- 流通・金融・医療・行政など業種別の情報システムと、IoT がもたらす効果の 4 段階
- AI の活用目的・活用例と、ハルシネーションなど利活用上の留意事項
- MRP の正味所要量・発注点・段取り時間という生産管理の 3 つの計算の型
- ファブレス/ファウンドリ/EMS の立場の違いと、ERP/MES/PLC の 3 階層
- EC の形態・電子決済・EDI の 4 規約と、インターネット広告の用語
- エッジコンピューティング・LPWA・デジタルツインなど IoT 応用の識別点
科目 A では直近 10 年(19 回)で 54 問、1 回平均 2.8 問が出ています。6 問出た回(H30 秋)がある一方、0 問の回(R7 春)もあるため、3 問前後を見込んで 2 問確保を目標にします。用語の意味を選ぶ知識問題が 45 問、計算が 9 問で、計算はすべて生産管理(MRP・段取り時間・発注点)に集中しています。科目 B の選択分野には含まれません。
ビジネスシステム ― 業種別・行政・公共の情報システム
ビジネスシステムとは、企業や行政の業務そのものを支える情報システムのことです。試験では「その略語が何をするシステムか」を選ばせる知識問題として出ます。まず社内業務支援システム(会計・人事給与・営業支援・グループウェア・ワークフロー)と基幹業務支援システム(販売・購買・在庫・生産・物流)を分けて捉えます。前者は間接部門の効率化、後者は「商品とお金が流れる本業」の管理が目的です。
流通業では、レジで商品を単品ごとに読み取って売上と在庫を即時に把握する POS(Point Of Sales:販売時点情報管理)システムが中心にあり、在庫が基準を割ったら自動的に発注データを作る EOS(Electronic Ordering System:電子補充発注システム)がつながります。POS が「売れた事実の記録」、EOS が「その結果としての発注」という関係です。商品や食品がどの工場・農場を経てきたかを追跡できるトレーサビリティ、動画や画像を利用者に近いサーバから配信する CDN(Content Delivery Network)も同じ小分類の用語例です。
| 業種 | 代表的なシステム | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 流通・小売 | POS、EOS、販売管理、在庫管理、電子タグ(RFID:Radio Frequency Identification) | POS は単品管理。RFID は非接触で一括読み取り |
| 物流 | 物流情報システム、貨物追跡、3PL | 3PL(Third Party Logistics)は物流業務を第三者に一括委託する形態 |
| 金融 | 勘定系システム、インターネットバンキング、FinTech | 勘定系は預金・為替・融資の記帳が中核 |
| 医療 | 医療情報システム、電子カルテ、レセプト | 患者情報の一元化と可用性・完全性の要求が高い |
| 製造 | ERP、生産管理、MES、PDM/PLM | 次節以降で扱う。計算問題はここから出る |
| 営業・現場 | 営業支援(SFA:Sales Force Automation)、フィールド業務支援システム | 外出先の端末から実績と現場情報を入力 |
社内業務支援システム側の用語例も 1 行で押さえます。掲示板・スケジュール・文書共有をまとめたグループウェア、承認経路を電子化するワークフローシステム、遠隔の打合せを行う Web 会議システム、会計・経理・財務システムと、その財務報告を XML 系の言語で記述する XBRL(eXtensible Business Reporting Language。R4 春に出題)、人事・給与システム、営業支援システムが並びます。基幹業務側は、流通情報システム・物流情報システム・販売管理・購買管理・在庫管理・顧客情報システム・金融情報システム・医療情報システムというように「業務名 + システム」の形で覚えれば十分です。あらゆる場所にコンピュータが埋め込まれ、利用者がそれを意識せずに使える状態をユビキタスコンピューティングといい、IoT の前身にあたる考え方です。
IoT がもたらす効果の 4 段階
シラバスは「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)がもたらす効果」を監視・制御・最適化・自律化の 4 語で挙げています。単なる語呂ではなく、右へ行くほど人間の関与が減り、扱うデータと制御ループが増える階段です。H30 秋には、IoT を活用した工場の効果として「自律化」に当たる記述を選ばせる問題が出ています。
現実の設備をセンサーでとらえ、仮想空間に同じ振る舞いのモデルを作って相互に連動させる仕組みを CPS(Cyber Physical System:サイバーフィジカルシステム)といい、その製造業での実装が後述するデジタルツインです。ブロックチェーンも同じ小分類に用語例として挙がっており、改ざんが難しい取引記録という性質を使ったトレーサビリティの確保と、契約条件をプログラムとして自動執行するスマートコントラクトが代表的な活用例です。改ざんが難しいのは仕組みによります。直前のブロックのハッシュ値を次のブロックに埋め込んで鎖状につなぐハッシュチェーンにより、途中のブロックを書き換えると以降のハッシュ値がすべて合わなくなるため改ざんが検知できます。さらに、どの記録を正とするかは管理者が決めるのではなく、参加ノードの合意形成(コンセンサスアルゴリズム)で 1 本の履歴に確定させます。
行政システムと公共情報システム
この 2 つの小分類は直近 10 年の科目 A で 1 問も出ていません。深追いせず、略語と正式名称・目的の対応だけを表で押さえます。
| 語 | 正式名称・分類 | 何をするか |
|---|---|---|
| デジタルガバメント | 行政システム | 行政サービス全体をデジタル前提で設計し直す取組み |
| e-Gov | 行政システム | 各府省への電子申請・届出の総合窓口 |
| GEPS | Government Electronic Procurement System | 政府の電子調達(入札・契約)システム |
| LGWAN | Local Government Wide Area Network | 地方公共団体をつなぐ行政専用ネットワーク |
| EDINET | Electronic Disclosure for Investors' NETwork(金融庁公式表記) | 有価証券報告書などの開示書類の電子提出・閲覧 |
| マイナポータル | 行政システム | マイナンバーに紐づく自分の情報の確認と手続の窓口 |
| J アラート | 全国瞬時警報システム | 緊急情報を住民へ瞬時に伝達 |
| スマートグリッド | 公共情報システム | 電力の需給を双方向の通信で最適化する送配電網 |
| VICS | Vehicle Information and Communication System | 渋滞・規制などの道路交通情報をカーナビへ配信 |
| ITS | Intelligent Transport Systems | 道路・車両・人を情報でつなぐ高度道路交通システムの総称 |
| ETC | Electronic Toll Collection System | 料金所で停止せずに通行料金を自動決済 |
| GPS 応用システム | 公共情報システム | 衛星測位で位置を求め、カーナビや測量に利用 |
表に載せきれない用語例も 1 行で足ります。電子政府は情報技術を活用して行政サービスの提供と行政活動の効率化を行う仕組み全体を指し、その自治体版が電子自治体、府省が共通で利用するクラウド基盤がガバメントクラウドです。個別の業務システムには出入国管理システム・登記情報システム・社会保険オンラインシステム・地域気象観測システム(アメダス)・座席予約システムがあり、住民基本台帳ネットワークシステムと公的個人認証サービスがマイナンバー制度の土台になっています。緊急速報は携帯電話網の同報配信で災害情報を一斉に届ける仕組みです。行政サービスを設計するときの観点としては、年齢や障害の有無によらず使えるユニバーサルデザインと、情報技術を使える人と使えない人の間に生じる格差であるデジタルディバイドが挙がります。地理空間情報を地図上に重ねて分析する GIS(Geographic Information System:地理情報システム)、利用者の予約に応じて経路と時刻を決める AI オンデマンド交通、自治体窓口のキャッシュレス化も同じ枠の用語です。
AI の利活用 ― 目的・活用例・留意事項
この小分類は「AI の技術」ではなく「AI を業務にどう使い、どこに気をつけるか」を問います。出題は多くありません(直近 10 年で H30 秋のチャットボットとクラスタ分析法の 2 問)が、生成 AI の普及にともなってシラバス側の記述が厚くなった領域です。まず利活用の目的を仮説検証・知識発見・原因究明・計画策定・判断支援・活動代替の 6 つで整理します。「人が最後に決める」のが判断支援、「人の作業そのものを置き換える」のが活動代替という違いが、選択肢の切り分けに効きます。
| 学習の型 | 業務での使い方 | 具体例 |
|---|---|---|
| 教師あり学習(予測) | 過去の正解データから将来値やラベルを当てる | 売上予測、需要予測、成約予測、離反予測、り患予測 |
| 教師なし学習(グルーピング) | 正解なしでデータを似た者どうしにまとめる | 顧客セグメンテーション、店舗クラスタリング |
| AI による認識(画像・音声) | 画像や音声から欠陥・物体・文字・発話を判定する | マシンビジョンによる外観検査、OCR(Optical Character Recognition:光学文字認識)、音声認識 |
| 生成 AI | 文章・画像・コードを生成する | 文章の要約と添削、アイディア出し、プログラミング支援 |
| 対話 | 問合せに自動応答する | チャットボット(一次対応の自動化) |
クラスタ分析法は、あらかじめ分類の正解を与えず、データ間の距離が近いものを同じ群にまとめる教師なし学習の代表です。「事前に定義した区分へ振り分ける」と書かれていたらそれは分類(教師あり)であり、クラスタ分析ではありません。チャットボットは、あらかじめ用意した対話ルールや学習済みモデルを使って、テキストの問合せに自動で応答する仕組みを指します。
AI そのものを表す用語例も 1 行ずつ確認します。特定の課題だけを解く AI が特化型 AI、分野を越えて人間のように対応する想定の AI が汎用 AIで、実用化されているのはすべて前者です。機械が人間らしく応答できるかを判定者との対話で試すのがチューリングテスト、あらかじめ想定した枠の外の事態に対応できない問題がフレーム問題、記号と実世界の意味が結び付かない問題がシンボルグラウンディング問題です。文章・画像・音声など複数種類の入力を同時に扱うのがマルチモーダル AI、同じ入力でも出力が毎回変わる生成 AI の性質がランダム性、材料開発に機械学習を用いる領域がマテリアルズインフォマティクス、利用者の作業を対話で補助するのが AI アシスタントです。業務での応用例には、需要予測のほかに、正常時のパターンから外れた挙動を見つける異常検知(設備故障の予兆検知、不正取引の検知)、購買履歴や閲覧履歴から関連商品を提示するレコメンデーション、定型的な画面操作をソフトウェアロボットに代行させる RPA(Robotic Process Automation)があります。RPA 自体は決められた手順を自動実行する仕組みで、判断を伴う部分に AI を組み合わせる、という役割分担で出題されます。こうして人手の作業工程そのものを機械に置き換えることをシラバスは AI による自動化と呼び、前述の「AI による認識」と並ぶ活用の型として挙げています。
利活用の留意事項
AI の出力をそのまま業務に流すと事故になるため、シラバスは人間の関与を明示的に求めています。試験用には次の 6 語で足ります。
| 語 | 意味 | 対策として何をするか |
|---|---|---|
| ハルシネーション | もっともらしいが事実でない内容を生成する現象 | 出力を人が一次情報で検証してから使う |
| XAI(説明可能な AI) | 判断の根拠を人が理解できる形で示す AI | 大局説明・局所説明で根拠を提示する |
| HITL(ヒューマンインザループ) | 処理の途中や最終判断に人間を組み込む設計 | 重要な判断は人の承認を必須にする |
| アルゴリズムのバイアス | 学習データやモデルの偏りが出力の偏りとして現れる | データの構成を点検し、公平性を評価する |
| AI 利用者の関与によるバイアス | 利用者の指示の書き方や出力の取捨選択が偏りを生む | プロンプトと採否の基準を決め、複数人で点検する |
| ディープフェイク | 実在人物の映像・音声を精巧に偽造したもの | 真正性の確認手段を別に用意する |
国の指針としては人間中心の AI 社会原則があり、人間中心の原則、公平性・説明責任・透明性の原則、イノベーションの原則などから構成されます。「AI に人が従うのではなく、AI は人の能力を拡張するために使う」という順序を覚えておけば、原則名を選ぶ問題には対応できます。
指針・枠組みの名前も用語例に並びます。国内には AI 利活用ガイドライン(AI 利活用原則)・AI 開発ガイドライン・人工知能学会倫理指針があり、国外では EU の信頼できる AI のための倫理ガイドライン、IEEE の倫理的に調和した設計、米国 NIST の AI Risk Management Framework(AI RMF)が挙がります。組織のデータや人材が AI を活用できる状態に整っていることを AI-ready、社会が AI の利用をどこまで受け入れられるかを AI の社会的受容性といい、導入前に倫理面のリスクを点検する取組みが AI 倫理アセスメントです。運用段階では、判断の根拠をどこまで人に示せるかという説明可能性と、判断の過程をどこまで人が追えるかという解釈可能性(前者は「なぜその答えになったかを説明できるか」、後者は「モデルの中身を人が追えるか」)、事故が起きたときに誰が責任を負うかという AI サービスの責任論、自分のデータを学習に使わせない選択を認めるオプトアウトポリシーが論点になります。
生産管理と MRP の計算
生産管理は、需要に対して「何を・いつ・どれだけ」作るかを決め、資材と工程と原価を管理する仕事です。応用情報の計算問題はここに集中しています。直近 10 年 54 問のうち計算は 9 問で、その内訳は MRP の正味所要量 6 問・段取り時間 2 問・発注点 1 問です。MRP は単独で最頻出テーマなので、まず型を固めます。
MRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)は、製品の生産計画と部品表(BOM:Bill Of Materials)から、必要な部品の数量と時期を階層順に計算する手法です。ポイントは 2 つ。上位品目の正味所要量に員数を掛けて下位の総所要量を出すこと、そして各階層で手持在庫を引くことです。
計算の型: MRP の正味所要量
総所要量 = 上位品目の正味所要量 × 員数 / 正味所要量 = 総所要量 − 手持在庫
例題: 図 20-2 の構成で、製品 A の需要が 350 個、手持在庫は A が 50 個、B が 100 個、D が 200 個であるとき、部品 D の正味所要量は何個か。
- 最上位の製品 A から始める。総所要量 350 − 在庫 50 = 正味 300 個
- 1 段下の部品 B。総所要量 = 300 × 2 = 600 個、在庫 100 を引いて 正味 500 個
- さらに下の部品 D。総所要量 = 500 × 2 = 1,000 個、在庫 200 を引いて 正味 800 個
- 答え: 800 個(各階層で必ず在庫を引いてから次の階層へ渡す)
在庫管理と発注点
在庫を持つ理由は、調達に時間がかかるからです。発注してから届くまでの期間(調達期間・リードタイム)にも在庫は減り続けるので、その間に消費する分を残したタイミングで発注しなければ欠品します。この基準在庫量が発注点です。需要のばらつきに備える安全在庫を上乗せするのが実務上の型です。
計算の型: 発注点
発注点 = 調達期間中の推定需要 + 安全在庫 = 1 日あたりの平均使用量 × 調達期間(日) + 安全在庫
例題: 1 日あたりの平均使用量が 20 個、調達期間が 5 日、安全在庫が 50 個のとき、発注点は何個か。
- 調達期間中に消費する量を求める: 20 個/日 × 5 日 = 100 個
- 安全在庫を上乗せする: 100 + 50 = 150 個
- 答え: 150 個(在庫が 150 個まで減った時点で発注する)
発注方式には、在庫が発注点を割ったら決まった量を発注する定量発注方式(発注点方式)と、一定期間ごとに需要予測から発注量を決める定期発注方式があります。単価が高く需要変動の大きい重要品目は定期発注、安価で消費が安定した品目は定量発注、というのが基本の使い分けです。
生産管理の周辺用語も 1 行で押さえます。MRP に資金・人員・設備の計画まで広げたものが MRP II(製造資源計画)、受注ごとに製造番号を付けて資材と原価をひも付けるのが製番管理、生産計画・工程管理・日程管理・原価管理・品質管理といった管理領域を通して「変化のマネジメント」を行うのが生産管理システムの役割です。
生産方式と受託製造 ― かんばん・セル生産・EMS
作り方の種類は、いつ作るか(受注生産か見込み生産か)とどうまとめるか(個別・ロット・連続)の 2 軸で整理します。ニーズの多様化により多品種少量生産が求められ、少人数で 1 台を組み上げるセル生産方式や、段取り替えを自動化して品種変更に強くした FMS が使われるようになりました。
| 用語 | 仕組み | ねらい・識別点 |
|---|---|---|
| かんばん方式 | 後工程が使った分だけ「かんばん」を前工程へ戻して補充させる | 後工程引取り。作りすぎのムダと中間在庫を減らす |
| JIT(ジャストインタイム) | 必要なものを必要なときに必要なだけ供給する考え方 | かんばん方式はこれを実現する道具 |
| リーン生産方式 | JIT とムダの排除を体系化した生産思想 | 在庫・運搬・不良などのムダを継続的に削る |
| セル生産方式 | 1 人または少人数が U 字型の作業台で複数工程を担当 | 多品種少量・仕様変更に強い。ライン生産の対義 |
| ライン生産方式 | コンベアに沿って各作業者が単一工程を繰り返す | 少品種大量向け。編成効率が課題 |
| FMS/FMC | FMC(Flexible Manufacturing Cell)=工作機械 1〜数台とロボット・自動工具交換でつくる柔軟生産の最小単位/FMS(Flexible Manufacturing System)= FMC を無人搬送車・自動倉庫でつないだ全体 | 規模の差で区別する。段取り替えを自動化し多品種に対応 |
| 個別/ロット/連続生産 | 1 個ずつ/まとめて/流し続ける | ロットが大きいほど段取り回数は減るが在庫は増える |
生産管理のフェーズも用語例として並びます。計画の段階では設計管理・調達管理・積算支援(見積金額の算定支援)が、実行の段階では工程管理・日程管理・在庫管理・品質管理が、結果の評価では原価管理・利益管理・戦略管理が対応し、これらを貫いて成果を測るものが生産性指標です。このうち品質管理は、検査で不良を選り分けるのではなく工程内で不良を作り込まない造り方を指し、生産管理の一領域として生産システムに組み込まれます(QC 七つ道具など統計的品質管理の手法そのものは第 21 章で扱います)。需要や仕様の変化に合わせて生産のやり方そのものを組み替えることを変化のマネジメントといいます。ライン生産では、各工程の作業時間をならして手待ちを減らす生産ラインの編成が課題になり、設備の異常を常時見張って自動で停止させる自動監視装置が無人運転を支えます。生産形態という語は、受注生産と見込み生産、個別生産・ロット生産・連続生産といった分け方の総称として使われます。
ファブレス・ファウンドリ・EMS
製造を「誰がやるか」でくくった 3 語は、立場(委託する側か受託する側か)と対象(半導体か電子機器か)の 2 軸で決まります。EMS(Electronics Manufacturing Services)は直近 10 年で 2 回出題され、どちらも「生産設備をもつ企業が他社の委託を受けて電子機器を製造する」が正解でした。
段取り時間の最小化
NC(Numerical Control:数値制御)工作機械で複数の仕事を続けて処理するとき、直前の仕事によって段取り替えに要する時間が変わります。合計段取り時間を最小にする順序を求める問題は、直近 10 年で 2 回出ています。各段で最小の値を選ぶだけでは最小になりません。仕事が 4 つなら順序は 4! = 24 通りですが、実際は「小さい値をつなげて 1 本の道にできるか」を試すほうが速く済みます。
計算の型: 段取り時間の最小化
合計段取り時間 = 隣り合う 2 つの仕事の段取り時間の総和(仕事が n 個なら n − 1 回分)
例題: 図 20-5 の表で、4 つの仕事 a〜d を 1 回ずつ行うときの合計段取り時間の最小値は何時間か。
- 表の中で小さい値を拾う: a→b = 1、b→c = 1、d→a = 2、d→b = 2、d→c = 2
- 小さい値だけで 4 つの仕事を 1 本につなげられるか試す: d→a→b→c は各仕事を 1 回ずつ通る
- 合計する: 2 + 1 + 1 = 4 時間
- 答え: 4 時間(先頭を a に固定した貪欲な選び方だと 11 時間になり、最小ではない)
エンジニアリングシステム ― 3 階層と CAD/PLM
工場の情報システムは、上から計画層・実行層・制御層の 3 階層で捉えると混乱しません。計画層は会計・人事・生産・販売といった経営資源を統合管理する ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)、実行層は MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)、制御層は機械や設備を直接制御する PLC(Programmable Logic Controller)と、その PLC を上位から監視してデータを集める SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition:監視制御・データ収集システム)が担います。同じ制御層でも、PLC が「動かす」側、SCADA が「見張って束ねる」側という役割の違いがあります。R7 秋には MES がこの 3 階層のどこに位置するかを問う問題が出ました。答えは実行層です。上の層ほど扱う時間の単位が長く、下の層ほど制御の周期が短くなります。
設計や解析を支援するコンピュータ支援システムも、頭文字の 1 文字で役割が変わります。CAD が設計、CAM が加工プログラムの生成、CAE が解析・シミュレーションです。建設・土木では建物や構造物の 3 次元モデルに属性情報を持たせる BIM/CIM が使われます。
| 略語 | 正式名称 | 担う工程 |
|---|---|---|
| CAD | Computer Aided Design | 設計図面・3D モデルの作成 |
| CAM | Computer Aided Manufacturing | 設計データから NC 工作機械の加工プログラムを生成 |
| CAE | Computer Aided Engineering | 強度・熱・流体などを試作前に解析する |
| CAP/CAPP | Computer Aided Planning/Process Planning | 生産計画・工程計画の立案を支援 |
| BIM/CIM | Building/Construction Information Modeling, Management | 建築・土木の 3 次元モデルに属性情報を統合 |
| CIM | Computer Integrated Manufacturing | 設計から製造・在庫まで情報を統合した生産 |
| PMS | Project Management System | プロジェクトの計画・進捗・資源の管理を支援 |
PDM(Product Data Management)と PLM(Product Lifecycle Management)は範囲の広さで区別します。PDM は設計・開発段階で生まれる図面や部品表などの製品データを一元管理する仕組み、PLM はそれを企画から設計・製造・保守・廃棄までのライフサイクル全体に広げ、商品力の向上とコスト低減を狙う考え方です。H31 春に PDM、R7 秋に PLM が出題され、どちらも「一元管理」という語が入るため、範囲の記述で選び分けます。
開発期間を短縮する進め方として、設計・生産技術・調達・製造の各部門が工程を並行して進めるコンカレントエンジニアリングがあります。設計が終わるのを待たずに生産準備を始めるため、後戻りは増えますが全体の期間は縮みます。生産工程そのものを自動化する取組みは FA(Factory Automation:ファクトリーオートメーション)と呼ばれ、無人搬送車(AGV)・自律走行搬送ロボット(AMR)・自動倉庫・産業用ロボットがその構成要素です。
e-ビジネス ― EC の形態・電子決済・サービスモデル
EC(Electronic Commerce:電子商取引)は「誰と誰の取引か」で呼び分けます。頭文字の to の前が売り手、後ろが買い手です。この分類は用語問題の土台になるので、まず表で固定します。
| 形態 | 売り手 → 買い手 | 代表例 |
|---|---|---|
| BtoB | 企業 → 企業 | e マーケットプレイス、電子入札、電子調達 |
| BtoC | 企業 → 消費者 | オンラインショッピング、オンラインモール |
| CtoC | 消費者 → 消費者 | ネットオークション、フリマアプリ |
| DtoC | メーカー → 消費者 | 製造元が仲介業者を通さず自社サイトで直販 |
| BtoE | 企業 → 従業員 | 社内向け福利厚生サイト、社員販売 |
| GtoB/GtoC | 行政 → 企業/市民 | 電子調達(GtoB)、電子申請・マイナポータル(GtoC) |
CtoC のように相手が見えない取引では、代金を払ったのに商品が届かないというリスクが付きまといます。これを第三者が預かって解消する仕組みがエスクローです(H29 春に出題)。買い手が払った代金を事業者がいったん預かり、買い手の受取確認を待ってから売り手へ送金します。
電子決済とフィンテック
預金・送金・決済・融資といった金融取引をインターネット経由で行う仕組みがインターネットバンキングで、その利用者向け決済手段としてキャッシュレス決済が広がりました。キャッシュレス決済は、支払いのタイミング(前払い・即時・後払い)と読み取り方式で整理します。金融と IT を組み合わせた新しいサービス全般を FinTech と呼び、そのうち複数の金融機関の口座情報を 1 画面にまとめて表示するのがアカウントアグリゲーションです(R1 秋に出題)。
| 用語 | 仕組み | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 電子マネー | IC カードやアプリに価値を記録して支払う | 前払い(プリペイド)型が中心 |
| 非接触 IC 決済 | 端末にかざして IC チップと近距離無線で通信 | 読み取りが速く、通信は数センチ |
| QR コード決済 | コードの読み取りで支払指示を送る | 店側は専用端末が不要で導入費が低い |
| キャリア決済 | 通信事業者の利用料金と合算して後払い | 与信は通信事業者が持つ |
| EFT | Electronic Fund Transfer:電子資金移動 | 口座間の資金移動を電子的に行う総称 |
| 暗号資産(仮想通貨) | ブロックチェーン上で移転する電子的な財産的価値 | 法定通貨ではない。価格変動が大きい |
| CBDC | Central Bank Digital Currency:中央銀行発行デジタル通貨 | 発行主体が中央銀行である点が暗号資産との違い |
| 組込み型金融 | 非金融サービスの中に決済や与信を埋め込む | Embedded Finance。EC アプリ内の後払いなど |
| 電子記録債権 | 電子債権記録機関の記録原簿で発生・譲渡する債権 | 手形の電子化に相当。分割譲渡ができる |
| eKYC | electronic Know Your Customer | オンラインで完結する本人確認 |
| AML・CFT | マネーロンダリング・テロ資金供与対策 | 取引モニタリングと制裁リスト照合が中心 |
インターネットを介した商取引全般をインターネットビジネス(オンライン商用サービス)と総称します。決済の周辺用語も 1 行で足ります。クレジットカードは後払い、デビットカードは口座からの即時引落しで、電子マネーの前払いと合わせて 3 つのタイミングを区別します。IC チップを載せて演算と記憶ができるカードがスマートカードで、その非接触版が IC カード・RFID 応用システムです。インターネット上のカード決済を安全に行うために策定された古い規格が SET(Secure Electronic Transaction)で、現在は主流ではありませんが用語例として残っています。契約書を電子データで取り交わし、電子署名とタイムスタンプで作成者と非改ざん性を担保する仕組みが電子契約です。運営側の論点としては、ネット上に仮想的な企業体を作るバーチャルカンパニー、多数の取引をその場で確定させるオンライントランザクション処理、無償の利用者をどう収益に結び付けるかというマネタイズの設計があります。なお、通信販売の広告表示や返品を規律する特定商取引法と、前払式支払手段・資金移動業・暗号資産交換業を規律する資金決済法は第 22 章で扱います。
ビジネスモデルの用語
e-ビジネスのサービス形態は 1 問ずつ広く出ます(直近 10 年で 9 問。うち小分類「e-ビジネスの進め方」が 7 問で、残りはアカウントアグリゲーションとエスクローが 1 問ずつ)。「何を誰に提供して、どこで収益を得るか」を 1 行で言えるようにしておけば、選択肢の言い換えに耐えられます。
| 用語 | 内容 | 誤りやすい相手 |
|---|---|---|
| SCM(Supply Chain Management) | 調達から生産・物流・販売までを企業をまたいで統合管理し、コスト低減と納期短縮を図る | CRM(Customer Relationship Management:顧客との関係管理)、ERP(社内資源の統合) |
| アグリゲーションサービス | 分散した複数の事業者のサービスへ、ワンストップで一括アクセスさせる | アカウントアグリゲーション(金融口座に特化) |
| ロングテール | 売れ筋でない多数の商品の売上合計が、全体の大きな割合を占める現象 | パレートの法則(上位 2 割が 8 割) |
| OtoO(O2O)/OMO(Online Merges with Offline) | ネットから実店舗へ誘導する(O2O)、ネットと実店舗の区別をなくす(OMO) | オムニチャネル(全チャネルで在庫と顧客情報を統合) |
| シェアリングエコノミー | 個人が持つ遊休資産をネット経由で他人と共有・貸借する | ギグエコノミー(単発の仕事を受託する働き方) |
| クラウドソーシング | 不特定多数へネット経由で業務を委託する | クラウドファンディング(資金を集める) |
| フリーミアム | 基本機能を無償提供し、追加機能を有償にして収益化する | サブスクリプション(利用期間に対して定額課金) |
| アフィリエイト | 紹介元サイト経由の成果に応じて広告主が報酬を支払う | ドロップシッピング(在庫を持たずに販売し、出荷は卸が行う) |
| NFT | ブロックチェーンで唯一性を証明する代替不可能なトークン | 暗号資産(同じ単位どうしが交換可能) |
| 情報銀行 | 個人の同意に基づき個人データを預かり、条件に沿って第三者へ提供する | データ取引市場(事業者間のデータ売買の場) |
インターネット広告はシラバスの用語例に無いものの、この中分類で 4 問出ています。SEO(Search Engine Optimization)は検索結果の上位に自社サイトが表示されるよう内容や構造を見直す取組みで、2 回とも同じ論点でした。検索語に連動して広告枠に出すのがリスティング広告、閲覧履歴から関心を推定して出すのが行動ターゲティング広告、広告経由の訪問のうち購入や申込みに至った割合がコンバージョン率です。ソーシャルメディアでは、利用者自身が内容を作る CGM(Consumer Generated Media)、Web の文書を作成・管理する CMS(Content Management System)、行動記録を蓄積するライフログが用語例として挙がっています。
ソーシャルメディアの類型も用語例のまま押さえます。利用者どうしのつながりを軸にする SNS(Social Networking Service)、話題ごとに書き込む電子掲示板、時系列で記事を公開するブログ、短文を投稿するミニブログ、投稿が即座に他の利用者へ伝わるリアルタイムウェブという並びです。SNS 上で多くの支持を集め、購買行動に影響を与える発信者がインフルエンサーです。売り手と買い手に場を提供して仲介し、参加者が増えるほど場の価値が上がる(ネットワーク外部性が働く)事業形態がプラットフォームビジネスで、オンラインモールや e マーケットプレイスがその典型です。ブロックチェーン上の投票で意思決定し、中央の管理者を置かない組織形態を DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)といい、NFT とともに用語の意味だけが問われます。
EDI とデータ交換の標準
EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)は、企業間の注文書・納品書・請求書といった取引情報を、あらかじめ合意した形式で通信回線を通じて交換する仕組みです。紙や電話に比べて転記ミスと処理時間が減りますが、そのためには「どう送るか」だけでなく「どう書くか」「いつ処理するか」「もめたらどうするか」まで取り決めておく必要があります。この取決めが 4 つの規約で、どの規約が何を定めるかを選ばせる問題が R2 年 10 月に出ています。
| 規約 | 階層 | 定める内容 |
|---|---|---|
| 情報伝達規約 | 通信 | 回線・通信手順・接続方式(JCA 手順、JX 手順、全国銀行協会手順など) |
| 情報表現規約 | データ | 交換するデータの形式・項目・コード体系(メッセージの構文) |
| 業務運用規約 | 運用 | システムの運用時間、送受信のタイミング、障害時の対応 |
| 基本取引規約 | 契約 | 取引の法的効力、検収や支払の条件などの基本契約事項 |
標準そのものの名前も用語例に並びます。流通 BMS(流通ビジネスメッセージ標準)は、旧来の JCA 手順(J 手順・H 手順)の電話回線ベースの EDI をインターネットと XML に置き換えた流通業界の標準です。XML でメッセージを記述する EDI を XML/EDI といいます。貿易手続の簡易化と電子ビジネスの標準化を担う国連の機関が UN/CEFACT(United Nations Centre for Trade Facilitation and Electronic Business:貿易簡易化と電子ビジネスのための国連センター)で、規格そのものではなく組織の名前である点に注意します。その系列で XML 化された EDI 標準が ebXML です。ブラウザから専用画面で発注する形態は Web-EDI で、導入は容易ですが自社システムとの自動連携がしにくいという弱点があります。
| 標準 | 分野 | 要点 |
|---|---|---|
| JCA 手順(J 手順・H 手順) | 流通 | 日本チェーンストア協会が定めた従来型の通信手順 |
| JX 手順 | 流通 | インターネット(HTTP)を使う中小企業向けの通信手順 |
| 全国銀行協会手順 | 金融 | 銀行と企業の間のデータ伝送手順 |
| 流通 BMS | 流通 | インターネット + XML による流通業界の標準メッセージ |
| EANCOM | 流通(国際) | 流通標準化を担う国際機関 GS1 が定める国際的な EDI メッセージ標準 |
| STEP | 製造 | 製品モデルデータの表現と交換の標準(CAD データの受け渡し) |
| XBRL | 財務 | 財務報告用の XML 系言語。EDINET などの開示に利用 |
| オープン API | 金融ほか | 外部事業者へ機能を API として公開し、連携を可能にする |
EDI が使われる業務は、資材調達・補充発注・貨物追跡・電子決済が代表例です。国内規格としては、EDI のメッセージ構文にかかわる JIS X 7011-1 と JIS X 7012-1 が用語例に挙がっています(番号と「EDI の構文規格」という対応だけ覚えれば足ります)。XML でメッセージを記述する方式は XML-EDI とも表記されます。
IoT の基盤技術と製造への応用
直近 3 年の出題はこの領域に寄っています(R5 春〜R7 秋の 17 問中 7 問)。中でもエッジコンピューティングは直近 10 年で 3 回出題され、3 回ともほぼ同じ文面が正解でした。演算リソースをセンサー端末の近くに置いて処理し、低遅延化と通信量の削減を図る、という説明が選べれば正解です。
端末側の通信・電源にも用語が並びます。LPWA(Low Power Wide Area)は、低消費電力で広い範囲をカバーし、多数の機器を収容できる無線通信の総称で、R7 秋に初出題されました。高速大容量の 5G、近距離の BLE(Bluetooth Low Energy)や NFC(Near Field Communication)とは狙いが逆で、「電池が長持ちして遠くまで届くが低速」が識別点です。
| 用語 | 内容 | 識別点 |
|---|---|---|
| LPWA | 低消費電力・広域・多数接続の無線通信 | 低速でよい見守りや検針に使う |
| BLE ビーコン | 低消費電力の Bluetooth で ID を発信する小型端末 | 屋内での近接検知・来店検知 |
| 屋内測位(AoA/AoD) | 電波の到来角・出射角から屋内の位置を求める | GPS が届かない建物内で使う |
| エネルギーハーベスティング | 振動・光・熱など環境中の微小エネルギーを電力に変換 | 電池交換なしでセンサーを動かす |
| ワイヤレス給電 | 電磁誘導などで非接触に電力を供給する | 環境から採るのではなく外部から送る |
| M2M | 人を介さず機器どうしが通信して動作する | IoT の基礎になる考え方 |
| ジャイロセンサ | 物体の角速度(回転の速さ)を検出する | 加速度センサは並進の加速度 |
| リアルタイム OS | 決められた時間内に処理を完了させる組込み用 OS | 応答時間の上限が保証される |
| イベント | センサーの検知や割込みなど、処理の起動契機となる出来事 | イベント駆動で待機中のタスクを起こす |
組込みシステム側の用語例にも一度目を通しておきます。機器に内蔵される小型のコンピュータがマイクロコンピュータ(マイコン)、そこで動く基本ソフトウェアが組込み OS、機器の動作そのものを記述して不揮発性メモリに書き込んだソフトウェアがファームウェアです。設計上の要求は、電池で長く動かす省電力、故障しても危険側に倒れない高信頼設計・安全性設計、高温や振動・粉じんに耐える耐環境性の 4 つで語られます。センサーの入力に応じて決められた順序で機器を動かすのがシーケンス制御、締切時刻までに必ず処理を終えるのがリアルタイム制御、ロボットの設計と制御を扱う分野がロボティクスです。無線 LAN の接続設定を簡略化する WPS(Wi-Fi Protected Setup)、アクセスポイントを介さず機器どうしを直接つなぐ Wi-Fi Direct、電波を中継して到達範囲を広げる Wi-Fi 中継器も同じ枠に並びます。
デジタルツインとスマートファクトリー
デジタルツインは直近 10 年で 2 回出題され、R5 春は用語選択、R6 春は説明選択でした。現実の機器や工場に取り付けたセンサーのデータを使って、仮想空間に同じ振る舞いをする双子のモデルを作り、そこで条件を変えて試した結果を現実へ戻す仕組みです。現実のセンサーデータと連動しているという点が、単なる VR やメタバース、事前に作っただけのシミュレーションモデルとの決定的な違いです。
IoT と AI を組み込んだ工場をスマートファクトリーと呼び、その代表的な応用が マシンビジョンです(R5 秋に出題)。カメラで撮った画像を AI が判定して目視検査を自動化し、検査の効率と精度を上げるのが目的で、需要予測や在庫最適化とは用途が違います。IoT を使ったビジネスモデルとしてはマスカスタマイゼーションが R6 春に出ました。3D スキャンで一人ひとりの寸法を取り、個別設計した製品を大量生産に近いコストで作る、というように大量生産の効率と個別対応の両立を指します。製造業全体をこうした方向へ変えていく構想がインダストリー 4.0 で、その基礎理論が前述の CPS です。
民生機器・産業機器と自動車制御
小分類「民生機器の例」と「産業機器」からの出題は 10 年で 3 問と多くありません(ディジタルサイネージ・マスカスタマイゼーション・マシンビジョン)。同じ大きな括りの中でも、エッジコンピューティングや LPWA を含む「IoT システム・組込みシステム」は 6 問あり、そちらは前節で扱いました。用語と一言説明の対応を作り、選択肢を消去できる状態にしておけば十分です。民生機器は家庭や個人が使う機器、産業機器は工場・設備・輸送で使う機器という分け方です。
| 区分 | 用語 | 一言説明 |
|---|---|---|
| 民生機器 | 情報家電・スマート家電 | ネットワークにつながり遠隔操作や自動制御ができる家電 |
| 民生機器 | HEMS | Home Energy Management System。家庭の電力使用を可視化・制御 |
| 民生機器 | ウェアラブルコンピュータ | 身に着けて使う端末。AR グラス・MR グラス・VR ゴーグル・スマートグラス |
| 民生機器 | スマートフォン・タブレット端末 | 通話・撮影・測位・決済を 1 台で担う個人用情報機器 |
| 民生機器 | ホームネットワーク | 家庭内の家電・AV 機器をつないで連携させるネットワーク |
| 民生機器 | HDTV・車載情報機器 | HDTV(High Definition Television)は高精細テレビ/車載情報機器はカーナビなど車両に搭載する情報機器 |
| 民生機器 | コンピュータ周辺/OA 機器 | プリンタ・スキャナ・複合機など、PC まわりと事務作業を担う機器 |
| 民生機器 | 民生用通信端末機器 | 固定電話機・ルータ・ONU など家庭向けの通信端末 |
| 民生機器 | アプライアンス | 用途を絞り込み、設置と設定だけで使える専用機器 |
| 民生機器 | センサーネットワーク | 多数のセンサー端末とセンサー基地局で広い範囲を計測する |
| 民生機器 | 教育・娯楽機器 | 学習用端末やゲーム機など。組込みシステムの応用先の一つ |
| 民生機器 | スマートスピーカー | 音声で操作する対話型端末。家電の制御ハブにもなる |
| 民生機器 | セットトップボックス | 放送や配信の信号を受けてテレビに映す変換装置 |
| 民生機器 | ディジタルサイネージ | ディスプレイに広告や案内を配信表示する電子看板 |
| 産業機器 | PLC | Programmable Logic Controller。工場設備のシーケンス制御を行う |
| 産業機器 | AGV/AMR | 決められた経路を走る無人搬送車/自ら経路を判断する搬送ロボット |
| 産業機器 | ロボット(産業用・医療用・介護用・災害対応用) | 溶接や組立の産業用のほか、手術支援・移乗介助・被災地の探索にも広がる |
| 産業機器 | 工業機器 | 計測・分析・加工・空調など、工場や設備で使う業務用機器の総称 |
| 産業機器 | スマートメーター(AMI) | 電力量を計測して通信で送る電力量計。検針の自動化に使う |
| 産業機器 | BEMS/CEMS | ビル単位/地域単位のエネルギーマネジメントシステム |
| 産業機器 | ドローン | 無人航空機。点検・測量・農薬散布・配送に利用 |
| 産業機器 | MT 法 | 正常データからの距離で異常度を測る品質工学の判定手法 |
| 産業機器 | ATM・自動販売機 | 現金自動預払機/無人販売端末。業務用の組込み機器の代表 |
| 産業機器 | 医療機器・AED | 患者モニタリング装置や自動体外式除細動器 |
都市や社会の単位で見た用語も押さえます。スマートシティは都市の設備やサービスをデータで最適化する構想、その基盤となるデータ連携基盤が都市 OS、規制改革をあわせて先行的に実装する区域がスーパーシティです。移動手段を検索から予約・決済まで一括で提供する考え方が MaaS(Mobility as a Service)、分散した小規模な発電設備や蓄電池を束ねて 1 つの発電所のように制御するのがバーチャルパワープラント(VPP)です。複数の独立したシステムを連携させて全体で新しい機能を生む構成は SoS(System of Systems)といいます。センサーとドローンで栽培条件を最適化するスマート農業も、産業機器の動向として用語例に挙がっています。製品の競争力をハードウェアではなくソフトウェアで決める考え方がソフトウェアファーストで、次に見る SDV はその自動車版です。なお、環境負荷の小さい製品・サービスを優先して調達する取組みがグリーン購入で、R2 年 10 月にこの中分類で 1 度出題されています(調達方針としての位置づけは第 18 章で扱います)。
自動車制御と自動運転レベル
自動車業界の変化を表す 4 語の頭文字が CASE(Connected:つながる、Autonomous:自動運転、Shared & Services:共有とサービス化、Electric:電動化)です。車両の機能をソフトウェア更新で継続的に変えていく車を SDV(Software Defined Vehicle)、通信でつながる車をコネクテッドカーと呼びます。自動運転の段階分けは 0〜5 の 6 段階です。
| レベル | 呼称 | 誰が何をするか |
|---|---|---|
| 0 | 運転自動化なし | 運転者がすべての運転操作を行う |
| 1 | 運転支援 | 前後(加減速)か左右(操舵)のどちらか一方をシステムが支援 |
| 2 | 部分運転自動化 | 前後と左右の両方をシステムが行うが、監視は運転者 |
| 3 | 条件付運転自動化 | 限定領域でシステムがすべて行い、要請時は運転者が引き継ぐ |
| 4 | 高度運転自動化 | 限定領域内ではシステムが完結。運転者の引き継ぎは不要 |
| 5 | 完全運転自動化 | 領域の限定なくシステムがすべて行う |
周辺の用語も 1 行で足ります。運転支援システム全般が ADAS(Advanced Driving Assistant System)、車どうしが直接通信するのが車車間通信(V2V)、車内の制御装置どうしを結ぶ通信規格が CAN(Controller Area Network)、自動運転に使う高精度な 3 次元地図に交通規制や工事情報を重ねたものがダイナミックマップ、自己位置推定と地図生成を同時に行う技術が SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)です。車両の種類では、時速 20 km 未満で公道を走るグリーンスローモビリティと、1〜2 人乗りの超小型モビリティが挙がり、駐車場内で車両を無人走行させる自動バレー駐車システムは限定領域でのレベル 4 の代表的な適用例です。
ひっかけポイント
理解度チェック(科目 A 形式)
Q1. 製品 X 1 個の生産に部品 Y を 3 個使用する。製品 X の需要が 400 個、製品 X の手持在庫が 100 個、部品 Y の手持在庫が 200 個であるとき、MRP によって求められる部品 Y の正味所要量は何個か。
- 700
- 900
- 1,000
- 1,200
正解: ア 製品 X の正味所要量は 400 − 100 = 300 個、部品 Y の総所要量は 300 × 3 = 900 個、そこから在庫 200 個を引いて 700 個です。イ は部品 Y の在庫を引き忘れた総所要量、ウ は製品 X の在庫を引かずに 400 × 3 − 200 とした値、エ は在庫をどちらも引かない 400 × 3 の値です。
Q2. IoT システムにおけるエッジコンピューティングの説明として、最も適切なものはどれか。
- すべてのセンサーデータを 1 か所のデータセンタに集約し、大規模な分析基盤でまとめて処理する。
- 演算リソースをセンサー端末の近傍に配置して処理し、応答の遅延と広域回線への通信量を抑える。
- 同じデータを地理的に離れた複数拠点へ複製し、災害時にも利用できるようにする。
- 端末に一切の処理をさせず、収集したデータをそのまま長期保管することだけを目的とする。
正解: イ 「端末の近くで処理する」「遅延と通信量が減る」の 2 点がエッジコンピューティングの定義です。ア は逆にクラウドへ集中させる形態、ウ は災害対策のためのレプリケーション、エ は単なるデータ収集・保管であって処理の配置の話ではありません。
Q3. 電子機器の分野における EMS の説明として、適切なものはどれか。
- 自社で製品を企画・設計するが生産設備をもたず、製造を他社に委託する。
- 家庭やビルのエネルギー使用状況を可視化し、機器を制御して省エネを図る。
- 他社が設計した半導体の受託製造を専門に行う。
- 生産設備をもつ企業が、他社からの委託を受けて電子機器の製造を行う。
正解: エ EMS(Electronics Manufacturing Services)は設備をもつ受託製造業です。ア はファブレス、ウ はファウンドリの説明で、いずれも立場か対象が違います。イ は同じ 3 文字の別語である Energy Management System で、文脈語が「電子機器の分野」なので選べません。
Q4. SCM を導入する目的として、最も適切なものはどれか。
- 顧客との接点で得た情報を一元管理し、顧客との関係を強化して売上を伸ばす。
- 社員個人がもつ知識やノウハウを組織で共有し、知的生産性を高める。
- 資材の調達から生産・物流・販売までを企業をまたいで統合管理し、コスト低減と納期短縮を図る。
- 社内の人・物・金・情報の経営資源を統合的に管理し、業務を効率化する。
正解: ウ SCM の識別点は「複数企業をまたぐ」「調達から販売まで」です。ア は CRM、イ はナレッジマネジメント、エ は ERP の目的で、いずれも自社内または顧客接点に閉じています。
Q5. SEO に該当する取組みはどれか。
- 検索語に連動して、検索結果ページの広告枠に自社の広告を表示させる。
- 検索エンジンの結果一覧で自社サイトが上位に表示されるよう、サイトの内容や構造を見直す。
- 利用者の閲覧履歴から関心を推定し、その関心に合った広告を配信する。
- 紹介元サイト経由で購入などの成果が発生したとき、そのサイトへ報酬を支払う。
正解: イ SEO は広告費を払うのではなく、検索結果そのものの順位を上げるためにサイト側を最適化する取組みです。ア はリスティング広告、ウ は行動ターゲティング広告、エ はアフィリエイトで、いずれも広告出稿や成果報酬の仕組みです。
Q6. アグリゲーションサービスの説明として、適切なものはどれか。
- 分散して存在する複数の事業者のサービスを、利用者が 1 か所からまとめて利用できるようにする。
- 複数の金融機関に開設した口座の残高や取引明細を、1 つの画面に集約して表示する。
- 売り手と買い手の間に第三者が入り、代金を預かってから商品の受渡し後に送金する。
- 多数の売り手が商品を出品し、買い手が横断的に比較して購入できる場を提供する。
正解: ア アグリゲーションサービスは対象を金融に限らない一般的なワンストップ提供です。イ はそれを金融口座に特化させたアカウントアグリゲーション、ウ はエスクロー、エ は e マーケットプレイスの説明です。
Q7. デジタルツインの説明として、適切なものはどれか。
- 頭部装着型の表示装置で視界を人工的な映像で覆い、仮想の空間に没入させる。
- 多数の利用者がアバタで参加し、交流や経済活動を行う仮想の 3 次元空間を提供する。
- 設計図面から作った実物大の模型を用いて、製造前に形状や組付けを確認する。
- 現実の設備に取り付けたセンサーのデータを用いて仮想空間に同じ振る舞いのモデルを構築し、そこでの検討結果を現実へ反映する。
正解: エ 「現実のセンサーデータと連動する」ことがデジタルツインの本質です。ア は VR、イ はメタバースで、いずれも現実の設備と連動しません。ウ は物理的なモックアップによる検証で、仮想空間を使っていません。
Q8. NC 工作機械で 4 つの仕事 a〜d を任意の順序で 1 回ずつ行う。直前の仕事から次の仕事へ移るときの段取り時間は、a→b が 1 時間、b→c が 1 時間、d→a・d→b・d→c がいずれも 2 時間で、それ以外の組合せはすべて 9 時間である。合計段取り時間の最小値は何時間か。
- 3
- 4
- 11
- 12
正解: イ d → a → b → c の順にすると 2 + 1 + 1 = 4 時間になり、これが最小です。ア は、1 時間の段取りが a→b と b→c の 2 本しかないため 3 回すべてを 1 時間にはできず、実現しません(d を含む最短の辺が 2 時間なので、最小でも 2 + 1 + 1 = 4 時間)。ウ は a から始めて各段で最小を選ぶ貪欲な選び方(a→b→c→d = 1 + 1 + 9)の結果で、局所的に最小を選んでも全体最小にならない典型例です。エ は d を後ろへ回した順序(a→b→d→c = 1 + 9 + 2)などで実際に生じる値です。2 時間で移れるのは「d から出る」向きだけなので、d は先頭に置くのが正解です。
Q9. IoT の通信方式である LPWA の特徴として、適切なものはどれか。
- 数センチメートルの距離で機器をかざして通信し、決済や認証に用いる。
- 高速大容量・低遅延・多数同時接続を特徴とする移動通信システムである。
- 低消費電力で広い範囲をカバーでき、多数の機器を収容できる。
- 数メートル程度の範囲で機器どうしを結ぶ、低消費電力の近距離無線である。
正解: ウ LPWA は Low Power Wide Area の略で、低速でよい代わりに電池が長持ちし遠くまで届きます。ア は NFC、イ は 5G、エ は BLE の特徴です。「低消費電力」だけでは BLE と区別できないので、「広範囲」が入っているかで判定します。
Q10. 工場の情報システムを計画層・実行層・制御層の 3 階層に分けたとき、MES が担う層と、その層での主な役割の組合せとして適切なものはどれか。
- 計画層 ― 生産計画と資材所要量計画の立案
- 実行層 ― 作業指示の展開と製造実績の収集
- 制御層 ― 機械や設備のリアルタイムな直接制御
- 実行層 ― 会計・人事を含む経営資源の統合管理
正解: イ MES(製造実行システム)は計画と現場制御の中間で、作業指示と実績収集・進捗管理を担う実行層のシステムです。ア は ERP が担う計画層、ウ は PLC が担う制御層の役割です(SCADA は同じ制御層で PLC を監視しデータを集める側です)。エ は層は合っていますが、経営資源の統合管理は ERP の役割で MES ではありません。
Q11. PLM の目的として、適切なものはどれか。
- 製品の企画から設計・製造・保守・廃棄までのライフサイクル全体で製品情報を一元管理し、商品力の向上とコスト低減を図る。
- 設計・開発段階で作成される図面や部品表などの製品データを一元管理する。
- 資材の調達から販売までの供給の流れを企業間で最適化する。
- 社内の経営資源を統合的に管理し、基幹業務を効率化する。
正解: ア PLM は Product Lifecycle Management で、範囲がライフサイクル全体に及ぶ点が決め手です。イ は範囲を設計・開発段階に限った PDM、ウ は SCM、エ は ERP の目的です。ア と イ はどちらも「一元管理」と書かれているため、範囲の記述で選び分けます。
Q12. ある部品の 1 日あたりの平均使用量が 30 個、発注してから納入されるまでの調達期間が 4 日、安全在庫が 60 個であるとき、定量発注方式における発注点は何個か。
- 60
- 120
- 150
- 180
正解: エ 発注点 = 調達期間中の需要 + 安全在庫 = 30 × 4 + 60 = 180 個です。ア は安全在庫だけ、イ は調達期間中の需要だけで安全在庫を足し忘れた値、ウ は調達期間を 3 日として計算した値です。
Q13. EDI で取り決める 4 つの規約のうち、交換するデータの形式・項目・コード体系を定めるものはどれか。
- 基本取引規約
- 業務運用規約
- 情報表現規約
- 情報伝達規約
正解: ウ 情報表現規約はメッセージの構文、すなわちデータの形式・項目・コード体系を定めます。ア は取引の法的効力や検収・支払条件などの基本契約、イ はシステムの運用時間や障害時の対応、エ は回線や通信手順(JCA 手順、JX 手順など)を定める規約です。
まとめ
| 論点 | 覚える中身 | 混同しやすい相手 |
|---|---|---|
| MRP | 総所要量 = 上位の正味所要量 × 員数/正味所要量 = 総所要量 − 在庫 | 各階層で在庫を引く。総と正味、所要量と発注数 |
| 発注点 | 調達期間中の需要 + 安全在庫 | 安全在庫の足し忘れ、経済的発注量 |
| 段取り時間 | n 個の仕事なら n − 1 回分の合計。全順序の比較で最小を出す | 各段で最小を選ぶ貪欲法の局所解 |
| 受託製造 | ファブレス=委託側・設備なし/ファウンドリ=半導体受託/EMS=電子機器受託 | EMS(Energy Management System)との同名異義 |
| 工場の 3 階層 | 計画層 ERP / 実行層 MES / 制御層 PLC・SCADA | MES を計画層や制御層に置く肢 |
| PDM/PLM | PDM=設計・開発段階/PLM=企画から廃棄までの全ライフサイクル | どちらも「一元管理」と書かれる |
| SCM | 調達から販売までを企業横断で統合管理し、コスト低減と納期短縮 | CRM・ERP・ナレッジマネジメント |
| アグリゲーション | 一般=複数事業者へのワンストップ/金融特化=アカウントアグリゲーション | エスクロー、e マーケットプレイス |
| EDI の 4 規約 | 情報伝達(通信手順)/情報表現(データ形式)/業務運用/基本取引 | 情報伝達規約と情報表現規約の入替え |
| エッジ | 端末近傍で処理し、低遅延と通信量削減を図る | クラウド集中処理、単なるデータ収集 |
| LPWA | 低消費電力・広域・多数接続(低速) | 5G(高速大容量)、BLE・NFC(近距離) |
| デジタルツイン | 現実のセンサーデータと連動する仮想モデルで検討し、現実へ戻す | VR、メタバース、事前作成のシミュレーション |
| 自動運転レベル | 3 は運転者が引き継ぐ/4 は限定領域内で不要/5 は限定なし | 3 と 4 の境目、4 と 5 の境目 |
この中分類は 1 回平均 2.8 問で、計算はすべて生産管理から出ます。MRP と段取り時間・発注点の 3 つの型を手が覚えるまで解き、残りは「その語が何を誰に提供するか」を 1 行で言える状態にしておけば、2〜3 問は固く取れます。次章では企業活動と経営管理を扱い、本章の生産管理と地続きの品質管理手法や意思決定の計算を整理します。