この教科書について
読者として、SQL の基本(SELECT / JOIN)とコマンドライン操作ができるエンジニアを想定しています。データウェアハウスの実務経験は不要です。各章は「概念解説 → 図解 → ハンズオン → つまずきポイント → 理解度チェック」で構成され、資格試験対策ではなく実務で BigQuery を使いこなすことを目標にしています。第 I 部(第 1〜4 章)だけは順番に進めることを推奨します。
必要なもの: Google アカウントとブラウザ。多くの章は BigQuery サンドボックス(クレジットカード登録不要・無料)だけで完走できます。課金を有効にしたプロジェクトが必要な章は、章冒頭にその旨と費用の目安を明記しています。
情報の鮮度: 本書は 2026-08 時点の公式ドキュメントに準拠しています。料金・無料枠・機能の GA / プレビュー状態は変わるため、実運用の前に各章末の参考リンクから最新のドキュメントを確認してください。
目次
第 I 部 基礎編
第 1 章
BigQuery の全体像とセットアップ
ストレージ/コンピュート分離とスロットの仕組みを理解し、サンドボックスと bq CLI で最初のクエリを打ち、dry run を習慣にする。
第 2 章
データセット・テーブル・スキーマ
プロジェクト→データセット→テーブルの階層とロケーション制約を理解し、正しいデータ型でスキーマを設計・変更するルールまで押さえます。
第 3 章
データ取り込み — バッチロードと転送
bq load と LOAD DATA 文でファイルをロードし、スキーマ自動検出・書き込みモード・パーティションロードを使い分けて Cloud Storage へエクスポートまで往復する。
第 4 章
GoogleSQL 基礎 — 分析クエリの型
SELECT の基本形から JOIN・WITH 句・ウィンドウ関数・QUALIFY、そしてパイプ構文まで、一般公開データセットだけで分析 SQL を一通り身につけます。
第 II 部 テーブル設計とコスト
第 5 章
ネスト・配列・JSON — BigQuery 流のデータモデリング
BigQuery 流の非正規化スキーマ設計を学ぶ。STRUCT/ARRAY の宣言、UNNEST による展開の仕組み、JSON 型との使い分けまで手を動かして理解する。
第 6 章
パーティショニングとクラスタリング
日次パーティションとクラスタリングでフルスキャンを避け、公開データの CTAS と dry run でスキャン量の削減を実測します。
第 7 章
料金モデルとコスト管理
オンデマンドと BigQuery editions の選び方、論理/物理ストレージ課金の違い、dry run・クォータ・予算アラートで課金事故を防ぐ実践知識。
第 8 章
クエリ最適化とパフォーマンス
ステージ・スロット・シャッフルの仕組みを理解し、実行グラフからボトルネックとスキューを見抜けるようになる。
第 III 部 データ管理とパイプライン
第 9 章
DML・タイムトラベル・スナップショット
DML の課金と同時実行制限、MERGE による upsert、タイムトラベルと fail-safe による復旧、スナップショットとクローンの違いを手を動かして理解する。
第 10 章
外部データとレイクハウス — BigLake・Iceberg・フェデレーション
BigLake テーブルのアクセス委任、Iceberg 外部/マネージドテーブルの違い、フェデレーテッドクエリと Omni の位置づけを整理します。
第 11 章
スクリプト・UDF・ELT パイプライン
DECLARE/IF/LOOP で手続き型ロジックを組み込み、UDF とリモート関数で部品化。raw→staging→mart をスケジュールクエリと Dataform で自動化する。
第 12 章
ストリーミングとリアルタイム分析
Storage Write API・Pub/Sub直結・Dataflow・Datastreamを比較し、Pub/Sub直結でBigQueryへ数秒でデータを届ける。
第 IV 部 機械学習と AI
第 13 章
BigQuery ML — SQL だけで機械学習
CREATE MODEL → ML.EVALUATE → ML.PREDICT/ML.FORECAST の流れと、モデルタイプごとに 50 倍もの開きがある課金の実態を押さえます。
第 14 章
生成 AI とベクトル検索 — Gemini × BigQuery
AI.GENERATE 系関数によるテキスト生成・構造化抽出、AI.GENERATE_EMBEDDING と VECTOR_SEARCH による意味検索、Gemini in BigQuery のアシスト機能までを配管から理解します。
第 15 章
高度な分析 — 地理空間・近似集計・ノートブック
GEOGRAPHY型とST_関数で最寄り検索とエリア集計を体験し、HLLスケッチの事前集計パターンとBigQuery DataFrames・ノートブックの位置づけを押さえます。
第 V 部 ガバナンス・運用・総合演習
第 16 章
セキュリティとガバナンス
データ権限とジョブ実行権限の分離、承認済みビュー、行/列レベルセキュリティ、暗号化・監査ログ・データ共有の全体像を整理します。
第 17 章
運用と監視 — INFORMATION_SCHEMA を武器にする
ジョブのライフサイクルと INFORMATION_SCHEMA のスコープ修飾子を理解し、高額クエリ・失敗傾向・ストレージ肥大を検出する定番運用クエリを書けるようになります。
第 18 章
総合演習 — ミニ分析基盤をゼロから組む
raw/staging/mart の3層設計で、GCSロード・生成データ・パーティション・自動化・BI接続・権限設計を一本のプロジェクトに統合します。