応用情報技術者試験 合格教科書|2026年度(令和8年度)対応
第 22 章|科目 A 例年 3 問(直近 10 年 19 回で 61 問、1 回平均 3.2 問。最多 4 問)

法務 ― 知的財産権・セキュリティ関連法・労働/取引関連法・標準化

著作権と特許の違い、不正アクセス禁止法・個人情報保護法の要点、請負/派遣の境界、JIS/ISO の標準化を対比表で覚える

この章で学ぶこと

科目 A では直近 10 年(19 回)で 61 問、1 回平均 3.2 問が出ています。ほぼ毎回 3 問で、まれに 4 問という安定した分野です。61 問中 60 問が知識型で計算問題はなく、問 78・79・80 が定位置です。覚えれば確実に取れるので、3 問確保を目標にします。科目 B の選択分野には含まれません。

知的財産権の体系と著作権法の基本

知的財産権は、人間の知的な創作活動の成果や営業上の信用に対して、法律が排他的な権利を与える制度の総称です。応用情報で問われるのは条文の細部ではなく、どの成果物をどの法律で守るかという振り分けと、権利がいつ発生していつ切れるかです。国の施策としての位置づけを定めるのが知的財産基本法で、内閣に知的財産戦略本部を置いて推進計画を作ることまで規定しています。まず全体像を 1 枚で押さえます。

知的財産権 産業財産権 著作権 その他の知的財産 特許権・実用新案権 意匠権・商標権 著作者人格権 著作財産権 営業秘密・回路配置 限定提供データ 登録で発生(方式主義) 創作で発生(無方式主義) 不競法・回路配置法などで保護
図 22-1 知的財産権の体系。3 本の枝で分かれる点よりも、最下段の「権利がどう発生するか」が試験の分岐点です。産業財産権は特許庁への出願と登録が要り、著作権は要りません。

大きな分かれ目は権利の発生のしかたです。産業財産権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権)は特許庁への出願と登録によって初めて発生する方式主義、著作権は創作した瞬間に自動的に発生する無方式主義です。ここで守られる著作物とは、著作権法の定義で「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」です。事実やデータそのもの、ありふれた表現は創作的な表現ではないので著作物になりません。無方式主義はベルヌ条約が定める原則で、「著作権は文化庁に登録しなければ権利が生じない」という選択肢は必ず誤りになります。

著作権は 1 つの権利ではなく権利の束です。著作者の人格的な利益を守る著作者人格権は著作者本人に一身専属し、譲渡も相続もできません。これに対し財産的な利益を守る著作財産権は、全部でも一部でも譲渡できます。「著作権をすべて譲り受けた」と書かれていても、同一性保持権などの人格権は著作者に残っている、という点が誤答肢の作りどころです。

区分含まれる権利譲渡試験での押さえ
著作者人格権公表権、氏名表示権、同一性保持権できない(一身専属)著作権を譲渡しても著作者に残る
著作財産権複製権、上映権、公衆送信権(送信可能化を含む)、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権・翻案権できる(全部または一部)「著作権の譲渡」とはこちらのこと
著作隣接権実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者の権利できる(実演家人格権を除く)創作者ではなく「伝達した者」を保護する

会社で作ったものは誰のものか、を決めるのが職務著作(法人著作)です。著作権法は、法人等の発意に基づき、その業務に従事する者が職務上作成し、法人等の名義で公表する著作物は、契約や勤務規則に別段の定めがない限り法人等が著作者になると定めています。プログラムの著作物だけは「法人等の名義で公表する」という要件が不要で、社内システムのように公表しないソフトウェアでも会社が著作者になります。これに対し、職務としてではなく個人の発意で作った個人著作は、作成した個人が著作者になります。

数え方の型: 著作権の保護期間

満了日 =(死亡または公表があった年 + 70)年の 12 月 31 日。著作権法は暦年主義で、起算日を「出来事があった年の翌年 1 月 1 日」にそろえるため、起算日の年に足すのは 69 になります。公式は起算日の年ではなく出来事があった年に 70 を足す形で覚えます。

  1. 起算点を選ぶ。個人の著作物は著作者の死亡、団体名義・無名変名・映画の著作物は公表を基準にする
  2. その年の翌年 1 月 1 日を起算日にする。例: 個人の著作者が 2000 年 5 月に死亡 → 起算日は 2001 年 1 月 1 日
  3. 70 年を加える。2001 年 1 月 1 日から 70 年 → 2070 年 12 月 31 日に満了

産業財産権が「出願日から何年」と数えるのに対し、著作権は「死亡・公表の年の翌年から 70 年」です。この起算点の違いがそのまま対比問題になります。

著作権には、許諾なしに使える権利制限規定があります。代表が引用と私的使用のための複製です。引用が適法になるには、公表された著作物であること、報道・批評・研究などの正当な範囲内であること、引用部分が明瞭に区別できること、自分の著作物が主で引用が従であること、出所を明示することが必要です。私的使用は「個人的または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」に限られるため、社内で配るための複製は私的使用に当たりません。このほか、図書館等が利用者の求めに応じて行う複写、学校その他の教育機関で授業のために行う複製・公衆送信、入学試験などの試験問題としての複製も、必要と認められる限度で許諾なしにできます。

元の著作物を翻訳・編曲・変形・翻案して作られた著作物は二次的著作物で、これを利用するには二次的著作物の著作者だけでなく原著作者の許諾も必要です。複数人が共同で創作し、各人の寄与を分離して利用できないものは共同著作物となり、権利の行使には全員の合意が要ります。創作した者ではなく著作物を世に伝えた者を保護するのが著作隣接権で、実演家・レコード製作者・放送事業者・有線放送事業者が対象です。なお、違法にアップロードされたものと知りながら音楽・映像や書籍・漫画をダウンロードする行為は、私的使用であっても著作権侵害になります(ただし軽微な複製や著作権者の利益を不当に害しない場合などは適用除外となります)。

条約・制度対象押さえる点
パリ条約産業財産権内国民待遇と優先権。第一国出願から一定期間内の他国出願を、第一国の出願日にしたものとして扱う
ベルヌ条約著作権無方式主義と内国民待遇。日本の著作権法の前提
万国著作権条約著作権© 表示によって方式主義の国とも保護をつなぐ
PCT(特許協力条約)特許1 通の国際出願で複数国に出願したのと同じ効果を得る
TRIPS 協定知的財産全般WTO 加盟国に最低限の保護水準を義務付ける
WIPO(世界知的所有権機関)知的財産全般国連の専門機関。知的財産に関する条約を管理する
フェアユース著作権米国の包括的な権利制限。日本にはなく、個別の権利制限規定で対応する
回路配置利用権半導体集積回路の回路配置登録により発生し、存続期間は 10 年。著作権でも特許でもない独立の権利

プログラムと著作権 ― 帰属・保護対象・適法な利用

中分類 23 の中でこの節が最も出ます。直近 10 年で著作権法は 9 問出題され、そのうち帰属が 3 問、保護対象と対象外が 3 問、適法な利用が 2 問です。直近 6 回のうち 4 回は問 78 が著作権でした。まず帰属から固めます。

出題実績 プログラム著作権の帰属は直近 10 年で 3 回(平成 29 年秋・令和 4 年春・令和 4 年秋)。正解は毎回「実際に創作した側」で、誤答肢は「費用を負担した発注者」「元請」「発注者と受託者の共有」でした。
契約に著作権の定めがあるか 定めあり その定めが優先する 定めなし 請負・委託開発 受託者に帰属 創作した会社の職務著作 労働者派遣 派遣先に帰属 派遣先の指揮命令下で作成 多段の再委託 実作成者に帰属 元請ではなく作った会社 いずれも費用を負担した発注者に自動的に移るわけではない
図 22-2 プログラム著作権の帰属判定。契約の定めが最優先で、定めがなければ「誰の指揮命令のもとで創作したか」で決まります。多段委託では元請ではなく実際に作成した会社に帰属します。

帰属の順序は 3 段です。第 1 に契約の定め。受託者に発生した著作権を発注者へ譲渡すると契約書に書いてあれば、そのとおりになります。第 2 に職務著作。契約に定めがなければ、実際に創作した従業員ではなく、その従業員を雇う法人が著作者になります。第 3 に、その法人がどこかを指揮命令の所在で決めます。請負では受託者が自社の従業員に指示するので受託者、派遣では派遣先が指示するので派遣先です。

次に、何が著作権で守られるかです。著作権法は、プログラム言語・規約・解法を保護の対象から明示的に外しています。プログラムそのものは保護されますが、その背後にあるアイディアや仕様は保護されない、という「表現とアイディアの二分」がこの分野の軸です。画面まわりは切り分けが要ります。画面に表示される絵や文言そのものは表現なので著作物になり得ますが、機器を操作するための画像のデザインは意匠登録をして意匠法で守ります。同じ画面でも、守りたいものが表現かデザインかで使う法律が変わります。

1 つのソフトウェア 著作権で保護される プログラム データベース 編集著作物(選択・配列) マニュアル・画面の表現 保護されない プログラム言語 規約(プロトコル) 解法(アルゴリズム) アイディア・事実 別の法律で守る 画面デザインは意匠法 発明は特許法 営業秘密は不競法 商品名は商標法 線引きは『表現』か『アイディア・仕様』か
図 22-3 著作権の保護対象マップ。同じ 1 本のソフトウェアが、上の 1 つの箱から 3 つの行き先に分かれます。令和 6 年秋は左の列(コンパイラのプログラム)を、令和 7 年秋は中央の列(言語・規約)を問う裏表の連続出題でした。右の列は「著作権では守れないので別法で守る」ものです。

最後に、買ってきたプログラムをどこまで自由に扱えるかです。著作権法は複製物の所有者による複製・翻案を認めており、自分の機器で利用するために必要と認められる限度であれば、バックアップの作成もバグの修正も、処理速度を上げるための改変も許諾なしにできます。反対に、複製物を他人に譲渡したあとに自分の手元の複製を残しておくことはできません。

行為可否根拠
購入したプログラムのバックアップを 1 部作る適法複製物の所有者が自ら利用するための複製
処理速度を上げるため購入したプログラムを改変する適法複製物の所有者が自ら利用するための翻案
社内の他部門に配るため業務用に複製する違法私的使用の範囲外。複製権の侵害
複製物を他人に譲渡し、自分の複製は残しておく違法譲渡した時点で手元の複製を保存できない
大量の文章や画像を機械学習の学習データに使う原則適法情報解析のための利用(著作物を享受しない利用)
生成物が既存の著作物に似ており、それに依拠している侵害になり得る類似性と依拠性の両方が認められれば侵害

生成 AI については、令和 7 年春に「生成した画像が既存の著作物に類似していれば著作権侵害となる可能性がある」という趣旨が初めて問われました。学習の段階(情報解析としての利用)と生成・利用の段階(類似性と依拠性の判断)を分けて考えるのが要点です。

覚え方 保護されないものは「言語・規約・解法」の 3 つ。頭文字を取って「げ・き・か(言・規・解)は守られない」と覚え、それ以外のプログラム・データベース・編集著作物は守られる、と裏返して確認します。

産業財産権 4 法と不正競争防止法

産業財産権は 4 つの法律の集まりで、いずれも特許庁への出願と登録によって権利が発生します。直近では組合せを問う形から、令和 6 年春の特許法(保護対象)、令和 7 年秋の意匠法(独自の GUI)のように個別の法律を名指しする形に変わってきています。まず保護対象と存続期間を表で覚えます。

権利保護対象存続期間登録の要件・特徴
特許権発明(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの)出願日から 20 年新規性・進歩性・産業上の利用可能性。実体審査あり
実用新案権考案(物品の形状・構造・組合せに関する考案)出願日から 10 年実体審査なしで登録される。権利行使には技術評価書が要る
意匠権意匠(物品・建築物・画像のデザイン)出願日から 25 年新規性・創作非容易性。操作用の画像(GUI)も対象になる
商標権商標(商品・役務の出所を示す文字・図形・記号など)登録から 10 年(更新できる)更新を繰り返せば半永久的に維持できる唯一の権利
覚え方 存続期間は「特 20・実 10・意 25・商 10 更新あり」。数える起算点も、特許・実用新案・意匠は出願日から、商標だけ登録日からです。更新できるのは商標だけ、という点が正誤判定で効きます。

特許法で問われる仕組みは 4 つです。第 1 に先願主義で、同じ発明について複数の出願があれば、先に発明した者ではなく先に出願した者が特許を受けます。第 2 に出願公開で、出願から 1 年 6 か月が経つと内容が公開されます。第 3 に審査請求で、出願しただけでは審査されず、出願から 3 年以内に審査請求をしなければ出願は取り下げたものとみなされます。第 4 に職務発明で、あらかじめ契約や勤務規則で定めておけば特許を受ける権利は発生時から使用者に帰属し、従業者は相当の利益を受ける権利を持ちます。

特許は「使わせる」形でも活用されます。他社に独占的に実施させる専用実施権、非独占で実施させる通常実施権のほか、複数の企業が持ち寄った特許を 1 か所に集めて一括して管理・許諾するパテントプールがあります。パテントプールは、互いの特許を許諾し合うクロスライセンスや、1 つの特許を複数人で持つ特許の共有と混同させる誤答肢が作られます。ソフトウェアも、単なるアルゴリズムではなくハードウェア資源を用いた具体的な処理として構成されていれば発明として特許の対象になります(ソフトウェア特許)。ビジネス方法の特許(ビジネスモデル特許)もこの形で成立します。

不正競争防止法は、登録された権利がなくても事業者間の公正な競争を守る法律です。中心は営業秘密で、次の 3 要件をすべて満たすものだけが保護されます。

営業秘密の 3 要件意味満たさない例
秘密管理性秘密として管理されている(表示・施錠・アクセス制限など、秘密と分かる形になっている)誰でも閲覧できる共有フォルダに無表示で置いてある
有用性生産方法・販売方法その他の事業活動に有用な技術上・営業上の情報である脱税や有害物質の垂れ流しなど反社会的な行為の情報
非公知性公然と知られていないすでに刊行物やウェブサイトで公開されている

営業秘密のほかにも、周知な商品表示に似せて出所を誤認させる混同惹起、他人の著名な表示を無断で使う著名表示冒用、他人の商品形態をそのまま真似る商品形態模倣(日本国内で最初に販売された日から 3 年間)、コピープロテクトを外す装置の提供(技術的制限手段の無効化)、他人の商標などと同一・類似のドメイン名を不正の利益を得る目的で取得する行為が不正競争として禁じられています。また、業として特定の者に提供する情報を電磁的方法で相当量蓄積・管理している限定提供データも、営業秘密とは別枠で保護されます。救済手段は差止請求・損害賠償請求・信用回復措置です。

セキュリティ関連法規 ― 不正アクセス禁止法と刑法の切り分け

この分野の設問はほぼ 1 つの型です。「次の行為を処罰する法律はどれか」と聞かれ、選択肢に不正アクセス禁止法・刑法・個人情報保護法などが並びます。直近 10 年でコンピュータ犯罪と適用法の問題が 3 回、不正アクセス禁止法の助長行為が 1 回出ています。境界線は図 22-4 の 1 枚で決まります。

行為 適用される法律 他人の ID・パスワードで侵入 不正アクセス禁止法 ID・パスワードを他人に提供 不正アクセス禁止法(助長行為) ウイルスを作成して提供する 刑法(不正指令電磁的記録に関する罪) Web ページを改ざんして業務妨害 刑法(電子計算機損壊等業務妨害罪) 侵入・識別符号は不正アクセス禁止法/改ざん・消去・ウイルスは刑法
図 22-4 コンピュータ犯罪と適用法。上 2 行は「アクセス制御をくぐる」行為、下 2 行は「データやシステムを壊す」行為です。侵入していなくても識別符号を渡しただけで不正アクセス禁止法違反になる点に注意します。

不正アクセス禁止法(不正アクセス行為の禁止等に関する法律)が対象にするのは、ネットワークを通じてアクセス制御機能による制限を免れる行為です。他人の識別符号(ID とパスワードなど)を無断で入力するなりすましと、セキュリティホールを突いて認証を回避する攻撃の 2 つが不正アクセス行為に当たり、3 年以下の拘禁刑または 100 万円以下の罰金が科されます。さらに、識別符号の不正な取得・保管、識別符号の入力を不正に要求する行為(フィッシングサイトの開設)、他人に識別符号を無断で提供する助長行為も禁じられ、こちらは 1 年以下の拘禁刑または 50 万円以下の罰金です。助長行為だけは罰則が 2 段構えで、この刑が科されるのは相手が不正アクセスに使う目的だと知って提供した場合であり、目的を知らずに提供した場合は 30 万円以下の罰金になります。実際に侵入していなくても処罰されるのがこの法律の特徴で、逆にネットワークにつながっていないスタンドアロン機を直接操作した場合は対象外になります。

刑法の罪名典型的な行為法定刑の上限
不正指令電磁的記録に関する罪(ウイルス作成罪)コンピュータウイルスを作成・提供・供用・取得・保管する作成・提供は 3 年以下の拘禁刑
電子計算機損壊等業務妨害罪データを消去・改ざんしてシステムを使用目的に沿わない動作をさせ、業務を妨害する5 年以下の拘禁刑
電子計算機使用詐欺罪虚偽の情報を与えて不正な財産上の利益を得る(不正送金など)10 年以下の拘禁刑
電磁的記録不正作出及び供用罪権利義務に関する電磁的記録を不正に作り、使用する私電磁的記録は 5 年以下の拘禁刑
支払用カード電磁的記録不正作出等罪クレジットカードの磁気情報を偽造・譲渡する(スキミング)10 年以下の拘禁刑
出題実績 「この行為を処罰する法律はどれか」は直近 10 年で 3 回出題され、正解は 3 回とも刑法でした(ウイルスの作成、Web ページ改ざんによる業務妨害、マルウェアによるデータ消去)。誤答肢には不正アクセス禁止法・個人情報保護法・プロバイダ責任制限法が並びます。裏側として、令和 4 年春には ID とパスワードを他人に提供する助長行為が不正アクセス禁止法違反として問われました。
2026年度の注意 2025 年 6 月に懲役と禁錮が拘禁刑に一本化されました。手元の古い問題集には「3 年以下の懲役」と書かれていますが、量刑の年数そのものは変わっていません。刑名が変わっただけと理解して、年数で覚え直す必要はありません。
法律目的・規制内容試験での押さえ
サイバーセキュリティ基本法電磁的方式で記録・送受信される情報と電磁的記録媒体の安全管理を対象に、国・地方公共団体・重要社会基盤事業者・サイバー関連事業者・教育研究機関の責務と国民の努力を定める罰則の法律ではなく施策の基本法。サイバーセキュリティ戦略本部と、官民が情報を共有するサイバーセキュリティ協議会を置く
電子署名法本人による一定の電子署名がある電磁的記録は真正に成立したものと推定する押印と同等の効力。認定認証事業者が主務大臣の認定を受け、本人性を保証する電子証明書を発行する
情報流通プラットフォーム対処法権利侵害情報への発信者情報開示請求と送信防止措置、大規模事業者への削除申出窓口の整備義務プロバイダ責任制限法の改称・拡充版(2025 年 4 月施行)
特定電子メール法広告宣伝メールは、あらかじめ同意した者にだけ送れる(オプトイン方式)広告を含む SMS も対象。受信拒否の通知を受けたら送信できない
通信傍受法・電気通信事業法通信の傍受の手続、通信事業者の通信の秘密の保護技適マークは電波法に基づく表示(別の法律)

法律ではありませんが、経済産業省と IPA が公表するサイバーセキュリティ経営ガイドライン(経営者が認識すべき 3 原則と、担当幹部に指示すべき重要 10 項目)、内閣サイバーセキュリティセンターの政府機関等のサイバーセキュリティ対策のための統一基準群、経済産業省の情報セキュリティ管理基準も出題範囲です。それぞれ「誰に向けた文書か」で区別します。

個人情報保護法とマイナンバー法

個人情報保護法とマイナンバー法は直近 10 年で 7 問出ています。要配慮個人情報が 2 回、マイナンバー法が 3 回で、いずれも用語の定義そのものを問う形です。義務を負うのは個人情報を事業に用いるすべての事業者(個人情報取扱事業者)で、規模による適用除外はありません。個人情報を頂点に、義務が積み上がる構造で覚えます。

個人情報(生存する個人を識別できる) 個人データ(DB を構成する個人情報) 保有個人データ 本人の開示・訂正・利用停止の対象 個人データは安全管理措置と提供制限 要配慮個人情報 取得に本人同意が要る オプトアウト不可 個人情報とは別に扱うもの 匿名加工情報 仮名加工情報 個人関連情報 匿名加工情報は本人の同意なく第三者提供できる。仮名加工情報は原則できない
図 22-5 個人情報の分類。内側に行くほど義務が積み上がります(個人データ=安全管理措置と第三者提供の制限、保有個人データ=本人の開示・訂正・利用停止請求への対応)。要配慮個人情報は個人データの内側ではありません。個人情報の一類型なので、データベース化されていない紙 1 枚の診断書も要配慮個人情報です。右側の 3 つは加工や性質によって個人情報の枠から外れたもので、外れ方の違いが提供ルールの違いになります。
用語定義扱いの違い
個人情報生存する個人に関する情報で、特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合して識別できるものを含む)、または個人識別符号を含むもの死者の情報、法人そのものの情報は含まない
個人識別符号指紋・顔認識データ・DNA などの身体的特徴を変換した符号、旅券番号・運転免許証番号・マイナンバーなどの公的番号それ単独で個人情報になる
個人データ個人情報データベース等を構成する個人情報安全管理措置と第三者提供の制限がかかる
保有個人データ事業者が開示・訂正・利用停止などに応じる権限を持つ個人データ本人からの開示請求などの対象になる
要配慮個人情報人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴など、不当な差別や偏見が生じないよう取扱いに特に配慮を要する情報取得に原則として本人の同意が要る。オプトアウトによる第三者提供はできない
仮名加工情報他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できないように加工した情報社内の分析に使う。原則として第三者提供できない
匿名加工情報特定の個人を識別できず、かつ元の個人情報を復元できないように加工した情報本人の同意なく第三者提供できる。作成した旨と項目の公表が要る
個人関連情報Cookie の識別子や閲覧履歴など、個人情報・仮名加工情報・匿名加工情報のいずれにも当たらない生存する個人に関する情報提供先で個人データになることが想定されるなら、本人同意の取得を確認する

事業者の義務は利用目的から始まります。個人情報を取り扱うときはあらかじめ利用目的をできる限り特定し、本人の同意なく特定した目的の範囲を超えて取り扱ってはいけません。取得したら利用目的を本人に通知または公表します(契約書などで本人から直接書面で取得するときは、あらかじめ明示します)。利用目的を後から変更できるのは元の目的と関連性のある範囲までで、変更後の目的もあらためて通知または公表が要ります。

第三者提供は原則として本人の同意が要ります。代表的な例外は、法令に基づく場合、人の生命・身体・財産の保護に必要で本人の同意を得ることが困難な場合、公衆衛生の向上や児童の健全な育成に必要な場合、国の機関などへの協力が必要な場合の 4 つで、このほかに学術研究機関等に関する例外もあります。あらかじめ本人に通知したうえで停止を求められれば提供をやめるオプトアウトもありますが、個人情報保護委員会への届出が必要で、要配慮個人情報・不正に取得した個人データ・オプトアウトで取得した個人データには使えません。なお、委託・事業承継・共同利用に伴う提供は第三者提供に当たらないので同意は不要です。

漏えい等が起きた場合、要配慮個人情報が含まれるとき、財産的被害のおそれがあるとき、不正の目的による行為によるとき、1,000 人を超えるときは、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務です。事業者が講じる安全管理措置は、組織的・人的・物理的・技術的の 4 つに外的環境の把握を加えた区分で整理され、「取扱状況を記録して保存する」は組織的安全管理措置に分類されます。

マイナンバー法は個人情報保護法の特別法で、マイナンバーを含む個人情報を特定個人情報と呼びます。利用できる範囲は社会保障・税・災害対策の 3 分野に法律で限定され、本人が同意しても法定の範囲外では利用も提供もできません。番号の変更も自由ではなく、漏えいして不正に用いられるおそれがあると認められる場合などに限られます。行政機関等は事前に特定個人情報保護評価を実施し、個人情報保護委員会が監督と立入検査を行います。

国際的な枠組み EU の GDPR(一般データ保護規則)は EU 域内の個人データを域外へ移転することを原則として制限し、違反には高額の制裁金を科します。OECD のプライバシーガイドライン(8 原則)は各国法の下敷きで、日本では JIS Q 15001 に基づくプライバシーマーク制度が対応します。個人データの取扱いを事前に評価する手法が PIA(プライバシー影響アセスメント)で、プライバシー原則と関係者の役割を共通の型に整理したものをプライバシーフレームワーク(ISO/IEC 29100)と呼びます。

労働関連法規 ― 請負・準委任・派遣・出向

請負・派遣まわりは直近 10 年で 7 問、労働関連法規をすべて合わせると 9 問で、著作権法の 9 問と並ぶ二大テーマです。しかもその 7 問のうち 4 問は請負における指揮命令権を問う同じ論点で、2 組の設問がそれぞれ 2 回ずつ再出題されています。ここは図で決着させます。

請負契約 発注者 A 社 受託者 B 社 B 社の労働者 請負契約 雇用 指揮命令 発注者は労働者に指示できない 労働者派遣 派遣先 A 社 派遣元 B 社 派遣労働者 労働者派遣契約 雇用 指揮命令 雇用は派遣元、指揮命令は派遣先
図 22-6 請負と労働者派遣の三者関係。線種は左右のパネルで共通で、実線が雇用と契約、破線が流れている矢印が指揮命令です。請負では雇用も指揮命令も受託者の中で完結し、派遣では雇用(派遣元)と指揮命令(派遣先)が別々の会社に分かれます。

請負契約は仕事の完成を目的とする契約で、発注者は完成した成果物を受け取るだけです。受託者の労働者に対して「この画面から作ってください」「今日は 19 時まで残ってください」と直接指示する権限は、発注者にはありません。作業場所が発注者の事業所であっても同じで、そのために発注者と労働者の間に新たな雇用契約が必要になることもありません。この論点は平成 29 年春と令和 4 年秋にまったく同じ形で出題されています。

この線を越えたものが偽装請負です。契約書は請負なのに、実態は発注者が労働者に直接指示している状態を指し、労働者派遣法と職業安定法に違反します。

実態が発注者の指揮命令なら偽装請負 発注者 A 社 受託者 B 社 B 社の労働者 請負契約 雇用 日々の作業指示 これは違法。労働者派遣法・職業安定法に違反する
図 22-7 偽装請負。契約書の名前ではなく実態で判断されます。赤い矢印が出ているかどうかが唯一の判定基準で、令和 2 年 10 月と令和 4 年春は、この矢印がある作業実態を選ばせる問題でした。
形態雇用関係指揮命令成果物の完成責任
請負受託者と労働者受託者あり(契約不適合責任も負う)
準委任受託者と労働者受託者なし(善管注意義務を負う)
労働者派遣派遣元と労働者派遣先なし(労働力の提供)
在籍出向出向元・出向先の両方と労働者出向先なし
偽装請負受託者と労働者(契約上は請負)発注者(実態)違法。派遣法・職業安定法違反
出題実績 請負における指揮命令の所在は直近 10 年で 4 回。平成 29 年春と令和 4 年秋がまったく同じ設問、令和 2 年 10 月と令和 4 年春も同じ設問の再出題でした。令和 5 年秋には図から派遣と出向の三者関係を読み取る問題も出ています。同じ論点が繰り返される分野なので、図 22-6 と図 22-7 を覚えれば確実に得点できます。

出向は派遣と混同しやすい形態です。在籍出向では、労働者は出向元との雇用関係を残したまま出向先とも雇用関係を結び、指揮命令は出向先が行います。派遣が「派遣元とだけ雇用契約を結ぶ」のに対し、在籍出向は雇用契約が 2 つある点が決定的な違いです。転籍出向では出向元との雇用関係そのものが終了します。

労働者派遣法で問われるのは義務の振り分けです。派遣元は雇用主として、段階的・体系的な教育訓練やキャリアコンサルティング、待遇に関する説明を行います。派遣先は派遣先責任者の選任や派遣先管理台帳の作成、就業環境の整備、苦情処理、実際の労働時間の管理を行います。派遣可能期間は事業所単位・個人単位とも原則3 年で、事業所単位は過半数労働組合等の意見を聴けば延長できます。派遣先が労働者を特定する目的で事前面接を行うことは禁止(紹介予定派遣は例外)、派遣された労働者をさらに別の会社へ派遣する二重派遣も禁止です。港湾運送・建設・警備・医療関係の一部は派遣が禁止されています。

法律内容数字・要点
労働基準法労働条件の最低基準。法定労働時間、休憩、割増賃金、年次有給休暇、産前産後休業などの母性保護1 日 8 時間・週 40 時間。時間外は 25% 以上、休日は 35% 以上、深夜は 25% 以上の割増(月 60 時間超の時間外は 50% 以上)
36 協定時間外・休日労働をさせるために必要な労使協定(労働基準法第 36 条)原則は月 45 時間・年 360 時間。特別条項でも年 720 時間以内
裁量労働制/フレックスタイム制実労働時間ではなくみなし時間で扱う/始業・終業時刻を労働者が決める裁量労働は専門業務型と企画業務型。フレックスの清算期間は最長 3 か月
労働契約法労働契約の成立・変更のルール。有期契約の無期転換同一の使用者との有期契約が通算 5 年を超えると無期転換を申し込める
労働安全衛生法/労働施策総合推進法職場の安全衛生/パワーハラスメント防止措置の義務付け後者は通称パワハラ防止法。令和 7 年秋に初出題
公益通報者保護法組織の不正を通報した労働者を解雇などの不利益取扱いから守る従業員 301 人以上の事業者に内部通報体制の整備義務
フリーランス・事業者間取引適正化等法発注事業者に取引条件の明示と報酬支払期日の設定を義務付ける報酬は役務の提供を受けた日から 60 日以内に支払う
男女雇用機会均等法/育児・介護休業法募集・採用から配置・昇進・退職までの性別による差別の禁止/育児休業・介護休業と短時間勤務などの両立支援直近 10 年で出題なし。法律名と守備範囲だけ押さえる
パートタイム労働法(パートタイム・有期雇用労働法)/高年齢者雇用安定法短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との不合理な待遇差の禁止/高年齢者の雇用確保措置後者は 65 歳までの雇用確保が義務、70 歳までの就業確保が努力義務

取引関連法規 ― 取適法・民法・PL 法

取引関連では取適法(下請法)と PL 法が各 4 問で、どちらも正解肢がほぼ固定されています。落とすと痛い代わりに、覚えれば確実に取れる 2 テーマです。

2026年度の注意 従来の「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」は中小受託取引適正化法(取適法)に、「親事業者・下請事業者」は委託事業者・中小受託事業者に呼び名が変わりました。シラバス Ver.7.2 は新しい名称を用語例に採っている一方、手元の過去問はすべて旧称です。どちらで出ても同じ法律と読み替えられるようにしておきます。変わったのは名称だけではありません。適用対象の判定に従業員数の基準が加わり、禁止行為に手形などによる支払と協議に応じないままの一方的な代金の決定が加わっています。

この法律は、発注する側が大きく受注する側が小さいという力関係を前提に、発注側に 4 つの義務と一連の禁止行為を課します。対象になるのは製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託で、プログラムやシステムの開発委託は情報成果物作成委託に当たります。適用されるかどうかの区分は資本金または従業員数で決まり、プログラムの作成委託は製造委託と同じ「資本金 3 億円・1,000 万円」または「従業員 300 人」の線が使われます。

委託事業者の 4 つの義務内容
書面の交付発注時に、給付の内容・代金の額・支払期日・支払方法などを記載した書面(または電磁的記録)を直ちに交付する
書類の作成・保存給付の内容や代金の額などを記載した書類を作成し、2 年間保存する
支払期日を定める給付を受領した日から起算して 60 日以内で、かつできる限り短い期間内に支払期日を定める
遅延利息の支払支払期日までに支払わなかったときは年率 14.6% の遅延利息を支払う

数え方の型: 支払期日の上限

支払期日の上限 = 受領日を 1 日目として数えた 60 日目。「受領日の翌日から」ではなく受領日そのものを 1 日目と数えます。

  1. 受領日を確認する。例: 4 月 1 日に成果物を受領した
  2. その月に残っている日数を数える。4 月は 30 日あるので、4 月 30 日が 30 日目
  3. 残りを翌月に数える。60 − 30 = 30 日分なので、5 月 30 日が 60 日目

答え: 支払期日は遅くとも 5 月 30 日です。これより後ろに設定すること自体が違反であり、実際に遅れたかどうかは関係ありません。

禁止行為で繰り返し出題されるのは、代金の額を決めないまま発注すること、仕様を書面に書かず口頭だけで伝えること、受領した成果物を返品することの 3 つです。ほかにも受領拒否、代金の減額、買いたたき、購入・利用の強制、公正取引委員会に知らせたことへの報復措置、不当な給付内容の変更ややり直し、手形などによる支払が禁じられています。双方が合意したうえでの仕様変更や、契約どおりでない成果物のやり直し要求は違反ではなく、これが誤答肢として並びます。

次に民法です。2020 年 4 月に施行された改正で、売主・請負人が負う責任は「瑕疵担保責任」から契約不適合責任という名称と枠組みに変わりました。引き渡された目的物が種類・品質・数量について契約の内容に適合しないとき、注文者は追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約の解除ができます。請負では、不適合を知った時から 1 年以内に通知しないとこれらの権利を失います。

比較軸請負契約準委任契約
約束するもの仕事の完成事務の処理(善良な管理者の注意をもって行う)
完成しなかったとき原則は報酬を請求できない。ただし可分な部分で注文者が利益を受けるときは、その割合に応じて請求できる(民法 634 条)履行した割合に応じて報酬を請求できる
契約不適合責任負う負わない(善管注意義務違反は債務不履行)
向く工程(モデル取引・契約書)請負型=システム内部設計、ソフトウェア設計・プログラミング・ソフトウェアテスト、システム結合準委任型=要件定義、運用テスト(発注者の関与が不可欠な工程)

この工程別の使い分けは、IPA の情報システム・モデル取引・契約書<第二版>が示す考え方です。上の表に載らない工程が 2 つあります。システム外部設計とシステムテストは、IPA 自身が「準委任型又は請負型」と整理していて、発注者の関与の度合いによってどちらにもなり得ます。「請負=設計からテストまで全部」と丸暗記すると、この 2 工程で外します。

出題実績 この工程別の契約形態は令和 4 年秋 問 66(請負型は「システム内部設計フェーズからシステム結合フェーズまで」)に続き、令和 7 年春 問 66(準委任型は「要件定義と運用テスト」)でも問われました。令和 7 年春は、法務が問 66 の位置に置かれた初のケースです。

ほかに、かかった実費に成果に応じた報酬を加える実費償還契約(CPIF)や、投入した工数と資材の実費で精算する T&M 契約(実費に一定の報酬を上乗せする CPFF を含む)も用語として押さえます。

最後に PL 法(製造物責任法)です。過去 4 回とも「ソフトウェアの不具合がどういう形なら PL 法の対象になるか」を問い、正解はすべて「ROM に書き込まれたプログラムを内蔵した機器」でした。

製造・加工された 動産か 欠陥があったか 通常の安全性を欠く 生命・身体・財産に 損害が生じたか いずれかが No すべて Yes PL 法の対象外 ソフト単体・データ・サービス PL 法の対象 製造業者等が無過失責任を負う ソフトウェア単体は動産ではないため対象外。ROM に組み込めば対象になる
図 22-8 PL 法の対象判定。3 つの関門をすべて通ったときだけ無過失責任になります。3 つの箱の下に引いた横のレールが「いずれかが No」の合流点で、どの関門で落ちても行き先は左下の対象外です。最初の関門「動産か」で、ソフトウェア単体・データ・クラウドサービスはすべて落ちます。
出題実績 PL 法は直近 10 年で 4 回出題され、正解肢は 4 回とも「ROM 化したプログラムを内蔵する機器」の系統でした(平成 28 年春・平成 29 年秋・令和 4 年秋が同一の設問、平成 30 年春は ROM 上のプログラムの瑕疵で使用者が負傷する形)。誤答肢はソフトウェア単体・データ・配信サービスです。

PL 法は、製造物の欠陥によって生命・身体・財産に損害が生じた場合、製造業者に過失がなくても賠償責任を負わせる法律です。ここでいう製造物は製造または加工された動産に限られるため、無形物であるソフトウェア単体、データ、クラウドサービスは対象外です。一方、ROM に書き込まれて機器に組み込まれれば、その機器という動産の欠陥として扱われます。製造業者は、引き渡した時点の科学・技術に関する知見では欠陥を認識できなかったことを証明すれば免責されます(開発危険の抗弁)。

法律要点混同しやすい相手
資金決済法暗号資産は「不特定の者への支払に使え、電子的に記録・移転でき、法定通貨と相互に交換できる財産的価値」。前払式支払手段や資金移動業も規律する法定通貨・電子マネー(特定の者にしか使えない前払式支払手段)
特定商取引法訪問販売・電話勧誘販売などにクーリング・オフを認める。通信販売にクーリング・オフの制度はない消費者契約法(不当な勧誘・不当条項一般を規律)
電子消費者契約法ネット通販の操作ミスによる申込みについて、事業者が確認画面を用意していなければ消費者を救済する民法の錯誤の一般ルール
独占禁止法/景品表示法私的独占・不当な取引制限・不公正な取引方法の禁止/過大な景品と優良誤認・有利誤認表示の禁止取適法(こちらは委託取引に特化)
特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律/割賦販売法大規模なオンラインモール・アプリストアに取引条件の開示と運営状況の報告を義務付ける/クレジットカードなどの分割・後払い取引と加盟店の管理を規律する直近 10 年で出題なし。法律名と対象を結び付けられれば十分
金融商品取引法/会社法有価証券報告書と内部統制報告書の提出/株主総会・取締役・執行役・監査役といった機関設計(委員会設置会社を含む)、事業報告、内部統制システムの整備どちらも内部統制を扱うが、開示義務は金融商品取引法
税法(法人税法・消費税法)公正な会計処理と申告納税。仕入税額控除には適格請求書等保存方式(インボイス制度)に沿った請求書の保存が要る直近 10 年で出題なし。第 21 章の会計知識と併せて 1 行で押さえる

契約の型も用語として押さえます。秘密情報を開示するときに結ぶのが NDA(守秘契約)、ソフトウェアの利用条件を定めるのがライセンス契約で、複数ライセンスをまとめ買いするボリュームライセンス、拠点内で使い放題にするサイトライセンス、包装を開けた時点で同意したとみなすシュリンクラップ契約、サーバへの接続数で数える CAL があります。無償で自由に使えるフリーソフトウェア、試用したうえで継続利用に対価を求めるシェアウェアも配布形態の呼び分けです。OSS では、派生物にも同じライセンスを求めるコピーレフトの GPL、ライブラリとしてのリンクを緩和した LGPL、著作権表示だけを求める BSD 系が代表です。著作者が利用条件をあらかじめ表示するクリエイティブコモンズ、保護期間が切れて誰でも使えるパブリックドメインも同じ枠で覚えます。AI とデータを扱う共同開発では、経済産業省の AI・データの利用に関する契約ガイドラインが参照されます。名前が似ていますが、総務省・経済産業省の AI 事業者ガイドラインは契約書のひな型ではなく、AI の開発者・提供者・利用者それぞれが取るべき行動をまとめた指針で、別の文書です。

標準化・技術者倫理・その他の法律

標準化関連は直近 10 年の科目 A で出題がありませんが、シラバスには残っており、他分野(JIS Q 27000 や ISO/IEC 15408 など)で規格番号として顔を出します。ここは用語の対応表として一気に押さえます。

標準の 3 分類 デジュールスタンダード 公的機関が制定する ISO・IEC・ITU・JIS JIS Q 27001 など 手続を経て合意する デファクトスタンダード 市場で事実上の標準に Windows・PDF・QWERTY 配列 公的な制定手続はない 後から規格化されることも フォーラム標準 業界団体が策定する W3C・IETF・OMG RFC・HTML など 合意形成が速い ISO は電気・電子を除く工業製品、電気・電子は IEC、通信は ITU が担当
図 22-9 標準の 3 分類。左は「手続で決めた標準」、中央は「売れた結果としての標準」、右はその中間で、企業の集まりが素早く決めた標準です。JIS は主務大臣が制定するのでデジュールに入ります。

JIS(日本産業規格)は、JISC(日本産業標準調査会)の答申を受けて主務大臣が制定します。規格票の頒布などを担うのが JSA(日本規格協会)です。部門記号は情報処理が JIS X、マネジメントシステムが JIS Q です。国際規格の側では、電気・電子技術分野を除く工業製品を ISO、電気・電子を IEC、電気通信を ITU が扱い、情報技術は ISO と IEC の合同技術委員会が担当します。米国では ANSI(米国規格協会)が国内規格を取りまとめ、NIST(米国国立標準技術研究所)が計測標準やセキュリティのガイドラインを出します。学会系の IEEE(電気電子学会)は LAN の IEEE 802 シリーズなどを策定し、フォーラム標準では IETF が RFC を、W3C が Web の仕様を、OMG がオブジェクト指向技術の仕様を決めます。なお「デジュールスタンダード」はデジュレスタンダードと表記されることもあります。ソフトウェアの標準では、OMG が定めた分散オブジェクトの仕様 CORBA(異なる言語・機種のオブジェクトを相互に呼び出す)と、Java のサーバサイド部品モデル EJB が用語例に挙がっています。

規格番号対象関連する認証・制度
JIS Q 9000/9001品質マネジメントシステムISO 9000 シリーズの国内規格化
JIS Q 14001環境マネジメントシステムISO 14000 シリーズ
JIS Q 15001個人情報保護マネジメントシステムプライバシーマーク制度
JIS Q 20000IT サービスマネジメントシステムITIL の考え方を規格化したもの
JIS Q 27000/27001情報セキュリティマネジメントシステムISMS 適合性評価制度
ISO/IEC 15408IT 製品・システムのセキュリティ評価基準コモンクライテリア(CC)
JIS X 0160/X 0170ソフトウェアライフサイクルプロセス/システムライフサイクルプロセス共通フレーム(SLCP-JCF)の土台
ISO/IEC 15504(SPICE)ソフトウェアプロセスアセスメント(開発プロセスの成熟度を評価する)現在は ISO/IEC 330xx シリーズへ移行。CMMI と同じ目的の枠組み

データの標準も用語として問われます。文字コードは JIS コード・シフト JIS・EUC・Unicode(UTF-8 など)と、メインフレームで使われる EBCDIC。バーコードは、標準 13 桁の JAN コード、物流の梱包単位に使う ITF コード、書籍の ISBN コード、誤り訂正機能を持つ 2 次元コードの QR コードです。日付と時刻の表記は ISO 8601 が定めます。ファイル形式は、画像が印刷向けの EPS・写真の非可逆圧縮 JPEG・可逆で 256 色の GIF・無圧縮の BMP・印刷やスキャンで使う TIFF・撮影情報を埋め込む Exif、動画が MPEG、音声が MP3・WMA・RealAudio・AIFF、文書が SGML から派生した XML と HTML・組版用の TeX、表計算のやり取りが CSV 形式と SYLK 形式です。企業間で受発注データをやり取りする電子データ交換(EDI)では、情報伝達規約・情報表現規約・業務運用規約・取引基本規約の 4 階層を取り決めます。情報表現規約に XML を使う形が主流です。認証の枠組みは、認定機関が認証機関や試験機関の能力を認定し、認証機関が事業者を認証する三層構造(適合性評価)です。この構造を各国が相互に承認することで、1 か国で受けた認証が他国でも通用する国際認証が成り立ちます。

法律・制度要点
デジタル社会形成基本法デジタル社会の形成に関する基本理念と、デジタル庁の設置・公的基礎情報データベース(ベースレジストリ)の整備・サイバーセキュリティの確保を掲げる基本法。IT 基本法を引き継ぐ。デジタル庁そのものの設置根拠は別のデジタル庁設置法である点に注意
官民データ活用推進基本法/デジタル手続法官民データの活用推進とデジタルデバイド(格差)の是正/行政手続のオンライン利用の原則化(旧・行政手続オンライン化法を改正・改称したもの)
e-文書法/電子帳簿保存法法令で保存が義務付けられた文書の電子保存を認める/国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存を定める
情報公開法誰でも国の行政機関や独立行政法人に対して行政文書・法人文書の開示を請求できる
外国為替及び外国貿易法(外為法)暗号技術を含む貨物・技術の輸出に許可を求める。リスト規制とキャッチオール規制。米国製の技術や部品を含む再輸出には米国輸出関連法(EAR など)も及ぶ
RoHS 指令/CE マークEU 向け電気電子機器で鉛・水銀などの有害物質の使用を制限し、危険を最小化する/EU の基準適合表示
産業機器関連法自動運転装置は道路運送車両法、無人航空機(ドローン)は航空法と小型無人機等飛行禁止法、産業用ロボットは労働安全衛生法(労働安全衛生規則)が規律する
環境関連法廃棄物処理法、資源有効利用促進法(PC リサイクル)、省エネ法、GX 推進法、GX 脱炭素電源法

法令だけでなく、社会規範や社内規程まで含めて守ることをコンプライアンス(法令遵守)と呼びます。土台になるのが企業理念と企業倫理で、それを外側から規律する枠組みがコーポレートガバナンス(企業統治)です。企業に求められる責任は、人権の尊重(ビジネスと人権)や地域・環境への社会貢献まで広がっており、これらをまとめて CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)と呼びます。責任を負う相手は株主だけでなく、顧客・従業員・取引先・地域社会といったステークホルダ全体です。情報システムを管理する側の規範は経済産業省のシステム管理基準が示し、その実施状況を点検する監査人側の規範がシステム監査基準です(第 17 章で詳しく扱います)。違反したときの損失は、罰則や課徴金よりも取引停止と信用の失墜のほうが大きくなります。

技術者倫理は直近 10 年で 3 問出ています。中でも集団思考(グループシンク)は 2 回出題された定番で、「結束の強いチームが批判的な思考を欠いたまま、不合理な合意に達してしまう」現象を指します。同調圧力や責任の分散と混同させる誤答肢が付きます。もう 1 つの定番が「技術者は何を最優先すべきか」で、答えは所属組織の利益でも顧客の要望でもなく公衆の安全です。組織の不正を知ったときの内部告発は公益通報者保護法が守り、技術がもたらす倫理的・法的・社会的な課題を ELSI と呼びます。「公衆の安全を最優先する」は、技術者団体が定める技術者の倫理綱領に共通して書かれている原則です。遵法の意識としてのモラルと、専門家としての自律や誇りを指すプロフェッショナリズムが、あわせて技術者の社会的責任を形づくります。研究開発ではデータのねつ造・改ざん・盗用が最も重い不正とされ、利用者に影響が及ぶ場面では、内容とリスクを十分に説明したうえで同意を得るインフォームドコンセントの考え方が求められます。

情報倫理は、ネットワークを使ううえでのマナーであるネチケット(ネットマナー)から始まります。SNS への投稿では、特定の属性の人々をおとしめるヘイトスピーチ、転送をあおるチェーンメール、事実に見せかけて広まるフェイクニュースの拡散に加担しないことが求められます。子どもを有害な情報から守る仕組みが、閲覧できるサイトを制限するフィルタリングと、保護者が利用時間やアプリを制御するペアレンタルコントロールです。誤情報の呼び分けも用語例に挙がっています。意図的に人を欺く虚偽がディスインフォメーション、意図せず広まる誤りがミスインフォメーション、事実ではあるが害を与える意図で流されるものがマルインフォメーションです。同じ意見ばかりが増幅されるエコーチェンバー、推薦アルゴリズムによって好みの情報に囲まれるフィルターバブル、いったん公開すると消えないデジタルタトゥー、真偽を検証するファクトチェックもあわせて覚えます。

ひっかけポイント

ここがひっかけ 1 法律名の隣り合わせを入れ替える。「サーバに侵入されたのだから刑法」「データを消されたのだから不正アクセス禁止法」と逆に選ばせる肢が定番です。境界は行為の種類で決まります。ネットワーク越しにアクセス制御をくぐる(侵入・識別符号の取得や提供)なら不正アクセス禁止法、データやシステムを壊す(改ざん・消去・ウイルス作成・業務妨害)なら刑法。ID とパスワードを他人に渡しただけで、自分は侵入していなくても不正アクセス禁止法違反になります。
ここがひっかけ 2 請負に派遣のルールを持ち込む。「発注者の事業所で作業しているから、発注者が作業手順を指示できる」「発注者の指示に従わせるには発注者と労働者の間に雇用契約が必要」といった肢が並びます。請負で発注者が労働者に直接指示すれば、それは適法な運用ではなく偽装請負です。作業場所がどこかは判断材料になりません。
ここがひっかけ 3 著作権の帰属を「お金を出した側」に置く。「開発費を全額負担したので発注者に帰属する」「元請が窓口なので元請に帰属する」という肢は、いかにも常識的に見えますが誤りです。契約に定めがなければ実際に創作した側に原始的に帰属します。多段の再委託でも、答えは元請ではなく実際に作った会社です。
ここがひっかけ 4 ソフトウェア単体を PL 法の対象にする。「パッケージソフトの不具合で損害が出た」「クラウドサービスの誤計算で損害が出た」は、いずれも製造物(製造または加工された動産)ではないため PL 法の対象外です。対象になるのは ROM などに組み込まれて機器の一部となった場合だけ、と割り切って判断します。
ここがひっかけ 5 一般則を特別法に持ち込む/新旧の名称を混ぜる。「本人の同意があればマイナンバーを他の目的にも使える」は誤りで、マイナンバーは法定の事務に限られ、同意では広がりません。「広告メールはオプトアウトが原則」も誤りで、特定電子メール法はオプトインです。加えて、下請法は取適法(中小受託取引適正化法)、プロバイダ責任制限法は情報流通プラットフォーム対処法、仮想通貨は暗号資産と呼び名が変わっています。新旧どちらの表記で出ても同じものと分かるようにしておきます。

理解度チェック(科目 A 形式)

Q1. ソフトウェアの開発を委託した委託事業者(親事業者)の行為のうち、中小受託取引適正化法(下請法)で禁止されているものはどれか。
  1. 受託者と協議したうえで、仕様変更に伴う代金の増額に合意した
  2. 契約で定めた品質を満たしていない成果物について、修正を求めた
  3. 発注時に代金の額を定めず、受領後に受託者の見積りを下回る額を一方的に通知した
  4. 4 月 1 日に成果物を受領し、支払期日を同じ年の 5 月 30 日と定めた

正解: ウ 委託事業者は発注時に代金の額を含む事項を書面で交付しなければならず、受領後に一方的に低い額を通知する行為は買いたたきにも当たります。ア は双方の合意による変更なので適法、イ は契約不適合に対する正当なやり直し要求です。エ は受領日を 1 日目として数えると 4 月 30 日が 30 日目、5 月 30 日がちょうど 60 日目なので、支払期日の設定として適法です。

Q2. 製造物責任法(PL 法)に基づく損害賠償請求の対象となるものはどれか。
  1. Web で提供される会計サービスの計算誤りにより、利用者が過大な納税をした
  2. 制御プログラムを書き込んだ ROM を内蔵する家電製品が誤動作し、使用者がけがをした
  3. ダウンロード販売したソフトウェアの不具合により、利用者の文書ファイルが壊れた
  4. 販売した統計データに誤りがあり、それを用いた企業が誤った意思決定をした

正解: イ PL 法の製造物は「製造または加工された動産」に限られます。ROM を内蔵した家電製品は動産であり、その欠陥で身体に損害が生じているので対象です。ア はサービス、ウ は無形のソフトウェア単体、エ はデータで、いずれも動産ではないため対象外です。

Q3. A 社が B 社にシステム開発を請け負わせ、B 社の従業員が A 社の事業所内で作業している。この場合の記述として適切なものはどれか。
  1. 作業の進め方や勤務時間について、A 社は B 社の従業員に直接指示することはできない
  2. A 社の事業所内で作業するので、A 社と B 社の従業員との間に雇用契約が必要になる
  3. 請負契約であるから、A 社は B 社の従業員に対する指揮命令権を持つ
  4. B 社の従業員への指揮命令は、A 社と B 社が共同で行う

正解: ア 請負では受託者が自社の従業員を指揮命令し、発注者は完成した成果物を受け取るだけです。作業場所が発注者の事業所であっても変わりません。イ は新たな雇用契約は不要、ウ とエ は発注者に指揮命令権を認めており、実行すれば偽装請負になります。

Q4. 著作権法によって保護される著作物に該当しないものはどれか。
  1. ソースコードを機械語に変換するコンパイラのプログラム
  2. 論文を分野別に選択し、体系立てて並べた論文集
  3. 情報の選択と体系的な構成に創作性がある電子カルテのデータベース
  4. 通信の手順を定めたプロトコルの規約

正解: エ 著作権法はプログラム言語・規約・解法を保護対象から除いています。プロトコルの規約は「約束事」であって表現ではないため保護されません。ア はプログラムの著作物、イ は編集著作物、ウ はデータベースの著作物として保護されます。

Q5. A 社が B 社にプログラムの作成を委託し、B 社が一部を C 社に再委託した。実際にプログラムを作成したのは C 社の従業員である。著作権の帰属について契約に定めがない場合、著作権は誰に帰属するか。
  1. 開発費を負担した A 社
  2. C 社
  3. A 社と B 社の共有
  4. プログラムを作成した C 社の従業員個人

正解: イ 契約に定めがなければ著作権は実際に創作した側に原始的に帰属し、さらに職務著作の要件を満たすため著作者は個人ではなく法人になります。ア は費用負担者を帰属先とする誤り、ウ は共有とする誤り、エ は職務著作の規定を見落とした誤りです。

Q6. 攻撃者がマルウェアを送り込んで企業のサーバ上のデータを消去し、業務を停止させた。この行為を処罰する法律はどれか。
  1. 個人情報保護法
  2. 情報流通プラットフォーム対処法
  3. 刑法
  4. 不正アクセス禁止法

正解: ウ データを消去してシステムを本来の使用目的に沿わない動作をさせ、業務を妨害する行為は刑法の電子計算機損壊等業務妨害罪に当たります。ア は個人データの取扱いを規律する法律、イ は権利侵害情報の流通への対処を定める法律、エ はネットワークを通じてアクセス制御をくぐる行為を対象とする法律で、消去そのものは処罰しません。

Q7. 特定電子メール法に関する記述のうち、適切なものはどれか。
  1. 広告宣伝を目的とするメールは、原則としてあらかじめ送信に同意した者にだけ送信できる
  2. 受信者から受信拒否の通知を受けても、6 か月間は送信を継続できる
  3. 広告を含むショートメッセージサービス(SMS)は規制の対象外である
  4. 送信者の氏名または名称の表示は任意である

正解: ア 特定電子メール法はオプトイン方式を採り、事前の同意がない相手に広告宣伝メールを送ることを禁じています。イ は受信拒否の通知を受けたら以後送信できないので誤り、ウ は SMS も対象なので誤り、エ は送信者の氏名・名称と受信拒否の通知先の表示が義務なので誤りです。

Q8. マイナンバー(個人番号)の取扱いに関する記述のうち、適切なものはどれか。
  1. 本人の同意があれば、法律に定められた事務以外の目的にも利用できる
  2. 本人が希望すれば、いつでも自由に番号を変更できる
  3. 事業者は取得したマイナンバーを自社の顧客管理番号として利用できる
  4. マイナンバーを含む個人情報は特定個人情報と呼ばれ、社会保障・税・災害対策の事務に限って利用できる

正解: エ マイナンバー法は利用できる事務を 3 分野に限定しており、本人の同意で範囲が広がることはありません。ア とウ は法定外の利用を認める誤り、イ は番号の変更が漏えいして不正に用いられるおそれがある場合などに限られるため誤りです。

Q9. 労働者派遣に関する記述のうち、適切なものはどれか。
  1. 派遣先は、受け入れる労働者を選ぶために事前面接を行うことができる
  2. 派遣先は、受け入れた派遣労働者をさらに別の会社へ派遣できる
  3. 派遣元は、派遣労働者に対して段階的かつ体系的な教育訓練を行う義務を負う
  4. 派遣労働者の実際の労働時間の管理は、すべて派遣元が行う

正解: ウ 派遣元は雇用主として教育訓練やキャリアコンサルティングを行う義務を負います。ア は労働者を特定する目的の事前面接が禁止されているため誤り、イ は二重派遣に当たり禁止されているため誤り、エ は実際の労働時間の管理が派遣先の役割であるため誤りです。

Q10. 不正競争防止法において営業秘密として保護されるための 3 要件の組合せはどれか。
  1. 新規性、進歩性、産業上の利用可能性
  2. 秘密管理性、有用性、非公知性
  3. 独創性、希少性、経済性
  4. 機密性、完全性、可用性

正解: イ 営業秘密は秘密として管理され、事業活動に有用で、公然と知られていないことの 3 つをすべて満たす必要があります。ア は特許の登録要件、エ は情報セキュリティの 3 要素で、いずれも別の概念です。ウ は法律上の要件ではありません。なお不正競争防止法で実際に出題されたのは、周知な商品表示に似せて出所を誤認させる混同惹起(令和 3 年春)と、他人の商標と同一・類似のドメイン名を不正の利益を得る目的で取得する行為(令和 6 年春)です。3 要件と合わせて押さえます。

Q11. 個人情報保護法における要配慮個人情報に該当するものはどれか。
  1. 本人の氏名と住所
  2. 本人のメールアドレス
  3. 本人が勤務する会社の名称
  4. 本人の病歴

正解: エ 要配慮個人情報は、人種・信条・社会的身分・病歴・犯罪の経歴など、不当な差別や偏見が生じないよう特に配慮を要する情報です。ア・イ・ウ は個人情報ではあっても、それ自体が差別につながる性質のものではないため要配慮個人情報には当たりません。

Q12. 産業財産権に関する記述のうち、適切なものはどれか。
  1. 特許権の存続期間は、設定登録の日から 20 年である
  2. 意匠権は物品の形状だけを保護し、機器の操作画面のデザインは対象にならない
  3. 商標権は存続期間を更新でき、更新を続ければ半永久的に維持できる
  4. 同じ発明について複数の出願があったときは、先に発明した者が特許を受ける

正解: ウ 更新できるのは 4 つの産業財産権のうち商標権だけです。ア は特許権の存続期間が出願日から 20 年なので誤り、イ は操作用の画像も意匠法の保護対象になるので誤り、エ は日本が先願主義を採るため「先に出願した者」が正しいので誤りです。

Q13. 欧州向けに電気電子機器を輸出するとき、適合が求められる RoHS 指令の目的はどれか。
  1. 製品が EU の安全・健康・環境の基準に適合していることを示す表示を義務付ける
  2. 製品に含まれる特定の有害物質による環境と人の健康への危険を最小化する
  3. 使用済みとなった製品を製造業者が回収し、リサイクルすることを義務付ける
  4. 製品の消費電力を測定し、省エネルギー性能を表示させる

正解: イ RoHS 指令は、鉛・水銀・カドミウム・六価クロムなどの特定有害物質を電気電子機器に使うことを制限し、環境と人の健康への危険を最小化することを目的とします。ア は CE マーク(基準適合表示)、ウ は使用済み電気電子機器の回収・リサイクルを定める WEEE 指令、エ は省エネルギー性能の表示制度で、いずれも RoHS 指令の目的ではありません。

Q14. 資金決済法における暗号資産の説明として適切なものはどれか。
  1. 不特定の者への支払に使うことができ、電子的に記録・移転でき、法定通貨と相互に交換できる財産的価値である
  2. 国が発行し、強制通用力を持つ法定通貨を電子的に表したものである
  3. あらかじめ対価を受け取った発行者が、特定の加盟店でだけ使える価値を発行するものである
  4. 発行者が額面どおりの価値を保証し、いつでも現金と引き換える義務を負う電子マネーである

正解: ア 資金決済法は暗号資産を、不特定の者に対する代価の弁済に使え、電子情報処理組織を用いて移転でき、法定通貨や法定通貨建ての資産ではない財産的価値(法定通貨と相互に交換できるもの)と定義しています。イ は法定通貨そのもの、ウ は前払式支払手段、エ は発行者が価値を保証する電子マネーで、いずれも暗号資産には当たりません。

まとめ

論点結論誤答肢の作り方
権利の発生産業財産権は登録で発生、著作権は創作で発生(無方式主義)著作権に登録を要求する
存続期間特許 20 年・実用新案 10 年・意匠 25 年(出願日から)、商標 10 年で更新可(登録日から)、著作権は死後または公表後 70 年起算点を出願日と登録日で入れ替える
著作権の保護対象プログラム・データベース・編集著作物は保護、言語・規約・解法は非保護保護と非保護を裏返す
著作権の帰属契約の定めが最優先。なければ創作した側(請負は受託者、派遣は派遣先、多段委託は実作成者)費用を出した発注者や元請に置く
営業秘密秘密管理性・有用性・非公知性の 3 つをすべて満たす特許の登録要件やセキュリティの 3 要素を混ぜる
犯罪と適用法侵入・識別符号は不正アクセス禁止法、改ざん・消去・ウイルスは刑法隣り合う法律名を入れ替える
個人情報の分類匿名加工情報は本人同意なく第三者提供可、仮名加工情報は原則不可、要配慮個人情報は取得に同意が要りオプトアウト不可加工情報どうしの提供ルールを入れ替える
マイナンバー社会保障・税・災害対策に限定。本人の同意でも範囲は広がらない「本人同意があれば」を付ける
指揮命令請負・準委任は受託者、派遣は派遣先、在籍出向は出向先。発注者が請負の労働者に指示すれば偽装請負請負に派遣のルールを当てる
取適法(下請法)書面交付・書類保存 2 年・支払期日は受領日から 60 日以内・遅延利息 14.6%合意済みの仕様変更を違反に見せる
PL 法製造または加工された動産の欠陥に無過失責任。ソフト単体・データ・サービスは対象外ソフトウェア単体を対象にする
RoHS 指令・資金決済法RoHS は EU 向け電気電子機器の有害物質の使用制限。暗号資産は不特定の者への支払に使え、電子的に移転でき、法定通貨と相互に交換できる財産的価値RoHS を CE マークや回収義務に、暗号資産を法定通貨や前払式支払手段にすり替える
標準化デジュール(公的機関)/デファクト(市場)/フォーラム(業界団体)。JIS は主務大臣が制定デファクトとフォーラム標準を入れ替える

これで科目 A の全 23 中分類が終わりました。次章からは科目 B の対策に入ります。第 23 章では科目 B の解き方の型を身に付けたうえで、全員が解く必須問題「情報セキュリティ」を攻略します。本章で学んだ請負と派遣の区別や個人情報の取扱いは、科目 B の事例文でも前提知識として登場します。