- ISMS とリスクアセスメントの手順、リスク対応 4 分類の使い分け
- CSIRT・SOC・JPCERT/CC などの組織と、インシデント対応の時系列
- セキュリティ技術評価(コモンクライテリア・CVSS・耐タンパ性・ファジング)
- FW・DMZ・IDS/IPS・WAF・EDR・SIEM の「守る層」の違い
- VPN の階層、無線 LAN、ゼロトラストと SASE
- SPF・DKIM・DMARC・DNSSEC の検証の仕組みと、セキュア開発の実装技術
セキュリティは科目 A で 1 回平均 10.0 問(直近 10 年 19 回で 190 問)と全 23 中分類で最多、しかも科目 B の問 1 は 19 回すべて必須解答です。第 11 章(脅威・暗号・認証)と本章(管理・対策・実装)で 8 問確保が目標になります。本章の用語は科目 B の事例文にそのまま登場するので、名前だけでなく「何をどこで守るか」まで覚えてください。
ISMS とリスクマネジメント
セキュリティ対策を思い付きで積み上げると、守るべき情報と支出が対応しなくなります。そこで組織はISMS(Information Security Management System、情報セキュリティマネジメントシステム)という枠組みで、方針を決め → 計画し → 運用し → 評価し → 改善する流れを回します。要求事項を定めた規格が JIS Q 27001(ISO/IEC 27001)で、認証(ISMS 適合性評価制度)の対象はこちらです。管理策の具体的な実践規範が JIS Q 27002、経営層のガバナンスが JIS Q 27014、クラウドサービス向けの追加指針が JIS Q 27017 です。
| 用語 | 意味 | 試験で問われる点 |
|---|---|---|
| ISMS 適用範囲 | ISMS を適用する組織・拠点・業務の境界 | 全社でなく部門単位でも認証を取れる |
| 適用宣言書 | 採用する管理策と、採用しない管理策の理由を並べた文書 | 「採用しない理由まで書く」点が特徴 |
| 管理策の 4 分類 | 組織的・人的・物理的・技術的 | 技術だけが対策ではない(科目 B の頻出視点) |
| 管理策タイプ | 予防・検知・是正 | FW は予防、IDS は検知、バックアップからの復旧は是正 |
| サイバーセキュリティ概念 | 識別・防御・検知・対応・復旧(NIST CSF と同じ 5 機能) | 順序と「識別」が先頭である点 |
| パフォーマンス評価 | 内部監査とマネジメントレビュー | Check に相当。改善は不適合・是正処置と継続的改善 |
ISMS の下で文書化するのが情報セキュリティポリシーです。3 階層で覚えます。最上位が基本方針(情報セキュリティ方針。何を守り、誰が責任を負うかを宣言する。経営層が承認し、原則として公開する)、中位が対策基準(守るべき事項の水準を定める)、最下位が実施手順(機器ごと・業務ごとの具体的な手順書。改訂が最も多い)です。下位ほど詳細で、下位ほど頻繁に改訂されます。個別規程としては情報管理規程、秘密情報管理規程、インシデント対応規程、教育の規程、罰則の規程、例外の規程、ソーシャルメディアガイドライン(SNS 利用ポリシー)などが連なります。
リスクアセスメントの手順とリスク対応の 4 分類
ISMS の中核がリスクマネジメント(JIS Q 31000)です。まず情報資産台帳を作って情報資産(データ・文書・ソフトウェア・機器・人)を洗い出し、機密性・完全性・可用性の 3 側面から重要度を分類します。そのうえでリスクアセスメント(リスク特定 → リスク分析 → リスク評価)を行い、結果に応じてリスク対応を選びます。リスク=資産 × 脅威 × 脆弱性で、どれか 1 つがゼロならリスクは顕在化しません。
分析には 定性的分析(大・中・小などの尺度で相対評価する。金額が見積もれなくても実施できる)と定量的分析(金額で見積もる。投資判断に直結する)があります。定量の代表が年間予想損失額です。
計算の型: 年間予想損失額
年間予想損失額 = 1 回当たりの損失額 × 年間の予想発生回数
例題: 1 件 200 万円の損害が出る障害が平均して 4 年に 1 回起きる。対策に年 30 万円かけると発生率が 4 分の 1 になる。対策は妥当か。
- 対策前の年間発生回数を求める: 4 年に 1 回 = 0.25 回/年
- 対策前の年間予想損失額: 200 万円 × 0.25 = 50 万円
- 対策後の発生回数は 0.25 × 1/4 = 0.0625 回/年。損失額は 200 万円 × 0.0625 = 12.5 万円
- 削減できた損失 50 − 12.5 = 37.5 万円 > 対策費 30 万円。よって費用対効果があり妥当
「対策費が削減額を上回るなら、その対策は受容(何もしない)より不利」と判断するのが定量的分析の使い方です。
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| リスク基準/リスク受容基準 | どのレベルまでのリスクなら受け入れるかを、あらかじめ決めた線引き |
| リスクレベル/リスクマトリックス | 発生頻度と影響度を掛け合わせた大きさと、それを表にした一覧 |
| リスク所有者/リスク源 | そのリスクに責任と権限を持つ人/リスクを生じさせる元 |
| 残留リスク | 対応後もなお残るリスク。受容するには責任者の承認が要る |
| リスク登録簿/リスク対応計画 | 特定したリスクと対応内容を記録・追跡する台帳と計画 |
| リスク忌避/リスク選好 | リスクを避けたがる姿勢/取りに行く姿勢。組織の方針として現れる |
| リスクコミュニケーション | 利害関係者とリスク情報を共有し、認識のずれをなくす活動 |
| ペリル/ハザード/モラルハザード | 損失の直接原因/損失を生みやすくする条件/保険があるための油断 |
| リスクの種類 | 財産損失・責任損失・純収益の喪失・人的損失。オペレーショナルリスク、サプライチェーンリスク、地政学的リスクなども含む |
人的・物理的対策と情報セキュリティ継続
技術的対策は次節以降でまとめて扱うので、ここでは人的・物理的な管理策を押さえます。科目 B では「技術で塞げない穴を運用で塞ぐ」設問が繰り返し出ます。
| 区分 | 対策 | ねらい |
|---|---|---|
| 人的 | 情報セキュリティ教育、標的型メール訓練、レッドチーム演習 | 気付ける人を増やす。訓練は「開いてしまった後の報告」まで練習する |
| 人的 | need-to-know(最小権限)の原則、職務分掌、アクセス権の定期棚卸し、退職・異動時の即時失効 | 権限の与えすぎと消し忘れを防ぐ。内部不正の抑止に直結 |
| 人的 | 秘密保持契約・誓約書、セキュリティクリアランス(重要情報を扱う者の適性評価) | 扱える人を限定する。R7 春に初出 |
| 人的 | UBA/UEBA(利用者と機器の振る舞い分析)、ログを取っていることの周知 | いつもと違う操作を検知する。周知そのものが心理的な抑止になる |
| 物理 | 入退室管理、監視カメラ、セキュリティゲート、施錠管理、機械警備、ゾーニング | 重要区画ほど何重にも通す。区画ごとに要件を変える |
| 物理 | アンチパスバック、インターロック | 入室記録のない ID で退室させない/共連れを 1 人ずつに分ける |
| 物理 | クリアデスク・クリアスクリーン、セキュリティケーブル、記憶媒体の管理 | 離席時の覗き見・持ち去りを防ぐ |
| 物理 | 耐震耐火設備、UPS、装置のセキュリティを保った処分・再利用 | 可用性の確保と、廃棄機器からの情報漏えい防止(暗号化消去など) |
情報セキュリティ継続は、災害や大規模障害でも守りを落とさないための備えで、事業継続マネジメント(BCP・BCM。第 16 章)に組み込みます。緊急事態の区分、緊急時対応計画(コンティンジェンシー計画)、復旧計画、災害復旧、バックアップによる対策、被害状況の調査手法を定めておきます。
| 基準・ガイドライン | だれ向け/何を示すか |
|---|---|
| サイバーセキュリティ経営ガイドライン | 経済産業省と IPA。経営者が認識すべき 3 原則と、担当幹部に指示すべき重要 10 項目 |
| 中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン | IPA。人も予算も限られる中小企業向けに、段階的な取組みを示す(SECURITY ACTION と対で使う) |
| IoT セキュリティガイドライン | IoT 機器の設計・製造・運用の各段階での指針。長期間更新されない機器を前提にする |
| サイバー・フィジカル・セキュリティ対策フレームワーク(CPSF) | 現実空間とサイバー空間がつながるサプライチェーン全体の信頼性を確保する枠組み |
| 政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準群 | 政府機関と独立行政法人が守るべき統一の基準 |
| NIST サイバーセキュリティフレームワーク(CSF) | 統治・識別・防御・検知・対応・復旧の 6 機能で現状と目標を整理する国際的な枠組み(統治を加えた 6 機能は 2024 年 2 月公表の CSF 2.0。識別以下の 5 機能は旧版 1.1) |
| PCI DSS | クレジットカード会員データを扱う事業者向けのセキュリティ基準 |
| 情報セキュリティ 10 大脅威 | IPA が毎年公表する、前年に社会的影響が大きかった脅威の順位(組織編・個人編) |
| コンピュータウイルス対策基準/コンピュータ不正アクセス対策基準 | 経済産業省告示。予防・発見・復旧の実施事項を示す |
セキュリティ組織とインシデント対応
組織・機関の名称問題は科目 A で 11 問出ています。単発の名称が多いので、社内の組織と社外の機関に分け、「誰の何を守るか」で引き当てられるようにします。
| 組織 | 正式名称・位置 | 役割(ここが選択肢の分かれ目) |
|---|---|---|
| CISO | Chief Information Security Officer。経営層 | 情報セキュリティの最高責任者。方針の承認と資源配分に責任を持つ |
| 情報セキュリティ委員会 | 社内の常設会議体 | 部門横断で方針・規程・重大インシデントの扱いを審議する |
| CSIRT | Computer Security Incident Response Team。社内 | 自組織のインシデント対応の司令塔。検知後の調整・指示・外部連絡を担う |
| PSIRT | Product Security Incident Response Team。社内 | 自社製品の脆弱性を受け付け、修正版と注意喚起を出荷先へ届ける |
| SOC | Security Operation Center。社内または委託 | ログと通信を常時監視して異常を見つけ、CSIRT に上げる(検知の担当) |
| エシカルハッカー | 専門人材 | 攻撃者の技術を防御側で使う。ペネトレーションテストや診断を担う |
| 機関・制度 | 役割 |
|---|---|
| NISC(内閣サイバーセキュリティセンター)/サイバーセキュリティ戦略本部 | 国のサイバーセキュリティ戦略の立案と、政府機関の対策の統括(2025 年 7 月に国家サイバー統括室 NCO へ改組されたが、出題範囲のシラバスでは NISC 表記のまま) |
| IPA セキュリティセンター | 届出の受付、10 大脅威やガイドラインの公表、試験・人材育成 |
| JPCERT コーディネーションセンター | インシデント報告の受付と国内外の CSIRT 間の調整。攻撃サイトのテイクダウン依頼も担う |
| J-CSIP(サイバー情報共有イニシアティブ) | 参加組織が受けた攻撃情報を IPA が匿名化して共有し、業界内の防御に回す |
| J-CRAT(サイバーレスキュー隊) | 標的型攻撃の被害組織へ出向き、被害の把握と対策を支援して連鎖的な攻撃を止める |
| JVN/情報セキュリティ早期警戒パートナーシップ | 脆弱性の届出から公表までの調整と、国内向け脆弱性情報ポータル(第 11 章) |
| CRYPTREC | 暗号技術を評価し、政府機関が使える暗号リストを公表する(危殆化の判断根拠) |
| ISAC | 金融・電力などの業界単位で脅威情報を共有する組織 |
| ISMAP | 政府情報システムのためのセキュリティ評価制度。基準を満たすクラウドサービスを登録する |
| NOTICE/SECURITY ACTION | 脆弱な IoT 機器の利用者へ注意喚起する取組み/中小企業の自己宣言制度 |
| 情報セキュリティサービス基準適合サービスリスト | 診断や監視などのサービスが一定の基準を満たすことを示す一覧 |
| 各種届出制度 | コンピュータウイルス届出制度、コンピュータ不正アクセス届出制度、ソフトウェア等の脆弱性関連情報に関する届出制度 |
インシデントハンドリングの時系列
インシデント対応は「検知/連絡受付 → トリアージ → インシデントレスポンス → 報告/情報公開」の順で進みます。トリアージは医療の用語と同じで、影響範囲と緊急度から優先順位を付ける工程です。すべてに同じ力で当たると重大事案の初動が遅れるため、この一段を挟みます。
報告の経路をあらかじめ決めておくのがエスカレーションルールです。「誰が・いつまでに・誰へ」が決まっていないと、担当者が自分の判断で様子を見てしまい、初動が半日遅れます。公表と外部通報(個人データの漏えいなら個人情報保護委員会と本人への通知。第 22 章)の判断基準も規程側に書いておきます。
デジタルフォレンジックス
デジタルフォレンジックスは、インシデントの法的な証拠となりうるデータを保全・分析する技術と手続きです。「収集 → 検査 → 分析 → 報告」の順で進み、削除されたログやファイルの復元、通信履歴の突き合わせを行います。事前の予防策ではなく事後の証拠保全である点が正解の分かれ目です。
| 要点 | 内容 |
|---|---|
| 証拠保全 | 原本を直接操作せず、書込み禁止装置を通して複製(イメージ)を取り、複製側を調べる |
| 同一性・完全性の証明 | 取得直後にハッシュ値を計算して記録し、解析後も一致することで改変がないことを示す |
| 収集の順序 | 消えやすいものから。メモリ・通信状態などの揮発性データを、ディスクより先に取る |
| 取扱いの連続性 | 誰がいつ証拠を扱ったかを記録し、第三者が追跡できる状態を保つ |
| 時刻の信頼性 | 機器の時刻が NTP で同期されていないと、複数機器のログを時系列で突き合わせられない |
セキュリティ技術評価 ― 製品を測る物差し
「この製品は安全だ」と言い切るために、第三者が共通の物差しで測る仕組みがあります。科目 A ではシラバスの評価基準から 9 問出ており、そのうち 6 問が耐タンパ性です。まずここを固めます。
耐タンパ性 ― 物理的に解析させない作り込み
耐タンパ性(tamper resistance)は、機器を分解・観測して内部の秘密情報を取り出そうとする攻撃に耐える性質です。暗号アルゴリズムを強くするのではなく、解析されたら情報が残らないようにハードウェアを作るのが本質です。第 11 章のサイドチャネル攻撃(消費電力・電磁波・処理時間から鍵を推定する)に対する、防御側の答えがこれにあたります。
関連するハードウェアの仕組みも科目 A に出ます。TPM(Trusted Platform Module)は 3 回出題されており、PC のマザーボードに実装される耐タンパ性を持つセキュリティチップで、鍵の生成・保管とプラットフォームの構成情報(起動時のハッシュ値)の記録を担います。セキュアブート(UEFI の機能。令和 5 年秋 問 42)は、起動する OS ローダやドライバのデジタル署名を検証し、改ざんされたものを起動させない仕組みです。署名の検証なので、TPM のような鍵保管とは役割が違います。
製品評価の制度と脆弱性の測り方
| 制度・指標 | 正式名称 | 何を評価するか |
|---|---|---|
| CC(コモンクライテリア) | ISO/IEC 15408 | IT 製品・システムのセキュリティ機能要件と保証要件。「正しく設計され実装されているか」を評価する国際規格 |
| EAL | Evaluation Assurance Level | CC における評価保証レベル。数値が大きいほど検証が厳格。機能の強さではなく「確かさ」の度合い |
| PP | Protection Profile | 製品分野ごとに共通して求めるセキュリティ要件をまとめた文書(調達側が使う雛形) |
| CEM | ISO/IEC 18045 | CC に基づく評価を、どの評価機関でも同じ手順で行うための共通評価方法 |
| JISEC | IT セキュリティ評価及び認証制度 | CC に基づく国内の認証制度。IPA が運営する |
| JCMVP | 暗号モジュール試験及び認証制度 | 暗号モジュールが仕様どおりに実装され、鍵が適切に保護されているかを試験する |
| CVSS | Common Vulnerability Scoring System | 脆弱性の深刻度を 0.0〜10.0 の値で表す。第 11 章の CVE(識別番号)・CWE(種類)と区別する |
CVSS は 3 つの基準の組合せで読みます。基本評価基準は脆弱性そのものの特性(攻撃元区分・攻撃条件の複雑さ・必要な権限・利用者の関与、および機密性/完全性/可用性への影響)を表し、時間が経っても変わりません。現状評価基準は攻撃コードの有無や対策の提供状況といった「今の状況」を反映し、時間とともに変化します。環境評価基準は自組織での重要度や既に施した対策を加味した、利用者ごとの値です。ベンダが公表するのは基本評価基準の値なので、それをそのまま自社の優先順位にしてはいけません。
| 手法 | やること | 違いのポイント |
|---|---|---|
| 脆弱性診断 | 既知の脆弱性が残っていないかを、対象を網羅的にスキャンして洗い出す | 網羅性が目的。「穴の一覧」を作る |
| ペネトレーションテスト | 攻撃者と同じ手口で実際に侵入を試み、どこまで到達できるかを確かめる | 目標到達の可否が目的。網羅はしない |
| 脆弱性報奨金制度(バグバウンティ) | 外部の研究者に脆弱性の報告を募り、報奨金を払う | 社内の目だけでは見つからない問題を集める |
| IT 製品の調達におけるセキュリティ要件リスト | 調達時に求めるセキュリティ要件を製品分野別に示した資料 | 買う側の物差し。CC 認証の活用を促す |
ファイアウォールと DMZ ― 境界での通信制御
ファイアウォール(FW)は、ネットワークの境界で「通す通信」と「通さない通信」を選り分ける装置です。方式は見る階層で分かれます。
| 方式 | 判断に使う情報 | 特徴 |
|---|---|---|
| パケットフィルタリング | 送信元/宛先 IP アドレス、ポート番号、プロトコル、通信の向き | 高速。ヘッダしか見ないので、正規のポートを通る攻撃は素通りする |
| ステートフルパケットインスペクション | 上記に加えてコネクションの状態(内側から始まった通信かどうか) | 戻りの通信だけを動的に許可でき、戻りポートを開けっ放しにせずに済む |
| アプリケーションゲートウェイ(プロキシ) | アプリケーション層のデータ(HTTP のメソッド・URL など) | 通信を一度終端して代理接続する。内部アドレスを隠せるが処理は重い |
| UTM | ― | FW・IPS・アンチウイルス・URL フィルタなどを 1 台に統合した製品。中小規模で運用負荷を下げる |
公開サーバは、インターネットからも社内からもアクセスされます。これを社内 LAN に置くと、サーバが乗っ取られた時点で社内が丸見えになります。そこで両者のどちらにも属さない区画DMZ(DeMilitarized Zone、非武装地帯)を設け、公開 Web サーバ・メール中継サーバ・外部 DNS サーバを置きます。
フィルタリングルール表の読み方
科目 A・科目 B とも、ルール表を読んで「どの通信が通るか」を答えさせる形式が出ます。上の行から順に照合し、最初に一致したルールを適用すること、そしてどれにも一致しない通信は拒否される(暗黙の拒否)ことが読み方の柱です。次の表は、DMZ に置いた Web サーバを公開しつつ、内部 LAN を守る最小限の例です。
| 番号 | 送信元 | 宛先 | 宛先ポート | 動作 | 意図 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | すべて | DMZ の Web サーバ | 443 | 許可 | 公開サイトの閲覧を通す |
| 2 | 内部 LAN | すべて | 443 | 許可 | 社員のブラウジングを通す |
| 3 | DMZ | 内部 LAN | すべて | 拒否 | DMZ が踏み台になっても内部へ入れない |
| 4 | すべて | すべて | すべて | 拒否 | 暗黙の拒否を明示した最終行 |
この表で「インターネットから内部 LAN の共有サーバへ 445 番ポートで接続できるか」と問われたら、1〜3 のどれにも一致せず 4 で拒否、が答えです。逆に「DMZ の Web サーバから内部 DB へ SQL を投げたい」という要件があるなら、番号 3 より上に個別許可の行を追加しなければ通りません。順序が答えを変えるので、必ず上から追ってください。
| 関連技術 | 役割 |
|---|---|
| プロキシサーバ | 社内から外部への通信を代理する。アクセスログの集約とキャッシュも兼ねる |
| リバースプロキシ | 外部から内部サーバへの通信を代理する。TLS 終端・負荷分散・WAF の設置点になる |
| URL フィルタリング/コンテンツフィルタリング | 危険なサイトや業務に無関係なサイトへの接続を遮断する。マルウェアの C&C 通信を止める出口対策としても効く |
| Web アイソレーション | Web の閲覧処理を分離環境で行い、描画結果だけを端末に返す。端末に危険なコードを届けない |
| ハニーポット | わざと侵入しやすく見せた囮のシステム。攻撃者の手口や傾向を観測して対策に生かす |
| NAT/NAPT(IP マスカレード) | アドレス変換。副次的に内部アドレスを隠す効果がある(仕組みは第 10 章) |
IDS・IPS・WAF ― 守る層と検知の精度
パケットフィルタリング型の FW は IP アドレスとポート番号しか見ません。443 番ポートを開けた以上、その中を流れる SQL インジェクションは FW を素通りします。そこで「もっと上の層を見る装置」を重ねます。これが多層防御の考え方です。
| 装置 | 見るもの | できること/できないこと |
|---|---|---|
| IDS(侵入検知システム) | 通信やホストの挙動 | 検知して管理者に知らせるだけ。通信は止めない |
| IPS(侵入防止システム) | 同上 | 検知に加えて遮断する。通信経路上(インライン)に置く必要がある |
| WAF | HTTP/HTTPS の要求と応答の中身 | SQL インジェクション・クロスサイトスクリプティングなどWeb アプリケーションへの攻撃を検知・遮断する。REST API への攻撃も対象 |
| RASP | アプリケーション自身の実行時の挙動 | アプリの内部に組み込み、危険な処理が実行される瞬間に止める |
IDS・IPS の検知方式は 2 つです。シグネチャ型(不正検出型)は既知の攻撃パターンと照合するもので、既知の攻撃には強い一方、未知の攻撃は見逃します。アノマリ型(異常検出型)は平常時の通信をモデル化しておき、そこから外れた通信を異常とみなすもので、未知の攻撃を捉えられる代わりに誤検知が増えます。設置場所では、ネットワークを流れるパケットを監視する NIDS(ネットワーク型)と、サーバに導入してログやファイルの変更を監視する HIDS(ホスト型)を区別します。
設置場所には理由があります。HTTPS の通信はそのままでは暗号化されていて中身を読めないため、WAF は SSL/TLS アクセラレータやリバースプロキシで復号された後ろ側に置きます。負荷分散装置で TLS を終端している構成なら、その内側が WAF の定位置です。前段に置くと暗号文しか見えず、何も検査できません。
マルウェア対策・EDR・ログ管理
境界を越えて入ってくる前提に立つと、対策は「入る前」「入った瞬間」「入った後」の 3 つの時間帯に分かれます。どの製品がどの時間帯を担うかが整理できていないと、科目 B で選択肢を絞れません。
| 検出手法 | やり方 | 強み/弱み |
|---|---|---|
| パターンマッチング法 | 既知マルウェアの特徴(マルウェア定義ファイル)と照合する | 既知には確実。定義ファイルの更新が遅れると無力で、未知には効かない |
| ヒューリスティック法 | コードの構造や命令列から、マルウェアらしい特徴を推定する | 未知にも反応できるが誤検知がある |
| ビヘイビア法(振る舞い検知) | 実際の動作(大量のファイル暗号化、レジストリ改変、外部への連続接続)を監視する | 未知のランサムウェアを動作から捉えられる。動き出してからの検知になる |
| 静的解析/動的解析 | 実行せずコードを調べる/隔離環境で実行して挙動を見る | 動的解析は解析環境を検知して動作を変えるマルウェアに注意 |
| サンドボックス | 本番から切り離した仮想環境で疑わしいファイルを開き、挙動を観測する | 未知の検体を安全に確かめられる。判定に時間がかかる |
EDR とエンドポイント・クラウドの製品群
EDR(Endpoint Detection and Response)は、端末の操作・プロセス起動・通信を継続的に記録し、侵入後の不審な挙動を検知して、端末の隔離や原因追跡を支援する仕組みです。マルウェア対策ソフト(EPP)が「入れない」ことを狙うのに対し、EDR は入られた後に素早く気付いて広げないことを狙います。端末だけでなくサーバ・ネットワーク・クラウドのログを横断して相関させるものを XDR と呼びます。
| 製品・略語 | 正式名称 | 役割 |
|---|---|---|
| DLP | Data Loss Prevention | データの内容(マイナンバー・カード番号の書式など)を判定し、持ち出しや送信を止める |
| SIEM | Security Information and Event Management | 各種機器のログを一元的に集約し、相関分析して攻撃の兆候を見つける |
| SOAR | Security Orchestration, Automation and Response | 検知後の初動(隔離・通知・チケット起票)を自動化して対応時間を縮める |
| MDM | Mobile Device Management | スマートフォンやタブレットの設定を統制し、紛失時に遠隔でロック・ワイプする |
| CASB | Cloud Access Security Broker | 利用者とクラウドサービスの間に立ち、利用状況の可視化・制御を行う(シャドー IT の把握) |
| CSPM | Cloud Security Posture Management | クラウドの設定不備(公開されたストレージ、過剰な権限)を継続的に検査する |
| VDI | Virtual Desktop Infrastructure | デスクトップ環境をサーバ側に置く。端末にデータを残さないため、紛失・持ち出しによる漏えいを防げる |
ログ管理では、取得しているだけでは意味がない点を押さえます。機器ごとに時刻がずれていると、複数機器のログを時系列で突き合わせられません。そのため NTP による時刻同期が前提になります。保管期間を短くしすぎると、潜伏期間の長い攻撃を追跡する段階で古い記録が上書きされて残っていません。UEBA(利用者と機器の振る舞い分析)は、平常時と異なる操作(深夜の大量ダウンロードなど)を内部不正の兆候として検知します。
ランサムウェア対策とバックアップ設計
ランサムウェアはバックアップまで暗号化しようとします。共有ディスクに常時接続されたバックアップは、感染端末から到達できるため一緒にやられます。そこで「取ってあるか」ではなく「攻撃者から到達できないか」で設計します。
| 設計 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 3-2-1 ルール | データを 3 つ持ち、2 種類の媒体に保存し、1 つは遠隔地に置く | 単一障害・単一拠点の災害・同時感染をまとめて避ける |
| オフライン保管(切り離し) | バックアップ時だけ接続し、それ以外は物理的に切り離す | 感染端末から到達できないので暗号化されない |
| WORM/イミュータブルバックアップ | 一度書いたら保持期間中は変更・削除できない領域に保存する | 管理者権限を奪われても消せない。令和 7 年春の科目 B に登場 |
| 世代管理 | 複数世代を残す | 感染前の時点まで戻れる。1 世代だけでは暗号化後のデータで上書きされる |
| 復旧手順の訓練 | 実際に戻して業務が回るか確かめる | 「取れているが戻せない」を防ぐ |
情報漏えいを前提にした技術も並べておきます。暗号化消去は、暗号化して保存したストレージの鍵を破棄して復元不能にする消去方法で、大容量ディスクを短時間で無効化できます。データマスキングは本番データの一部を別の値に置き換えて開発・テストに使う手法です。統計利用のための匿名化では、項目・レコード・セルの削除、極端な値をまとめるトップコーディング、同じ属性の組合せを k 件以上にそろえる k-匿名化などを使います。
脆弱性管理は、OS のアップデートとセキュリティパッチの適用を、資産目録と結び付けて回す活動です。何がどこで動いているか分からなければ、脆弱性情報が出ても影響範囲を判断できません。近年は利用しているソフトウェア部品の一覧である SBOM(Software Bill of Materials)を持ち、部品に脆弱性が見つかったとき即座に該当製品を特定する方式が問われます(令和 6 年秋 問 43・令和 7 年春 問 40)。
VPN・無線 LAN・ゼロトラスト
セキュアプロトコルはシラバス上で 15 問が集まる厚いテーマです。そのうち IPsec 系(IPsec 3 問・VPN プロトコルの階層 3 問・IPv6 拡張ヘッダ 3 問)が 9 問を占め、しかも 3 回とも正解が同じ「上位から TLS → IPsec → L2TP」でした。図 1 枚で 9 問分を回収できます。
| 方式 | 仕組み | 向く用途 |
|---|---|---|
| IPsec | ネットワーク層で認証・暗号化する。認証のみの AH と、暗号化と認証を行う ESP がある。鍵交換は IKE で行う | 拠点間接続。IP 上のすべての通信をまとめて保護できる |
| IPsec トンネルモード | 元の IP ヘッダも含めて暗号化し、新しい IP ヘッダを付ける | ゲートウェイ間(拠点間 VPN) |
| IPsec トランスポートモード | ペイロードだけを暗号化し、元の IP ヘッダは残す | ホスト間で直接通信する場合 |
| SSL-VPN | TLS で保護する。リバースプロキシ方式・ポートフォワーディング方式・L2 フォワーディング方式がある | 在宅勤務など、専用ソフトを入れにくい端末からの接続 |
| SSH | 認証と暗号化を伴う遠隔ログイン。ポートフォワーディングでほかの通信も通せる | サーバの運用保守 |
| QUIC | UDP 上で暗号化と多重化を行うトランスポート。HTTP/3 が利用する | Web の高速化と接続維持 |
無線 LAN と検疫・NAC
| 技術 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| WPA2 | AES を用いた CCMP で暗号化する。事前共有鍵を使う PSK(パーソナル)と、認証サーバを使うエンタープライズがある | PSK は鍵を知る全員が同じ鍵を使う。退職者が出ても鍵を変えなければ接続できてしまう |
| WPA3 | SAE により、事前共有鍵を使う場合でもオフラインでの総当たり解析に耐える鍵交換を行う | WPA2 の PSK の弱点(キャプチャした通信からの鍵推測)への対処 |
| Enhanced Open | 認証なしの公衆無線 LAN でも通信を個別に暗号化する | パスワードのない接続でも盗聴されにくくする仕組み |
| IEEE 802.1X | 接続を認証してから通信を許す枠組み。有線でも使える | 認証方式として EAP を用い、認証サーバに RADIUS(後継として Diameter。ただし RADIUS との後方互換も規定)を使う |
| EAP-TLS/PEAP | 電子証明書で相互に認証する/サーバ証明書で TLS を張り、その中で利用者を認証する | EAP-TLS は端末側にも証明書が必要 |
| 認証 VLAN | 認証結果に応じて接続先の VLAN を割り当てる | 来客端末をゲスト用ネットワークへ振り分ける用途 |
| SSID ステルス/MAC アドレスフィルタリング | SSID を隠す/許可した MAC アドレスだけ接続させる | いずれも通信を観測すれば回避できる。認証・暗号化の代わりにはならない |
| 検疫ネットワーク/NAC | 接続してきた端末をまず検査用のネットワークに入れ、パッチ適用状況やマルウェア対策の状態を確認してから業務ネットワークへ移す | 持ち込み端末・持ち帰り端末の対策。NAC は Network Access Control |
ゼロトラストと SASE、クラウドの責任分担
境界型防御は「内側は信頼できる」という前提に立っています。テレワークとクラウドが当たり前になると、守るべき資産と利用者の大半が境界の外に出てしまい、前提が崩れます。そこでゼロトラストでは、場所を信頼の根拠にせず、アクセスのたびに利用者・端末・要求内容を検証します。
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| マイクロセグメンテーション | ネットワークを細かく区切り、区画間の通信を個別に制御する。侵入後の横移動を止める |
| SASE | Secure Access Service Edge。SD-WAN とセキュリティ機能(SWG・CASB・ゼロトラストのアクセス制御・FW)をクラウドで一体提供する |
| IDaaS/SSO/多要素認証 | 認証を集約して要求ごとの検証を実現する土台(仕組みは第 11 章) |
| リモートワイプ | 紛失した端末のデータを遠隔で消去する。持ち出し前提の運用に必須 |
| 責任共有モデル | クラウド事業者と利用者で責任範囲を分ける考え方。IaaS では OS 以上が利用者、PaaS ではミドルウェアまで事業者、SaaS ではデータと利用者管理が利用者の責任(ただし利用者管理は IaaS・PaaS でも利用者側の責任であり、実際の分界点はサービスごとに個別に定められる) |
メール・DNS・Web のセキュリティ
認証・認可技術(シラバス 5(2))は 12 問が集まる区分で、DNSSEC 4 問・SPF 3 問・DKIM 2 問・サブミッションポート 2 問がその中心です。これらはいずれも「なりすましを見抜く」ための署名と照合で、通信内容を暗号化する技術ではありません。ここを取り違えると誤答肢を選びます。
| 技術 | 何を照合するか | 限界・注意 |
|---|---|---|
| SPF | 送信元メールサーバの IP アドレスが、送信元ドメインの DNS に登録された IP アドレスと一致するか | 正規のドメインを使う攻撃者(そのドメインを本当に持っている場合)からのメールや、正規サーバを乗っ取られた場合は合格してしまう。転送されたメールでは送信元 IP が変わり不合格になりうる |
| DKIM | 送信側が秘密鍵で付けた電子署名を、DNS で公開された公開鍵で検証する | 署名は改ざん検知。本文の暗号化はしない |
| DMARC | SPF・DKIM の結果と、利用者に見える From ヘッダのドメインが一致するか | ドメイン所有者が不合格時のポリシー(none/quarantine/reject)を宣言する。集計レポートを受け取れる |
| SMTP-AUTH | メール送信時に利用者を認証する | 送信サーバの不正利用(第三者中継)を防ぐ。送信元ドメインの正当性は見ない |
| サブミッションポート(587 番) | ― | 利用者からの送信を 25 番と分けて受け付け、SMTP-AUTH と組み合わせる |
| OP25B | ― | Outbound Port 25 Blocking。ISP が自ネットワーク内の端末から外部の 25 番ポートへの直接接続を遮断し、ボットによる迷惑メールの大量送信を止める |
| S/MIME・PGP | ― | メール本文そのものを暗号化し、電子署名を付ける。S/MIME は認証局の証明書を使い、PGP は利用者同士で信頼をつなぐ |
| ベイジアンフィルタリング | ― | 受信者が迷惑と判定したメールの語句の出現確率を学習し、以後の判定に使う |
DNSSEC
DNSSEC(DNS Security Extensions)は、DNS の応答が正当な権威サーバから来た改ざんのないものだと確認できるようにする拡張です。権威 DNS サーバが応答(リソースレコード)に電子署名を付け、問い合わせた側(キャッシュ DNS サーバ)が公開鍵で署名を検証します。信頼は上位のゾーンから下位へ順に鍵をたどる連鎖で担保されます。第 11 章の DNS キャッシュポイズニングに対する根本的な対策がこれです。
Web とセッションの守り方
| 対策 | 内容 | 防げること |
|---|---|---|
| HSTS | HTTP Strict Transport Security。以後このサイトへは必ず HTTPS で接続せよ、とブラウザに指示する応答ヘッダ | 初回以降の平文接続への引き下げと、その隙を突く盗聴・改ざん |
| Cookie の Secure 属性 | HTTPS の通信でのみ Cookie を送信させる | 平文通信での Cookie の盗聴 |
| Cookie の HttpOnly 属性 | スクリプトから Cookie を読めなくする | クロスサイトスクリプティングによるセッション ID の窃取 |
| Cookie の SameSite 属性 | 別サイトからの要求に Cookie を付けない | クロスサイトリクエストフォージェリ |
| セッション ID の設計 | 推測できない乱数にし、ログイン成功時に再発行し、ログアウトと一定時間の無操作で無効化する | セッションハイジャック、セッション固定攻撃 |
| Same Origin Policy/CORS | 異なるオリジンのリソースへのアクセスを既定で禁止し、必要な範囲だけ応答ヘッダで許可する | 他サイトのスクリプトによるデータの読み出し |
| CSP | Content Security Policy。読み込みを許すスクリプトの出所をブラウザに宣言する | 意図しないスクリプトの実行(クロスサイトスクリプティングの被害軽減) |
セッションハイジャック対策は科目 A で 3 回出題されています。ポイントは「盗まれない工夫」(HttpOnly・Secure)と「盗まれても使えなくする工夫」(ログイン時の再発行・短い有効期限・ログアウト時の無効化)を両方挙げられることです。
セキュア開発 ― 実装とライフサイクル
アプリケーションセキュリティ(シラバス 5(6))は 15 問が集まる厚い区分で、その 6 問がファジングです。ここは配点効率が最も高い場所なので、検査手法の違いをはっきり分けて覚えます。
| 検査手法 | やること | 見つかるもの |
|---|---|---|
| ソースコード静的検査(SAST) | プログラムを実行せずにコードを解析し、危険な書き方を洗い出す | 入力検証の抜け、危険な関数の使用。網羅的だが誤検知も出る |
| プログラムの動的検査(DAST) | 実際に動かして要求を送り、応答から脆弱性を判定する | 実行時にしか現れない問題。到達しなかった経路は検査されない |
| ファジング | 極端に長い文字列・想定外の型・境界値・でたらめなデータを大量に自動生成して入力し、異常終了や異常な挙動が起きないかを観察する | 設計時に想定しなかった入力での例外・クラッシュ・バッファオーバーフロー |
| コードレビュー | 人がコードを読み、設計意図と実装のずれを指摘する | ツールが判定できない業務ロジックの穴 |
セキュアプログラミングと開発プロセス
| 実装技術 | やること | 防ぐ攻撃 |
|---|---|---|
| 入力検証 | 受け取る値の形式・長さ・範囲を許可リスト方式で確認し、想定外は受け付けない | あらゆる不正入力の入口を狭める |
| プレースホルダ(バインド機構) | SQL の骨組みを先に固定し、値は後から変数として渡す | SQL インジェクション。文字列連結で SQL を組み立てないのが要点 |
| 出力時のエスケープ | HTML として意味を持つ文字(< > & " ')を実体参照に変換して出力する | クロスサイトスクリプティング |
| バッファオーバーフロー対策 | 境界チェックを行う。長さを検査しない関数を避け、実行防止やアドレス配置のランダム化を有効にする | バッファオーバーフローによる任意コード実行 |
| 最小権限での実行 | アプリケーションを管理者権限で動かさず、必要な権限だけ与える | 侵入されたときの被害範囲を限定する |
| エラー処理 | 利用者に返すメッセージに内部情報(SQL 文・スタックトレース・パス)を含めない | 攻撃者への構成情報の提供 |
| パスワードクラック対策 | ソルトを付けてハッシュ化し、ストレッチングで計算を重くする(第 11 章) | レインボーテーブル攻撃・総当たり攻撃 |
| プロセス・考え方 | 内容 |
|---|---|
| セキュリティバイデザイン | 企画・設計の段階からセキュリティを組み込む。後付けは費用も期間も膨らむ |
| プライバシーバイデザイン | 同じ考え方を個人情報の保護に適用し、必要最小限の収集と初期設定での保護を設計に織り込む |
| DevSecOps | 開発と運用の自動化パイプラインにセキュリティ検査を組み込み、変更ごとに検査を回す |
| OWASP Top 10 | Web アプリケーションで特に重大なリスクを 10 項目に整理した文書。対策の優先順位付けに使う |
| コードサイニング証明書 | 配布するソフトウェアに署名し、発行元と改ざんの有無を利用者側で検証できるようにする(令和 7 年秋 問 37) |
| コンテナセキュリティ | イメージの脆弱性検査、信頼できるレジストリの利用、権限の制限、ホストとの分離 |
| セキュア OS | 強制アクセス制御(MAC)により、利用者の裁量ではなくシステムの規則でアクセスを決める。最小特権とあわせてトラステッド OS を構成する |
| データベースセキュリティ | 格納データの暗号化、権限に基づくアクセス制御、操作ログの取得、バックアップ(第 9 章) |
ひっかけポイント
理解度チェック(科目 A 形式)
Q1. 情報セキュリティリスク対応のうち、リスク移転(リスク共有)に該当するものはどれか。
- リスクの大きい新規サービスの提供を取りやめる
- サイバー保険に加入し、損害発生時の費用を保険会社と分担する
- ウイルス対策ソフトを導入して感染の可能性を下げる
- 影響が小さいと判断し、対策を行わないまま業務を継続する
正解: イ 保険や外部委託によって損失の負担を他者と分け合うのがリスク移転(共有)です。ア は業務自体をやめる回避、ウ は発生確率や影響を下げる低減、エ は残留リスクを承知で受け入れる受容にあたります。
Q2. ある障害は 1 回発生すると 800 万円の損失を生み、平均して 5 年に 1 回発生する。年間 60 万円の対策費をかけると発生頻度が 5 分の 1 になるとき、この対策によって減る年間予想損失額は何万円か。
- 32
- 96
- 128
- 160
正解: ウ 対策前の年間予想損失額は 800 × (1/5) = 160 万円、対策後は 800 × (1/25) = 32 万円なので、減るのは 160 − 32 = 128 万円です。設問が問うのは損失額の減少分なので、対策費 60 万円は計算に入れません(入れると費用対効果の判定になります)。ア は対策後の損失額そのもの、エ は対策前の損失額そのもの、イ は対策後の 32 万円を二重に差し引いた誤りです。
Q3. PSIRT の役割の説明として、最も適切なものはどれか。
- 自組織のネットワークとサーバのログを 24 時間監視し、異常を検知して報告する
- 国のサイバーセキュリティ戦略を立案し、政府機関の対策を統括する
- 自組織で発生したインシデントの対応を指揮し、外部機関との調整を行う
- 自社が開発・提供する製品の脆弱性情報を受け付け、修正版の提供と注意喚起を行う
正解: エ PSIRT(Product Security Incident Response Team)は自社製品のセキュリティに責任を持つ組織です。ア は SOC、イ は NISC、ウ は CSIRT の説明で、特にウ との入替えが定番の誤答肢です。
Q4. デジタルフォレンジックスの説明として、最も適切なものはどれか。
- インシデントの法的証拠となりうるデータを保全し、削除されたログの復元などを通じて原因を分析する
- ネットワークを流れるパケットを常時監視し、攻撃を検知して自動的に遮断する
- プログラムに大量の想定外データを入力し、異常終了が起きないかを確かめる
- 重要情報を扱う機器を分解されても内部データを読み取れないように設計する
正解: ア フォレンジックスは事後の証拠保全と分析の手続きです。イ は IPS、ウ はファジング、エ は耐タンパ性の説明で、いずれも「事前の予防・防御」であり、ここが正誤の分かれ目です。
Q5. IC カードなどに求められる耐タンパ性を高める方法として、適切なものはどれか。
- カード内のデータを共通鍵暗号方式で暗号化して格納する
- 利用時に暗証番号の入力を必須とし、一定回数の誤りでロックする
- 不正に内部の信号を読み取ろうとする行為を検出したら、記憶している秘密情報を消去する
- カードの利用履歴をサーバ側に記録し、不審な利用を後から追跡できるようにする
正解: ウ 耐タンパ性は物理的な解析への耐性で、検出したら情報を失わせる作り込みが正解の言い回しです。ア・イ・エ はいずれも論理的対策や運用上の対策で、分解・観測による解析そのものを妨げるものではありません。
Q6. ファジングの説明として、最も適切なものはどれか。
- ソースコードを解析ツールにかけ、危険な関数の使用や入力検証の漏れを実行せずに洗い出す
- 極端に長い文字列や想定外の値を大量に自動生成して入力し、異常な挙動が起きないかを観察する
- 既知の攻撃パターンを登録した定義ファイルと通信を照合し、一致したものを遮断する
- 本番と同じ構成のシステムに実際に侵入を試み、どこまで到達できるかを検証する
正解: イ 「大量の入力」と「挙動の観察」がファジングのキーワードです。ア は静的解析、ウ はシグネチャ型の検知、エ はペネトレーションテストで、いずれも隣接手法を使った定番の誤答肢です。
Q7. ファイアウォールに、上から順に「① 送信元: すべて/宛先: DMZ の Web サーバ/宛先ポート: 443/許可」「② 送信元: DMZ/宛先: 内部 LAN/全ポート/拒否」「③ 送信元: 内部 LAN/宛先: すべて/宛先ポート: 443/許可」「④ 送信元: すべて/宛先: すべて/全ポート/拒否」のルールを設定した。通過できる通信はどれか。
- インターネットから DMZ の Web サーバへの、宛先ポート 22 番の通信
- インターネットから内部 LAN のファイルサーバへの、宛先ポート 445 番の通信
- DMZ の Web サーバから内部 LAN のデータベースサーバへの、宛先ポート 443 番の通信
- 内部 LAN の PC からインターネット上のサイトへの、宛先ポート 443 番の通信
正解: エ エ はルール ③ に一致して許可されます。ア はポート番号が 443 でないため ① に一致せず、②③ にも一致しないので ④ で拒否されます。イ も ④ で拒否されます。ウ は ③ より先に ② に一致するため拒否で、ルールを上から順に照合する点が答えを決めます。
Q8. WAF の導入によって防御できる攻撃はどれか。
- Web アプリケーションの入力欄に不正な SQL 文を送り込み、データベースを操作する攻撃
- 大量の SYN パケットを送り付けてサーバの接続資源を枯渇させる攻撃
- 電子メールの添付ファイルを開かせてマルウェアに感染させる攻撃
- 無線 LAN の通信を傍受して事前共有鍵を推測する攻撃
正解: ア WAF は HTTP/HTTPS の中身を検査し、SQL インジェクションやクロスサイトスクリプティングなどWeb アプリケーション層への攻撃を検知・遮断します。REST API への攻撃も対象です。イ はトランスポート層への攻撃、ウ はメール経由の攻撃、エ は無線区間の攻撃で、いずれも WAF が見る層の外にあります。
Q9. 侵入検知システムにおけるフォールスネガティブの説明はどれか。
- 正常な通信を攻撃と判定し、管理者に不要な警報を出してしまうこと
- 攻撃を検知した際に、通信を遮断せず警報を出すだけにとどめること
- 実際には攻撃である通信を正常と判定し、検知できずに見逃してしまうこと
- 過去に検知した攻撃の記録を、保管期間の満了により失ってしまうこと
正解: ウ ネガティブは「攻撃ではない」という判定を指し、それが誤っている状態が検知漏れです。ア はフォールスポジティブ(誤検知)で、この 2 つの入替えが定番です。イ は IDS と IPS の動作の違い、エ はログの保管期間の話で、検知精度とは別の論点です。
Q10. TLS、IPsec、L2TP を、それぞれが動作する OSI 基本参照モデルの階層が上位のものから順に並べたものはどれか。
- IPsec、TLS、L2TP
- TLS、IPsec、L2TP
- L2TP、IPsec、TLS
- TLS、L2TP、IPsec
正解: イ TLS はトランスポート層より上、IPsec はネットワーク層、L2TP はデータリンク層で動作します。ア・ウ・エ はいずれも順序を入れ替えた誤りで、この形式では 3 回とも正解が同じ並びでした。下位層のものほど、その上を流れる通信をまとめて保護できます。
Q11. 送信ドメイン認証技術である SPF の仕組みはどれか。
- 送信側が本文のハッシュ値に秘密鍵で署名し、受信側が公開鍵で検証する
- メール送信時に利用者 ID とパスワードで認証し、認証できた場合だけ送信を受け付ける
- ISP が自ネットワーク内から外部の 25 番ポートへの直接接続を遮断する
- 受信側が、送信元メールサーバの IP アドレスと、送信元ドメインの DNS に登録された IP アドレスとを照合する
正解: エ SPF は IP アドレスの照合による送信元の検証です。ア は DKIM、イ は SMTP-AUTH、ウ は OP25B の説明で、3 回の出題ともこれらが誤答肢として並びました。SPF は正規のドメインを本当に保有する攻撃者には効かない点も押さえます。
Q12. DNSSEC で実現できることはどれか。
- 権威 DNS サーバが応答に付けた電子署名を検証し、応答が改ざんされていないことを確認する
- DNS の問合せと応答を暗号化し、経路上の第三者に内容を読ませない
- DNS サーバへの大量の問合せを検知し、送信元を自動的に遮断する
- ゾーン転送を許可するサーバを限定し、内部のホスト情報の流出を防ぐ
正解: ア DNSSEC は署名と検証によって応答の正当性を保証する拡張です。イ は 4 回の出題すべてで使われた定番の誤答肢で、DNSSEC は暗号化しません。ウ は DNS サーバへの攻撃対策一般、エ はゾーン転送の制限で、いずれも DNSSEC そのものの機能ではありません。
Q13. マルウェア対策ソフト(EPP)に対して、EDR の導入によって新たに得られる効果はどれか。
- マルウェア定義ファイルを自動更新し、既知のマルウェアの侵入を確実に防げる
- ソフトウェアの脆弱性を修正するパッチを、対象端末へ一斉に配布できる
- 端末の操作やプロセスの実行を継続的に記録し、侵入後の不審な挙動を検知して端末を隔離できる
- Web アプリケーションへの攻撃を、通信の内容を解析して遮断できる
正解: ウ EDR は「入られた後」の検知・調査・対応を担う仕組みです。ア は EPP がもともと持つ機能で、しかも「確実に防げる」は誤り、イ はパッチ管理ツールの機能、エ は WAF の機能です。EDR を「侵入を防ぐ製品」と説明する肢は誤りになります。
まとめ
| 論点 | 覚える形 |
|---|---|
| ISMS とポリシー | 要求事項は JIS Q 27001(認証対象)、実践規範は JIS Q 27002。ポリシーは基本方針 → 対策基準 → 実施手順の 3 階層 |
| リスクアセスメント | リスク特定 → リスク分析 → リスク評価。その後がリスク対応。年間予想損失額 = 1 回の損失額 × 年間発生回数 |
| リスク対応 4 分類 | 回避・低減(リスクコントロール)/移転・受容(リスクファイナンシング)。残るのが残留リスク |
| 組織 | CSIRT=自組織のインシデント、PSIRT=自社製品、SOC=常時監視。国内機関は JPCERT/CC(調整)・J-CRAT(被害組織の支援)・IPA(届出とガイドライン) |
| インシデント対応 | 検知・受付 → トリアージ → レスポンス → 報告・公開。初動は電源断ではなくネットワークからの切り離し |
| 技術評価 | 耐タンパ性=物理的解析への耐性(検出したら消去・破壊)。CC(ISO/IEC 15408)と EAL、CVSS は基本・現状・環境の 3 基準 |
| 境界の守り | FW はヘッダ、WAF は HTTP の中身、IDS は検知のみ、IPS は遮断。ルール表は上から照合し、一致しなければ拒否 |
| エンドポイント | EPP は入れない、EDR は入られた後。バックアップは 3-2-1・オフライン・イミュータブル・世代管理 |
| セキュアプロトコル | 上位から TLS → IPsec → L2TP。IPsec は AH と ESP、トンネルモードは元の IP ヘッダごと暗号化 |
| メールと DNS | SPF=送信元 IP の照合、DKIM=署名の検証、DMARC=両者の結果と From の一致。DNSSEC も署名の検証で、暗号化ではない |
| セキュア開発 | ファジング=大量の想定外入力で挙動を観察。静的解析は実行せず、動的解析は実行する。SQL インジェクション対策はプレースホルダ |
ここまでで、攻める側(第 11 章)と守る側(本章)がそろいました。次の第 13 章では、システム開発技術として要件定義から設計・実装・テスト・保守までの工程を扱います。本章で見たセキュリティバイデザインや静的・動的解析が、開発工程のどこに組み込まれるのかは、そちらの流れの中でもう一度確認できます。