中継経路です。設問が「どのログを見れば分かるか」を聞いたら、通信が通った機器を順にたどって答えます。業務 PC の外部向け通信はプロキシと FW の両方に記録が残ります。

構成図と一緒に出る図表は 3 種類です。読む順番を決めておくと、本文に戻る回数が減ります。

  1. FW のルール表 ― 「送信元・宛先・プロトコル/ポート・動作」の 4 列を見て、どの通信が許可されていないかを先に確認します。設問は許可されている通信より、拒否されている(あるいは拒否すべき)通信を聞きます
  2. ログの抜粋 ― 「時刻・送信元 IP・宛先 IP/ポート・イベント」の 4 列。まず時刻の並びを見て、短い間隔で繰り返している行と、他と異なる 1 行を探します。異常はこの 2 か所にしかありません
  3. シーケンス図・手順の番号付き並び ― 各手順で誰が何の鍵を使うか、どこで検証が入るかを追います。令和 5 年秋の S/MIME の設問はこの型でした
典型設問の型出題問われ方解答の骨格
初動の目的令和元年秋感染が疑われる PC をネットワークから切り離す目的を 20 字以内で「社内の他の機器と通信させないため」= 目的テンプレートの基本形
動作から検知事象を導く令和 4 年秋本文に書かれたマルウェアの動作から、EDR が検知すべき事象を答える動作を通信の言葉に翻訳する(内部探索 → ICMP エコー要求の連続送信)
対策の限界令和 7 年春ロックアウトのしきい値がリバースブルートフォースに効かない理由を 25 字以内で攻撃手順から説明する(同一 ID で 2 回以上試行しないので試行回数が積み上がらない)
心理面の効果令和 7 年秋ログを記録していることを周知すると内部不正の抑止になる理由を 30 字以内で不正のトライアングルの「機会」「正当化」を下げる、と組織的な言葉で書く
鍵の流れの穴埋め令和 5 年秋S/MIME で使う 4 つの鍵(送信者・受信者それぞれの秘密鍵と公開鍵)を手順に当てはめる署名は送信者の秘密鍵、検証は送信者の公開鍵、暗号化は受信者の公開鍵、復号は受信者の秘密鍵
安全性の理由 + 計算令和 6 年秋ペッパーがデータベースから窃取されない理由を 35 字以内で、および総当たりの組合せ数保管場所が違う(アプリ側の設定に持つ)ことを書く。計算は「文字種数の桁数乗」
本文の条件を根拠にする平成 29 年秋会員番号の範囲が限定されている条件から、ハッシュ値の突合が可能な理由を 35 字以内で本文の限定条件をそのまま引用して「総当たりで対応表が作れる」と書く
運用レベルの対策平成 30 年春共有ディスクをランサムウェアから守る運用を 30 字以内で「対象 + 条件 + 動作」(バックアップ時だけ接続し、それ以外は切り離す)

計算の型: 総当たりの組合せ数

組合せ数 = 文字種数 桁数(使える文字の種類を、桁数の分だけ掛け合わせる)

例題: 使用できる文字が 70 種類、長さが 4 文字のペッパーを総当たりで試すとき、試行の組合せは何通りか。

  1. 1 桁目に置ける文字は 70 通り
  2. 2 桁目以降も独立に 70 通りずつなので、70 × 70 × 70 × 70
  3. 答えは 704 通り。指数表記のまま答える(電卓で展開しない)

19 回で計算が出たのはこの 1 件だけです。ここに時間を使うより、記述の型を固めるほうが期待値は高くなります。

攻撃の段階と、対策が効く位置

問 1 の記述で最も差がつくのが「なぜその対策が有効か」です。これは攻撃を段階に分け、対策がどの段階を止めるかを言えるかという問題に還元できます。令和 5 年春はサイバーキルチェーンそのものが題材になりました。

攻撃の段階(サイバーキルチェーン) どこで止めるか ① 偵察 公開情報の 棚卸し ② 配送 メール フィルタ SPF ③ 侵入 パッチ適用 EDR ④ 潜伏・C&C FW で C&C 遮断 URL フィルタ ⑤ 内部偵察 EDR で 探索を検知 ⑥ 持出し プロキシ ログの監視
図 23-7 同じ EDR でも、③では侵入そのものを止め、⑤では内部偵察の痕跡を検知する、と説明が変わります。「なぜ有効か」を聞かれたら、まずこの段階のどこを止めるのかを決めてから書きます。

パスワード攻撃も同じ整理が要ります。攻撃ごとに効く対策と効かない対策が違うことが、令和 7 年春の設問(ロックアウトのしきい値が効かない理由)のような「対策の限界」を問う設問の下敷きです。

攻撃やり方試行回数制限ソルト・ストレッチング多要素認証
ブルートフォース1 つの ID に全パターンを試す効く効く(オフライン解析を遅らせる)効く
辞書攻撃1 つの ID によくある語を試す効く効く効く
リバースブルートフォース1 つのパスワードを多数の ID に試す効かない(ID ごとの試行が積み上がらない)効かない効く
パスワードリスト攻撃他社から漏えいした ID とパスワードの組を試す効きにくい(1 回で当たる)効かない効く
レインボーテーブル事前計算した対応表からハッシュ値を逆引きする関係しない効く(ソルトで表が使えなくなる)関係しない

ひっかけポイント

ここがひっかけ 「目的」を聞かれて手順を書く誤答が繰り返し指摘されています。感染 PC の切り離しを問われて「LAN ケーブルを抜く」と書くのは手順であって目的ではありません。目的は「防ぎたい事象」で書くので、正しくは「社内の他の機器と通信させないため」です。文末が「〜ため」で終わっているかを見直しで必ず確認してください。
ここがひっかけ SPF は「送信元のメールサーバが、そのドメインの正規の送信サーバか」を DNS の情報で検証する仕組みです。正規ドメインのアカウントが乗っ取られた場合や、攻撃者が自分で取得した別ドメインを使った場合は検知できません。「SPF を導入すれば標的型メールは防げる」という肢は誤りで、平成 30 年秋と令和元年秋の 2 回とも低正答率でした。
ここがひっかけ 定義ファイルの更新とパッチ適用は別物です。定義ファイルの更新はマルウェア対策ソフトが既知のマルウェアを見つけるためのもので、OS やアプリケーションの脆弱性は塞ぎません。「未知のマルウェアに感染した」という本文に対して定義ファイルの更新を答えると外します。同じ型で、誤送信対策(宛先確認・送信保留)と不正持出し対策(デバイス制御・ログ監視)の取り違えも定番です。
ここがひっかけ アカウントロック(試行回数制限)は万能ではありません。リバースブルートフォースやパスワードリスト攻撃は、1 つの ID に対する試行が数回で済むため、しきい値に達する前に成功します。「ロックアウトを設定したから安全」という記述が本文にあれば、その限界を問う設問が来ると考えてください。
ここがひっかけ 「本文中の字句を用いて」は抜き出し指定です。意味が同じでも自分の言葉に直すと得点になりません。逆にこの指定がない設問で本文をそのまま写すと、今度は「説明になっていない」と判定されます。指定の有無を設問読みの段階で丸を付けて区別してください。

演習問題(科目 B 形式)

本試験と同じ分量・形式で 1 題です。目安は 27 分。設問を先に全部読んでから本文に入り、字数記述は最後にまとめて書いてください。

問 1 テレワーク環境における不正アクセスへの対応に関する次の記述を読んで、設問 1〜5 に答えよ。

K 税理士法人は、職員 40 名で記帳代行と申告支援を行っている。顧問先は約 300 社で、総勘定元帳と決算書のデータはクラウド会計サービス(以下、M サービスという)に保管している。職員の給与計算には別のクラウドサービス(以下、N サービスという)を利用している。M サービス、N サービスとも認証は利用者 ID とパスワードだけで行っている。

事務所の LAN はファイアウォール(以下、FW という)でインターネットと分離されており、職員 PC からの Web アクセスはすべてプロキシサーバを経由する。テレワーク時は貸与ノート PC から VPN 装置を経由して事務所 LAN に接続するが、M サービスと N サービスへは VPN を経由せず、貸与ノート PC からインターネット経由で直接接続する運用としている。FW、プロキシサーバ、VPN 装置のログはそれぞれの機器に 90 日分保管されているが、機器ごとに時刻がずれており、突き合わせは行っていない。

20XX 年 6 月 10 日、職員 P 氏宛てに「M サービスのパスワードの有効期限が本日で切れる。24 時間以内に更新しないと利用できなくなる」という内容のメールが届いた。差出人のメールアドレスのドメインは、M サービスの正規のドメインに 1 文字を加えた文字列だった。P 氏はメール中のリンクを開き、M サービスとよく似た画面に利用者 ID とパスワードを入力した。画面には更新が完了した旨が表示されたが、その後 M サービスの画面には遷移しなかった。P 氏はそのまま業務を続けた。

6 月 12 日、M サービスの管理者である Q 課長が月次の点検を行い、6 月 11 日の深夜に顧問先データの一括ダウンロードが行われていたことに気付いた。Q 課長が M サービスの監査ログを確認したところ、表 1 の記録が残っていた。

表 1 M サービスの監査ログ(抜粋)

項番日時利用者 ID接続元 IP アドレス操作
16/10 09:12P203.0.113.10(事務所)ログイン
26/10 18:40P203.0.113.10(事務所)ログアウト
36/11 02:35P198.51.100.77(国外)ログイン
46/11 02:41P198.51.100.77(国外)顧問先データの一括ダウンロード
56/11 09:05S203.0.113.10(事務所)ログイン

続いて Q 課長が N サービスのログを確認したところ、6 月 11 日の深夜に P 氏の利用者 ID で 3 回のログインの失敗があり、4 回目に成功していた。N サービスにはログイン試行回数の上限(しきい値 5 回でアカウントを一時ロック)が設定されていた。P 氏に確認したところ、M サービスと N サービスで同じパスワードを使っていたことが分かった。

K 税理士法人には、情報セキュリティに関する事案の報告窓口や対応手順を定めた文書はなく、今回も Q 課長が個人の判断で調査を進めていた。職員への教育は入所時の 1 回だけで、テレワークを開始した後は実施していない。また、M サービスの監査ログの保管期間は 30 日で、それ以前の記録は残っていない。このため Q 課長は、6 月 11 日より前にも同様の操作が行われていなかったかを確認できなかった。

加えて、貸与ノート PC には資産管理ソフトが導入されておらず、どの職員がどのクラウドサービスを業務で使っているかを法人として把握できていない。M サービスに保管された顧問先データには、顧問先企業の取引先名と取引金額、従業員の氏名と給与額が含まれている。

Q 課長は、外部の専門家 R 氏に相談し、表 2 の対策案を挙げた。

表 2 対策案

記号対策案
アM サービスと N サービスに、認証アプリのワンタイムパスワードによる多要素認証を導入する
イ貸与ノート PC の内蔵ディスクを暗号化する
ウM サービスのパスワードを 12 文字以上とし、90 日ごとの変更を義務付ける
エ事務所 LAN の FW で、国外の IP アドレスとの通信を遮断する

R 氏は次のように述べた。「まず、貴法人は各機器のログを別々に保管していますが、時刻がずれているため機器をまたいだ調査ができません。ログの集約と分析の仕組みも検討してください。それから、技術的な対策だけでなく、職員への周知も忘れないでください。」

設問 1

表 1 のうち、不正アクセスによるものと判断できる項番をすべて挙げよ。また、そう判断した根拠を 35 字以内で述べよ。

設問 1 の解答例と採点ポイント

解答例 項番: 3、4/根拠: 事務所と異なる国外の IP アドレスから業務時間外に接続しているから(32 字)

採点ポイント 項番 5 は利用者 ID が S で接続元も事務所なので、通常の利用です。ここを混ぜると失点します。根拠は「接続元 IP アドレスが違う」と「時間帯が業務時間外」の2 つの要素が必要です。片方だけだと「深夜に残業したのかもしれない」「別拠点かもしれない」という反論が成り立ちます。要素が 2 つある設問で 1 つしか書かない、という講評の頻出指摘そのままの形です。

設問 2

(1) P 氏がパスワードを使い回していたために N サービスまで侵入された。この種の攻撃の名称を答えよ。

(2) N サービスにはログイン試行回数のしきい値が設定されていたが、被害を防げなかった。その理由を 30 字以内で述べよ。

設問 2 の解答例と採点ポイント

解答例 (1) パスワードリスト攻撃/(2) 試行回数がしきい値に達する前にログインが成功するから(26 字)

採点ポイント (1) は「ブルートフォース攻撃」「辞書攻撃」では誤りです。攻撃者は正しい組合せを 1 つ持っており、全パターンを試していません。(2) は攻撃の手順から説明するのが要点で、「しきい値が甘いから」「5 回では少ないから」は的外れです。実際には 4 回目で成功しており、しきい値をいくつに下げても同じ結末になります。試行回数制限が効くのは「多数の試行を必要とする攻撃」だけだ、という限界の理解が問われています。

設問 3

Q 課長は不正アクセスに気付いた直後、M サービスの P 氏のアカウントを無効化した。その目的を 20 字以内で述べよ。

設問 3 の解答例と採点ポイント

解答例 攻撃者による追加のデータ持出しを防ぐため(20 字)

採点ポイント 文末が「〜ため」であること、防ぎたい事象(追加の持出し)が入っていることの 2 点です。「パスワードを変更するため」は手段であって目的ではありません。「安全にするため」は防ぎたい事象が書かれていないので要点を満たしません。20 字は目的テンプレートがちょうど収まる長さで、修飾語を足す余地がないぶん、部品の抜けがそのまま減点になります。

設問 4

表 2 の対策案のうち、今回の侵入を直接防ぐことができたものを 1 つ選び、記号で答えよ。また、その理由を 35 字以内で述べよ。

設問 4 の解答例と採点ポイント

解答例 記号: ア/理由: 漏えいした ID とパスワードだけではログインできなくなるから(29 字)

採点ポイント 誤答の作られ方を確認してください。イ(ディスク暗号化)は PC の紛失・盗難への対策で、認証情報を入力させられた今回とは無関係です。ウ(長いパスワードと定期変更)は、利用者自身が偽サイトに入力してしまう経路には効きません。エ(FW で国外通信を遮断)は一見効きそうですが、本文に「M サービスへは VPN を経由せず貸与ノート PC から直接接続する」とあり、この通信は事務所の FW を通りません。本文の構成の条件を読めているかを問う型で、講評が繰り返し指摘する「本文の固有条件を使わずに一般論で答える」失点の裏返しです。

設問 5

(1) R 氏の指摘を受け、Q 課長は各機器の時刻を NTP で同期することにした。その必要性を 25 字以内で述べよ。

(2) さらに Q 課長は SIEM の導入を検討した。SIEM を導入する目的を 30 字以内で述べよ。

(3) R 氏は職員への周知も求めた。ログを取得して監視していることを職員に周知することが、内部不正の抑止になる理由を 30 字以内で述べよ。

設問 5 の解答例と採点ポイント

解答例 (1) 複数の機器のログを時系列で突き合わせるため(21 字)/(2) 複数の機器のログを集約し、相関分析して異常を検知するため(28 字)/(3) 見つからずに済むという認識を失わせ、不正の機会をなくすから(29 字)

採点ポイント (1) は「正確な時刻を記録するため」では足りません。時刻を合わせる価値は機器をまたいで並べたときに初めて出るので、「突き合わせる」「時系列で追う」に相当する語が要ります。(2) は「ログを集める」だけでなく相関分析による検知まで書きます。(3) は不正のトライアングル(動機・機会・正当化)のうち、監視の周知が下げるのは主に機会の認識です。この設問は技術面ばかりを答えて落とす人が多い型で、令和 7 年秋の講評でも「技術的な対策に着目しがち」と名指しされています。組織・心理面の対策が候補にあることを、内部不正やサプライチェーンが題材の回では常に思い出してください。

まとめ

覚える数字値そこから決まる行動
試験時間と問題数150 分・11 問出題・5 問解答1 問の予算は 25〜30 分。選択に 5 分、見直しに 10 分
配点と基準点各 20 点・100 点満点・基準点 60 点3 問完答ではなく 5 問 × 12 点を狙う。0 点の問題を作らない
問 1 の小設問19 回で 129 個・1 問平均 6.81 小設問あたり約 3 点。配点は非公開なので全部同じ重さで埋める
問 1 の形式比率字数記述 44% / 記号選択 42%この 2 形式で 86%。用語暗記だけでは 20 点の 4 割しか取れない
字数指定の中心15〜35 字が 45 件(令和 6 年春以降は 35 字上限)40 字の練習より 20〜30 字の練習。上限の 7〜9 割を埋める
問 1 の正答率19 回中 16 回が平均以上、ただし 18 回で低正答率設問あり満点を狙わず、確実な小設問で 12 点以上を確保して次へ進む
問 1 の計算19 回で 1 件のみ計算対策は「文字種数の桁数乗」1 型で足りる

次章は科目 B のテクノロジ系選択問題(問 3〜8)です。本章で作った「設問を先に読み、テンプレートで書く」手順はそのまま使えます。違うのは撤退判断の基準で、分野ごとに「何分で見切るか」が変わります。