宅建士合格教科書|2026年度(令和8年度)
第 7 章|例年 2〜3 問出題

8種制限 — 自ら売主の特別規制

業者売主 × 一般買主のときだけ働く 8 つの盾。適用場面の判定から

この章で学ぶこと

例年 2〜3 問出題。クーリング・オフと保全措置の 2 本柱を落とさなければ、宅建業法 20 問の底上げに直結します。2 問確保が目標です。

8 種制限はいつ働くのか — 前提の判定が最初の関門

宅地建物取引業法は、原則としてプロである宅建業者とアマである消費者の間の情報格差を埋めるための法律です。しかし宅建業者が自ら売主となるときは、業者は単なる仲介者ではなく取引の当事者そのものになります。相手方の消費者は、契約条件を決める力でも情報量でも圧倒的に不利です。そこで宅建業法は、この場面に限って民法の原則を修正する 8 つの特別ルールを置きました。これが8 種制限(自ら売主制限)です。

逆に言えば、買主もプロ(宅建業者)なら守る必要がありません。宅建業法 78 条 2 項は、8 種制限の規定を宅建業者相互間の取引には適用しないと定めています。また、売主が一般の方で宅建業者は媒介・代理をしているだけ、という場合も「自ら売主」ではないので適用されません。本試験は必ずこの前提を問題文の冒頭に書いてきます。問題文を読んだら真っ先に「誰が売主で、買主は業者か」を確認するのが解法の第一歩です。

売主が宅建業者で、買主が宅建業者でないときだけ働きます 売主A(宅建業者) 売買 買主B(一般の方) 8種制限がすべて適用 売主A(宅建業者) 売買 買主B(宅建業者) 8種制限は適用なし 売主A(一般の方) 業者Cが媒介 買主B(一般の方) 8種制限は適用なし
図 7-1 3 行を上から順に読むと、8 種制限のスイッチが入る条件が「売主=業者」かつ「買主=業者以外」の 1 通りしかないことが分かります。3 行目のように業者 C が媒介するだけなら、C は自ら売主ではないので適用されません。

8 つの制限は、バラバラに 8 個覚えようとすると必ず取りこぼします。取引が進む時間の順に並べると、それぞれがどの危険を防いでいるのかが見えてきます。

時間の流れ ①契約する前 ②契約するとき ③契約した直後 ④代金を払う間 他人物売買の制限 33条の2 手付は代金の2割まで 39条 損害賠償の予定も2割まで 38条 担保責任の特約は 引渡しから2年以上・40条 クーリング・オフ 37条の2 手付金等の保全措置 41条・41条の2 割賦販売の解除は 30日以上の催告・42条 所有権留保の禁止 代金の3割超で登記・43条 どの段階でも「買主に不利な特約は無効」が通底しています
図 7-2 8 つの制限を取引の時間軸に並べたものです。②の列に「2 割」が 2 つ並んでいる点、④の列がすべて「代金を回収する側の暴走を止める」規制である点を意識すると、条文番号ごと記憶に残ります。
制限条文核となる数字・キーワード
他人物売買の制限33条の2取得契約(予約可・停止条件付きは不可)
クーリング・オフ37条の2書面で告げられた日から 8 日・発信主義
損害賠償額の予定等の制限38条予定+違約金で代金の 2 割まで
手付の額の制限等39条代金の 2 割まで・常に解約手付
担保責任の特約の制限40条通知期間を引渡しから 2 年以上のみ可
手付金等の保全措置41条・41条の2未完成 5%/完成 10%・いずれも 1,000 万円
割賦販売契約の解除等の制限42条30 日以上の期間を定めて書面で催告
所有権留保等の禁止43条代金の 3 割超を受領したら登記を移す

2026年法改正 8 種制限の条文そのものには、2026 年度試験の基準日(2026 年 4 月 1 日)時点で新たな改正はありません。ただし古い知識のままだと失点する点が 2 つあります。ひとつは担保責任で、民法改正により「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に整理され、宅建業法 40 条が許す特約も「通知期間を引渡しの日から 2 年以上とするもの」という形で表現されます。もうひとつは書面の電子化で、媒介契約書面・35 条書面・37 条書面は相手方の承諾があれば電磁的方法で提供できますが、クーリング・オフの告知および買主による解除の意思表示は、この電子化の対象に含まれておらず書面によることが必要です。

クーリング・オフ — 8 種制限の最重要論点

クーリング・オフは、8 種制限のなかで最も出題頻度が高く、単独で 1 問まるごと出ることもある論点です。趣旨は明快で、冷静な判断ができない場所で買う気にさせられた買主に、頭を冷やす時間を与えることにあります。裏を返せば、買主が冷静に判断できたはずの場所での申込みは保護の対象外になります。この趣旨さえ握っていれば、場所の判定はほぼ理屈で解けます。

まず「場所」を判定する

クーリング・オフの可否は、買受けの申込みをした場所で決まります。申込みの場所と契約締結の場所が違うときは、申込みの場所が基準です。テント張りの案内所で申し込んで翌日に事務所で契約書に署名した、という設定なら基準は案内所(=解除できる)になります。逆に事務所で申し込んで喫茶店で契約した場合は解除できません。

買受けの申込みをした場所はどこか 事務所・継続的に業務を行える施設・案内所・ 展示会場(いずれも土地に定着)か はい クーリング・オフできない いいえ 買主が「自宅・勤務先で説明を」と 申し出た場所か はい クーリング・オフできない いいえ クーリング・オフできる (8日以内・書面で発信) 喫茶店・ホテルのロビー・テント張りの案内所・業者から出向いた買主の自宅
図 7-3 上から順に 2 つの質問に答えるだけで可否が決まります。1 つ目の「事務所等」は土地に定着する建物内のものに限られるので、テント張りの案内所は下に落ちます。2 つ目の質問で効くのが「買主が申し出たかどうか」で、業者の側から押しかけた自宅も下に落ちて「できる」になります。
申込みをした場所クーリング・オフ理由
売主業者の事務所できない典型的な事務所等
売主から媒介・代理を依頼された業者の事務所できない売主側の事務所と同視できる
依頼を受けていない業者の事務所できる売主側の場所ではない
土地に定着した建物内の案内所(専任の宅建士を置くべき場所)できない継続的に業務を行える施設
土地に定着した建物内で行う展示会等の会場できない継続的に業務を行える施設と同視
テント張り・仮設の案内所できる土地に定着していない
買主が申し出た買主の自宅・勤務先できない買主が場所を選んでいる
業者が申し出て訪問した買主の自宅できる不意打ちの典型
喫茶店・ホテルのロビー・買主が指定した喫茶店できる自宅・勤務先以外は対象外

暗記テク 「できない場所」は事務所とその仲間だけ、と覚えます。買主の自宅・勤務先は買主が呼んだときだけ事務所の仲間に入ります。喫茶店・ホテル・テントといった「腰を落ち着けられない場所」はすべて解除できる側です。

次に「8 日」と「引渡し+完済」を判定する

場所の関門を通っても、次の 2 つのいずれかに当たると解除できなくなります。

  1. 売主業者から書面でクーリング・オフができる旨とその方法を告げられた日から起算して8 日を経過したとき
  2. 買主が宅地建物の引渡しを受け、かつ、代金の全部を支払ったとき

1 つ目で決定的に重要なのは、書面で告げられていなければ 8 日のカウントが始まらないことです。口頭で説明しただけでは足りません。したがって告知書面が交付されていない事案では、契約から何か月経っていても解除できます。また「告げられた日から起算して」なので告げられた日そのものを 1 日目として数えます(初日算入)。月曜に告知を受けたら翌週の月曜が 8 日目です。

その告知書面に何を書くかは、宅建業法施行規則 16 条の 6 が次のとおり定めています。中身はこの節で学ぶルールそのもので、買主が自分の権利を書面で確かめられる状態にするための仕組みです。

2 つ目は両方そろって初めて解除できなくなる点が急所です。引渡しを受けていても代金が一部でも残っていれば解除できますし、代金を完済していても引渡しを受けていなければ解除できます。片方だけを示して「解除できない」とする肢は誤りです。

書面で告げられた日を1日目として数えます(初日算入) 書面で告知 8日目の終了 解除できる(1日目〜8日目) 9日目以降は不可 これとは別に、次の両方がそろっても解除できなくなります 宅地建物の引渡しを受けた かつ 代金の全部を支払った この2つがそろうと8日以内でも解除できません
図 7-4 上段が期間による打ち切り、下段が履行の完了による打ち切りです。下段は「かつ」でつながれているので、どちらか一方だけでは解除権は失われません。

解除の方法と効果

買主の解除の意思表示は書面で行い、その書面を発した時に効力が生じます(発信主義)。8 日目に郵便局の窓口に出しさえすれば、売主に届いたのが 10 日目でも有効です。到達を要求する肢は誤りです。

効果は契約の白紙撤回です。売主業者は受領した手付金その他の金銭を速やかに全額返還しなければならず、損害賠償や違約金を請求することはできません。「実際にかかった広告費だけは請求できる」といった肢も誤りです。そして、これらの規定に反する特約で申込者等に不利なものは無効です。「クーリング・オフは 5 日以内とする」「解除する場合は違約金 10 万円を支払う」といった特約は、その部分が効力を持ちません。

手付の額の制限と、必ず解約手付になるルール

手付には本来いくつかの性質があり得ますが、宅建業法 39 条は業者が自ら売主となる売買では常に解約手付として扱うと定めました。契約書に「この手付は違約手付とし、解除はできない」と書いても、買主に不利な特約として無効になります。買主は手付を放棄すれば理由を問わず契約から降りられる、という退路が必ず確保されるわけです。

その手付の額にも上限があります。代金の額の 10 分の 2 を超える手付を受領することはできません。上限を設けたのは、手付が大きすぎると買主が手付放棄による解除を事実上選べなくなり、解約手付の意味が失われるからです。2 割を超えて受け取った場合、超える部分についてのみ無効となり、買主は超過分の返還を請求できます。契約全体が無効になるわけではありません。

手付は必ず解約手付。相手方が履行に着手するまで解除できます 契約締結 相手方が履行に着手 解除できる もう解除できない 買主が解除するとき 手付を放棄する 売主(業者)が解除するとき 手付の倍額を現実に提供する 口頭で「倍返しします」と言うだけでは足りません
図 7-5 解除できる期間の終わりは「相手方が履行に着手したとき」です。自分が着手していても相手方がまだ動いていなければ解除できる点に注意してください。

解除できるのは相手方が契約の履行に着手するまでです。履行の着手とは、売主が所有権移転登記を済ませた、買主が中間金を支払った、といった客観的に外部から認識できる行為を指します。単に代金を用意した、引越しの手配をしたという程度では着手にあたりません。売主が解除するときは倍額を現実に提供する必要があり、口頭で伝えるだけでは解除の効力は生じません。

手付金等の保全措置 — 5%・10%・1,000 万円

買主が代金の一部を先に払ったのに、引渡し前に売主業者が倒産したらどうなるでしょうか。買主は物件も手に入らず、払ったお金も戻ってきません。この危険を断つのが手付金等の保全措置です。

ここでいう手付金等とは、名目が手付金・中間金・内金のいずれであっても、代金に充当されるもので、契約締結の日以後、物件の引渡し前に支払われるものを指します。引渡し後に支払われる残代金は含まれません。

保全のラインは物件が未完成か完成かで変わりますが、その判定は売買契約を締結した時点で行います。契約時にまだ工事が完了していなければ、その後に完成しても5%の基準のままです。「契約後に完成したのだから 10%でよい」とする肢は誤りです。

未完成物件(工事完了前) 保全措置は不要 代金の5%以下かつ1,000万円以下 これを超えたら保全措置が必要です 受領済みの額と合わせた全額について 完成物件(工事完了後) 保全措置は不要 代金の10%以下かつ1,000万円以下 これを超えたら保全措置が必要です 指定保管機関への寄託も使えます 買主へ所有権移転登記がされたときは、金額にかかわらず保全は不要です 未完成物件では指定保管機関による寄託は使えません
図 7-6 未完成と完成でパーセントが変わり、1,000 万円のラインは共通です。両方の条件を満たしたときだけ保全が不要になる「かつ」の関係に注意してください。
物件の状態保全が不要な範囲使える保全の方法
工事完了前(未完成物件)代金の 5%以下 かつ 1,000 万円以下銀行等の保証委託契約/保険会社の保証保険契約
工事完了後(完成物件)代金の 10%以下 かつ 1,000 万円以下上の 2 つ+指定保管機関との手付金等寄託契約(質権設定契約とセットで講じる)
買主が所有権の登記を備えた場合金額を問わず不要—

未完成物件で指定保管機関による寄託が使えないのは、集めた資金を建築工事に投入できなくなり、かえって工事が止まるおそれがあるためです。理由とセットで覚えると入れ替えのひっかけに強くなります。

ここがひっかけ 保全の要否はすでに受領した額と合算して判定します。代金 4,000 万円の未完成物件(5%=200 万円)で、手付 200 万円を保全なしで受領した後に中間金 300 万円を受け取ろうとすると、合計 500 万円が基準を超えるため、合計 500 万円の全額について保全措置が必要です。「中間金だけを見て 300 万円は 5%を超えていない」と考えると誤ります。

判定の手順を、代金 5,000 万円の完成物件で確認します。

  1. 完成物件なので基準は「代金の 10%以下 かつ 1,000 万円以下」です。
  2. 代金の 10%は 500 万円。1,000 万円と比べて低い方の 500 万円が保全不要の上限になります。
  3. 手付 400 万円だけなら保全は不要です。ここで中間金 300 万円を受け取ると合計 700 万円となり上限を超えるので、700 万円全額について保全措置を講じてからでなければ受領できません。
  4. なお手付の上限は代金の 2 割=1,000 万円ですから、手付 400 万円は 39 条の制限には触れません。2 割の制限と保全措置は別々に判定します。

保全措置を講じないまま業者が支払いを求めてきた場合、買主は手付金等の支払いを拒むことができます。買主が支払いを拒んでも債務不履行にはなりません。

他人物売買の制限 — 民法との違いが問われる

民法では、他人の物を売る契約も有効です(売主は権利を取得して買主に移転する義務を負います)。しかし宅建業法 33 条の 2 は、業者が自ら売主となる場合について、自己の所有に属しない宅地建物の売買契約を締結してはならないと定めました。手に入る保証のない物件を売られると、買主は代金を払っても引渡しを受けられない危険にさらされるからです。

例外は 2 つです。

制度の趣旨 規制されているのは「業者が売主となる契約」であって、業者が売主から物件を仕入れる側の契約ではありません。仕入れの契約が予約であろうと停止条件付きであろうと、それ自体は自由です。停止条件付きの仕入れをしている状態で買主に売ってはいけない、という順序で理解してください。また 33 条の 2 に違反しても契約が直ちに無効になるわけではなく、業者が監督処分の対象になります。

担保責任の特約・損害賠償額の予定・割賦販売・所有権留保

担保責任についての特約の制限(40 条)

民法では、引き渡された目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合、買主は不適合を知った時から 1 年以内に売主へ通知すれば、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除ができます。宅建業法 40 条は、この民法のルールより買主に不利な特約を無効とし、唯一通知期間を目的物の引渡しの日から 2 年以上とする特約だけを有効としました。引渡しから 2 年という起算点の方が売主にとって明確で、買主にとっても実質的な不利益が小さいと考えられたためです。

最大の急所は、無効になった特約の代わりに何が適用されるかです。無効になれば特約がなかったことになるので、民法の原則(知った時から 1 年以内の通知)に戻ります。「引渡しから 2 年に短縮される」のではありません。

特約が無効になると、2年ではなく民法の原則に戻ります 民法の原則 不適合を知った時から 1年以内に通知 宅建業法で許される特約 通知期間を引渡しの日から 2年以上とするもの 買主に不利な特約 例: 契約の日から2年・責任を負わない 無効 特約は無効になり 民法の原則(1年)に戻る 「引渡しから2年」に戻るのではない点が最大のひっかけです
図 7-7 左下の無効な特約は、右上の「2 年以上」ではなく左上の民法の原則へ跳ね返ります。矢印の向きを目で覚えておくと、本試験で迷いません。

損害賠償額の予定等の制限(38 条)

損害賠償額の予定と違約金を定める場合、これらを合算した額が代金の 10 分の 2 を超える定めをしてはならず、超える部分が無効になります。代金 3,000 万円なら合計 600 万円が上限で、「予定 500 万円+違約金 300 万円」と定めても 600 万円までしか効力を持ちません。

ここで狙われるのが、予定を定めなかった場合です。予定がなければ 38 条の出番はなく、実際に生じた損害額を証明して請求できます。その額が代金の 2 割を超えていても構いません。「予定を定めない場合でも 2 割が上限」とする肢は誤りです。

割賦販売契約の解除等の制限(42 条)と所有権留保等の禁止(43 条)

割賦販売とは、代金の全部または一部を目的物の引渡し後 1 年以上の期間にわたり、かつ 2 回以上に分割して受領する売買です。買主が支払いを遅れたとき、業者は30 日以上の相当の期間を定めて書面で催告し、その期間内に支払われないのでなければ、遅滞を理由に契約を解除したり残代金の一括支払いを請求したりできません。民法の「相当の期間」を 30 日以上と明確化したものです。これに反する特約は無効です。

所有権留保とは、代金が完済されるまで売主が所有権(登記)を手元に残す方法です。43 条は、割賦販売をした業者に対し、物件を引き渡すまでに登記その他引渡し以外の売主の義務を履行することを求めています。例外として、引渡しまでに代金の 10 分の 3 を超える額の支払いを受けていない場合には、3 割を超える支払いを受けるまで留保できます。3 割を超えて受け取ったらもう留保できない、というのが基本形です。

これには 2 つの補足があります。ひとつは 43 条 1 項ただし書で、買主が、登記後の代金債務を担保する抵当権・不動産売買の先取特権の登記を申請する見込みも、保証人を立てる見込みもないときは、業者は登記を移す義務を負いません。もうひとつは 43 条 2 項で、引渡し後に 3 割を超える支払いを受けた業者が、担保の目的でその物件を譲り受けること(譲渡担保)も禁止されています。登記だけ移して実質的に担保を取り戻す抜け道をふさぐ規定です。

論点民法の原則宅建業法(業者が自ら売主)
他人物の売買有効(売主は取得・移転義務を負う)原則禁止。取得契約(予約可・停止条件付きは不可)等があれば可
手付の性質解約手付と推定(特約で変更可)常に解約手付。買主に不利な特約は無効
手付の額制限なし代金の 2 割まで(超過部分が無効)
担保責任の通知期間不適合を知った時から 1 年以内引渡しの日から 2 年以上とする特約のみ可
損害賠償額の予定額の制限なし予定+違約金で代金の 2 割まで

ひっかけポイント

ここがひっかけ 買主が業者かどうかを問題文の途中でさりげなく明かす作りが定番です。「買主 B は宅地建物取引業者である」と書かれていれば、クーリング・オフも保全措置も手付の 2 割制限もすべて適用されず、業者間で自由に決めた内容がそのまま有効になります。冒頭で当事者を確認してから肢を読み始めてください。

ここがひっかけ クーリング・オフの判定場所は買受けの申込みをした場所です。「テント張りの案内所で申し込み、後日事務所で契約を締結した」という設定は、契約の場所につられて「できない」と答えさせる典型です。申込みの場所がテントなので解除できます。逆に事務所で申し込んで喫茶店で契約した場合は解除できません。

ここがひっかけ 「引渡しを受けたのでクーリング・オフできない」「代金を完済したのでできない」という肢は、いずれも片方しか満たしていないので誤りです。両方そろって初めて解除権が失われます。また、解除の意思表示は発した時に効力が生じるので、8 日目に投函すれば到達が 9 日目以降でも有効です。

ここがひっかけ 担保責任の特約が無効になったときに戻る先は民法の原則(知った時から 1 年以内の通知)であり、「引渡しから 2 年」ではありません。また 40 条が対象とするのは種類または品質の不適合です。数量や権利の不適合には民法上そもそも通知期間の制限がありません。

一問一答で総仕上げ

Q1. 宅建業者 A が自ら売主、宅建業者 B が買主となる宅地の売買契約において、A は代金の 3 割の手付を受領することができる。(○か×か)

答え: ○ 8 種制限は宅建業者相互間の取引には適用されません(78 条 2 項)。買主も業者なので、手付の 2 割制限は働きません。

Q2. 宅建業者 A の媒介により、一般の個人 C が売主、一般の個人 B が買主となって宅地の売買契約を締結した場合、B は 8 日以内であればクーリング・オフができる。(○か×か)

答え: × 8 種制限は宅建業者が自ら売主となる場合の規制です。A は媒介をしているにすぎず売主ではないので、クーリング・オフの規定は適用されません。

Q3. 買主 B が「勤務先で説明を受けたい」と申し出たため、宅建業者 A が B の勤務先で説明し、B がその場で買受けの申込みをした場合、B はクーリング・オフをすることができる。(○か×か)

答え: × 買主が自ら申し出た自宅または勤務先は「事務所等」に含まれるため、クーリング・オフはできません。業者の側から訪問を持ちかけた場合は事務所等に当たらず、解除できます。

Q4. 買主 B は、土地に定着しないテント張りの案内所で買受けの申込みをし、その 3 日後に宅建業者 A の事務所で売買契約を締結した。この場合 B はクーリング・オフをすることができない。(○か×か)

答え: × 判定の基準は買受けの申込みをした場所です。テント張りの案内所は土地に定着しておらず事務所等に当たらないため、契約を事務所で締結していてもクーリング・オフができます。

Q5. 買主 B は、クーリング・オフができる旨を書面で告げられた日から 8 日目に解除の書面を発送したが、その書面が宅建業者 A に到達したのは 10 日目であった。この場合、解除の効力は生じない。(○か×か)

答え: × クーリング・オフによる解除は書面を発した時に効力が生じます(発信主義)。8 日目に発送していれば到達が 10 日目でも有効です。

Q6. 買主 B は建物の引渡しを受けたが、代金の一部がまだ残っている。この場合、書面で告げられた日から 8 日を経過していなくても、B はクーリング・オフをすることができない。(○か×か)

答え: × 解除権が失われるのは引渡しを受け、かつ代金の全部を支払ったときです。代金が一部でも残っていれば、8 日以内であればクーリング・オフができます。

Q7. 宅建業者 A が自ら売主となり、代金 4,000 万円の宅地について一般の個人 B と契約する際、A が 1,000 万円の手付を受領する定めをした場合、その売買契約全体が無効となる。(○か×か)

答え: × 代金の 2 割は 800 万円なので、これを超える 200 万円の部分について効力が否定され、B はその返還を請求できます。契約全体が無効になるわけではありません。

Q8. 宅建業者 A が自ら売主となる売買契約で損害賠償額の予定を定めなかった場合、A が請求できる損害賠償額は代金の 2 割が上限となる。(○か×か)

答え: × 38 条は「予定・違約金を定めるとき」の制限です。予定を定めていなければ、実際に生じた損害額を証明して請求でき、その額が代金の 2 割を超えても構いません。

Q9. 宅建業者 A が自ら売主となる工事完了前の建物(代金 4,000 万円)について、A は手付金 200 万円を保全措置を講じずに受領し、その後さらに中間金 300 万円を受領しようとしている。この場合、A は 300 万円についてのみ保全措置を講じればよい。(○か×か)

答え: × 未完成物件の基準は代金の 5%(=200 万円)以下かつ 1,000 万円以下です。合計 500 万円は基準を超えるため、すでに受領した 200 万円を含む 500 万円全額について保全措置が必要です。

Q10. 宅建業者 A が自ら売主となる工事完了前のマンションについて、A は指定保管機関との手付金等寄託契約を締結する方法で保全措置を講じることができる。(○か×か)

答え: × 工事完了前の物件で使えるのは銀行等との保証委託契約と保険会社との保証保険契約の 2 つだけです。指定保管機関への寄託は工事完了後の物件でしか使えません。

Q11. 宅建業者 A が自ら売主となる建物の売買契約で、「担保責任の通知期間は契約締結の日から 2 年間とする」と定めた場合、この特約は無効となり、通知期間は引渡しの日から 2 年間となる。(○か×か)

答え: × 起算点が「引渡しの日」でないため買主に不利な特約として無効です。しかし無効になった結果戻るのは民法の原則(不適合を知った時から 1 年以内の通知)であって、「引渡しから 2 年」ではありません。

まとめ

8 種制限は数字の集合体です。最後に、代金に対する割合と期間を一枚にまとめておきます。

数字どの制限か内容
2 割手付の額(39 条)これを超える手付は受領不可・超過部分が無効
2 割損害賠償額の予定(38 条)予定+違約金の合計上限・超過部分が無効
3 割所有権留保(43 条)これを超える支払いを受けたら登記を移す
5%/1,000 万円保全措置(41 条)未完成物件で保全が不要になる範囲
10%/1,000 万円保全措置(41 条の 2)完成物件で保全が不要になる範囲
8 日クーリング・オフ(37 条の 2)書面で告げられた日から起算・初日算入
2 年担保責任の特約(40 条)引渡しの日から 2 年以上の通知期間のみ可
30 日割賦販売の解除(42 条)これ以上の期間を定めて書面で催告
制限買主に不利な特約をしたら結果
クーリング・オフ期間短縮・違約金の定め等その特約が無効(法律どおりに戻る)
手付による解除解除を認めない定め等その特約が無効(解約手付として扱う)
担保責任責任を負わない・契約日から 2 年等特約が無効となり民法の原則へ戻る
損害賠償額の予定代金の 2 割を超える定め超える部分だけが無効
手付の額代金の 2 割を超える定め超える部分だけが無効
割賦販売の解除30 日未満の催告で解除できる定め等その特約が無効

「超える部分だけが無効」なのか「特約全体が無効になって原則へ戻る」のかを区別できれば、8 種制限の応用問題はほぼ処理できます。次章では報酬計算・監督処分・住宅瑕疵担保履行法を扱い、宅建業法 20 問の仕上げに入ります。