応用情報技術者試験 合格教科書|2026年度(令和8年度)対応
第 5 章|科目 A 例年 3〜4 問(直近 10 年 19 回で 76 問、1 回平均 4.0 問)/科目 B システムアーキテクチャの土台 科目 B: システムアーキテクチャ

システム構成要素 ― 構成方式・性能・信頼性

冗長構成と稼働率計算、RAID、仮想化・クラウドをまとめて押さえる。科目 B システムアーキテクチャの基礎

この章で学ぶこと

科目 A では直近 10 年 19 回で 76 問、1 回平均 4.0 問が出ています(直近 5 回は平均 3.4 問)。うち稼働率の計算が 10 問、MTBF・MTTR が 8 問で、この 2 つだけで中分類全体の約 4 分の 1 を占めます。計算 2 つを確実に取れば 3 問確保が見えてきます。科目 B は問 1(情報セキュリティ)が必須で、問 2〜11 の 10 問から 4 問を選ぶ形式です。システムアーキテクチャはその選択枠の 1 つで、直近 19 回はすべて問 4 に置かれています。本章はその土台になります。

システムの処理形態と構成方式

システム構成の話は「処理をどこに置くか(機能配分)」に尽きます。1 か所に集めるのが集中処理システム、複数のコンピュータに分けるのが分散処理システムです。どちらが優れているという話ではなく、コスト性能比・管理責任・障害の波及範囲のどれを優先するかで選びます。

観点集中処理システム分散処理システム
処理の置き場所1 台のホストに集約複数のコンピュータへ分割
管理責任1 か所に集約され明確。保守要員も集中化できる拠点ごとに分散し、情報資源を組織の実態に合わせやすい
障害の影響ホストが止まると全面停止(単一障害点)1 台が止まっても他が動く。設計しだいで縮退運転できる
コスト性能比大型機は割高になりやすい安価なサーバを並べるため有利。ただし TCO は運用費を含めて評価する
代表的な分け方―分散アーキテクチャ=水平機能分散(同格の機能を分ける)/水平負荷分散(同じ処理を複数台で分担)/垂直機能分散(階層で役割を分ける)

分散処理では、利用者や応用プログラムに「どこで処理されているか」を意識させないことが設計目標になります。資源の物理的な位置を知らなくても同じ手続きで使える性質をアクセス透過性と呼び、位置・複製・障害などの透過性とあわせて分散システムの品質を測ります。機能配分を決めるときは、応答速度(手元で処理するほど速い)、管理責任(サーバに集めるほど統制しやすい)、通信量(データの近くで処理するほど減る)の 3 つを天秤にかけます。

利用形態では、一定量をためて一括処理するバッチ処理、事象の発生に即応するリアルタイム処理、人の応答を待ちながら進める対話型処理を区別します。夜間の締め処理はバッチ、在庫引当や決済はリアルタイム、というように業務要件(許容できる遅れ)で決まります。

クライアントサーバシステムと Web システム

クライアントサーバシステムは、機能をプレゼンテーション層(画面表示・入力)・ファンクション層(業務処理)・データベースアクセス層(データ操作)に分けて配置します。クライアントに画面と業務処理を置き、サーバに DB だけを置くのが 2 層、業務処理を独立したサーバへ出すのが 3 層です。3 層にすると業務ロジックの改修がサーバ側だけで済み、クライアントの配布が要らなくなります。

用語内容試験で問われる点
2 層クライアントサーバクライアントに画面 + 業務処理、サーバに DBローカル処理の応答速度は速いが、クライアント側の改修配布が重い
3 層クライアントサーバプレゼンテーション/ファンクション/データベースアクセスを分離柔軟性が高く、サーバへの利用集中を段階的に分散できる
シンクライアントシステムクライアントに資源を持たせず、処理と保存をサーバ側で行う情報漏えい対策と運用管理コストの削減。VDI(Virtual Desktop Infrastructure)が代表実装
RPCRemote Procedure Call。他ノードの手続きをローカル呼出しのように実行分散処理の透過性を支える基盤技術
ストアドプロシージャ一連の SQL を DBMS 側に登録し、1 回の呼出しで実行ネットワーク上を往復する SQL 文と結果の量を減らせる
Web システムWeb ブラウザ ― Web サーバ ― AP サーバ ― DB サーバブラウザは DB に直接触れない。層をまたぐ通信は HTTP と SQL
ロードバランサ同じ役割のサーバへ要求を振り分ける装置水平負荷分散の要。セッション情報の共有可否が論点になる
CDNContent Delivery Network。配信拠点に静的コンテンツを複製オリジンサーバの負荷と応答時間を同時に下げる
ブラウザ 要求 ロード バランサ 振り分け Web・AP サーバ 2 台 サーバ A サーバ B SQL DB サーバ
図 5-1 Web システムの標準構成。ロードバランサから先は同じ役割のサーバが並ぶので、台数を増やせば処理能力が伸びます(スケールアウト)。DB は 1 か所に集まるため、ここがボトルネックと単一障害点の候補になります。

Web システムは層ごとに使うプロトコルが違います。ブラウザと Web サーバの間は HTTP/HTTPS、Web サーバと AP サーバの間はアプリケーション固有の呼出し、AP サーバと DB サーバの間は SQL です。HTTP は 1 回のやり取りが独立したステートレスなプロトコルなので、ログイン状態のような「続き」はセッション ID で結び付けます。ロードバランサで複数台へ振り分けるとき、このセッション情報をサーバ間で共有していないと、振り分け先が変わった瞬間にログイン状態が失われます。同じ利用者を同じサーバへ送り続けるか、セッションを外部の共有領域に置くかを設計で決めておく必要があります。

ハイパフォーマンスコンピューティングとグリッド

科学技術計算のように高精度な高速演算が要る分野では HPC(High Performance Computing)が使われます。実現手段は 2 つで、1 台のスーパーコンピュータに大規模並列のプロセッサやアレイプロセッサ(同じ演算を多数のデータへ一斉に適用する構成)を積む方法と、LAN で結んだ多数のコンピュータの CPU 資源を束ねて 1 台の高性能機のように見せるグリッドコンピューティングです。後者は遊休資源を使えるのが利点で、専用機を買わずに演算能力を得たいときに検討します。

冗長構成とクラスタ ― 止めないための並べ方

冗長構成は「同じ働きをする装置を 2 つ以上用意して、片方が壊れても続ける」ための構成です。試験では名前と挙動の対応がそのまま問われるので、2 台を同時に動かすのか(デュアル)、片方は待たせるのか(デュプレックス)という軸で整理します。

構成動き特徴
デュアルシステム2 系統が同じ処理を並列実行し、結果を照合(クロスチェック)する誤りも検出できる。装置費用は 2 倍。両系が動くのでアクティブ-アクティブに分類されるが、負荷は分け合わない
デュプレックスシステム主系(現用系)が処理し、従系(待機系)は待機するアクティブ-スタンバイ構成。待機のさせ方でホット/ウォーム/コールドに分かれる
ホットスタンバイ従系も電源を入れ、同じプログラムを起動して待つ切替が最も速い。生存確認(ハートビート)の途絶が切替の契機
ウォームスタンバイ従系は起動しているが、業務プログラムは立ち上げていない切替に数分。コストと切替時間の折衷
コールドスタンバイ従系は電源を落としてある(他業務に使うこともある)最も安価だが切替に最も時間がかかる
タンデム結合複数のプロセッサが処理を分担し、直列に引き渡す前段の結果を後段が受け取る流れ作業型
クラスタ複数のサーバを 1 つのシステムとして扱うHA クラスタ(可用性)と負荷分散クラスタ(性能)がある
ロードシェアリングシステム複数の系で負荷を分け合う負荷分散クラスタと同じ狙い。1 系の停止は性能低下で済む

マルチプロセッサシステムでは、主記憶を共有するかどうかで密結合(共有する)と疎結合(各プロセッサが自分の主記憶と OS を持つ)に分かれます。データベースを複数ノードで扱うときの同じ対比がシェアードエブリシング(ディスクも主記憶も共有)とシェアードナッシング(何も共有せずデータを分割保持)で、後者は競合制御が軽く台数を増やしやすい代わりに、データ配置の設計が難しくなります。役割を固定せず対等なノードが相互に資源を提供し合う形はピアツーピアです。

クライアント 主系(現用系) サービス提供中 従系(待機系) 待機して引き継ぐ 共有ディスク ① 要求 書込み ハートビート ② 主系が故障 途絶 ③ 切替後の要求 引継ぎ
図 5-2 ホットスタンバイのフェールオーバ。従系は共有ディスクを引き継ぐので、直前まで主系が書いたデータから再開できます。切替の契機は「障害通知」ではなく「ハートビートの途絶」である点が問われます。①〜③ は時系列の 3 段階で、静止状態では同時に見えますが、③ は主系が停止したあとの経路です。
出題実績 クラスタ構成は直近 10 年で 2 回(H28 秋 問 13、R6 秋 問 12)。自動で引き継ぐこと、セッション情報を共有していればトランザクションも継続できることが正解肢でした。ホットスタンバイの切替契機(生存確認の途絶)は R4 春 問 13 で問われています。

クラスタは目的で 2 種類に分かれます。HA クラスタ(高可用性クラスタ)は待機系を用意して可用性を上げる構成で、障害時に待機系へ切り替えることをフェールオーバ、復旧した元の系へ戻すことをフェールバックと呼びます。負荷分散クラスタは同じ役割のノードを並べて処理能力を上げる構成で、1 ノードが落ちても残りのノードで処理を続けられるため、結果としてフェールソフトになります。前者はアクティブ-スタンバイ、後者はアクティブ-アクティブの構成が基本です。

災害対策では拠点そのものを冗長化します。切替先に用意する予備拠点をバックアップサイトと呼び、待機のさせ方で 3 種類に分かれます。設備・機器・データを常時同期して即座に切り替えられるのがホットサイト、機器は用意してあるがデータ復元と起動が要るのがウォームサイト、場所と回線だけ確保しておくのがコールドサイトです。復旧目標時間(RTO)が短いほど上のものが要り、費用も上がります。

信頼性設計の考え方と RASIS

信頼性設計には出発点が 2 つあります。フォールトアボイダンスは「そもそも故障させない」方向で、高品質な部品を選び、予防保守をし、テストを厚くします。フォールトトレランスは「故障は起きる前提で、起きても機能を保つ」方向で、多重化や縮退運転で対応します。試験の定番問題はこの 2 語と、トレランス側の具体策 2 語(フェールセーフ・フェールソフト)、それに人の誤操作を無害化するフールプルーフを加えた 5 語の説明を入れ替えたものです。フールプルーフは装置の故障ではなくヒューマンエラーへの対策なので、アボイダンス側(そもそも起こさせない側)に置いて整理します。

信頼性設計 フォールトアボイダンス 故障を起こさせない フォールトトレランス 故障しても止めない 高品質部品 予防保守で防ぐ フールプルーフ 誤操作を防ぐ フェールセーフ 安全側に止める フェールソフト 縮退して続ける
図 5-3 信頼性設計の系統図。フールプルーフだけは装置の故障ではなく「人の誤操作」への対策なので、左(起こさせない)側に置くと覚えると混同しません。
用語意味例
フォールト障害の原因となる欠陥・不具合そのもの。これが表面化して機能を失った状態が故障設計の誤り、部品の劣化、設定ミス
フォールトアボイダンス構成要素の品質を高め、故障そのものを起こさせない高信頼部品の採用、予防保守、十分なテスト
フォールトトレランス故障が起きても機能を維持する重要部品の多重化、フォールトマスキング
クラスタリング複数のサーバを束ねて 1 つのシステムとして扱い、障害時に処理を引き継がせるフォールトトレランスの代表的な実装(前節の HA クラスタ)
フェールセーフ故障時に安全な側へ倒す信号機が故障したら赤を点灯させる
フェールソフト故障部分を切り離し、性能を落としてでも動かす(縮退運転)4 台構成のうち 1 台を切り離して 3 台で運転
フールプルーフ人が誤った操作をしても異常が起きないようにするふたを閉めないと回らない、削除前に確認を出す
フォールトマスキング故障の影響を内部で吸収し、外部に見せない多数決による誤り訂正、ECC メモリ
インタロック条件が整わない限り次の動作へ進ませない安全カバーが開いていると機械が起動しない
予備切替/並列運転予備機へ切り替える/複数系を同時に走らせる冗長化の実装方式デュプレックス/デュアル
無停止コンピュータ主要部品をすべて多重化し、保守も無停止で行える機器フォールトトレラントシステムの極致
UPSUninterruptible Power Supply。停電時に一定時間給電する安全に停止させる時間を稼ぐ(長時間運転用ではない)
信頼性ブロック図構成要素を直列・並列に並べて系全体の信頼性を表す図稼働率計算の前提になる(次節)

可用性を高める手段は、壊れにくくする(MTBF を伸ばす)、早く直す(MTTR を縮める)、冗長化して系として止めない、の 3 通りしかありません。施策の当否で迷ったら、それがこの 3 つのどれに効くのかを言い直すと整理できます。監視の強化は MTTR 側、部品の定期交換は MTBF 側、待機系の追加は冗長化です。

システム全体の評価軸としては RASIS を押さえます。頭文字は Reliability(信頼性、壊れにくさ)・Availability(可用性、使える割合)・Serviceability(保守性、直しやすさ)・Integrity(完全性、データが壊れないこと)・Security(安全性、不正から守られていること)です。MTBF は R、稼働率は A、MTTR は S に対応すると考えると、次節の指標が RASIS のどこを測っているかが見えます。

稼働率の計算 ― MTBF・MTTR と直列・並列

この節が中分類 4 の最重要ポイントです。直近 10 年で稼働率の計算が 10 問、MTBF・MTTR の関係が 8 問出ており、合わせて 18 問はこの中分類の 76 問の約 4 分の 1 に当たります。まず 2 つの平均値から確認します。

稼働 900 時間 稼働 900 時間 稼働 900 時間 故障発生 故障発生 修理 修理 MTBF 900 時間 MTTR 100 時間 稼働率 = MTBF ÷(MTBF + MTTR) = 900 ÷(900 + 100)= 0.9
図 5-4 MTBF と MTTR の時間軸モデル。横幅は実際の時間に比例させてあり、細い箱が修理(100 時間)、広い箱が稼働(900 時間)です。稼働率は「全体の時間のうち動いていた割合」なので、分母は MTBF + MTTR になります。分母を MTBF だけにする誤りが誤答肢の定番です。

計算の型: 稼働率(可用性)

稼働率 = MTBF ÷(MTBF + MTTR) / 不稼働率 = MTTR ÷(MTBF + MTTR)

  1. 「動いていた時間の平均」を MTBF、「止まっていた時間の平均」を MTTR として取り出す
  2. 観測期間と故障回数しか与えられないときは、MTBF = 総稼働時間 ÷ 故障回数、MTTR = 総修理時間 ÷ 故障回数で作る
  3. 稼働率 = 900 ÷(900 + 100)= 0.9

この式から 2 つの性質が出ます。MTBF と MTTR を同じ倍率で変えても稼働率は変わりません(1.5 倍なら 1,350 ÷ 1,500 = 0.9 のまま)。また稼働率が 0.5 になるのは MTBF = MTTR のときだけです。

観測データしか与えられないこともあります。「2,000 時間の運用で 4 回故障し、修理に合計 40 時間かかった」なら、動作していたのは 2,000 - 40 = 1,960 時間なので MTBF = 1,960 ÷ 4 = 490 時間、MTTR = 40 ÷ 4 = 10 時間、稼働率 = 490 ÷(490 + 10)= 0.98 です。MTBF は「動作していた時間」の平均なので、運用時間からまず修理時間を引く点に注意します。

MTTR を短くする施策と MTBF を長くする施策は別物です。障害箇所の特定を速くするエラーログの取得機能や、保守部品の現地常備、遠隔保守は MTTR 側の対策です。一方、高品質部品の採用・予防保守・冗長化は MTBF 側(あるいは系全体の稼働率)の対策で、MTTR は縮みません。装置の故障率は時間とともに変化し、初期故障期は下がり、偶発故障期はほぼ一定、摩耗故障期は上がるという U 字(バスタブ曲線)を描きます。

直列システムと並列システム

複数の装置からなる系の稼働率は、信頼性ブロック図が直列か並列かで式が変わります。直列は「全部動いていないと動かない」、並列は「どれか 1 つ動いていれば動く」です。

直列(両方が動いて初めて動く) 入力 装置 A 0.9 装置 B 0.8 出力 0.9 × 0.8 = 0.72 並列(どちらかが動けば動く) 入力 装置 A 0.9 装置 B 0.8 出力 1 - (1 - 0.9) × (1 - 0.8) = 0.98
図 5-5 直列と並列の合成。並列は「両方が同時に止まる確率」を 1 から引くのが本質で、装置を足すほど 1 に近づきます。直列は掛け算なので、装置を足すほど下がります。

計算の型: 直列・並列・直並列の稼働率

直列 = a × b / 並列 = 1 -(1 - a)×(1 - b)

  1. 信頼性ブロック図を描き、直列の塊と並列の塊に分ける
  2. 内側(小さい塊)から先に合成する。並列の塊はまず 1 つの装置に潰す
  3. 例: 稼働率 0.9 の装置 4 台。「2 台並列を 2 組つくり直列につなぐ」構成は、並列 1 組が 1 -(0.1)2 = 0.99 なので、全体は 0.99 × 0.99 = 0.9801
  4. 同じ 4 台でも「2 台直列を 2 組つくり並列につなぐ」構成は、直列 1 組が 0.81 なので、全体は 1 -(1 - 0.81)2 = 0.9639
  5. 答え: 台数が同じなら並列を内側に置いた(先に並列でまとめた)構成のほうが高い

グラフで問われることもあります。横軸に 1 台あたりの稼働率、縦軸に系全体の稼働率を取ると、直列は原点側にたわむ下に凸の曲線、並列は左上に張り出す上に凸の曲線になり、両者は 1 台あたりの稼働率が 0 と 1 のときだけ一致します。選択肢は交点の位置と曲がる向きで作り分けられるので、「並列は必ず 1 台の稼働率より高くなる」「直列は必ず 1 台の稼働率より低くなる」の 2 点で消去できます。

冗長構成の稼働率を実務的に見積もるときは、切替に要する時間も停止時間として数えます。ホットスタンバイでも切替が完了するまでサービスは止まっているので、フェールオーバ時間が長いほど稼働率は下がります。SLA(Service Level Agreement、サービス品質の合意)を稼働率で示す場合、月間の総時間に(1 - 稼働率)を掛けたものが許容停止時間になります(30 日 = 43,200 分なら、稼働率 99.9% で 43.2 分)。

出題実績 稼働率の計算は直近 10 年で 10 回(H29 春・H30 春・H30 秋・H31 春・R3 春・R4 春・R5 春・R5 秋・R6 秋・R7 春)。うち 9 問が計算問題です。MTBF・MTTR の関係は 8 回で、「両方を 1.5 倍しても稼働率は変わらない」(H28 秋・R4 秋)と「MTTR 短縮に役立つのはエラーログ取得機能」(H29 秋・R2 10 月・R4 春)の 2 論点で 5 問を占めます。

性能指標と性能計算

性能は「1 件がどれだけ速く終わるか」と「単位時間に何件さばけるか」の 2 面で測ります。前者が応答時間系、後者がスループットです。

指標・手法測るもの注意点
レスポンスタイム(応答時間)入力の終了から最初の応答が返り始めるまでオンライン処理の体感を表す
ターンアラウンドタイムジョブの投入から結果がすべて出終わるまでバッチ処理向け。出力時間を含むぶんレスポンスタイムより長い
スループット単位時間に処理できる仕事量(件/秒、トランザクション/秒)系全体では最も能力の低い箇所で頭打ちになる
ベンチマーク標準的なプログラムを実行して性能を比較するSPEC(Standard Performance Evaluation Corporation。SPECint は整数演算、SPECfp は浮動小数点演算)、TPC(Transaction Processing Performance Council。トランザクション処理)、ギブソンミックス(命令の出現頻度で重み付け)
システムモニタ/モニタリング稼働中の CPU 使用率・待ち行列長などを継続的に採取する実測値がキャパシティプランニングの入力になる

2 つの時間指標は測る区間が違います。利用者が入力を終えてから最初の応答が返り始めるまでがレスポンスタイム、ジョブを投入してからすべての結果を受け取り終えるまでがターンアラウンドタイムです。同じ処理でも、印刷や帳票出力の時間を含むターンアラウンドタイムのほうが必ず長くなります。オンライン処理の善し悪しを語るときはレスポンスタイム、バッチの締め処理が朝までに終わるかを語るときはターンアラウンドタイムを使います。

計算の型: 資源の使用率

使用率 = Σ(処理件数 × 1 件あたりの処理時間)÷ 観測時間

  1. 単位をそろえる(ミリ秒か秒か、1 分あたりか 1 秒あたりか)
  2. 例: 1 件の処理に CPU を 30 ミリ秒使うトランザクションが 1 分間に 1,200 件到着する
  3. CPU の使用時間 = 1,200 × 30 ミリ秒 = 36,000 ミリ秒 = 36 秒
  4. 使用率 = 36 秒 ÷ 60 秒 = 0.6(60%)

種類の違う処理が混在するときは、種類ごとに「件数 × 時間」を求めてから合計します。ピーク時を問われているのに平均件数で計算する誤りが典型です。

ボトルネックとパイプライン処理

複数の資源を順に通る処理では、系全体のスループットは最も能力の低い箇所(ボトルネック)で決まります。合計でも平均でもありません。

クライアント 要求 ネットワーク 120 件/秒 転送 サーバ 80 件/秒 ボトルネック 実効スループット 80 件/秒 実効スループット = min(120, 80) = 80 件/秒
図 5-6 直列につないだ資源の実効スループット。能力の大きい側を増強しても全体は変わらないので、改善はボトルネック側に打ちます。

いっぽう、読取り・演算・書込みのように別々の装置が担当する工程は、重ねて動かせます(パイプライン処理)。このとき 1 件の所要時間は工程時間の合計のままですが、単位時間あたりの処理件数は最も長い工程だけで決まります。

レコード 1 読取 CPU 書込 レコード 2 読取 CPU 書込 レコード 3 読取 CPU 書込 0 40 80 120 160 (ミリ秒) CPU が最長工程(40 ミリ秒)なので 1 分間に最大 1,500 件
図 5-7 パイプライン処理のタイムチャート。レコード 2 の読取りはレコード 1 の CPU 処理と並行して進みますが、CPU が空くまで次の演算は始められません。1 件の所要時間(75 ミリ秒)で 60 秒を割ると 800 件になり、これが典型的な誤答です。

計算の型: 待ち行列(M/M/1)の応答時間

利用率 ρ = 到着率 λ × 平均サービス時間 Ts / 平均待ち時間 Tw = ρ ÷(1 - ρ)× Ts / 平均応答時間 Tr = Ts ÷(1 - ρ)

  1. 1 件のサービス時間 Ts と 1 秒あたりの到着件数 λ を取り出す
  2. 例: Ts = 0.2 秒、λ = 3 件/秒 なので ρ = 3 × 0.2 = 0.6
  3. 待ち時間 Tw = 0.6 ÷ 0.4 × 0.2 = 0.3 秒
  4. 応答時間 Tr = 0.2 + 0.3 = 0.5 秒(= 0.2 ÷ 0.4)

ρ が 1 に近づくと待ち時間は急激に伸びます。使用率 80% を超えたあたりから応答時間が跳ね上がるのは、この式の分母が小さくなるためです。

計算の型: アムダールの法則(並列化の効果)

高速化率 = 1 ÷ {(1 - p)+ p ÷ n}(p: 並列化できる部分の割合、n: プロセッサ台数)

  1. 並列化できない部分の割合(1 - p)を先に押さえる。ここが上限を決める
  2. 例: p = 0.8、n = 4 なら 1 ÷(0.2 + 0.8 ÷ 4)= 1 ÷ 0.4 = 2.5 倍
  3. n を無限に増やしても高速化率は 1 ÷(1 - p)= 5 倍を超えません

キャパシティプランニングとシステムの経済性

キャパシティプランニングは、業務量の予測から必要な性能諸元(CPU・メモリ・ディスク・回線)を見積もり、稼働後も実測を続けて「将来にわたって応答時間の要求を満たし続ける」ための活動です。目的を「障害からの復旧」や「コスト削減」と取り違えた肢が誤答になります。手順は次の 4 段階で押さえます。

  1. 性能要件を数値で決める(応答時間 2 秒以内、ピーク 200 件/秒 など)
  2. 業務量を予測し、サイジングで必要な資源量を算出する
  3. 資源を用意する(プロビジョニング)。クラウドなら自動化できる
  4. モニタリングで使用率と応答時間を継続測定し、閾値を超える前に増強する(容量・能力管理)

増強の方向は 2 つあります。1 台の性能を上げるのがスケールアップ、台数を増やすのがスケールアウトです。逆方向はそれぞれスケールダウン、スケールインと呼び、需要が減った時間帯に台数を減らしてコストを最適化します。

スケールアップ 1 台 2 CPU 増強 1 台 8 CPU 1 台の性能を上げる(更新系に向く) スケールアウト 1 台 2 CPU 増設 サーバ 1 サーバ 2 サーバ 3 台数を増やす(参照系に向く)
図 5-8 スケールアップとスケールアウト。参照が中心の処理は複製したサーバへ分散できるのでスケールアウトが効きますが、更新が中心だと整合性を保つ調整が増えるためスケールアップのほうが素直です。
覚え方 「アップは上へ(1 台を強く)、アウトは外へ(台数を横に並べる)」。判断は処理の性質で、参照系が多ければアウト、更新系が多ければアップ。減らす方向は「アウトの逆=イン」「アップの逆=ダウン」で、台数を減らすのはスケールインです。

計算の型: 必要なサーバ台数のサイジング

必要台数 = 切上げ(ピーク時の必要処理能力 ÷ サーバ 1 台の処理能力)

  1. ピーク時の業務量を 1 秒あたりに直す(1 時間に 540,000 件なら 150 件/秒)
  2. 1 台の処理能力で割る(1 台 40 件/秒なら 150 ÷ 40 = 3.75)
  3. 端数は必ず切り上げるので 4 台
  4. 1 台故障しても能力を保つ要件があれば、さらに 1 台足して 5 台にする(N + 1 構成)

「平均ではなくピークで見積もる」「切り上げる」「冗長分を足す」の 3 点を落とすと、科目 B の台数計算でそのまま失点します。

資源を増やすときは、システムパラメータ(同時接続数、バッファ数、多重度など)の見直しも合わせて行います。ハードウェアを足しても上限値が古いままだと性能が出ないためです。

経済性の評価 ― TCO

導入判断は購入価格だけでは決められません。初期コスト(イニシャルコスト: ハードウェア・ソフトウェア購入費、開発費、初期設定費)と運用コスト(ランニングコスト: 保守料、電気代、回線費、運用要員の人件費、教育費)を合計したTCO(Total Cost of Ownership、総所有費用)で比較します。TCO には、機器費のように対象が明確な直接コストだけでなく、利用者が自分で調べて解決する時間などの間接コストも含めて考えます。集中処理から分散処理へ移すと初期コストは下がっても、拠点ごとの運用要員が増えて TCO が上がることがある、というのが典型的な論点です。

仮想化とクラウド

1 台の物理サーバの上に複数の実行環境を作る技術が仮想化です。台数を減らして機器と電力を節約するサーバコンソリデーション(サーバ統合)が主な動機で、実装方式は 3 つあります。直近 10 年ではコンテナ型が 3 回、ライブマイグレーションが 2 回、IaC が 2 回出ており、この分野の出題は概念から運用寄りへ移っています。

ホスト型 アプリ ゲスト OS 仮想化ソフト ホスト OS ハードウェア ハイパバイザ型 アプリ ゲスト OS ハイパバイザ ハードウェア コンテナ型 アプリ コンテナエンジン ホスト OS ハードウェア
図 5-9 仮想化 3 方式の層構造。コンテナ型だけがゲスト OS の段を持ちません。ゲスト OS を積まないぶん起動が速く、イメージも小さくなります。ホスト型は仮想化ソフトとホスト OS の 2 段を経由するため、3 方式でオーバヘッドが最も大きくなります。
方式・用語仕組み特徴
ホスト型ホスト OS 上のアプリとして仮想化ソフトを動かし、その上でゲスト OS を動かす導入が容易だがホスト OS を経由するぶん遅い
ハイパバイザ型ハードウェア直上のハイパバイザがゲスト OS を直接動かすオーバヘッドが小さく、サーバ仮想化の主流
コンテナ型ホスト OS のカーネルを共有し、アプリとライブラリだけをまとめて隔離実行するゲスト OS を持たないので軽量・高速。代表的な OSS は Docker
VM(仮想マシン)仮想化されたハードウェアとして見える実行環境ゲスト OS ごとに 1 つの VM
VDIデスクトップ環境をサーバ上の VM に集約し、手元は画面転送だけシンクライアントの実装方式。端末にデータを残さない
ライブマイグレーション稼働中の VM をメモリ内容ごと別の物理サーバへ移すサービスを止めずに移せる。保守や負荷平準化に使う
IaCInfrastructure as Code。サーバやネットワークの構成をコードで記述し、自動で適用する同じ構成を何度でも再現できる。手順書や CI/CD 自体とは別物
ここがひっかけ ライブマイグレーションの説明として「稼働中のデータを別の装置に複製する」を選ばせる肢が出ます。それはレプリケーションです。ライブマイグレーションは実行環境そのものを止めずに移動させる技術で、移動後に元の物理サーバでは動いていません。

クラウドコンピューティング

クラウドは「どこまでを事業者が持つか」で 4 段階に整理します。境目は利用者が管理する範囲で、ここが責任分界点になります。

モデル事業者が用意する範囲利用者が管理する範囲
オンプレミスなしハードウェアからアプリ・データまですべて
IaaSハードウェア・仮想化基盤・ネットワークゲスト OS 以上(OS のパッチ適用・セキュリティ設定、ミドルウェア、アプリ、データ)
PaaSOS・ミドルウェア・実行環境までアプリケーションとデータ
SaaSアプリケーションまでデータと利用者設定のみ
FaaS/サーバレス実行基盤を含め、呼び出されたときだけ関数を動かす関数のコードのみ。実行時間の上限など制約がある

オンプレミスとクラウドの違いは、機能そのものよりも費用の出方と調達の速さに表れます。オンプレミスはピークに合わせた設備を先に購入するため初期コストが大きく、遊休が出ます。クラウドは使った分を払う形なので初期コストが小さく、運用コストが業務量に連動します。逆に、ほぼ一定の負荷を長期間動かし続ける用途ではオンプレミスのほうが TCO で有利になることもあります。「クラウドは常に安い」ではなく、負荷の変動幅と利用期間で判断します。

配置の形では、事業者の共用基盤を使うパブリッククラウド、自社専用に構築するプライベートクラウド、両者や社内システムを組み合わせるハイブリッドクラウド、複数事業者のサービスを併用するマルチクラウドがあります。マルチクラウドは特定事業者への依存(ロックイン)を避け、障害の影響範囲を分ける狙いで採られます。

処理をどこで行うかという観点では、端末に近い場所で先に処理するエッジコンピューティング、端末とクラウドの中間層に処理を置くフォグコンピューティングがあります。カメラ映像をその場で圧縮・検知してからクラウドへ送れば、回線帯域とクラウド側の処理量を同時に減らせます。IoT や動画配信の設計問題では、この「どこで削るか」が定番の論点です。

出題実績 クラウドのサービスモデルは H28 春 問 42・H30 秋 問 38 で、いずれも「IaaS でだけ利用者が行える作業」としてゲスト OS のセキュリティ設定やパッチ管理が正解でした。IaC は R5 秋 問 14・R7 秋 問 12 と直近で 2 回出ています。

ストレージ・RAID・バックアップ

ストレージはまず「どうつなぐか」で分類します。サーバに直結するのが DAS(Direct Attached Storage)、LAN 上でファイル共有として見せるのが NAS(Network Attached Storage)、ストレージ専用のネットワークを別に敷いてブロック単位で見せるのが SAN(Storage Area Network)です。SAN は光ファイバのファイバチャネルを使う FC-SAN と、既存の IP ネットワーク上で iSCSI などを使う IP-SAN に分かれます。

用語内容向く用途
DASサーバに直結。そのサーバからしか使えない小規模、単独サーバ
NASLAN 経由でファイル単位に共有する専用機部門のファイル共有
SAN専用ネットワークでブロック単位に接続。複数サーバから共有できるDB や仮想化基盤の共有ディスク
ブロックストレージ固定長ブロックの集合として提供。OS がファイルシステムを載せるOS 領域、DB
オブジェクトストレージデータとメタデータをひとまとまりの「オブジェクト」とし、固有の識別子で読み書きする画像・ログなど非構造データの大量保管。容量の拡張性が高い
ストレージ仮想化複数の物理ストレージを 1 つの論理プールに束ねて割り当てる機器をまたいだ容量の融通
シンプロビジョニング大きな容量を割り当てたように見せ、実際に書かれたぶんだけ物理領域を消費させる初期投資の抑制。実容量の枯渇監視が要る

選び方の目安は、複数のサーバがファイル単位で共有したいなら NAS、データベースや仮想化基盤のように OS がブロックデバイスとして扱いたいなら SAN です。SAN は業務 LAN と経路を分けられるので、バックアップの大量転送が業務通信を圧迫しません。ただし FC-SAN は専用の機器と配線が要るため、既存の IP ネットワークを流用できる IP-SAN と費用を比較して決めます。

出題実績 ストレージは 10 年で 5 問ですが、うち 4 問が直近 3 年に集中しています。オブジェクトストレージは R6 春 問 13・R6 秋 問 13 と 2 回連続で出題され、「非構造データ向けで拡張性が高い」「固有識別子でデータとメタデータにアクセスする」が正解肢でした。

RAID

RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)は、複数のディスクをまとめて 1 台に見せ、速度か信頼性(あるいは両方)を上げる技術です。データを分割して並列に書くストライピング、同じ内容を 2 台に書くミラーリング、誤り検出用のパリティという 3 つの部品の組合せで理解します。ストライピングで 1 台に書く単位をチャンクサイズと呼びます。

RAID 0 ストライピング Disk 1 Disk 2 A1 A2 A3 A4 耐障害性なし 実効容量 100% RAID 1 ミラーリング Disk 1 Disk 2 A1 A1 A2 A2 1 台まで故障可 実効容量 50% RAID 5 分散パリティ Disk 1 Disk 2 Disk 3 A1 A2 P1 A3 P2 A4 P3 A5 A6 1 台まで故障可 実効容量 (n-1)/n
図 5-10 RAID 0・1・5 の書き込み。RAID 5 のパリティ(P1〜P3)は 1 台に固定せず順に別のディスクへ置くので、書込みがどこか 1 台に集中しません。任意の 1 台が失われても、残りの内容から復元できます。
レベル仕組み最小台数実効容量(1 台 c、n 台)耐えられる故障
RAID 0ストライピングのみ2n × cなし(1 台失うと全滅)
RAID 1ミラーリング2c(2 台 1 組が基本。ミラー対を並べる実装なら n ÷ 2 × c)ミラー 1 組につき 1 台
RAID 2ビット単位ストライピング + ハミング符号―符号用ディスクを除いた分1 台(台数はデータ幅と符号長で決まる。実用例はほぼない)
RAID 3バイト単位ストライピング + 専用パリティディスク3(n - 1) × c1 台
RAID 4ブロック単位ストライピング + 専用パリティディスク3(n - 1) × c1 台(パリティディスクに書込みが集中)
RAID 5ブロック単位ストライピング + パリティを分散3(n - 1) × c1 台
RAID 62 種類のパリティを分散4(n - 2) × c2 台
RAID 10(1 + 0)ミラー対をストライピング4n ÷ 2 × c各ミラー対で 1 台(同じ対の 2 台が壊れると復元不可)

計算の型: RAID の実効容量

RAID 5 の実効容量 =(n - 1)× 1 台の容量 / RAID 6 =(n - 2)× 1 台の容量 / RAID 10 = n ÷ 2 × 1 台の容量(RAID 1 は 2 台 1 組なら 1 台ぶん)

  1. 台数 n と 1 台の容量を確認する
  2. 例: 2 T バイトのディスク 6 台を RAID 5 で構成する
  3. 実効容量 =(6 - 1)× 2 = 10 T バイト。パリティ 1 台ぶんが冗長分として消える
  4. 同じ 6 台を RAID 6 にすると(6 - 2)× 2 = 8 T バイト、RAID 10 なら 6 ÷ 2 × 2 = 6 T バイト

バックアップ方式

バックアップは「取る時間」と「戻す手間」がトレードオフです。3 方式の違いはどこからの変更分を取るかだけで決まります。

方式取得する範囲取得時間復旧の手順
フルバックアップ全データ最も長い最新のフルを 1 本戻すだけ
差分バックアップ直前のフル以降に変更されたデータフルからの日数とともに伸びるフル + 最新の差分の 2 本
増分バックアップ直前のバックアップ(種類を問わない)以降に変更されたデータ最も短いフル + その後のすべての増分を順に適用

日曜にフル、月曜から土曜まで毎日取る運用なら、木曜に障害が起きたときの復旧は、差分方式なら「日曜のフル + 水曜の差分」の 2 本、増分方式なら「日曜のフル + 月・火・水の増分」の 4 本になります。夜間のバックアップ時間を短くしたいなら増分、復旧を速く確実にしたいなら差分、というのが判断軸です。

計算の型: バックアップの所要時間

所要時間 = 対象データ量 ÷ 書込み速度 / 差分の対象量 = 1 日の変更量 × フルからの経過日数

  1. 単位をそろえる(G バイトと M バイト/秒が混在するなら、対象量を M バイトに直す)
  2. 例: 対象 400 G バイト、1 日の変更量 20 G バイト(一定)、書込み速度 100 M バイト/秒
  3. フルバックアップ = 400,000 ÷ 100 = 4,000 秒(約 67 分)
  4. 増分は前日からの 20 G バイトだけなので、毎日 20,000 ÷ 100 = 200 秒
  5. 差分は日曜からの日数に比例し、水曜なら 3 日分の 60 G バイトで 60,000 ÷ 100 = 600 秒

夜間の作業時間枠に収まるかは、この形で確認します。復旧側の所要時間を問われたら、戻す本数(差分ならフル + 差分の 2 本、増分ならフル + 増分すべて)ぶんを合計します。

関連する運用として、いつの時点に戻せるかを決める世代管理(何世代分を保存するか)、ある瞬間の状態を短時間で記録するスナップショット、別のストレージや遠隔地へ継続的に複製するレプリケーションがあります。スナップショットとレプリケーションは復旧目標時点(RPO)を短くしますが、論理的な誤削除は複製先にも伝わるため、世代を持つバックアップの代わりにはなりません。

科目 B システムアーキテクチャへの橋渡し

科目 B の問 4 は、構成図と条件表を読んで四則演算と短い記述で設計判断を答える形式です。直近 19 回のうち 14 回が計算を含み、1 問あたりの小設問は平均 6.5 個。解答欄の字数は 15〜40 字が中心で、50 字以上は出ていません。題材は「中堅企業の情報システム部門が新サービスや移行を検討する」場面が定番で、直近 11 回はクラウド移行・利用形態の選定と、IoT・エッジ・動画の 2 ジャンルで 8 割強を占めます。

本章の知識がそのまま設問になる論点は次のとおりです。解き方の手順は第 24 章で扱います。

科目 B での問われ方(10 年での問数)本章のどこを使うか失点しやすい点
データ量・帯域・所要時間の計算(7 問で最多)使用率とスループットの型単位換算(ビットとバイト、秒と月)と、足すべき系統の取りこぼし
ボトルネックの特定と性能改善(7 問)実効スループットとパイプライン「増強」以外の手段(配置変更・キャッシュ・不要データの削減)が出てこない
スケールアウト/アップと台数試算(6 問)キャパシティプランニングとサイジング切り上げ忘れ、冗長分の加算漏れ
稼働率と SLA の計算(4 問)直列・並列の稼働率、許容停止時間SLA の水準が要求を満たすかの突き合わせを飛ばす
冗長化・単一障害点(4 問)冗長構成とクラスタ冗長化されていない要素を構成図から見つけられない
クラウド形態と責任分界(3 問)IaaS/PaaS/SaaS/FaaSSaaS を PaaS・IaaS と取り違える
科目 B での得点の作り方 過去の採点講評で正答率が低いと指摘された設問を並べると、失点は用語知識ではなく「本文の条件との突き合わせ」と「一歩踏み込んだ説明」に集中しています。計算は式・単位・検算の 3 点セットで書き、記述には本文の固有名詞か数値を必ず 1 つ入れる。この 2 つを守るだけで、正答率が低い設問の多くは避けられます。

ひっかけポイント

ここがひっかけ 1 稼働率の問題文は「一方だけが稼働している確率」「少なくとも一方が稼働している確率」「両方が稼働している確率」を書き分けてきます。並列の式 1 -(1 - a)(1 - b)が使えるのは少なくとも一方のときだけです。「一方だけ」は両方稼働を含まないので a(1 - b)+(1 - a)b で求めます。稼働率 0.8 と 0.6 の 2 台なら、一方だけは 0.8 ×(1 - 0.6)+(1 - 0.8)× 0.6 = 0.44、少なくとも一方は 1 -(1 - 0.8)×(1 - 0.6)= 0.92 です。求めるものに下線を引いてから式を立てる習慣をつけてください。
ここがひっかけ 2 「MTBF も MTTR も改善したのだから稼働率は上がる」は誤りです。同じ倍率で変わったなら稼働率は不変で、変わるのは MTBF と MTTR の比が変わったときだけです。直近 10 年でこの論点だけで 2 回(H28 秋・R4 秋)出ています。
ここがひっかけ 3 MTTR を短くする施策を選ばせる問題に、予防保守・部品の高品質化・冗長化といったMTBF 側の施策を並べてきます。MTTR は「壊れてから直るまで」なので、効くのは障害箇所の特定を速くするエラーログ取得機能、保守部品の常備、遠隔保守などです。同じ論点が 3 回再出題されています。
ここがひっかけ 4 信頼性設計の 5 用語は説明文を入れ替えた肢で構成されます。「品質を高めて故障を防ぐ=フォールトアボイダンス」「多重化して故障しても動かす=フォールトトレランス」「安全側に倒す=フェールセーフ」「性能を落として続ける=フェールソフト」「人の誤操作を防ぐ=フールプルーフ」。とくにフェールセーフとフェールソフトは、止めるのか動かし続けるのかで見分けます。
ここがひっかけ 5 性能の合成は足し算でも平均でもありません。直列につながった資源のスループットは最小能力、重ねて動くパイプラインの処理件数は最長工程で決まります。「合計時間で 1 分を割る」「2 つの能力を平均する」という誤答肢が、この 2 論点だけで計 5 回作られています。

理解度チェック(科目 A 形式)

Q1. 稼働率が 0.9 の装置 4 台を使い、2 台ずつを並列にした組を 2 組つくって、その 2 組を直列に接続した。システム全体の稼働率はおよそいくらか。
  1. 0.6561
  2. 0.9639
  3. 0.9801
  4. 0.9999

正解: ウ 並列 1 組の稼働率は 1 -(1 - 0.9)2 = 0.99 で、それを直列につなぐので 0.99 × 0.99 = 0.9801 です。ア は 4 台すべてを直列にした 0.94、イ は 2 台直列の組を 2 つ並列にした構成の値、エ は 4 台すべてを並列にした値です。

Q2. ある装置の MTBF と MTTR がともに現在の 1.5 倍になったとき、この装置の稼働率はどうなるか。
  1. 1.5 倍になる
  2. 1.5 の 2 乗分の 1 になる
  3. 1.5 分の 1 になる
  4. 変わらない

正解: エ 稼働率 = MTBF ÷(MTBF + MTTR)の分子と分母がともに 1.5 倍になるため約分され、値は変わりません。ア は MTBF だけが伸びると考えた誤り、ウ は MTTR だけが伸びると考えた誤りです。イ は式から導けない値です。

Q3. あるサーバに、1 件あたり CPU 時間 20 ミリ秒を要する処理 A が毎秒 10 件、40 ミリ秒を要する処理 B が毎秒 5 件到着する。このときの CPU 使用率は何 % か。
  1. 20
  2. 40
  3. 45
  4. 60

正解: イ 1 秒あたりの CPU 使用時間は 10 × 20 + 5 × 40 = 400 ミリ秒なので、400 ÷ 1,000 = 40% です。ア は処理 A だけを数えた値、ウ は合計 15 件に平均 30 ミリ秒を掛けた誤り、エ は 20 + 40 = 60 をそのまま率とみなした誤りです。

Q4. 部品の選定と設計の作り込みによって、そもそも故障が発生しないようにする信頼性設計の考え方はどれか。
  1. フォールトアボイダンス
  2. フェールセーフ
  3. フェールソフト
  4. フールプルーフ

正解: ア 故障の発生自体を避ける考え方がフォールトアボイダンスです。イ は故障が起きたときに安全な側へ倒す設計、ウ は故障部分を切り離して縮退運転する設計、エ は人の誤操作が事故につながらないようにする設計で、いずれも「構成要素の品質を高めて故障そのものを減らす」ものではありません。

Q5. コンテナ型仮想化の説明として適切なものはどれか。
  1. ハードウェア上で直接動作する制御プログラムが、複数のゲスト OS を並行して動かす。
  2. ホスト OS のカーネルを共有し、アプリケーションと実行に必要なライブラリだけをまとめて隔離実行する。
  3. ホスト OS 上のアプリケーションとして仮想化ソフトを動かし、その上でゲスト OS を動かす。
  4. 稼働中の仮想マシンを停止させずに別の物理サーバへ移動させる。

正解: イ コンテナ型はゲスト OS を持たず、ホスト OS のカーネルを共有するため軽量で起動が速いのが特徴です。ア はハイパバイザ型、ウ はホスト型、エ はライブマイグレーションの説明です。

Q6. スケールアウトによる性能向上が特に有効なシステムはどれか。
  1. 1 件あたりの処理時間が長く、分割できない一括更新が中心のバッチシステム
  2. 単一のトランザクション内で大量の表を結合する分析処理が中心のシステム
  3. 排他制御を伴う更新処理が大半を占めるシステム
  4. 参照処理が大半を占め、同じ処理を複数のサーバで分担できるシステム

正解: エ スケールアウトは同じ役割のサーバを並べて負荷を分ける方式なので、独立に処理できる参照系が多いほど効きます。ア〜ウ はいずれも処理を分割できない、または更新の同期負担が増えるため、1 台の性能を上げるスケールアップのほうが適します。

Q7. クライアントとサーバを結ぶ通信経路は毎秒 200 件の要求を運べ、サーバは毎秒 150 件の要求を処理できる。このシステムの実効スループットは毎秒何件か。
  1. 50
  2. 150
  3. 175
  4. 350

正解: イ 直列につながった資源では、能力の小さいほう(ボトルネック)が全体のスループットを決めるので 150 件です。ア は差、ウ は 2 つの能力の平均、エ は和で、いずれも実効スループットにはなりません。

Q8. IaC(Infrastructure as Code)の説明はどれか。
  1. ソースコードが変更されるたびに、自動でビルドとテストを実行する。
  2. 物理サーバ上の仮想マシンを、負荷に応じて別の物理サーバへ移動させる。
  3. サーバやネットワークの構成をコードとして記述し、その記述から環境を自動で構築・変更する。
  4. 運用手順を文書化し、作業者が手順書に従って設定作業を行う。

正解: ウ IaC は構成そのものを記述として残し、同じ環境を何度でも再現できるようにする考え方です。ア は継続的インテグレーション、イ はライブマイグレーション、エ は従来の手作業運用で、いずれもコードによる構成管理ではありません。

Q9. キャパシティプランニングの目的として適切なものはどれか。
  1. 業務量を予測して必要な資源量を見積もり、稼働後も実測を続けて応答時間の要求を満たし続ける。
  2. 障害が発生したときに、あらかじめ定めた手順で速やかに復旧できる体制を整えておく。
  3. システムの利用者を認証し、与えられた権限を超える操作が行われないようにする。
  4. 開発に必要な工数を見積もり、要員計画と作業スケジュールを作成して進捗を管理する。

正解: ア キャパシティプランニングは性能要件を将来にわたって満たし続けるための継続的な活動です。イ は障害管理・コンティンジェンシー計画、ウ はアクセス管理、エ はプロジェクト計画で、いずれも性能・容量の管理ではありません。

Q10. オブジェクトストレージの特徴はどれか。
  1. OS からは固定長ブロックの集合として見え、ファイルシステムを載せて使う。
  2. LAN 経由のファイル共有プロトコルを用い、ディレクトリ階層でファイルを管理する。
  3. 割り当てた容量のうち、実際に書き込まれた分だけ物理領域を消費させる。
  4. データとメタデータをひとまとまりとして扱い、階層構造ではなく固有の識別子で参照する。

正解: エ オブジェクトストレージは識別子でアクセスする方式で、非構造データの大量保管と容量の拡張性に優れます。ア はブロックストレージ、イ は NAS(ファイルストレージ)、ウ はシンプロビジョニングの説明です。

Q11. HA クラスタ構成の説明として適切なものはどれか。
  1. 現用系の障害を運用者が検知し、手動で待機系へ切り替える。
  2. 現用系と待機系が同じ処理を実行し、結果を照合して誤りを検出する。
  3. 現用系の生存確認が途絶えると、待機系が自動的に処理を引き継ぐ。
  4. 複数のサーバがデータベースを分割して保持し、問合せを分担する。

正解: ウ HA クラスタはハートビートの途絶を契機に自動でフェールオーバする構成で、セッション情報を共有していれば処理中のトランザクションも継続できます。ア は手動切替で自動引継ぎではなく、イ はデュアルシステムの照合、エ はシェアードナッシング型の分散データベースの説明です。

Q12. スケールインの説明はどれか。
  1. 負荷の減少に合わせてサーバの台数を減らし、費用を最適化する。
  2. サーバ 1 台の CPU やメモリを削減して費用を抑える。
  3. サーバ 1 台の CPU やメモリを増設して処理能力を高める。
  4. 同じ構成のサーバを追加して処理能力を高める。

正解: ア 「イン/アウト」は台数、「アップ/ダウン」は 1 台の性能を指します。イ はスケールダウン、ウ はスケールアップ、エ はスケールアウトの説明で、スケールインと混同されやすいのはイ です。

Q13. 稼働中のシステムについて、MTTR の短縮に直接つながる施策はどれか。
  1. 故障率の低い高信頼部品へ計画的に交換する。
  2. 装置を二重化し、一方が停止しても処理を続けられるようにする。
  3. 障害箇所をすぐ特定できるよう、エラーログの取得機能を組み込む。
  4. 定期的な予防保守を実施し、劣化した部品を事前に交換する。

正解: ウ MTTR は「故障してから復旧するまで」の平均なので、原因の切分けを速める仕組みが直接効きます。ア と エ は故障の発生自体を減らす MTBF 側の対策、イ は系として止めないための冗長化で、いずれも 1 回あたりの修理時間そのものは短くなりません。

Q14. 読取り 15 ミリ秒、演算 25 ミリ秒、書込み 40 ミリ秒の 3 工程からなる処理を、それぞれ別の装置が担当して重ねて実行する。1 分間に処理できる最大件数はおよそ何件か。
  1. 750
  2. 1,500
  3. 2,400
  4. 4,000

正解: イ パイプラインでは最長工程(書込み 40 ミリ秒)ごとに 1 件が完了するので、60,000 ÷ 40 = 1,500 件です。ア は 3 工程の合計 80 ミリ秒で割った値、ウ は演算 25 ミリ秒、エ は読取り 15 ミリ秒で割った値で、いずれも律速工程を取り違えています。

まとめ

論点覚える式・要件誤りやすい点
稼働率MTBF ÷(MTBF + MTTR)分母を MTBF だけにしない。両方を同率で変えても不変
直列・並列直列 = a × b、並列 = 1 -(1 - a)(1 - b)「一方だけ」は並列の式では出せない。内側から合成する
MTTR 短縮エラーログ取得、保守部品常備、遠隔保守予防保守・冗長化は MTBF 側
使用率Σ(件数 × 1 件の処理時間)÷ 観測時間単位換算とピーク/平均の取り違え
実効スループット直列資源の最小能力和・平均・最大にしない
パイプライン単位時間の件数は最長工程で決まる工程時間の合計で割らない
M/M/1Tr = Ts ÷(1 - ρ)、ρ = λ × Ts利用率が 1 に近づくと待ちが急増する
信頼性設計アボイダンス/トレランス/セーフ/ソフト/フールプルーフ止めるのか動かし続けるのかで見分ける
冗長構成デュアル=同時実行・照合、デュプレックス=主系と待機系ホット/ウォーム/コールドは待機のさせ方の違い
スケールアウト/イン=台数、アップ/ダウン=1 台の性能参照系はアウト、更新系はアップ
仮想化コンテナ型はゲスト OS を持たないライブマイグレーションはレプリケーションではない
クラウドIaaS はゲスト OS 以上が利用者責任PaaS・SaaS では OS のパッチ管理はできない
RAID5 は(n - 1)、6 は(n - 2)、10 は n ÷ 2(RAID 1 は 2 台で 1 台ぶん)耐えられる故障台数と実効容量をセットで覚える
バックアップ差分=フル + 最新差分、増分=フル + 全増分取得時間が短い増分ほど復旧に手数がかかる

この章の計算は、稼働率・使用率・スループットの 3 本柱を型どおりに解けるかで得点が決まります。式を覚えるだけでなく、問題文の「どの範囲を聞かれているか」を先に確定させる癖をつけてください。次章はソフトウェアです。ここで扱った資源の割り当てを、OS がタスクとメモリのレベルでどう管理しているかを見ていきます。